僕がイイ感じの野望を桔梗チャンに聞かせていたら、ドアをノックをされた。返事をしようと口を開いたその時に、ドアがスライドされた。
……激おこだよ。ぷんぷんしても、良いカナ?
「突然ごめんなさいね。ネビルのヒキガエル、見なかったかしら?」
ぷんぷん、知らない人に話す際には自分の所属を名乗るのが礼儀だよ! ヒバリチャンでもできるのに、なんでこの子はできないんだろう!
この子はネビル君なの? それともネビル君の影武者的な代理人? 誰だかわかんない人に情報なんて教えられないよ! 信頼できないしね!
僕だってまともなことは言うんだよ。そう言ったら、綱吉君に「え、嘘だろ」みたいな顔をされたけどね。
さて、礼儀知らずの女の子になんて答えようカナ。ヒキガエルなんて探そうと思えば探せるけど、見ず知らずの人にそんなイイコトできないよね。
興味ないから、桔梗チャンに任せよーっと!
カバンの中からマシマロの袋を取り出して、頬張る。真っ白マシマロ、穢れのない純白! マシマロ、どうして君はマシマロなの?
君が人間だったら……うん、食べられないや。ぶっちゃけどうでも良かった。
一人で漫才しているうちに、桔梗チャンが追い払ってくれたようだ。訪問者にこりごりなのか、イイ笑顔で桔梗チャンが言った。
「人払いの魔法があったら直ぐにかけているのですが」
「あるんじゃないカナ? それに、なかったら作れば良いじゃない」
使い勝手のいい魔法なんていくらでも作れるさ! 現代のアイディアのある僕達は、想像力においてはこの時代の人達にも負けないよ!
僕の提案に桔梗チャンは感銘を受けたらしい。「流石です、白蘭様」と言って、早速教科書を読み漁っていた。
……それだけ突撃訪問者が嫌いなんだね。
桔梗チャンは自分の作業に手一杯だし、これ以上は話さないでおこうカナ。桔梗チャンがもし人払いの魔法を作ったら、それで僕達は平穏に過ごせそうだよ。
今後の期待の為に、しばらく無言の時間を耐えてみよう。耐えられるかわかんないけどね。
あ~あ。こんな時に正チャンがいたら、何より楽しめたのに!
***
無心にマシマロを頬張り続けてどれほどの時間が経ったカナ。何も考えずにただ機械的な動きでマシマロを手に取っていた僕の意識は突然覚醒した。
どうやら眠りながらマシマロを食べていたらしい……ビックリ!
床にはマシマロの袋が散乱している。この状態からして、僕はかなりのマシマロを無意識に胃の中に収めたみたい。
だけどまだ物足りない。ご飯、じゃなくてデザートが食べたい。入学式とか早く終わらないカナ? 日本はかなり長いことで有名だけど、ここはどうだろう?
それにしても、夜に行う入学式も中々ないと思うんだ。
「御目覚めになられましたか」
起こすつもりのなかったらしい桔梗チャンが杖を片手にそんなことを言った。って、なんで杖持ってるの?
僕の視線が杖に注がれているのに気付いたみたい。桔梗チャンは軽く杖を振って得意気に笑った。
「人払いの魔法を使っていました。元からあるようですが、それを使うのは癪でしたので再構成しました」
ふむふむ。要するに、桔梗チャンは優秀だということだね! 一年生にもなってないのに、もう魔法を作っちゃってる!
僕も嬉しいなぁ、鼻が高いよ。嬉しかったのでマシマロを一個贈呈したら桔梗チャンも嬉しそうに頬張っていた。
桔梗チャンもマシマロ好きなのカナ?
僕がそう思っていたら、桔梗チャンはドアをスライドさせて開き、僕の方を振り返った。
「白蘭様……実は、汽車は既に停車しています。他の者達は既に降りていますが……如何しましょうか」
「そうなの? アハハ、まだ着替えてもないや」
桔梗チャンも着替えてない……着替えてる! 僕が眠っている間に着替えたのカナ?
あまり好きではないけど、制服だから着ないとダメだよね。制服なんて生徒たちの連帯感を自覚させるために身に着けるように命じているようなものだよね。だから僕はあまり好きじゃない。
ローブなんてデザインが古すぎるよね。そんな後進的な服を制服だとは僕は認めないよ!
