名探偵コナン×相棒   作:餌屋

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2-6「複雑な想い」

 

 

黒塗りのベンツより降りてきた老紳士、桝山は一同を見渡して驚いた顔を見せた。

 

「おや…もしや君達も旭君に呼ばれているのかね?」

「おじいちゃん、だぁ~れ?」

「大手自動車メーカー『マスヤマ』会長の、桝山憲三氏ですよ」

「えーすっごーい!超VIPじゃん!」

 

奈々の空気を読まない発言に、一同が苦笑いを浮かべる。

 

「オッホン!失礼。私は警視庁の目暮と申します。失礼ですが、皆さん旭さんと約束が?」

「ええ、15時に約束が」

「私も15時~」

「僕モデスネ」

「俺もだ」

「私もそうだね」

 

仁科、奈々、フォード、宍戸、桝山、皆が旭と同じ時間に約束をしているという。

 

「警部さん、何か事件でもあったんですか?」

「ええ、実はですな…」

「ねえ、15時になっちゃう早く行こうよ」

「ん?あぁそうですな!では取りあえず先にレストランへ行きましょう!」

 

目暮の号令に皆が後を付いていく。

 

「…冠城君」

「…?どうかしましたか、右京さん」

 

皆に続こうとする冠城を、杉下が呼び止め小声で話しかける。

 

「君には別途調べて欲しい事があります」

「え?何です?」

「先程の奈々さんの反応、少し気になります。彼女の交通違反歴などを調べて頂けませんか」

「分かりました」

「それに…」

「…?」

「気づきませんか?ここに集まった方々の名前…」

「名前…あれ?そういや…」

「…何か嫌な予感がします。2時間経っても連絡が付かなければ…後を頼みます」

「…分かりました。お気をつけて」

 

指示を済ませた杉下は冠城と別れ、一人皆に続いていく。

 

「おや?冠城君はどうしたのかね?」

 

冠城が付いてこない事に気づいた目暮が杉下に問う。

 

「ああ、冠城君はどうやら急用が出来たとかで」

「で、君はやはり」

「お供させて頂きます」

「…あ、そう」

 

しれっとした杉下の言い様に力が抜けた顔をする目暮。

それを横目にコナンだけが杉下の意図を読み取っていた。

 

「…杉下警部」

「…どうしました?」

「もしかして冠城さんは…」

「ええ。集まった皆さんを鑑みるに、何かがある事は間違いないでしょう」

「じゃあ…犯人はアクアクリスタルで」

「…動く可能性が高いでしょうねぇ」

「…何か気づいたらすぐお伝えします」

「お願いします」

 

不穏な予感を感じながら、杉下とコナンは皆に続いてアクアクリスタルへ向かっていった。

 

 

***

 

 

アクアクリスタル行き、モノレール内。

 

 

アクアクリスタルは海の上に建設されており、陸から向かうには基本的に直通の無人モノレールに乗る必要がある。

 

 

 

 

つまり。

 

 

「…何で宙に浮いてんだ畜生」

 

実は高所恐怖症である小五郎には、海の上を飛んで走るようなモノレールは精神をすり減らす物でしか無かった。

そんな小五郎の前で、仁科も俯き脂汗をかいていた。

 

「いやぁ、仁科さんも宙に浮かぶものは苦手なんですかな?」

「…いえ、私は水がダメなんです…カナヅチでして…」

「そ、そりゃまあ色々あるもんですなあ」

 

落ち着きのない小五郎を遠目に見ながら、蘭は先日白鳥から聞いた小五郎の過去、10年前の村上と英理に対する発砲騒動について思いを巡らせていた。

 

(…新一は『おじさんがおばさんを撃ったのは事実でも、それがイコール真実とは限らねえんじゃねえか?』とか言ってたけど…やっぱり意味が分かんないわ…『真実』って何よ。お母さんを撃ったのは『真実』じゃないって言うの?)

 

眉間に皺を寄せ、悩まし気な表情を見せる蘭。

そんな様子に気づいた杉下が声をかける。

 

「蘭さん、どうかされましたか?」

「あ、杉下警部…」

「どうやら、毛利さんの方を見ていたようですが…お父さんと何か?」

「…杉下警部は、父が警察を辞めた時の事をご存じですか?今回の事件にも関係している10年前の…」

「…人から聞いただけですが、存じ上げています」

「…私、お父さんの事もう信じられないんです。幾ら拳銃に自信があって犯人を捕まえるためだからって、お母さんに銃を向けて、怪我までさせて…」

「…」

 

小五郎に聞こえないくらいのトーンではあるが、蘭は自然に感情が溢れだしていた。

 

「私分かったんです。お母さんが何で出て行ったのか…最悪ですよ。どうせ自信過剰になって、天狗になっていたんだわ…お母さんの事なんてこれっぽちも気にしてなんて…」

「…本当にそうなんですかねぇ」

「…え?」

 

杉下は優し気な笑みを浮かべながら、ゆっくりと蘭に話しかける。

 

「…僕は、拳銃が嫌いです。拳銃を持てば得てして、ろくな結果を生み出す事は無いと考えています。そして、蘭さんが怒っていらっしゃるように、僕も当時の毛利さんの行動は褒められた物ではないと思います」

「なら!」

「ですが…少なくとも、今まで毛利さんと接してきた限り、奥さんに何も思わず銃を向けるような人には見えないのですがねぇ」

「…杉下警部」

「如何ですか?今まで見てきたお父さんは、自信過剰で、天狗で…妃先生を怪我させても良いと平気で思うような人でしたでしょうか?」

「…自信過剰で天狗は当たってると思いますけど…」

「…おやおや」

 

