ハリー・ポッターと千の花   作:柊山節

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組み分けは予想通り

「中が静まりましたね。それでは、行きましょう」

 

 

 僕がこっそりと杖を出した時、マクゴナガル先生が僕達に声をかけてきた。僕の手の動きに気付いたわけではないようだ。

 

 惜しい、あと30秒遅かったら白龍を転がしてるのに! 

 

 だけどそれ以上に組み分け儀式が楽しみだから今回は許してあげよう。僕ってなんて心が広いんだろう。桔梗チャンもそう思うよね!

 

 

 扉を開け放ったマクゴナガル先生は、僕達を一度だけ振り返ってから歩き始めた。僕達も彼女に続いて大広間に足を踏み出す。

 

 視線、視線、視線。

 

 みーんなが僕達を見てる。視線で殺せるなら、僕は今頃死んでいるよ。まあ、それだけで死んじゃうほど僕は弱々しくないケド♪

 

 

 大広間の天井は夜空を映していた。何かの映像かと思っちゃうくらい精巧にできている。だけど僕の目はごまかせないよ。あれは天井だよ、空じゃあない。

 

 夜空って聞いたら僕に酷いことした人達を思い出しちゃう。でも、過ぎたことだし今更ぷんぷんすることはない。僕は大人なんだよ。

 

 宙にロウソクが浮いているなんて危ないよね。だけどそこも何とかなるのが魔法クオリティ。重力なんて目でもないと言いたげに重力に逆らっている。重力といえば綱吉君のお友達にいたね、使い手が。

 

 

「名前を呼ばれたら、椅子に掛けなさい。私が組み分け帽子を乗せます――カーティス・フロイス!」

 

 

 あ、桔梗チャンの名前が呼ばれたよ。僕はあまり何とも思わなかったんだけど、桔梗チャンは半純血なんだって。カーティス家は非魔法族……マグルらしいけど、母親が魔女だったんだっけ?

 

 本人もどうでも良さそうだったから余りわかんないんだよね。

 

 名前を呼ばれた桔梗チャンは椅子に腰を下ろした。緊張なんて一切していない顔をした桔梗チャンの頭の上に帽子が乗っかった。帽子が中々大きいのか、桔梗チャンの顔が半分くらい隠れた。

 

 

 ……何も変化がない。

 

 直ぐに決まらないものなのカナ? 桔梗チャンの口元は動いていないし、特別変わったことはないけど……そもそもどうやって組み分けしているんだろう。

 

 はーやくしてくれないかなー。

 

 

「……スリザリン!!」

 

 

 わぁ! 帽子が叫んだよ! 見た? 見ちゃった?

 

 魔法使いの帽子って絶叫するんだね! 今日は凄いことを学んだ気がするよ。魔法使いの帽子は喋るんだ。これでぼっちでも寂しくないね。

 

 ヒバリチャンにとても優しい世界だね!

 

 桔梗チャンは僅かに頭を下げて僕に礼をした後、スリザリン生が集まっている席に向かった。桔梗チャンはスリザリンかぁ……意外じゃないけど、レイブンクローでも合うと思うんだよ。

 

 僕がこんな雑学紛いのことを知っているのは珍しいと思うでしょ? 僕もそう思うよ。だけどね、学校が始まる前からスリザリンの良い所について話す人達が周りにいたら嫌でも覚えちゃうよ。

 

 しかも、他の三種類の寮は悪口ばっかり。僕じゃなかったら洗脳されていたね。

 

 

 次に、マクゴナガル先生は長い羊皮紙に書かれているらしい僕の名前を読み上げた。今度は僕の番だよ!

 

 

「フォスター・マーヴィン!!」

 

 

 全然気に入らない名前を呼ばれちゃった。名字も名前も嫌い。大嫌い。僕の名前は白蘭で、それ以外の名前はない。

 

 大体、嫌いな人達に付けられた名前なんて好きになれないよね? 改名出来たら名字も名前も変えちゃってるよ!

 

 てくてくと椅子まで歩いてぴょんと座る。マクゴナガル先生が帽子を持った手を僕に近付ける。

 

 帽子が頭に触れる前から、帽子が叫んだ。

 

 

「スリザリン!!!」

 

 

 ……え? 終わり?

