金の瞳 作:ルテチウム
『押し潰されるも呑まれるも!! 自分を殺すも好き勝手よ! でもね! でもね!!!
──一度きりの人生なら!! 楽しまなきゃ損でしょう?!!』
眩むような光だった。余りにも大きすぎるその光に魅せられる。奪われる。
そして、差し出された手に、引き寄せられるように手を伸ばし──
──スッと意識が浮かび上がる。泡沫の夢のような追憶は、だが僅かな感慨だけを残して女を叩き起こした。
「……夢、か」
外套を揺らし、背中を預けていた大木から起き上がる。湿った地面が足下で崩れる感触。
霧に
晴れる事なき霧に独特な適応を遂げた異様な生物体系。それは相応の実力がなければ、『通る』と言う選択肢すら挙がらぬほど。
そして、そこを何の躊躇いもなく進行している女は軽く辺りを見渡す。かつてよく見た景色が、そこにはあった。
血に濡れた大地が、斬られた肉片が目に入る。鉄臭い匂いが鼻をつく。
そして、油断ゆえか眠ってしまっていた事実に頭を振った。
「私も弱くなったものだ」
ため息と共に言葉を吐き出す。後悔を多分に含んだそれは、だが。喜色を滲ませたものでもあった。
かつての彼女であれば、何も信じる物などなかった。それは『孤独』故に。
突出した強さに、異端な癖を持っていた彼女は、素の己が世間に認められる事などないと言うことなんとなしに察していた。
だから躊躇いなどなかった。だから目的などなかった。ただ、己を押し殺して進んでいた。
尊敬の目も、感謝も権利も。かつて受け取った栄光は、だがしかし過去の物。
(今、セラと出会っても、私は恐らく
彼女は魅せられたのだ。一人の、幼いとすら形容出来る小さな少女に。脳裏に過るのは爛々と煌めく金色の瞳。
『一緒に楽しみましょう?! この世界を、生きて生きて生きて生きて──生きあがいて!! そして、
臆することはないわ!! さあ、私の手を取りなさい!リーア!!』
そして、彼女はかつて掛けられたその言葉を思い出しながら剣を取り出し、右手に握る。ゆっくりと大地を踏み締めた。ミシリと音が鳴る。
「さて──行くか」
◆◇
「魔物の斬死体、ですか?」
一人の女が凜とした目を前に向ける。それに貫かれた男は、直立不動の姿勢のまま動かない。
「『淋漓の
「なるほど、了解しました。下がって下さい。後で別途指令を下します」
「はっ!」
そして、女は扉が閉まるまで待つと、小さくため息を吐く。
「……はぁ、あそこをくぐり抜けた不法入国者がいる、と考えた方が良さそうですね」
『……めんどくさい』。ポツリと呟くと、彼女は先ほどの鋭い表情とは打って変わった瞳で空を見上げる。
思うのは、かつて突然失踪した、今彼女が座る席にいた女。
「──皆待ってるんです。早く戻ってきて下さいよ、リーア様……」
押しつけられるように座った、『騎士団長』の座。あり得ない希望を呟きながら、やはり己には重すぎる物だと、彼女は今日も嘆くのだった。