制服ってね、肩から羽織っても決して落ちない服や、炎を受けても破れない服のことを言うんだよ!
何だか制服談義になっちゃってるね。
着替えよっと……いつか、ヒバリチャンに制服を改造してもらうんだ! そもそもヒバリチャンがいるかわかんないけどね!
さて、いやーな制服を身に着けた僕は傍から見ても怪しい人間。つまり、魔法使い(笑)のことだよ。自分でも認めたくないけど、魔法が使えるから仕方ないんだよ。
普段着はカバンに突っ込む……突っ込もうとしたら桔梗チャンに強奪された。綺麗に畳まれて、そっとカバンに入れていた。
……うん、何も言わないでおくよ。
桔梗チャンはそのまま僕の散らかした袋を一つの袋に纏めていた。どうするんだろうと見守っていると、桔梗チャンはコンパートメントの隅に放置していた。
自分で捨てないんだね。いいよ、それでいいと思うよ……だけど、何か違うような……んー? 気のせいカナ。
「白蘭様」
「んー。行こっか」
「ハッ」
桔梗チャンと共に汽車を降りれば、早速駅長らしき人に見つかっちゃった。こっちを見て目を擦ってまたもう一度見ているのが凄く面白い。
人を驚かせるのって、これだから快感があるんだよね。
信じられないと言いたげに眉を上げた駅長は慌ててこっちに駆け寄ってきた。
「ホグワーツの学生ですか!?」
「はーい!」
返事は大切だよね。元気よく返せば、桔梗チャンが微笑ましそうに僕を見ていた。
その視線はやめてよ。背中に湿疹ができそうだよ!
「い、急いでホグワーツに向かわなければ……! えー、今から先生に連絡を入れるので、絶対に! いいですか、絶対にここから動かないでくださいよ!」
唾を飛ばしながら言いたいことを言い終えた駅長はそのまま走り去った。彼に言われたことに従う謂れはないんだよねぇ……だけどここで動いたら僕は怒られるカナ?
怒られるのはやだ。正座させられてガミガミ言われるのは退屈なんだ。正チャンみたいに言いたいこと言って終わらせるのは良いよ。ぼけーっとすればいいからね。だけど、ユニチャンみたいな優しい子に諭すように叱られたら泣きたくなっちゃうよ。
桔梗チャンは僕が動かない限り動くつもりはないみたいだ。こちらを伺っている。
「如何しますか? この場所を離れるのは得策ではありません。教員側から何らかの罰が下る可能性があります」
「じゃあ、待つ。トイレ掃除なんてやだよー」
学校で罰を下されるとしたらトイレ掃除なのがセオリーだってどこかで聞いたことがある。誰が言っていたか思い出せないなぁ……うん、わかんないからXANXUS君と言うことにしておこう。
トイレ掃除を頑張るXANXUS君……シュールだなぁ。よし、待ち時間はXANXUS君が便器を磨いている光景を脳内で思い浮かべることで過ごすことにしよう。
***
「なんてこった! まさかイッチ年生が置いてけぼりをくらうなんて! すまねぇなぁ、心細かっただろう」
ゴシゴシ……XANXUS君は便器をせっせと磨く。だけど、教師の綱吉君は便器を指して「ここ、何だか汚いよ」と言う。XANXUS君が指摘を受けるのはこれで10回目。彼是10時間ほど頑張ったXANXUS君だけど、もうスタミナ的に限界。
XANXUS君は絶望に顔を染めて叫んだ……「もう散々だ」と。だけどそこで許すほど綱吉君はトイレ掃除において甘くはない。絶望的な台詞をホイホイ放り込む綱吉君。そんな彼のとっておきの言葉は「10月10日、お前の誕生日だろ? トイレを数字に直してみろ、1010だ。つまり、トイレとお前は会うべくして会ったんだ」という……
「お前さん、寂しすぎて意識がぶっ飛んどるのか!? バタービール買ってくるからな! ちょっと待っとれ!」
もう、うるさいな。折角いい所まで来たのに。
ぷんぷんしながら顔を上げれば、こちらに背を向けて走る大男がいた。ワォ、大きい……あ、ヒバリチャンの真似をしちゃった。まあいいか。今はいないし。
さっき僕にやたら話しかけていた人はあの多きいい男の人かな。でも、背を向けてどっか行っちゃったけど。
「白蘭様。先程の教員が"迎え"のようです」
桔梗チャンが背中しか見えない大男を手で示した。
それはわかるけど、僕達をどこに置いてどこに行くんだろうね。桔梗チャンに聞いてみれば、困ったように僕を見た。何かを言いたげな顔をしているので話を聞いてみた。
「彼は白蘭様に頻りに話しかけていたのですが、白蘭様が反応しなかったので放心状態だと勘違いをしたようです」
桔梗チャンが言うには、僕がXANXUS君がトイレ掃除をしている光景を思い浮かべておもしろーと思っている間、彼はずっと僕に話しかけていたらしい。だけど僕が何にも返さないから心配になって何かを買いに行ったようだ。
何を買いに行ったんだろう。
しばらく待っていたら、彼が戻ってきた。正面から見ると背中を見るのとはまた違った感じだ。もじゃもじゃしているけど、気にならないのかな? チクチクしていそうだけど。
どすん!みたいな音を立ててそうなくらい大きい。失礼だと思うけど、この人は人間なのカナー?