蘭の言い様に杉下も言い返せない部分があると思ってしまい、苦笑いを浮かべる。

 

「でも…お母さんの事、何だかんだ言ってとっても大事にしていた筈でした…」

「ええ、そうでしょうね。それにもしそんな酷い方なら、妃先生も幾ら蘭さんが声をかけるからといって一緒に食事をしようなどとは思わないでしょう。毛利さんも、妃先生が襲われた時急いで駆け付ける事も無いでしょうし」

「まあそれは確かに…」

「僕には、何が真実か今は分かりません。ですが、それでも毛利さんが蘭さんも、妃先生も大事に思っている事は少なくとも真実だと思いますよ」

 

 

***

 

 

『…アクアクリスタルでターゲットになりそうな奴が集まってる!?』

「ええ。それで、犯人が何か動くかもしれないんで応援をお願いしたいんです」

 

冠城は杉下と別れた後、早速伊丹に連絡を取っていた。

 

『…だがまだ確証はねえんだろ?それに目暮警部と白鳥がいるらしいじゃねえか。そんな状況で捜査員を更に動かすには理由が足りねえ』

「でも何か起こってからじゃ遅いじゃないですか」

『…流石にまだ無理だ。諦めろ』

「…なら、集まったメンバーについて急ぎで怪しい所が無いか調べてもらえませんか。出来る限りで良いんで」

『は?怪しい所って、村上に狙われてるかも知れねえ奴らなんだろ?』

「…実の所、右京さんは『村上は犯人ではないんじゃないか』って」

『警部殿が?…チッ、分かったよ。青木の野郎にも手伝わせる』

「助かります。後ほどそちらへ伺いますので」

 

頼みを終えた冠城は電話を切る。

 

(さて…俺はどうしたもんか)

 

杉下からの連絡を待つ間、どう動いたものか思案する冠城。

ふと、沢木の家でコナンが話していた事を思い出した。

 

(そういえば、沢木さんのお店で毛利さんと妃先生が食事をした時、辻さんも来ていたって言ってたな…)

 

意外な沢木、小五郎、英理、辻の関係に少し興味を覚えたことを思い出す。

 

(…なら沢木さんと辻さんはどんな関係だったんだ?友人とは言っていたけど)

 

冠城は、沢木と辻の関係性についてもう少し詳しく調べてみようと思い立ち、車に戻っていった。

 

 

***

 

 

アクアクリスタル、内部。

 

 

アクアクリスタルのメインレストランは、海中に建てられていた。

中央のステージには赤いフェラーリも設置されており、大金がかけられている事が見て取れた。

 

旭の姿が見当たらず、村上が既に旭を殺害し潜んでいる可能性を考えた小五郎と白鳥は、二人で辺りを確認しに向かう。

その間に目暮は一同に今何が起こっているかの説明を行う事にした。

 

その後二人が戻り、特に異常が見受けられなかった事が分かって一安心した一同。

 

そんな中、宍戸が声をあげる。

 

「ふ~ん、なるほどねぇ…なら6は俺かもしれねえな」

「え?どうして?」

 

奈々が宍戸に疑問を投げる。

 

「宍戸の宍には漢字の六が入ってるだろ?」

「ああ、確かに!」

「他の皆にも入ってるよ」

 

それに続きコナンが一同の名前に数字が入っている事を指摘する。

 

「何!」

「奈々さんはそのまま7、仁科さんは漢字の二、フォードさんは英語で4でしょ?」

「そして桝山さんはお名前が憲三で漢字の三、ここに毛利さんの5を合わせれば…」

「おいおい、1以外全員揃っているじゃないか!!」

 

コナンと杉下の指摘に、一同がざわめく。

 

「…あのさ、警部さん」

「はい?」

 

奈々がアゴに手を当てながら、何か思い出したかのように目暮に話しかける。

 

「その村上って人、1週間前に出所したんだよね?」

「ええ、そうですが」

「…じゃあ、関係ないか。ごめんごめん!何かあたし勘違いしてたみたい!」

 

笑って取り繕う奈々に目暮は呆れた顔を見せる。

 

「…しかし、こうなると1は一体誰なのか」

「新一…もしかして、新一の事なんじゃないでしょうか」

「工藤君、ここに来るのかね!?」

 

蘭の思いがけない予想に目暮が驚いた声をあげる。

 

「いえ、ただ何となく…お父さんの知り合いで1というと新一くらいしか思い浮かばなくて…」

 

実際体が小さくなっていなければ今回の事件に興味を持っていた筈だと、コナンも蘭の予想に内心同意する。

 

「つまり」

 

杉下が話を纏めて声をあげる。

 

「工藤君がいない以外は、犯人の思惑通りに我々は集められてしまった可能性がある、という訳ですね」

 

 

 

皆が気づかぬ所で、殺意の刃が忍び寄っていた。

 

 




6話でした。

物語的に動きが少ないとどうしても単調になりがちでどうしたもんか状態です。難しいものですね…
という訳でラストスパートまで説明の地の文が増えます。
ここから一気に進めていきますよ…!


蘭の小五郎に対する不信なのですが、原作を見た当時から「流石に簡単に信用無くなり過ぎで小五郎可哀そう」が勝っていた私です。
まあ事情が事情なので戸惑いは分からなくもないのですが…
その辺りのモヤモヤをせっかくの二次創作なのでちょっと解消してみました。


前回分の感想欄、全て目を通しております。
流石に皆様「おいおいマジかよ」状態でしたね。
ネタバレにならない範囲でお伝えしておくと、当初の予定を大幅に変えた結果が今の状況でして…
どうするつもりなのか、ゆっくりご期待頂ければ。


ではまた次回。明日更新予定です。
よろしくお願いします。


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