エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「いやいや! さすがに帝国の姫様にそんな真似をさせるわけには……!?」
「責任を取るというのならわたくしも同罪ですわ。むしろ、わたくしのユニークジョブのせいでこうなったというのなら、わたくしが一番責任を取らなくてはならないのではなくて?」
「いや、それはそうかも知れませんが……」
唐突な事態に俺は思わず反論するが、ルイーゼに論破されて思わず口籠もる。
それでも、何とか改心させようと俺は言葉を重ねる。
「ですが、ルイーゼ様」
「それじゃ、駄目ですわ。ダーリン」
「ダ、ダーリン……!? 何を言ってるんだ!?」
わけのわからないことを言いだしたルイーゼに俺は思わずそう言う。
すると、ルイーゼはキリッとした真面目な表情で言う。
「わたくし達はこの子の親代わりをするのですよね? それなら、この子の教育の為にも愛し合った夫婦像を見せないといけないのではなくて? だから、わたくしの夫になったつもりで、もっとそれらしい態度を演じないと駄目ですわ」
そのルイーゼの言葉に、エルザが猛烈な勢いで言う。
「こ、此奴……! 何を言ってるの!? そんなことを許すわけないじゃない! それならアタシがママになるわよ!」
「そうです! 貴方がママになる必要はありません! この子はわたしと師匠が二人で育てます!」
「ルイーゼお姉さん達、何を言ってるの? これを一時的に家族にするって言うのなら、お兄様の妹であるレシィが面倒見るのが普通でしょ?」
「いえ、フレイ様が責任を取るというのなら、専属メイドである私が手伝うべきです。ママ役が必要になるというのなら、私が受け持ちます」
エルザに続くようにユーナ、レシリア、来幸がルイーゼに猛反発する。
その流れを見て、シルフィーが怯えたように言った。
「な、なんなのです……!? 拙はママ役に何かならないのですよ!?」
「「「「じゃあ! そこで黙ってて!」」」」
「ぴぃっ!」
絶対に流れに乗らないぞと宣言したシルフィーは、残りの四人の黙れという叫びにビビり倒し、その後に始まった口論を見て、恐怖からふるふると震える。
俺はそれの状況を見て、思わず頭を押さえた。
もう滅茶苦茶だよ……これ、バカンスなんてもう無理じゃん。
折角、色々と調整して休みを作ってやってきたのに、この海水浴場についてものの数時間で、バカンスが終了してしまった事態を思わず嘆く。
はぁ……。もう仕方ないか……。
バカンスはまた今度休みを取って行う事にして、もう今回の休みはノルンの対策に全てを当てることにしよう。
俺はそう考えて気持ちを切り替える。
それと同時にルイーゼが語った、教育の為に愛し合った夫婦像を見せる必要があるという言葉について考える。
悪くはない考えかも知れない。
父親枠に収まるというだけではなく、そこで相手がいると見せかけることが出来れば、より確実にノルンの恋愛対象から外れることが出来るだろう。
攻略対象であるルイーゼとそう言った関係であると周囲に見せつけることになるのは、俺だけのヒロインを見つけると言った過程では大きなマイナスだが、逆レイプロリドラゴンは対処しなければならない目下のリスク。
別にヒロイン探しは帝国以外でするという手もあるわけだし、ここは多少の損を覚悟してでも、堅実にノルンを潰すことを考えた方が良いだろう。
そう考えた俺はルイーゼに向かって言う。
「わかった。俺も此奴の為に愛し合う夫婦像を演じることにするよ」
「ちょっと! フレイはルイーゼをママ役にするって言うの!?」
俺はそう叫んだエルザの言葉に、面倒くさくなって、思わず本心から言う。
「ぶっちゃけ、誰がママ役だろうとどうでもいいよ……。此奴の両親が見つかるまでの数日の演技だろうしな。……もう、面倒くさいから、じゃんけんで決めろ、じゃんけんで。勝った奴がママ役、それでもういいだろう」
