※8/29、誤字修正。報告ありがとうございます。
コナンの病室。
「…なるほど。あの橋は森谷教授の設計だったのか」
白鳥が一同に、爆弾が設置されていた隅田運河の橋が森谷帝二の設計であることを説明していた。
と、その時病室のドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
「失礼しますよ、目暮警部」
了承を得て入ってきたのは、伊丹、芹沢、出雲達だった。
「おや?どうしたのかね三人とも」
「いやね、ここに杉下警部がいるんじゃないかと思いまして…ちっ、もうどっか行きやがったか」
「警部殿、彼らは…?」
見慣れない顔の刑事達について、小五郎が目暮へ紹介を求める。
「あぁ、そういえば毛利君達は初めて会うのかな。ワシとは違う班だが同じ捜査一課の刑事だよ」
「毛利先輩ですね。初めまして、警視庁捜査一課の伊丹です」
「芹沢です。お噂はかねがね」
「出雲です」
「一課の所属だったか。毛利だ、よろしく頼む」
小五郎はそう言って三人と軽く握手を交わす。
それを見届けた目暮は三人が何故杉下を探しているのかが気になっていた。
「ところで、何故杉下君を?放火事件の方は良いのかね?」
「…実は、杉下警部がサイバーの青木に放火事件の情報を調べさせていた事が分かりまして」
「何?一体何を知りたがっていたのかね」
「放火事件が起きた四軒の設計者についてですよ。しかも連続爆破事件と関係している可能性が出てきたとか言っていたそうでね」
「何だって!?それで、設計者の名前は?」
「『森谷帝二』って建築家です。知ってますか?」
「何!?放火された四軒も森谷教授の設計だったのか!」
思わぬ情報に目暮が驚きの声をあげる。
「ええ。全て、丁度30代の頃に手掛けた物だそうです」
「ふむ…これは偶然とは思えませんな…」
「ひょっとして、環状線の爆弾も本当の狙いはあの橋だったりして」
一部始終をベッドで聞いていたコナンは、自らの推理をそれとなく一同に話す。
「あの橋ぃ?」
「あり得るな。犯人は連続放火事件と同一犯で、森谷教授の設計した物を狙っているのかもしれん」
伊丹は、突然会話に入ってきたコナンを訝し気な目で睨む。
「…この子供は?」
「え、伊丹さん知らないんですか?江戸川コナン君!」
「コナン?」
「細かい事に良く気づいて事件解決にも何度か貢献した事があるって、目暮班の佐藤さんや高木さんとか良く話題にされてましたよ」
「細かい事ねぇ…なんか、警部殿に似てるな」
「アハハハ…」
伊丹はコナンに対する目暮班の評価に、杉下と重なる所があるように思えてしまった。
一方、小五郎は何かに気づいたように手を叩く。
「あ、そうか!分かりましたよ警部殿!犯人は森谷教授に恨みを持つ者か、教授の成功を妬んでいる奴の仕業です!」
「俺も同感です。一連の放火事件は手製の発火装置が使われていました。確かに、爆弾犯と共通する物があるかと」
小五郎の推理に伊丹が同意を示す。
「よし、森谷教授に話を聞きに行くとしよう!」
「目暮警部、我々も同行させてください。この調子じゃ杉下警部も森谷教授の所に行ってそうですし」
「構わんよ。一緒に行こう。毛利君、道案内を頼むぞ!」
「はて…どこにあったっけ」
「おじさん!僕、道覚えてる!案内するよ!」
森谷邸の場所を全く覚えていなさそうな小五郎に、コナンが同行を申し出る。
「何言ってる!お前はまだ…」
「もう治っちゃったよ!早く早く!」
「お、おいコラ!」
ハンガーにかけていた上着を掴んで走って出ていくコナン。
(もし杉下警部も向かっているなら…俺も行くっきゃねえだろ!)
