「キャアアアアアアアアア!!!」
「ど、どうしたんだ!?」
「シャ、シャンデリアが…」
突然起こった惨劇に会場が騒然とする。
「皆さんお静かに!警視庁の目暮です!!」
何故か会場に来ていた目暮が混乱を鎮めようと声をあげる。
その様子を杉下達とコナン達は人気の少ない離れた所で見守っていた。
「目暮警部が何故ここに…」
「俺が声を変えて呼んでいたんです。呑口議員が誰かに狙われているって」
目暮の姿に驚く杉下。
その疑問にコナンが答えた。
「なるほど。それで?どういう事か説明していただけますか。それにこちらの女の子は一体…」
杉下は、コナンの隣で青い顔をする少女に目をやりながら問う。
「…彼女は灰原哀。今は詳細を省きますが、元組織のメンバーで例の毒薬の開発者です」
「…はいぃ?」
「え…こんな小さな子がまさか…あ、なるほど…」
冠城が、信じられないという表情を見せるがすぐどういう意味かを理解する。
「ええ。俺と同じ薬を飲んで体が縮んでいるんです。今は俺に協力してくれてます」
「…別に。早く元の体に戻りたいだけよ」
「…」
素っ気ない態度を見せる哀に不快感を覚える杉下だったが、顔色を悪くしている様子を見て複雑な気分になる。
「…分かりました。その件については今置いておきましょう。それで?」
「実は…」
コナン達が会場に現れた理由を説明するには、2時間ほど時を戻す事になる。
***
事件発生から2時間ほど前。
コナン達は雪が降り出す中、皆で下校途中だった。
元太達と別れた後、先を進みながら自分の隣で暗い顔を浮かべる哀に声をかけるコナン。
「『ここは自分のいるべき場所じゃない…皆を巻き込まないようにも早く消えなければ』…なーんてくだらねー事考えてるんだろ」
「え?」
突然自分の考えを当てられ少し驚く哀。
「大丈夫。毒薬の筈だった薬で体が縮んだなんて普通思いつかねえよ。その時が来るまでバレねーように子供を演じ続けようぜ」
「…」
「あ、そうだ。前話していた協力者と引き合わせるって話なんだけどさ」
「…確か、杉下右京と冠城亘、だったかしら?」
「ああ。お前さえよけりゃあ今週末の予定で向こうに都合を聞いてみようかと思うんだけど良いか?」
「…別に、構わないわよ」
自分の状況に不安がる哀に対して、余裕を崩さないコナン。
(…工藤君、あなた何も分かってないわ。『彼ら』はあなた一人でどうにかなる相手じゃないのよ…)
哀の脳裏に『彼ら』の事が思い出される。
(隙を見せたら最期、組織は私達を逃さない…そう、今もどこかで…ん?……っ!?)
と、哀は目線の先にある物に気づき、恐怖で固まってしまう。
哀の様子が変わった事に気づいたコナンも目線を追う。
目線の先にあったのは一台の真っ黒なクラシックカーだった。
「ポルシェ356A…テレビや本でしか見た事無かったけどいるんだなこんな古い車に乗ってる奴…」
持ち主が出かけているようで、車を物珍しそうに覗き込むコナン。
「…ジン」
「…え?」
「ジンの愛車もこの車なのよ…」
「…何っ!?」
哀の口から出た言葉に衝撃を受けるコナン。
コナンはすぐさま携帯を取り出し阿笠に電話をかける。
「もしもし博士!?今から言う場所に針金のハンガーとペンチを持ってきてくれ!!急いで!!!」
「ちょ、ちょっと工藤君!?どうする気!?」
「車の中に発信機と盗聴器を仕掛けるんだよ!」
「えぇ!?何言ってるのよ!まだ彼の車だと決まった訳じゃないし、もしバレたらどうなるか…」
「大丈夫、取り付けるのは新型。以前までのガムを噛んで取り付けるようなタイプじゃないからDNAを残す心配はねえし、勿論指紋も全部消すさ!!」
不安がる哀に、気がはやりながらも自信のある笑みを見せるコナン。
だが、
その後、急に盗聴器の存在をジンに気付かれてしまう。
