名探偵コナン×相棒   作:餌屋

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※注意※
今回から当小説の「独自設定」タグが遠慮なしに火を噴き始めます。
具体的にいうとコナンと法律の云々が含まれます。
それでも問題ない方は、ごゆっくりお楽しみください。


4「特命係、始動。」

 

 

4月28日、特命係。

 

 

「ただいま戻りました」

 

自席のパソコンにて古い新聞記事を読みながら紅茶を飲んでいる杉下の元へ、二日ぶりに冠城が戻ってきた。

 

「どうもありがとう。それで、どうでしたか」

「まずコナン君の戸籍類についてですが…存在しませんでした」

「…なるほど、存在しませんでしたか」

「ええ、戸籍も住民票も無しです」

 

冠城の報告に、杉下は紅茶を一口含みながら考えを巡らせる。

 

「しかし、小学校には在籍しているのですよね?」

「はい。コナン君が通っている私立の帝丹小学校に問い合わせてみたんですが、どうやら海外在住の母親の意向で戸籍等を移しておらず特に確認無しで編入したようですね」

「なるほど、義務教育期間ですから就学が認められない事は殆どありません。私立の小学校だとその辺りも自由が利いたのでしょう」

「それで、海外在住で日本に一時帰国しているのならとパスポートの有無を調べてみたんですが…」

「…ありませんでしたか」

「…ええ。一体どういう事なんでしょう。まさか、無戸籍児とか?」

 

冠城の調査結果に、杉下は宙を見つめながら考察する。

 

「勿論、その可能性も否定できません。あまり知られてはいませんが、様々な事情により無戸籍状態の子供は大勢います。戸籍や住民票を偽造している訳ではないので、少なくとも直ちに法律に触れる物ではありません」

「しかし、元刑事の毛利さんが怪しまないとは思えませんが」

「そこは上手く説明しているのでしょう…毛利さんが事情を全く知らないのならば、の話ですが」

「毛利さんも全てを知ったうえで預かっていると?」

「あくまで可能性でしかありませんがね。ですが、何らかの事情により、戸籍を作ることを出来ず素性を偽って毛利さんに預けているのは確かでしょう。僕にはその事情というのが気になりますねぇ」

「事情ですか…ところで、右京さんの方はどうでした?」

 

推理に行き詰まりを感じた冠城は、杉下の調べ物について話を振った。

 

「僕は、『眠りの小五郎』のこれまでの活躍について調べていました。どうやら、ある一定の時期から急に有名になったようですね」

 

杉下は調べた中からある新聞記事を場所を変わって冠城に見せる。

どうやらスポーツ紙のそこには「眠りの小五郎、お手柄」との大きな見出しが乗っていた。

 

「毛利さんはこれまで多くの事件を解決しているようですが、この東都スポーツの記事より前は一切名前を見かける事がありません」

「あれだけの推理力が本当なら、探偵を始めた頃から話題になっていてもおかしくないと思うんですが…」

「現役の頃、推理力はからっきしだったと角田課長が仰っていましたねぇ。恐らくその頃はまだ現役時代のままだったのでしょう」

「一体何があったのか…」

「…もしや」

 

と、そこで何かに気づいた杉下が冠城に向き直る。

 

「冠城君、コナン君が帝丹小に編入した時期と、『眠りの小五郎』が有名になった時期とを比べてみてください」

「え?はい。えーっと…あれ?殆ど変わりませんね」

「やはり、そうでしたか」

「…編入時期と預かり始めた時期はほぼ一緒でしょうし、コナン君を預かるようになってから毛利さんの推理力が上がった?」

「にわかには信じがたいですが、偶然にしてはいささか出来過ぎのように感じますねぇ」

「でも右京さん、コナン君はまだ小学生ですよ?幾ら右京さんも興味が湧くほどの頭の良さでも、子供に何か出来るとは到底思えないんですが」

「そうそこなんですよ。彼はまだ小学生の小さな子供なはずなんです。普通そんな子供がどれほど事件解決に貢献するような事をした所で相手にされないのが関の山です」

「…でも目暮班の人達でも一目置いているような状況」

「彼の立場と現状には非常にギャップが存在しています。そこが、先日冠城君からコナン君の話を聞いてからというもの、非常に興味が湧く点の一つでした」

 