「ほれ、バタービールだ。美味いぞ」
「ありがとーございまーす」
「ほれ、お前さんも」
「ありがとうございます」
バタービールと言われる飲み物を受け取った。バターが入ってるのかなー? ジョッキを手に桔梗チャンをじっと見つめる。
桔梗チャンは先に飲んで、僅かに目を見開いた。驚いているけど、どうしたんだろう?
「白蘭様がお好きになりそうな味ですね」
「そうなの?」
頷く桔梗チャンは意味あり気に僕を見て頷いた。毒は入ってないみたいだ……この大きな人が僕達に薬を投与する意味なんてないと思うけど、桔梗チャンは慎重だからなー。
教員が生徒に毒を飲ませたって広まったら、フツーに辞職だよねー?
そんなことを考える人ってかなーり考えなしだよね。まあ、そういう考えを突いて毒を仕込むこともあり得るケド。
ぐいっとジョッキを傾ければ、不思議な甘さが喉を通る。バタービールって聞いたからバター味のビールを創造していたけど、そんなことはないみたいだ。
桔梗チャンの言う通り、好きになりそうだな。甘いモノは正義!
「美味しい~ありがとーございます♪」
「おう! 良かった良かった、何も反応しねぇから心配しとったんだ! それ飲んだらホグワーツに向かうぞ」
「はーい」
あぅ! 頭をぐりぐり撫でられた……痛い。力が強すぎるよ、頭が潰れるところだったじゃないか! 桔梗チャン、微笑ましそうに見てないで僕を助けてよー。
ぶーぶー。
***
「遅かったですね、ハグリッド。組み分けの儀式は既に終わっていますよ」
眼鏡をかけたいかにも厳しそうな先生がハグリッド先生を咎めるような目で見つめていた。ちなみにハグリッド先生とはさっき自己紹介し合ったよ!
実は僕達はもうホグワーツにいたりする。
あれから僕達は細い道を歩いたり、ボートに乗ったり、トンネルを抜けたりしてホグワーツに着いたんだよ。どうしてこんな遠回りをするのかいまいちわかんなかったけど、ハグリッド先生のドヤ顔を見て察したよ。
新一年生にホグワーツの外観を見せたかったんじゃないかなって。
ホグワーツは大きな城で、お金をかけたんだなって直ぐにわかった建造物だった。歴史を感じさせる造りは嫌いじゃないよ。
素直に声を上げてはしゃいでいたらハグリッド先生がホグワーツの自慢をしていたからね。嫌でもわかっちゃうよ。
愛校心のある人って嫌いじゃないよ。ヒバリチャンを思い出すからね。
「す、すいませんでしたマクゴナガル先生」
鋭い視線にハグリッド先生は大きい体を縮こまらせた。物理的に強いのはハグリッド先生の方だろうに、あの女性の先生に遜るということは……つまり、彼女の方が強いんだね!
ふふぅん……こうして見ていると、彼女は確かに強そうだ。意志の強い瞳は自分より大きいハグリッド先生を臆することなく射抜いている。
でも、僕の方が物理的に強いよ!
