「なるほど…やはり、周りの人間に危害が及ばないように、二つ目の爆弾が入ったキャリーケースを持っていって遠ざけようとしたんだね?」
「うん、それでこの後も犯人からの電話は新一兄ちゃんの携帯電話に掛かってくると思うんだ」
「それなら心配いらんよ。事情は聞いていたから、携帯電話を使える病棟にしたんだ」
コナンの意識が戻り、医師の診察も受け問題無しと判断されたので、目暮達も病室に入り事情を聞くこととなった。
なお、無茶をした事についてコナンはしっかりと小五郎に叱られた。
「…この怒りよう。本当に大人として、コナン君を守るべき子供として認識しているような雰囲気ですね」
「…ええ。少なくとも、嫌々預かっているようには見えません。この様子ではやはり、毛利さんは何も知らない可能性が高そうですね」
小五郎の様子を見て、杉下と冠城は自分達の調査に頭の中で修正を加えた。
「それで目暮警部、爆弾の事は何か分かったの?」
「あぁ、二つの爆弾はどちらもプラスチック爆弾だった」
「そういえば、先日東洋火薬の火薬庫で盗難がありましたね」
目暮の話に、冠城が反応する。
丁度今朝、ニュースで報道されているのを思い出したのだった。
「うむ、タイミングから見て恐らく同一犯だろう」
「ラジコンの方は衝撃感知式、キャリーケースの方はタイマー式になっていました」
鑑識での調査結果を白鳥が皆に解説する。
「しかし、そのタイマーが13時16秒前に止まったってのが引っかかる…」
「故障していたのか、何らかの理由で遠隔操作で止めたのか…」
「一つよろしいですか?」
「何だね?杉下君」
「そのタイマーが止まった場所というのは、一体どの辺りなのでしょう?」
「ああ、そういえば詳しい場所を聞いていなかったな。コナン君、どこか覚えているかい?」
杉下の問いに目暮がコナンに話を振る。
コナンは携帯を操作し、皆に該当場所の地図を見せた。
「丁度この辺りだったよ。目の前に児童公園があったから良く覚えてる」
「…なるほど。丁度西多摩市に入った辺りですね」
「ここから先の米花町方向に、爆弾を捨てた空地があるという訳だな」
「そうですか。どうもありがとう」
杉下がコナンににこやかな笑みを浮かべ礼を言う。
コナンは笑みを返すが、内心穏やかでは無かった。
(畜生…まさかこの事件に特命係の二人が出張ってくるなんて…)
怪しまれている事は間違いないと踏んでいるコナンは、杉下と冠城二人の動向をなるべく注視する事を心に決めていた。
「犯人の目的は、工藤君に挑戦してきたところからするに、個人的な恨みか、高校生名探偵への挑戦、といった所なのでしょうか」
「調べました所、工藤君がこれまでに解決した事件の犯人は全員服役中でした」
「…となると犯人の家族や恋人という線も充分あるな」
白鳥の捜査結果に小五郎が自身の考えを呟く。
「今子供達の目撃証言から、犯人の似顔絵を描いている所だ」
元太、歩美、光彦が描いた似顔絵をコナンに見せる。
長髪に長いヒゲ、サングラスを被った如何にも怪しそうな人物だった。
「目暮警部、今まで工藤君が解決した事件の中でもっとも注目を集めた事件は何だったのでしょう」
杉下が目暮に問いかける。
目暮はしばしアゴに手を当て思い返し、しばらくして一つの事件を語りだした。
「…やはり、西多摩市元市長、岡本氏の事件でしょうな。
最初は市長を助手席に乗せ、彼の息子が運転する車に撥ねられて死亡した単なる交通事故だと思われていたんだが、工藤君がその事故に疑問を抱いてな。
シガーライターに付いていた指紋から、市長と息子の身代わり偽装を暴いたんだ。
この事件によって、岡本市長は失脚。彼が進めていた西多摩市の新しい街づくり計画も白紙、一から見直しとなったんだ」
「その事件なら僕も覚えています。そうでしたか、工藤君が解決した事件でしたか」
目暮の解説に杉下がなるほどといった様子で頷く。
(…本当は工藤君の事件を調べてる時に見つけてるんだけど。流石右京さん。しれっとしてるなぁ…)
本当の所を知っている冠城は、改めて杉下の巧さに内心感服していた。
「警部、まさか岡本市長の息子が…」
「可能性はある。確か彼は電子工学系の学生だったはずだ」
「調べます」
思いがけず浮かんだ容疑者の動向を調べるため、白鳥は病室から走っていった。
「他に何か覚えてる事はないか?どんな事でも良いんだ」
「「「うーん…」」」
目暮が元太達に更なる情報を求め問いかける。
必死で思い出そうとしばらく唸っていた元太達だったが、ふと歩美が記憶にあった特徴を呟く。
「…甘い匂い」
「え?」
「飛行機を渡された時に、甘い匂いがしたの」
「それって、化粧品か何かか」
「わかんない。でも…香水とは違うような…」
「ふぅむ…分かった。また何か思い出したらいつでも教えてくれ」
「「「はーい!!」」」
元気よく返事をする元太達は、今日は帰る事にするようだ。
歩美がコナンの手を握り、困った事があったらすぐ来るからと熱い眼差しを向ける。
コナンは苦笑いを浮かべ、小五郎に茶化されていた。
(なるほど、子供達とは良好な関係をコナン君は築いているようですね。ふふ…歩美ちゃんにも好かれているようですし)
小学生の恋愛模様を垣間見た杉下は微笑ましいと思っていた。
そんな事もありつつ、元太達は病室を出て行った。
「冠城君」
杉下は元太達が出ていくのを見届けつつ、小声で冠城に指示を出す。
「はい、話を聞いてきます」
「後、例のタイマーが止まったという場所に行ってみてください。何か手掛かりがあるかもしれません」
「分かりました」
手短に会話を済ませると、冠城はそのまま病室を出ていった。
「ん?冠城君、どこに行くのかね?」
「あぁ、どうやら急用が出来たとかで…しょうがないですねぇ」
目暮が冠城が出て行った事に気づくが、杉下は何でもないように返す。
しかし、一部始終を見ていたコナンは、杉下と冠城の行動を怪しんでいた。
(あの杉下って刑事…まさかこんな所までやってくるなんて。
犯人から電話が掛かってくる前に博士から聞いた話じゃあ、そもそも特命係に捜査権は無いらしい…にも関わらず色んな事件を解決していて今回も首を突っ込んできた。
警察官の使命感っていやぁそれまでだが…どちらかというと探偵みたいなタイプにも思える。
一体何者だ?)