杉下の解説に、冠城は腕を組んで唸り声を上げる。

 

「しかし、だとしたらどういう事なんでしょう?」

「…現状、これ以上は何とも言えません。明日にでも、毛利さんやコナン君に話を聞いてみても良いかもしれませんねぇ」

「ですね。事務所の住所、調べておきます」

「お願いします」

 

 

***

 

 

その頃、阿笠邸。

 

 

「何じゃと?警察から学校に、『江戸川コナン』の戸籍について問い合わせがあった?」

 

 

阿笠博士の家を訪れたコナンは、今日担任から聞かされた話を深刻な面持ちで阿笠に説明していた。

阿笠はコナンの話を聞き、焦った声を上げる。

 

「まさか、お前さんが工藤新一だとバレたんじゃなかろうな」

「まだ、分かんねえ…一応小林先生が、博士と母さんが学校に説明した通りに伝えてくれてそれで終わったらしくて、念のため俺に確認を取ってきただけだったんだが…」

「しかし、わざわざそんな事を聞いてくるとは…警察といっても誰だったんじゃ?」

「それが…『警視庁・特命係の冠城亘』って名乗ったらしいんだ」

「特命係?」

 

コナンは、先日黒川邸で初めて出会った二人組の刑事を思い出していた。

 

「この間の事件で初めて会ったんだ。聞いたことも無い部署だったから良く覚えてる」

「その時、何か怪しまれるような事があったのか?」

「いや…特に何も無くいつも通り事件を解決して終わったんだけど…そういや、偶に冠城って刑事と一緒だった杉下って刑事から視線を感じていたような気もしたっけ」

「もしや、推理を話している所を見られたんじゃ」

「いや、全員の視線が外れているのを確認したからそれは無い」

 

阿笠はコナンの事が心配そうに顎に手を当てて唸る。

 

「ふーむ、何も無ければ良いんじゃが…ところでその特命係というのは、どういう部署なんじゃ?」

「おっちゃんが知ってる感じだったから聞いてみたんだけど、『警視庁の陸の孤島』って言われてるくらいの窓際部署なのにこれまで幾つも難事件を解決していて庁内じゃ割と有名らしいんだ」

「なるほど…よし、ワシの方でも少し調べてみよう」

「頼む博士。『奴ら』の仲間って可能性も無い訳じゃねえ。充分注意してくれ」

「分かっておる。それより明日、森谷帝二のアフタヌーンパーティーに行くんじゃろ?今は楽しんで来たら良い」

「あぁ、分かった」

 

 

***

 

 

4月29日、米花町。

 

 

「へぇ…良い街ですね」

 

この日、杉下と冠城の二人は、米花町の街中を並んで歩いていた。

辺りを見回しながら、冠城がにこやかにそう感想を漏らす。

 

「米花町は都内有数の発展具合なようですね。教育施設は勿論、遊園地や映画館、水族館、総合病院と殆ど街の中にあるそうですよ」

「それは凄い。毛利さん、こんな良い所に事務所を構えているんですね」

 

杉下の解説に冠城が驚きの声をあげる。

二人は前日決めた通り、毛利探偵事務所に向かっていた。

 

「ええ。どうやら毛利さんの持ちビルのようですよ」

「え!持ちビルって凄いですね。探偵ってそんなに儲かるんですか?」

「さぁどうなんでしょう。昨今事件捜査も行う私立探偵という職業が認知されるようになってきましたからねぇ」

 

そんな事を話していると、二人の目線の先に事務所の看板が見えてくる。

 

「毛利さん、祝日ですけど事務所に居ると良いですね」

「ええ。話を聞ければ良いのですが」

 

ビルに着いて階段を上ると2階に毛利探偵事務所の扉が見える。

杉下は扉をノックし、中に声をかけた。

 

「ごめんくださーい。どなたかいらっしゃいますか?」

 

しかし反応は返ってこない。中に人の気配も無かった。

 

「お留守のようですね」

「残念ですねぇ」

「あのー、毛利さん達なら今日は出かけていらっしゃるみたいですけど…」

 