じっと彼女を見つめていると、目が合った。
「一体何をしていたら列車から降りるのが遅くなったのですか?」
あわわ、今度は僕を責めてきた! えっと、素直に答えちゃおうかな。マシマロ食べていたら眠っていて、起きたら既に着いていたって。
でも怒られそうだ。どうしよう。怒られるのやだ。怒られるのは嫌だけど、嘘だとバレたらさらに怒られちゃう。ここは……正直に言っちゃおう!
「寝ながらマシマロ食べてて、起きたら皆がいなくなってました」
あう! ギロッて音が付きそうなほど睨まれた。初日から怒られるのー? 確かに寝たのは僕が悪かったけど、だからといってトイレ掃除はやだよー!
女性、確かマクゴナガル先生が僕に何かを言おうとしたとき。桔梗チャンが僕を庇うように前に出た。
「この御方は普段なら人の気配がある中では眠れません。しかし、私が人払いの魔法をかけて人の気配を遠ざけていたので、家の中だと誤認してしまったのかもしれません。咎めるは、その環境を作りだした私にお願いします」
「人払いの魔法? まだ入学してもない貴方が、それをかけたと?」
マクゴナガル先生は信じられないようだ。有り得ないと首を横に振っている。ハグリッド先生も後ろで「なんてこった!」と驚愕している。
桔梗チャンは信じてもらえないことを悟ったみたいだ。杖を取り出して、早速自分の作った魔法をかけた。桔梗チャンが杖を向けた先はすぐ下の地面。
桔梗チャンのかけた魔法の効果は絶大だった。
なんと! 扉の向こう側の気配が何一つ感じられないんだ。魔法って凄い! この空間以外の人の気配が全く感じられないや。桔梗チャン、ちゃっかり魔法使いになってるじゃないか。
マクゴナガル先生も僕と同じように驚いていた。ずれたメガネを何度も直している。
「なんということでしょう……地面に魔法を放っただけで辺りの気配が全て消えるのですか……? これは今までの魔法にはない、つまり貴方が作ったんですね?」
「はい」
「貴方が優秀なのはわかりました。しかし規則は規則です……入学してもない貴方達に適用できるかは会議をする必要がありますが。ハグリッド、ダンブルドアに伝言をお願いします。"残りの生徒二名が来たので、組み分けを再開します"と」
「へい」
ハグリッド先生は、ダンブルドアという人に伝言を伝えるためにどこかへ行った。目の前に扉があるのに行かないということは、別の入り口があるのかな?
これだけ広いと入り口が10以上あっても疑問に思わないよね! 探検したいなぁ……裏口とか、秘密の通路とかありそうだよね。
わくわく♪
「マクゴナガル先生……でしたか? 人払いの魔法は解除しますね」
「ええ、お願いします。中が静かになったら入りますよ」
あ、そういえばまだ人払いの魔法をかけていたんだっけ。律儀に確認を取る桔梗チャンは偉いなぁ……マクゴナガル先生も丁寧な桔梗チャンに好印象持ってるみたいだしね!
偉い偉い! 後でマシマロを一個贈呈しよう。
許可をもらった桔梗チャンは杖をぴょいと振った。すると、あれだけ静かだったこの空間が一気に騒がしくなった。それだけこの扉の先が騒がしいということがわかると思う。
笑い声、話し声……色々な声が耳に入る。扉を開いたらもっと騒がしくなるんだろうね。騒がしいのは嫌いじゃないけど、知らない人に騒がれると鬱陶しいよね。
僕はだーい好きな人達と騒ぐのがだーい好き!だから、嫌いな人とか知らない人と一緒にいたらぷんぷんしちゃう。ぷんぷんしたらどうするって?
勿論、白龍を転がすの♪
ころころ転がった白龍は炎を噴き出しながら、この城を一瞬で炎で包んじゃうカモ! でも、魔法使いなら直ぐに直せるよね!
んふふ~♪ 早くしないと、甘いモノ欠乏症で暴れちゃうよ~!
解説
ヒバリチャン(雲雀恭弥)
愛校心の強い、ボンゴレファミリーの雲の守護者。口癖は「ワォ」と「咬み殺す」
白龍
前世の白蘭の匣兵器。白い龍。
白龍転がし→詳細不明。白龍を転がす遊びらしい。