しかし杯戸シティホテルで暗殺作戦があるのは判明した為、会場に急行したのだった。
***
時は戻り、「偲ぶ会」会場。
「…その後、俺達は何とか暗殺を止めようと会場に潜り込んだんです」
「なるほど…そういう事でしたか。しかしそれなら猶更です。ここは危険すぎる」
「マズイよコナン君。だって俺達…」
コナンが事情を説明し終えるが、話を聞いていた杉下達は事の重大さに危機感を募らせていた。
「今回の事件を引き起こしたのが組織のメンバー『ピスコ』ならば、その最有力候補はもう分かっています。君も知っている相手ですよ」
「え!?だ、誰です!?」
「…桝山憲三です」
「桝山さん!?確かにさっき会場で見かけましたけど」
コナンは、先日の事件で出会った時の事を思い出す。
「やはり来ていましたか」
「アクアクリスタルの一件で不審な所があってね。俺達調べていた所だったんだ」
「彼には怪しい点が次々浮かび上がって来ています。それにもし違っていたとしても、哀さんの顔を見られるのはなるべく避けるべきですねぇ。怪しまれたくありません」
「…それはそうなんですが」
「こっちの事件は俺達に任せて、今は一旦廊下まで出よう」
「…分かりました」
「右京さん、取り敢えず俺が着いていきます」
「お願いします」
若干納得出来ていないコナンだったが、冠城の申し出に従う事にする。
と、ふと思い出したように手に持っていた紫色のハンカチを杉下に手渡した。
「あ、そうだ杉下警部。これを」
「これは?」
「シャンデリアが落下して明かりが着く前にこれが落ちてきて…」
「なるほど…何か手がかりになるかもしれませんねぇ」
杉下はハンカチを受け取ると、会場から離れていく冠城とコナン達を見送った。
(…灰原哀、ですか。彼女が例の薬の開発者だとは…これが落ち着いたら、少々話を聞くべきですねぇ)
哀に思う所のある杉下だったが、気持ちを切り替え目暮達の元へ向かう。
その一部始終を、ひっそりと観察していた者がいた。
***
1時間前、「偲ぶ会」会場。
表の顔で会場に現れた桝山は、参加者と挨拶を交わしながら作戦開始の時を待っていた。
そこに電話がかかってくる。
(…ん?…なんだ、ジンか)
ジンからの電話だと気付いた桝山は周りに断りを入れ、会場から離れ人気の無い場所へ移動して電話を取る。
「もしもし」
『俺だ』
「どうした?呑口ならさっきも話した通りまだ現れてないが」
『別件だ。シェリーを覚えてるか?』
「シェリー…勿論覚えているとも。久しい名だ」
桝山は随分昔、まだ『子供』の頃に会った事を思い出す。
『組織を裏切ったそのシェリーが今そっちに向かっているはずだ』
「…何だと?」
『我々の事を嗅ぎまわって俺の車に盗聴器を仕掛けていたのに気付いてな。さっきの電話を聞いたはずだ』
「なるほど…だが本当に来るのか?」
『ああ…間違いない。例の薬のことを匂わしたからな…勿論あの『出来損ないの名探偵』を使うかどうかはお前の勝手だが…』
「…まあ、万に一つと言うこともある。計画が失敗した時の次の策と考えておくさ」
『他に仕掛けられたものが無いか確認した後で俺達も合流する。女を見つけたら取っ捕まえて面を拝ませろ…首から下がなくても問題はねえからよ』
「…分かった。気を付けておこう」
ジンとの話を終えて電話を切る桝山。
(やれやれ…まさか志保ちゃんが邪魔をしに来るとは…アイリッシュから聞いた『あの二人』の事もあるし、困ったものだ)
桝山は、先週アイリッシュから報告を受けた際の事を思い出す。
***
1週間前、桝山邸。
『…近くでバーボンが刑事と会っていた?』
『ええ。不審に思い、バーボンに問いただして見た所そのように…ピスコに聞きたい事があったが警備の多さに尻込みしたらしい、とバーボンは言っていましたがどこまで信用して良いか…これがその写真です』
アイリッシュは、隠し撮りしたバーボンと刑事の写真を見せる。