残念がる二人に階下から声がかかる。

そちらを向くと、エプロンに身を包んだ若い女性が居た。

 

「どうやらそのようですねぇ。どこに行かれたかのかご存じでしょうか?」

「あ、もしかして警察の方ですか?」

「おや…どうしてそうだと?」

「そりゃあ毛利さんの所だけじゃなくウチの店にもよく警察の方来られますから!すぐ分かっちゃうようになりました」

 

そう言って女性はニッコリと笑みを浮かべる。

 

「確か…森谷って有名な人のガーデンパーティーか何かに行くって蘭ちゃん言ってたっけ…」

「森谷…もしや森谷帝二ではありませんか?」

「ああ!そうそう!そう言っていました!」

 

森谷帝二という名前に今度は冠城が反応する。

 

「森谷っていえば有名な建築家ですよね」

「ええ。これまで様々な建築物を手掛けてこられて、各界にも顔が広い人物ですね。…ところで、あなたは?」

 

そこで、名前をまだ聞いていない事に気づいた杉下が女性に質問する。

 

「あ!すみません申し遅れました。私、下の喫茶店『ポアロ』の従業員で榎本梓って言います」

「おや、喫茶店の方でしたか」

「はい!偶々外に出たら声が聞こえたもので教えた方が良いかなーって」

「わざわざ教えて頂きありがとうございます。ところで話を戻させて頂きますが、毛利さんは仕事か何かで森谷氏のお宅へ?」

「あぁ、何か工藤君に来た招待の代わりって聞きましたよ?」

「工藤?」

「あれ、知りません?高校生探偵の工藤新一君。娘さんの蘭ちゃんが幼馴染だそうで」

 

工藤新一の名前に、二人はテレビや新聞で話題になっていた少年の事を思い出す。

 

「ああ、知ってます。幾つも難事件を解決してきた凄腕の探偵だそうですね」

「僕も知っています。そういえば、最近名前を聞かなくなりましたねぇ。何かあったのでしょうか」

「なんか、事件の調査でずっとあちこち飛び回ってるらしいですよ?学校も休んでいて、蘭ちゃんもろくに会っていないとか」

「おやおや、学業を疎かにするのは頂けませんねぇ」

「まぁ、それだけ忙しいって事なんですかね」

「今回のパーティーも、『突然電話してきたと思ったら代わりに行ってくれ。招待状はポストに入れておいた。って急に言うんですよ?』って蘭ちゃん怒ってました、アハハ…」

 

蘭が愚痴を零していた時の事を思い出し、梓は苦笑いを浮かべる。

 

「あっと、そろそろ仕事に戻らなきゃ…」

「お忙しい所、どうもありがとうございました」

「いえいえ!良ければウチの店にもいらっしゃってくださいね!」

 

梓は二人に軽く会釈すると小走りで店の中に戻っていく。

冠城は、さわやかな笑みを浮かべながら、梓の人当たりの良さを感心していた。

 

「いやぁ~良い子でしたね~」

「ええ、看板娘、といった所なのでしょう」

「どうします?折角ですし僕たちもポアロ、入ってみましょうか」

「いえ…残念ですが、また別の機会にしましょう。それよりも一つ調べてみたい事があります」

「というと?」

「工藤新一君についてです」

 

杉下の脳内には、先ほど話に出てきた新一についての疑問が溢れてきていた。

 

「彼の事、気になりますか」

「大いに気になりますねぇ。特に『事件の調査で飛び回っていてろくに蘭さんも会っていない。しかし招待状は家のポストに入れていた』という辺りが」

「そうですか?ただ忙しくて会って話をするほどの時間が無かったとか、色々理由は考えられそうですが」

「確かにその可能性も充分あります。しかし招待状を手渡すくらい、そんなに時間が取られるとは考えにくいですし、そもそも無理なら無理で断れば良いだけの事」

「しかし直接は行けないから、わざわざ回りくどいやり方を取ってまで幼馴染の蘭ちゃんに頼んだ…何の為に?」

「恐らく、工藤君にとって森谷氏の招待状は断りたくない、あるいは断りにくい物だったのではないでしょうか。そして蘭さん達が行く事によって何らかの情報が得られる事を期待した」

 