 

 一瞬、全ての雑音が消えた。みんなの視線が僕に集中している。その顔に浮かぶのは驚愕と驚愕と驚愕……つまり、驚愕。

 

 やっぱり一瞬で組み分けが決まるのは中々ないのかなぁ? まあ、決まっちゃったなら仕方ないよね。僕は他の寮の気風に当て嵌まらないし、スリザリンしかない。

 

 椅子から降りてスリザリン生のいる席に足を踏み出せば、マクゴナガル先生に呼び止められた。

 

 

「帽子に触れてもいないのに組み分けが決まったのですよ? もう一度、帽子を被って話を聞いてみては……」

「アハハ、大丈夫ですよ先生。組み分け帽子は当たってますよ♪」

 

 

 心配してくれてありがとうね、マクゴナガル先生♪ やっぱり良い先生だ! 僕も前世の大学で彼女みたいなイイ教授が当たればもう少し楽しく過ごせたかもねぇ……まあ、正チャンいたしあんま変わんないかな?

 

 マクゴナガル先生にバイバイと手を振って桔梗チャンの元に小走りで向かう。桔梗チャンの隣にいる赤毛の子が僕を見て感極まったように叫んだ。

 

 

「白蘭様!」

「あ、ザクロ!」

 

 

 驚いたことに、赤毛の子はザクロだった。うわぁ! 前世の部下達に会えるなんて、僕は幸せ者だね♪

 

 桔梗チャンとザクロの間が開いているので、そこに座ることにする。多分、二人が開けてくれたんだね。ふふん♪ 感謝感謝♪

 

 

 僕が椅子に座ったのを確認して、今まで僕達をじっと見つめていた老人が声を上げた。

 

 

「残りの生徒も無事組み分けを終えたことだしの、楽しい食事に戻ってくれ」

 

 

 老人(なんか偉そうだから校長のダンブルドア先生かな?)が杖を一振りすると、いつの間にか空の更にたっくさーんの食事が乗っていた。

 

 他の人達は大分食べ終えていたのか、デザートの乗った皿がいっぱい。僕達は来たばっかりだからか、メインディッシュばかり。

 

 魔法って対象者も選べるんだねぇ……僕等にはメインディッシュ、彼らにはデザートって。使い勝手が良いよね、正チャンが見たら羨ましがるカナ?

 

 

 イギリス料理はあんまり好きじゃないし、そもそも僕はデザートが好きなので目の前にある皿から取ることはない。桔梗チャンはふっつーに食べているけど、僕は食べないよ!

 

 欲しい物を食べる。食べたくないのは食べない。これ、常識だよ!

 

 

「白蘭様、何か欲しいものでもありますか?」

「あ、ザクロはもう食べちゃってたんだ。これとね、これと、これとこれとこれ!」

 

 

 僕が注文したモノ全部を取っていくザクロ。たまたま誰かと選ぶモノが同じだったら殺気を視線に籠めて威圧していたのが面白い。

 

 さっすがザクロ! にしてもどうして今まで会えなかったんだろう。イギリスって広いかと思いきや狭いからね。会おうと思えば会えたと思うんだよ。僕と桔梗チャンも偶然会ったし。

 

 僕の近くに僕が欲しいと思ったデザートが並べられていく。アイクリーム、エクレア、たっくさんのイチゴなどなど……。

 

 たっくさんのスイーツがあるのは良いけど、現代風のパフェがないのは残念だよね。自分で作らないとダメなのカナ。

 

 もぐもぐ。

 

 

「ふぇふぇ、ファフロ(ねぇねぇ、ザクロ)」

「白蘭様。呑み込んでからお話をして下さいませ」

 

 

 ザクロに今まで何をしていたのか尋ねようとしたら、桔梗チャンにやんわりと叱られちゃった。でも、確かにごもっともな指摘なので呑み込んでから話そう。

 

 ごっくりと呑み込んでからザクロに向き直る。

 

 

「で、ザクロは今までどこで何してたの?」

 

 

 ザクロはマグルだとは思えない。だって、マグルだったらこの光景にはしゃいでそうだもの。ザクロは意外にそういうところは子供っぽいからね。

 

 でも、ザクロはどこか見慣れた様に魔法を見ている。だから、ザクロはマグルじゃないわけ。

 

 えへん、名探偵ビャクランだよ!