プルルルル…
「!!」
その時、新一の携帯に着信が入る。
全員が固唾を呑んで見守る中、コナンが電話を取った。
「待てコナン、犯人からの電話だったら俺に替われ」
「うん…もしもし」
『…良く爆弾に気づいたな、褒めてやる。だがもう子供の時間は終わりだ。工藤を出せ』
犯人からの電話と確認したコナンは、代わりを名乗り出た小五郎にスピーカーモードにして渡す。
「そうだな、これからは大人の時間だ」
『誰だお前は!工藤はどうした!』
「工藤はいねぇ。この名探偵・毛利小五郎が相手になってやる!」
『毛利小五郎…なるほど。ふっふっふ、良いだろう。
よく聞け、東都環状線に五つの爆弾をしかけた』
「何!?」
『その爆弾は、午後4時を過ぎてから時速60km未満で走行した場合、そして日没までに取り除かなかった場合でも爆発する仕掛けになっている。
一つだけヒントをやろう。爆弾を仕掛けたのは『東都環状線の××の×』だ。×には漢字が一字ずつ入る。
それじゃあ頑張ってな、毛利名探偵』
爆弾魔からの皮肉めいたエールを最後に、電話は切れてしまった。
「…ただの脅しでしょう」
「…いえ、恐らく本気でしょう。これまではあくまでデモンストレーション…自分が本気であると示すため。これが、本番という事です」
「な…」
「…とにかくワシは本庁に連絡をしないと」
***
東都鉄道、総合指令室。
「爆弾ですって!?」
「あぁ、しかも時速60km未満で走行すると爆発する仕掛けになっているそうだ…!」
「ではどうすれば…!?」
運行部長で責任者の坂口が、部下の楠に指示を出す。
「すぐに全車両に通達!爆弾が見つかるまで全車両60km、いや70km以上で走行するんだ!一切止まるな!とにかく走り続けろ!」
***
一方、その頃。
「おーい!君達!」
「ん?」
「あれ?さっきの刑事さん?」
「確か、冠城刑事でしたっけ」
駅へと歩く元太達の元に、冠城が追いついてきた。
「どうしたんだ?」
「いやいや、折角だし駅まで見送ろうかと思ってね」
「別に良いのに」
「僕達だけでも帰れますけど…」
「まぁ折角だしね。そうだ!折角だし、捜査に協力してくれた御礼にコンビニで何かおじさんが買ってあげるよ」
「本当ですか!」
「やったー!」
「うな重でも良いのか!」
「う、うな重は無いと思うけど…」
元太の無茶な要求に冠城は苦笑いを浮かべるしかなかった。
***
その後、コンビニで三人にアイスを奢った冠城は近くの公園のベンチで話を聞くことにした。
ちなみに、うな重は流石に無かった。
「…コナン君?」
「あぁ、学校でどんな子なのかなって思って」
「別に普通だよな?」
「ええ、僕達少年探偵団の仲間です!」
「ま!団長は俺でコナンは平だけどな!」
「少年探偵団?」
「ええ!これまでも幾つか事件を解決してるのよ!」
「へぇ…そりゃ凄いね」
「俺達すっげーんだぜ!」
(なるほど…元太君は団長を自称してるけど、実質はコナン君がリーダーで子供達が暴走するのを抑えてる、って所かな…あれ?いやいやコナン君だって子供だし…まあ大人びてるもんなぁ)
一瞬コナンも子供であると忘れかけていた冠城であったが、彼らとコナンの関係性を内情まで把握する事ができていた。
「そうか、ありがとう色々話聞かせてくれて」
「どういたしまして」
「それじゃあそろそろ駅に…」
「…おいおい聞いたか環状線が謎の暴走してるってよ!」
アイスも食べ話に一区切りついた所で、一行は再度駅に向かおうとした時、近くを通りかかった若い男たちが話をしているのが聞こえてきた。
「ノンストップで走ってるらしいな、何かあったんじゃね?」
「こえー、乗ってなくてマジ良かった」
「環状線が暴走…?」
「何かあったのかな…」
(このタイミングで環状線がノンストップで走ってるって…事件に動きがあったのか…)
「…なんか電車だと大変そうだし、おじさん車取ってくるから送ってあげるよ」
「本当ですか!」
「ありがとう冠城刑事!」
冠城は小走りで近くに止めてあった車を取りに戻る。
(…そちらはお任せしますよ。右京さん)
第6話でした。
先日、日間総合ランキングを見ていたら見慣れたタイトルがあり、何とビックリ本小説でした。その時第88位に入っていました。
皆様のおかげです。本当にありがとうございます。夢のようです。
まだまだ拙い文章ですが、今後も頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします!
遂に中盤まで来ました。
次回はアンジャナフの天鱗が落ちて腰防具が作れた頃に更新です(嘘ですもうちょっと早く更新します
やっとMR3の餌屋でした。唸れ俺のハンマー。