杉下の推理に、冠城は眉間のしわを深めて考え込む。

 

「つまり、工藤君が蘭ちゃん達の前に姿を見せない事や、パーティーに出られないのには何か事情があると」

「何か事情を抱えているであろうコナン君と、そのコナン君を預かっている毛利さん。その娘さんである蘭さんの幼馴染には、また何か事情を抱えているような工藤君…この辺りに何か繋がりがあるような気がしますねぇ…<プルルルルル…>おや、出雲さんからです」

 

話し込んでいると、突然杉下の携帯に電話が掛かってきた。

画面に表示された相手の名前は、捜査一課の刑事で杉下達とも良く現場で会う、出雲麗音(いずもれおん)だった。

 

「はい、杉下です」

『あ、杉下さんですか?すみません、伊丹さんから言われてちょっとお願いしたいことが…』

 

伊丹とは、出雲の直属の上司で杉下とも関係が長い、捜査一課所属 伊丹憲一の事である。

その後輩でこちらも杉下と関係が長い芹沢慶二との三人で、出雲は事件捜査を行っているのだった。

 

「はい…はい…なるほど、分かりました。すぐ戻ります」

 

出雲と二言三言会話した杉下は、了解の返答をして通話を終える。

 

「何かありましたか」

「伊丹さんから、証拠品返還のご依頼だそうです」

「またですか。僕達今暇じゃ無いんですけど…」

「しかし、こればかりは仕事が優先ですからねぇ。それに伊丹さん達も今はお忙しいみたいですよ」

「また事件ですか」

「最近ニュースでも取り沙汰されている、高級住宅への連続放火事件についてです。死者が出ている事もあり、伊丹さん達も捜査に駆り出されているようですねぇ」

「やれやれ…じゃあ取りあえず戻りますか」

「ええ、工藤君については合間を見て調べる事にしましょう」

 

そう言って二人は警視庁へ戻り始めた。

 

 

 

それからというもの、二人は伊丹達からの雑用に忙殺されながらも、合間に新一が活躍した過去の事件などを調べていた。

 

 

そして、5月3日。

 

 

遂に事が動き出す。

 

 





第4話でした。いかがでしたでしょうか。

毎話文字数が増えていく…推理会話を挟むとまあ伸びる。
なるべく気を付けてはいますが、読みにくくは無いでしょうか。
もっと精進していこうと思います。

さて次回やっと時計仕掛けのメイン事件スタートです。

…あれ、前回の予告でも似たような事言っていたような。

書きたい事多いんだもの。仕方ないね。



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さて、前書きでもお伝えしましたが今回から法律周りなどなど独自設定が始まりだしました。

長文になりますがその辺りについて解説(という名の言い訳)を。


戸籍無し、住民票無しでも私立の小学校に通える辺りはもう本当に独自設定です。

わっかんねーよだってコナンは問題なく通ってるんだもん!!!!!

一応調べたところ、劇中でも説明した通り、現実世界でも義務教育期間は戸籍住民票無しでも通える場合があるようですが、ハッキリとした所は分からず。最終的にこのような設定に落ち着きました。



企画当初より、漫画アニメの世界であるコナンと現実世界が舞台の相棒のクロスオーバーにおいて一番悩ましい所が法律問題でした。

戸籍問題などまだ良い方です。感想でもお気づきの方がいらっしゃいましたが、もっとややこしい問題など幾らでもあります。
しかし、これらを普通に断罪するとコナンの話が続きません。
これがまあ悩ましい。コナンは体が小さくなったまま「完」です。
流石にそれはまずい。

という訳で一応当小説上にて杉下がコナンに突っ込みそうな所も、コナンの考え方、杉下の考え方もある程度どのような設定にするか決めております。

コナン法律ヤバいんじゃね問題についてはどんな方向性であれ、どのように当小説のコナンと右京が落としどころを見つけるのかは皆様楽しみにして頂ければと思います。

兎にも角にも、なるべくコナン世界も崩さず、なるべく相棒の良さも消さずに良い塩梅を見つけつつ連載を続けたいと思いますので、温かい目で見守って頂ければと思います。

どうかよろしくお願いいたします。


長々と失礼いたしました。
また次回。
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