誰がママ役をやろうと俺には大差はない。
どうせ、攻略対象と妹しかいない状況なのだ。
どれも恋愛対象にならないのだから、誰が相手になろうと意味はない。
俺の言葉でシルフィーを除いた全員がじゃんけんをすることになった。
その結果は――。
「では、よろしくお願いいたしますわね。ダーリン」
圧倒的な強さで勝利したルイーゼが結局にママ役となった。
周囲では負けたエルザ達が打ちひしがれる姿が見える。
「アア、ヨロシクオネガイスルヨ。ハニー」
演技とは言え、攻略対象相手を愛さなくてはならないという事態への拒否感で、思わず片言になりながらも、俺はそう返した。
「それでダーリン。これから如何しますの?」
夫婦役を演じ始めたものの、今後の展開を如何するのかと、ルイーゼが俺に対して聞いてくる。
「何時までも、俺らが面倒を見るわけには行かないからな。やはり最優先しなければならないのは、此奴の両親を探すことだろうな」
卵を落としたと思われる母親となる竜。
それを見つけないことには何も始まらない。
「一週間、この周囲に滞在して、此奴を育てながら、両親らしき者が居ないか、探し回ることにしよう。卵を落とした母親側に何の問題も無ければ、少なくともそれだけの期間があれば、ここに来ることが出来るはずだ」
「もし、一週間の間に見つからなかったら?」
「考えたくない事態だが……その場合は、こちらから竜の住処――竜の隠れ里を探しに行かないといけないかもしれないな……」
一週間も探して見つからないとなると、ノルンの両親に何らかのトラブルが発生していると言うことだ。
メジーナの件など、バタフライエフェクトによるイベントの前倒しのことを考えれば、既に黒い竜が竜の隠れ里を襲撃している可能性すら考えられる。
そのことを考えれば、一刻も早く竜の隠れ里に向かわないといけないが……。
竜の隠れ里の場所、俺知らないんだよな……。
インフィニット・ワンでの竜の隠れ里への移動方法は、パーティーメンバーのノルンに話しかけて、竜の隠れ里へ行くことを希望すると言うものだった。
その時のマップ上の動きとしては、バサバサと翼をはためかせたノルンが、マップの右上の画面外に消え、マップが切り替わるのと同時に、マップの左下から出てきたノルンが竜の隠れ里のマップに着陸すると言う形であり、完全に別マップに移動を行っている為、前後のマップの繋がりから場所を特定することも出来ないのだ。
帝国内の何処かの山にあるとは作中で語れていたものの、それ以外の竜の隠れ里の在処に関する情報を俺は知らない。
「竜の隠れ里の在処の検討はついているのです?」
「いや、全くないな。帝国の何処かの山にあるらしいが……」
「隠れ里というだけあって、あまり話を聞いたこともありませんね。ただ、帝国内にあるというのなら、帝城の資料室に何か資料があるかも知れませんわ」
俺の言葉にルイーゼがそう答える。
それを聞いて、俺は纏めるように言った。
「ええっと。つまりは、一週間はここで此奴を育てながら両親捜し、それが駄目なら帝都に行って情報収集し、そこで見つけた竜の隠れ里へ行って、此奴の両親が見つかるまで、此奴を隠れ里の竜達に預かって貰う……って方針でいいか?」
「問題ありませんわ」
「いいと思うのです!」
じゃんけんに負けた状態から立ち直れないエルザ達以外がそう言う。
「ただ、わたしく、思うのですが……」
「ん? どうした?」
唐突に何か気になることがあると言った様子でそう言い出したルイーゼに対して、俺は思わずそう問い返す。
「此奴としか呼ばないのは、この子が可哀想なのではなくて?」
ルイーゼが気になっていたのはノルンの呼び方のようだった。
生まれたばかりのノルンには名前が無いから、代名詞を使った呼び方をしなければならないが、それに対する俺の言葉遣いに引っかかりを覚えたらしい。