***
一方、森谷邸前。
「はぁ~、これはまたでっかいお宅ですねぇ」
杉下と冠城は、森谷邸の前まで到着していた。
「イギリス17世紀スチュアート朝時代の物ですねぇ。左右対称シンメトリーにもなっている。美しいですねぇ」
「そんなにシンメトリーにこだわっているんですか?」
「ええ。以前雑誌のインタビュー記事でも『今の若い建築家は美意識に欠けている。もっと自分の作品に責任を持たなくてはならない』と仰っていたのを読んだことがあります。彼にとって『イギリス古典建築の様式を取り入れる、左右対称『シンメトリー』こそ至高である』という信条は、それだけ大切な物なのでしょう」
杉下が森谷の解説しながら、呼び鈴を押す。
しばらくして、森谷帝二が家から現れた。
「…どうされましたかな、こんな夜遅くに」
「突然押しかけて申し訳ありません。私、警視庁特命係の杉下と申します」
「同じく冠城です」
「警察の…?一体どのようなご用件ですかな?」
突然やってきた警察に戸惑った様子を見せる森谷に、杉下が事の次第を説明する。
「…実は、本日発生した爆弾事件と、ここ最近頻発している連続放火事件で狙われた物が、全て森谷教授の設計されていた物だという事が判明しまして」
「ほう。私の設計した物が」
「いつ、次の事件が起きるか分かりません。それまでに是非、森谷教授からお話をお聞きしたくこうしてやって来た訳なんですよ」
「なるほど…分かりました。そういう事でしたらどうぞ、お入りください」
***
二人は森谷に案内されて、家の中を歩いていた。
「しかし、素晴らしいお宅ですね」
「ふふ、ありがとうございます」
「実は僕、森谷教授の大ファンでして」
森谷のファンだと言う杉下に、森谷が驚いた顔を見せる。
「ほう、それは有難い話ですな」
「実は以前スコットランドヤードに研修に行った際、イギリスロンドンの古風な雰囲気に魅了されまして…それからというものの、森谷教授の古典建築様式を取り入れた作品を目にする度に、一度お会いしてみたい、そう思っていたのですよ」
「それはそれは…」
「この人、お邪魔する前からずっと楽しみにしていたんですよ。『森谷教授にお会いできるなんて夢のようだ』って」
杉下の突然の発言に何かを察した冠城が、それとなくアシストをする。
「よろしければ、これまでの作品のお写真などを見せて頂く事は出来ませんかねぇ」
「…まぁ良いでしょう。そこまで私の建築を気に入ってくださっている方も久しぶりだ。普段はお見せしないんですが先にギャラリーをご案内しましょう」
杉下の賞賛に気をよくした様子の森谷は、近くの大扉を開き招き入れる。
明かりをつけると、そこは壁沿いに写真額が飾られたギャラリーになっていた。
杉下は大きなビルの写真と同じ並びの中に、問題の隅田運河の石橋や、放火された四軒がある事を確認する。
「なるほど、どれも素晴らしい建築ですねぇ」
「いえいえ…その辺りは若い頃の作品でね。あの頃はまだまだ未熟だった…お恥ずかしい」
「とんでもない!ご謙遜を」
(なるほど…未熟な頃の作品ですか…おや?この黒川邸の外観…)
杉下は写真を見ていてある事に気づく。
「ん?どうされましたかな?」
「…あぁ、いえいえ。見覚えのあるお宅があったもので」
「黒川さんのお宅ですかな?そういえば、火事になったとニュースで見ましたな」
「ええ。こちらのお宅も放火事件の被害に遭われているんですよ」
「そうでしたか…黒川さんも殺されたと聞きましたし、不幸事というのは続くのですなぁ」
「残念な事ですねぇ…」
(…他の三軒も、石橋も、今になって気づきました。なるほど、これが動機ですか…)
ピンポーン
「おや?また誰か来られたようですな。ちょっと失礼」
呼び鈴に反応した森谷が、再度表へ出ていく。
「…もしかして、目暮警部達ですかね」
「あり得ますね。青木君辺りから、情報が届いたのでしょう」
(…そして恐らく『彼』もそれによってここへ辿り着いた…)
しばらくして、森谷が目暮達一行を連れて戻ってきた。
「あ~!やっぱりいた!」
「やっと見つけましたよ杉下警部…!」
「もぉ、探したんですよ…?」
「おやおや、伊丹さん達まで。お疲れ様です」
「お疲れ様です、じゃありませんよ!ったくいつもいつも勝手に!」
「…こんな大勢でいらっしゃるとは。皆さん事件の事ですかな?」
総勢9名の来訪者に目を丸くする森谷。