 

 

「あー……実はですねぇ、純血は純血でも変わり者のトコなんですよ~。ウィーズリーっていう……ったく、呑気な甘ぇトコに生まれ変わって反吐が出る毎日だったぜ、バーロー」

 

 

 最後辺りは独り言というより桔梗チャンに聞かせてるんだよね。桔梗チャンはウィーズリーという家柄を知っているみたい。何だか「ああ、あのウィーズリーですか」と頷いている。

 

 ダレるザクロの肩に手を置いた桔梗チャンは一言。

 

 

「まあ、これも運命ですよ」

「バーロー!! 諦めて堪るかぁ!!!」

 

 

 んふふ~♪ だーい好きな人が騒ぐのって心地いいなぁ♪ 周りの人達の騒がしい声も聞こえなくなるから僕の耳にも優しいよ。

 

 にこにこしながら二人の会話を聞いていたら、目の前に座っている男の子が僕に話しかけてきた。

 

 

「あの赤毛のウィーズリーって知っているだろう? 兄弟が沢山いて服も学用品も全部お下がりらしい。まったく、そんなウィーズリーがスリザリンに来るって信じられないくらいだ。君もそう思うだろう?」

 

 

 やたらと馴れ馴れしい子だね。一体どこの子だろう。この鼻にかけたような感じが典型的な純血主義者を感じさせる。僕、純血主義者は両親を思い出させてイラつくんだよね。

 

 じっと見つめていたら、男の子は思い出したように手を出した。

 

 

「僕はドラコ。ドラコ・マルフォイだ。君の名前を聞いても良いかい?」

 

 

 語尾は上がっているけど、その目は「答えてくれるよな。ってか答えろ」と言っている。こういう拒否を許さない言い方とかってホントに典型的なお坊ちゃん思考だね。

 

 前世では見ることがなかったのに、今生ではずーっと見ているよ。左見ても右見ても、家から出てもお坊ちゃんだよ。

 

 ある意味凄いよね!

 

 

 差し出された手を握る。折角差し出した手を無碍に扱ったら恥をかくのはこの子だからね。僕は子供には優しいからまだ恥をかかせないんだよ。

 

 女の子と子供には優しくする。これ、マフィアの常識だよ!

 

 

「マーヴィン・フォスターだよ。ヨロシク♪」

 

 

 親しい人には「白蘭」って呼ばせるけど、そんなの彼には関係ないよね。こーんな典型的なお坊ちゃんと僕は仲良くなれる気がしない。

 

 本当の御坊ちゃまってね、血筋じゃなくて心に高貴さがある人のことを言うんだよ。

 

 そうだね……例を挙げたら……うーん……綱吉君とかXANXUS君かな? 二人とも違った意味合いの高貴さがあるよね。どっちもカリスマ性高いし、僕は嫌いじゃないよ!

 

 何だか苦手視されてるけどね!

 

 

 あ、そうだ。自己紹介の前に言わなきゃいけないことがあったのに。子供に優しくしてたら忘れてたよ。彼には訂正してもらわないといけない言葉があるんだよね。

 

 

「ねぇ、ドラコ君。ザクロを他のウィーズリーと比べないでくれるカナ? よーく見てみたらわかるさ……ザクロの服装、お下がりなんかじゃないだろう? 家系に振り回されないで本人をじーっくりと見なきゃ。それじゃあ、高貴な血筋も濁っちゃうよ♪」

 

 

 ふふん、イイこと言ったよ!

 

 僕達の会話を聞いていたらしい桔梗チャンとザクロが感動していた。特にザクロは感極まった顔で嬉し涙を流している。

 

 ちょ、ちょっと! 困るからやめてよ!

 

 

「うぅ……白蘭様、俺は今ほど生きてて良かったと思ったことはないです……あんなボロクソな野郎共の元で11年ほど過ごす拷問を耐えきった甲斐があります……!!」

「ああ、ザクロ……あなたはこれほどまで……」

「あんな奴らを燃やし尽くさなかった俺の精神的な耐久力、どんなモンってんだ! バーロー!」

 

 

 桔梗とイイ友情を育んでいるザクロ。何だか二人の周りだけ青春漫画の1ページだね。

 

 ドラコ君もビックリだよ。ね、ドラコ君。

 

 

「あ、ああ……俄かに信じがたいが、どうもあのウィーズリーと違うようだな……というか、双子じゃないのか?」

「双子だぜ、バーロー。だけどよぉ、誰が双子は必ず似てるって言ったんだよ! なわけねぇだろうが!!!」

 

 

 大きく机を叩いて声高に自分の考えを述べるザクロにドラコ君はたじたじ。桔梗チャンと思わず顔を見合わせて笑った。

 

 

 それから僕達は他愛のない話で盛り上がった。僕にとっての驚きは、ザクロが割と真面目にアルバイトしていたことカナ?

