名探偵コナン×相棒   作:餌屋

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8「『杉下右京』」

 

 

『やぁ新一、久しぶりだな』

「突然悪いな、父さん」

 

阿笠の勧めにより、コナンはスイスにいる自分の父親、工藤優作に杉下右京について聞くため連絡を取っていた。

 

『何だ急に。まさか、黒ずくめの奴らに関する事じゃないだろうな?』

「あー…まだそこは分からないんだけど…父さん、杉下右京警部って覚えてるか?」

『杉下右京…?あぁ、覚えてるぞ。特命係の杉下警部だな』

 

優作は古い記憶から、一度だけ話をした、それでも印象に残っている一人の刑事を思い出す。

 

『母さんと結婚する前の話だ。最初は私立探偵の私に対して良い感情を持っていなかったようだが、話していく内に気が合ってな』

「やっぱり知り合いだったのか…」

『彼がどうかしたのか?』

「実は…」

 

 

***

 

 

『なるほど、杉下警部の興味を引いてしまったか…』

 

コナンから事情を聞いた優作は、どこか納得、といった雰囲気で呟く。

 

「あの警部一体何者なんだ?もの凄い推理力だったけど…そもそも捜査権の無い窓際部署なんだろ?」

『確かに特命係には捜査権は無い。『人材の墓場』とまで言われている窓際部署だ。しかし、そもそもあの杉下警部は本来窓際に追いやられるような器では無い』

「…どういう事だよ?じゃあ何で特命係に」

 

優作の説明に疑問を漏らすコナン。

 

『単純に能力が高いというのもあるが…『杉下右京』の理念は『真実の追求』だ。

その真実の追求により、例え警察の不祥事が明るみに出ようとも構う事が無い。

そのせいで警察上層部にも疎まれていたようでな。まぁ自分自身の興味本位が始まりな事も多いようだが…』

「『真実の追及』…」

『そして遂に、ある事件での責任を問われ特命係へと追いやられる事となる。彼には一切責任が無かったにも関わらずだ』

「な…そんな理不尽な!」

『…詳細は省くが、警察の更に上の方が関わった、かなり政治色が強い事件だった』

 

優作の口から語られる、あまりにも『黒い』話にコナンは絶句してしまった。

 

『その後も彼は窓際の立場を意にも介さず『真実の追求』と『法の下に悪を正し正義を行う』事を続けている。そんな彼と、その彼と行動を共にする『相棒』だ。組織の人間の可能性は極めて低いと言えるだろう』

「…分かった。取りあえず組織の人間じゃなさそうって事は安心出来るな」

『杉下警部を味方に引き込む事が出来れば、非常に心強いだろう。だが…』

 

優作は、ここからが大事だとばかりにわざとらしく言葉を濁す。

 

「…だが?」

『彼はあくまで『法』を遵守しようとする傾向が強い。特に新一、今のお前は体格のハンデを埋めるために阿笠博士の発明品を色々使っているだろう』

「あぁ…」

『彼ならば、博士の発明品は『様々な法律に引っかかる可能性を持っている、極めてグレーと言える代物』と判断しかねない』

「…えっ、じゃあ何だよ!博士が捕まるっていうのか!?」

『落ち着け。あくまで可能性の話だ。その上で、説得する上で注意しなければならない事がある』

「なんだ?」

『彼がお前の正体に完全に辿り着いたなら、とにかく誤魔化すことはするな。出来る限り真摯に対応しろ』

「真摯に…」

『お前の事情、現在の状況、お前の想いを包み隠さず話すんだ。もし、お前の想いが通じれば彼の譲歩を引き出し…あるいは彼の協力を得る事が出来るかもしれん。それでもかなりの賭けになるだろうがな』

「…分かった。覚えておく」

 

コナンは優作のアドバイスに頷く。

 

『何かあればまた連絡しろ。場合によっては、私達も一度日本に戻る』

「…悪い。面倒かける」

『ふっ、何。可愛い息子が困っているんだ。母さんも反対する事は無いだろうさ。それじゃあな』

「あぁ」

 

優作はコナンを安心させるように笑いながら電話を切った。

 

「…どうするんじゃ、新一」

 

一部始終を側で聞いていた阿笠がコナンに問いかける。

 

「…まずは今の事件を解決する。その後は…何とかするっきゃねえだろ」

 

そう返すコナンの目は、決意に満ちていた。

 

 

***

 

 

西多摩市、市役所前。

 

 

調べ物が終わった冠城が外に出ると、丁度杉下が到着していた。

 

「お疲れ様です、それでどうでした」

「白紙になった街づくり計画ですが、当時の担当者に話を聞く事が出来ました」

「そうですか。では、街づくり計画の関係者、特にデザインや建築チームの中に『森谷帝二』の名前はありましたか」

「…既にそこまで読んでいましたか。ええ、提案チームの責任者が森谷帝二でした」

 

冠城は、流石右京といった表情で杉下の推理を肯定する。

 

「やはりそうでしたか。これで一つ、繋がりました」

「新一君と、森谷教授ですね?」

「ええ。森谷教授の手掛けた計画を、事件を解決した工藤君が意図しない形ではありますが潰してしまっている…」

「恨んでいてもおかしくはないか。でも何故気づいたんです?」

「児童公園の街灯ですよ」

「街灯?あのガス灯みたいなやつですか?」

「ええ。森谷教授の設計信条は、『イギリス古典建築の様式を取り入れる、左右対称『シンメトリー』こそ至高である』という物です。ロンドンのガス灯に似ているという話を聞き、もしやと思いましたが大当たりでした」

 

プルルルル…

 