「大勢で押しかけてしまい申し訳ありませんねぇ。皆さん、違う班なのですがどうしても森谷教授にお話をお伺いしたくなったようでして…」
一同を勝手に代表して謝罪する杉下。
その後ろで伊丹達が背中に白い眼を向けている事に杉下は気づいていたが、あえて無視する事にした。
「しょうがありませんね。緊急事態のようですし…皆さん広間へどうぞ」
森谷は先に部屋を出て一同を案内する。
その後を付いていく中、杉下はコナンの姿を見つめていた。
(やはり来ましたかコナン君…)
***
「それでどうでしょう、お心当たりはありませんか」
「ふぅん…そうですな…」
広間に集まった一同は、森谷に自身が狙われる心当たりが無いか訪ねた。
森谷はマッチでパイプに火をつけふかしながら、何かあったか思い出そうとする。
辺りを見回していたコナンは、暖炉の上に飾られている家族写真に気づいた。
「それは私が10歳の時の写真だよ、コナン君。一緒に写っているのは両親だ」
以前のパーティーでコナンと面識のあった森谷が話しかける。
「へぇ、森谷教授のお父さんって随分立派な方なんだね!」
「世界的に有名な建築家だったんだよ。主にイギリスで活動されていてね。僕は好きだったなぁ、あの人の建築は…」
側にいた白鳥が、コナンに解説する。
「…亡くなられたのは確か」
「今から15年前、別荘が火事になって母と一緒に。この屋敷はその時遺産として引き継いだものでしてね」
「…その頃からでしたよね?あなたの建築が急に脚光を浴びるようになったのは」
白鳥が何か怪しむかのように森谷を見つめる。
その横で話を聞いていた小五郎が、白鳥を怪しんだ目で見つめていた。
「え、ま、まぁ…」
(…あれ、この匂い?まさか…)
(この匂い…なるほど、あれはそういう事ですか)
突然香ってきた匂いに気づいたコナンと杉下には、それぞれ思い当たる節があった。
コナンは一同に気づかれないようこっそりと部屋を出ていく。
(確かめるっきゃねえな…ギャラリーに行ってみるか!)
***
しばらくして。
「う~む…やはり心当たりはありませんなぁ…」
「そうですか…」
ひとしきり目暮からの質問に答えつつ心当たりを思い出していた森谷だったが、結局何も思いつく事はなかった。
「お役に立てず申し訳ありません」
「いえいえ。それでは何か気づかれた事があればご連絡ください…おや?コナン君はどうした」
これ以上の情報は今日は望めそうに無いと判断した目暮は立ち上がるが、ふと周りにコナンの姿が無くなっている事に気づいた。
プルルルル…
するとそこに電話の着信音が鳴る。
発信源は杉下の携帯だった。
「僕の携帯のようですね…おや?見慣れない番号ですねぇ」
覚えのない番号に杉下は少し身構えながら電話を取る。
「もしもし…」
『杉下警部ですか、初めまして工藤新一です』
「っ!…工藤君ですか。こうして連絡をかけてきてくださるとは…ありがとうございます」
電話の相手が新一と分かった一同は驚きの顔を見せる。
『事情はコナン君から聞いています。単刀直入にお伺いします。杉下警部、あなたは今回の事件どこまで辿り着いていらっしゃいますか』
「恐らく…『君』と同じ所までですね。しかし…」
『証拠が無い、ですよね?』
「ええ。『君』はどうなのですか?」
『…いえ、実はどうしてもそれだけが見つけられませんでした。そこでですが、一つ『賭け』をしようと思っています』
「ほぅ」
『もし『彼』が、僕の『賭け』に引っかかってくれるなら…恐らく証拠はクリア出来るかと』
「なるほど…そういう事ですか。分かりました、良いでしょう」
『ありがとうございます。『賭け』についてはコナン君に任せていますのでご安心を』
「分かりました」
『では、皆さんをギャラリーへお連れしてください。そこからは…
『二人』でこの事件の真実を、解き明かすとしましょう』
「ふふ…了解しました」
第9話でした。
やっと…やっとここまで辿り着いた…!
第1話投稿から約2週間…!
企画開始から考えたらもっと!!!
遂に次回杉下とコナンの合同推理ショーです!!!!!
これが書きたかったんや!!!!!!!!!!
次回は珍しく明日19時更新です。
よろしくお願いいたします。
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