 

 あの、直ぐにダラけるザクロがバイトを五年間も続けていたって言うんだ! 全ては自分の学費を稼ぐためなんだって。ザクロが言うには、あの両親に借りを作るのが嫌だったんだって。

 

 だからお金はアルバイトで稼いだのだそう。ちなみに夏休み毎にアルバイトするつもりなんだって。

 

 

「なら、僕のトコで働く? 前みたいにさ♪ お給料も前と変わらないようにするし、どうカナ?」

「白蘭様の下にいられるなら、金なんていらねーですよ」

「んん~それじゃダメだよ! ちゃーんとお仕事あげるから給料も受け取らなきゃダメだよ!」

 

 

 僕が「めっ!」と言えばザクロはようやく頷いてくれた。やったね。

 

 ドラコ君は僕等の会話に「??」状態だけど、気にしないことにしたらしい。こういうところはちょっぴり紳士だよね。それとも、親がそう言う関係なのカナー?

 

 そういう関係というのは、聞かなかったことにしなきゃいけない系の人ってコト。まあ、言ってしまえば死喰い人のコトだけどね!

 

 死喰い人。デスイーターというんだよ。「例のあの人」として知られるヴォルデモート君の配下の人達のこと。彼らはヴォルデモート君がいなくなったとき、魔法使いの牢獄に閉じ込められた人と色々言って逃げて普段と変わらない生活を送っている人とかいる。

 

 その、色々変わらない生活を送っている一族がドラコ君の「マルフォイ家」だよね。とっても有名なんだよ……まあ、僕の場合は両親が「裏切者」とか頻りに言っていたからわかるんだけど。

 

 

 僕の所は特殊だったからねぇ……ヴォルデモート君が死んでから直ぐに助けを求めたのが僕の家だったことから、その特殊さがわかると思う。だから気になるんだよね。

 

 ヴォルデモート君は僕の家に何を求めたんだろうって。

 

 大した力のない両親と、赤ん坊の僕しかいない家に突然来てさ。普通はもっと頼りになる人達の元に身を寄せる筈だよねぇ……うん、調べなきゃいけないな。

 

 あれ? なんで僕の家とヴォルデモート君の話になったんだろう。

 

 首を捻っていると、桔梗チャンに声をかけられた。

 

 

「白蘭様。寮に向かうそうですよ」

 

 

 そっと僕の肩に手を置いた桔梗チャンは手で辺りを示した。あれれ? いつの間にデザート、なくなってる。それに、生徒達もみーんな移動を開始している……え、これって……何も知らずに終わった系?

 

 寮への道のりを歩きながら、桔梗チャンから話を聞く。

 

 

「森には行かないこと。廊下で魔法は使わないこと。あと、三階の廊下には立ち入らないこと……以上の点について校長は述べていましたよ」

「立ち入り禁止かぁ……なんだかわくわくする響きだね」

 

 

 うん、ホントーにわくわくしちゃう♪ 誰にもバレないようにこっそりと抜け出すのが楽しいんだよね。ユニチャンに見つかってお説教されるときが多いけど。

 

 僕が抜け出す時間を予知して待ち伏せなんて中々エグイよ、ユニチャン。

 

 

 しばらく歩いていると、僕達の寮に辿りついた。合言葉があるみたいで「高貴なる血」という合言葉で入って行った。ちなみに、たまーに変わるらしい。といっても、似たようなものらしくてわからなくても当てずっぽうでもイケるらしいよ。

 

 これなら、慌てん坊のザクロでも大丈夫だね!

 

 

 監督生(なんか生徒の中で結構偉いらしいよ)に寮の説明をされて解散となった。僕と桔梗チャンとザクロは同じ部屋だったよ。やったね!

 

 寮の部屋に顔を出したら、見覚えのある真っ白なフクロウがベッドの上を転がっていた。

 

 翼をバタバタを上下に振りながら転がっているフクロウは、傍から見ても異様だ。これをフクロウだと断定できる人はちょっと頭がイカれてる。

 

 

「クフフフフ……クハハハハハ!!!」

 

 

 一羽だけで笑い声を上げるのは凄く不気味だと思うよ、ムクロウ君。

 




解説

カーティス・フロイス
 →カーティス:礼儀正しいという意味
 →フロイス:Platycodon grandiflorus(桔梗の学名)の最後を取った

フォスター・マーヴィン
 →フォスター:刃物職人
 →マーヴィン:美しい海

ザクロ
 前世の白蘭の部下。口癖は「バーロー」。よくダレる。
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