推理を話す杉下の携帯が鳴る。

相手は青木だった。

 

「丁度良いタイミングですね…はい、杉下です」

『青木です。ご要望の調べ物、終わりましたのでご報告を。感謝してくださいよ~、片手間でこんな早くに調べ上げるなんて僕以外に出来る人間は中々…』

「流石青木君ですねぇ、素晴らしい。それでどうでしたか」

『黒川邸、水島邸、安田邸、阿久津邸、四軒とも設計者は森谷帝二という有名な建築家が30代の頃に手掛けた物でした』

「やはりそうでしたか」

『では僕はこれで。今から僕は環状線で見つかった爆弾の場所周辺の防犯カメラを調べなければならないので…』

「おや、爆弾は見つかりましたか」

『ええ。それはもう迅速に』

「ちなみに、爆弾はどこに仕掛けられていたのでしょう」

『どこって…周りが住宅街の適当な場所ばかりでしたよ…あ、いや一つだけ橋で見つかっていますね』

「橋?…もしや、隅田運河の橋ですか?」

『ええ、そうですが…それが何か?』

「そうですか…いえ、良く分かりました。どうもありがとう」

『では』

 

最後まで慇懃無礼な態度で杉下に報告した青木。

電話を終えた杉下は、自身の推理が更に進展した事に内心喜びを覚えていた。

 

「どうでした?」

「はい。伊丹さん達が追っていた連続放火事件で被害にあった四軒のお宅ですが、全て森谷教授の設計でした」

「森谷教授の!?」

「また、環状線の爆弾についてですが一つだけ、隅田運河の石橋に設置されていた事が分かりました」

「隅田運河の…あれ、石橋なんですか?」

「ええ。あれは昭和58年に完成したもので、鉄橋ではなく珍しい英国風の石造りの橋という事もあり当時かなりの話題になったんです。そして、この橋の設計者は森谷教授です」

 

冠城は森谷に次々と繋がっていく要素に目を丸くする。

 

「あれもこれも、狙われたのは全部森谷教授の作品?…でも街灯だけはわざわざタイマーを止めて被害を受けないようにしている。右京さんこれってどういう…」

「…考えられる可能性は幾つかありますが、あくまで僕の推測でしかありません。ここから先は実際に森谷教授にお会いしてみるのが一番かも知れませんねぇ」

「行ってみますか、森谷邸」

 

 

***

 

 

森谷邸への道中、冠城の車の中。

 

冠城は、少年探偵団から聞いた話を杉下にも話していた。

 

「まぁそんな感じで、コナン君は実質的に子供達のリーダーになっているようですね」

「なるほど…子供の好奇心というのは時に極めて危険な場合があります。その辺りコナン君は上手く調整しようとしているのでしょう」

「ホント、コナン君って異様に大人びてますよね」

「ええ。黒川邸での事件の際も人が死んでいる姿を見て取り乱す事も無く、自然に現場の観察を行っていたのを僕は見ました。あれは一朝一夕で身につくものではありません。まるで以前から探偵を続けているかのような…」

 

 

 

 

 

(…以前から、探偵?)

 

 

その瞬間、杉下の頭の中でこれまで調べてきたコナンについての手掛かりが、パズルのピースのように次々とはまり始めた。

 

 

 

 

コナン君の戸籍類についてですが…存在しませんでした。戸籍も住民票も無しです

 

パスポートの有無を調べてみたんですが…

…ありませんでしたか

…ええ。一体どういう事なんでしょう。まさか、無戸籍児とか?

 

工藤君と毛利さんの活躍の時期は綺麗に入れ替わっています

 

コナン君を預かるようになってから毛利さんの推理力が上がった?

 

あぁ、工藤君の遠縁の親戚と聞いておるよ?お互い推理小説好きで、仲が良いらしい

 

なんか、事件の調査でずっとあちこち飛び回ってるらしいですよ?学校も休んでいて、蘭ちゃんもろくに会っていないとか

 

阿笠さんの技術力は素晴らしいものです。しかし、その技術力をただの子供に惜しみなく与えるでしょうか…

 

彼の立場と現状には非常にギャップが存在しています

 

普通、爆弾を持って被害を防ぐために走り回るなど、大人にも出来ませんよ

 

ホント、コナン君って異様に大人びてますよね

 

まるで以前から探偵を続けているかのような…

 

 

 

 

そして、ある『可能性』に行きついた杉下は、大きく身震いをする。

 

 

「…右京さん?どうかされました?」

 

様子がおかしい事に気づいた冠城が、杉下に声をかける。

 

「…いえ。少し、考えに耽ってしまいました」

 

(…今回の事件、『工藤君の代わりにコナン君が動いた』のでは無く、『コナン君が率先して動いた』としたら…まさか…そんな事が現実にあり得るのでしょうか…にわかには信じがたいですが…

 

もし、そうだとしたら彼は…)

 

 

 

「『江戸川コナン』、ですか…」

 

 

 




第8話でした。

ちょっと短いですが、キリが良いのでここで。

また日刊ランキング入りしていました!
お昼時点で第70位、皆様のお陰です!ありがとうございます!


次回は森谷帝二がやっと本小説に登場します。
当初は序盤で杉下と冠城もパーティーに参加させてそこで対面させるつもりだったのですが…参加させる理由が思いつかなかった。お待たせ森谷。



今回、当小説の早すぎる最大の山場、優作とコナンの会話シーンを遂に書きました。

この結果、果たしてコナンと杉下がどのような会話をするのか、お楽しみにして頂ければと思います。




それではまた次回。


前回宣伝を忘れていたので。

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