そこには桝山に見覚えのある顔が映っていた。
『…こいつらは!?』
『ご存じなのですか』
『ああ…この間のアクアクリスタルで出会った刑事だ。確か…特命係の杉下右京と冠城亘』
『…特命係?』
『警視庁の窓際部署と聞いたが、中々に鋭い推理力を持った刑事だった覚えがある…何故奴らが』
『…まさか我々の事を嗅ぎつけたのでは』
『いや…流石に考えにくい…恐らくアクアクリスタルの一件についてだろう…警備員程度で尻込みするような男達では無かったように思うが』
『…どうされます。『対処』しますか』
『…いや、今は様子見だ。ジンではあるまいし下手に動くのは性に合わん』
『…ですが充分ご注意を』
『あぁ。だが念のため二人の事を調べておいてくれ』
『分かりました』
***
(…その後の調査結果を見るに、行動力や推理力を考えると杉下右京は敵に回すと非常に厄介な男だろう)
その後一週間の間にアイリッシュに調べさせた杉下のこれまでの実績を見て、脅威に感じる桝山。
(流石に今回の件に杉下右京が関わってくる事は無いだろうが…万が一現れた時は充分気をつけねばならんな。最悪ベルモットとバーボンのバックアップに頼るしか無いだろう)
桝山は、流石に少々不安になりながらも気を取り直して会場に戻る。
暫くして、標的の呑口が会場にやって来たのに桝山は気付いた。
早速報道陣に取り囲まれて騒がしくなったからだ。
(作戦決行までまもなくか…)
決行のシチュエーションまでまた辺りの様子を伺っていると、ふと入り口の方に視線が止まった。
そこには懸念事項の男達が会場にやって来た所だった。
(…杉下右京…本当に現れた…)
作戦決行間際になって杉下と冠城が会場に現れてしまった。
桝山は完全に予想外の展開になってきた事に歯噛みする。
(おのれ…もしや本当に我々の事を勘づいて…?くっ…しかし今更計画は変えられん。やってやるとも…)
しかし計画を変更せず、タイミングを待つ桝山。
と、杉下達が突然動き出し、場に似合わない格好をした子供達の元へ歩み寄る。
(………何!?)
その『子供』の片方、赤みがかった茶髪の少女を見て、杉下達が現れた時以上に桝山は驚きに固まる。
(…志保ちゃん?そんな馬鹿な…あれから何年経って…まさか…)
桝山にとって更なる予想外の光景だったが、ふとある可能性に思い至るとその口をニヤリと歪ませる。
(これはこれは…どうなる事やらと思ったが、面白くなってきたようだ…)
まもなく作戦決行時間。桝山は手早く携帯を開くと、メールを一本打ち始めた。
その後、事件は起きる。
桝山達は予定通り、呑口の暗殺に成功したのだった。
対決は、始まったばかり。
先日黒鉄の魚影、2回目を見てきた餌屋です。
2回目は大分冷静に観ることができました。
やはり面白かった。
早く語りたい。いつになったらネタバレOKですかね。
流石にGW超えるまではダメかしら…
今回の解説を。
今回は前回の右京視点と並行して、それぞれ何が起きてたかでした。
上手く書けていたら良いなと思います。
…展開は右京やコナン達からしたら最悪っていう。どうしよう。
桝山が哀の顔にすぐ気づけたのは本世界線オリジナルです。
原作では赤ん坊の時に会っただけで面影を感じた為調べただけ、という状況でしたが…ハードモード突入です。
ただ、右京補正で既に桝山が最有力の容疑者になっているメリットもあります。
対決はまだここから。
今後の展開にご期待ください。
毎回、閲覧、感想、評価、皆様ありがとうございます。
全て目を通させて頂いております。
Twitterも意外と見てくださる方が多く、寂しがりやな自分としては嬉しい限りです。
Twitterも色々動かしていきたいのでよろしくお願いします。
それではまた次回。
餌屋TwitterID @esaya_syosetu