それを聞いて俺は思わず思う。
ノルンを警戒しているからちょっと言葉に敵意が乗っていたか。
まあ、あれや、それや、これと言わないだけ、まだましだと思うが……。
「お前達みたいにこの子って言えばいいのか?」
別に呼び方に拘りは無いため、俺はルイーゼにそう返す。
しかし、ルイーゼはそれに納得せず、首を振った。
「それでは根本的な解決になりませんわ。子育てにおいて、名前呼びすることはとても大切だと思いますの。だから、わたしく達でこの子の名前を決めません?」
「いや、それはさすがに不味いだろ……。仮の名前だとしても、両親の同意も取らずに勝手に名前を決めるなんて。この子の名前はこの子の親が決めるべきだ。俺達は長くても七日間の仮の親子でしかないんだぞ?」
たった七日の関係なのに勝手に名前なんて決めて如何するのか。
そんな俺の反応を余所に、卵を割る切っ掛けを作り、その責任感からママ役をしっかりと果たそうとするルイーゼは決意を込めるように言う。
「竜は人より知能が高いと聞いたことがありますわ。生まれてから七日間という時間は、人間の赤ちゃんに関しては大した意味もないものかも知れませんが、この竜の子供に対してはとても大きな意味を持つかもしれないですわ」
……確かに人間の子供でも、子供の時の経験が、将来的な人格形成などに大きな影響を与えることはある。
竜と人と言う種族の違いを考えれば、生後七日間という短い期間であったとしても、決して手を抜くべきではないというのはある意味では正しい。
「わたくしは、この子の卵を割り、親に会う前に孵化させてしまった者として、この子を、この子の本当の両親達に恥じないように、立派に育てあげなければならないのです! それこそが、わたくしの責任の取り方だと思うのですわ!」
「まあ、言っている事は分かるが……」
俺は難色を付けながら思わずそう返す。
ルイーゼの意気込みは分かるがさすがに勝手に名付けは……。
「名前……」
ふと、周りはどう考えているかとみると、シルフィーはそう呟いて、何かを考えるように俯いていた。
そして、ガバッと顔を起き上がらせると、俺達に向かって言う。
「そうなのです! 親に変な名前を付けられる前に、ここでこの子の名前を決めてしまうのです!」
トラウマスイッチを刺激されたシルフィーが猛烈な勢いでそう言う。
血の繋がった母親から、キラキラネームを付けられたシルフィーからして見れば、本当の親がまともな名前を付けるとは限らないのだから、ここで皆で名前を考えて、まともな名前を無理矢理付けてやれと、周囲を焚き付け始めた。
「なあ、お前達はどう思う?」
俺は思わずエルザ達にそう問いかけた。
だが、完全にやる気を失ったエルザはぞんざいに答える。
「別に何でもいいんじゃない? どうせ、アタシはママじゃないし」
「そうですね。それに気に入らなければ後で変えて貰えばいいだけですし」
「う~ん。お兄様の好きにすると良いと思う!」
「私は……名付けというのは血のつながりよりも、誰がどれだけ相手のことを思って、そう名付けるかが大切なのだと思います。だからこそ、ここで私達がこの子の為を思って名付けるのは間違いではないと判断します」
どちらかと言えば肯定寄りの意見が返ってきた。
ここまで来ると全体を否定側に持って行くのも大変だ。
そして、そこまでの労力を掛ける気が俺にはなかった。
「わかった。じゃあ、名前を決めてしまうか」
俺は全員に向かってそう言う。
それと同時にこれはこれでいいかと思い直していた。
上手くやれば、来幸の時のように、ゲームのキャラ名から名前を変えることが出来るかも知れないからな……。
日常的に接するなら、インフィニット・ワンの出来事を思い出しやすいキャラ名より、新しく付けた名前の方が都合がいい。
そう考えた俺は、いの一番に、ノルンの新しい名前を切り出した。
「じゃあ、桜色をしているし、サクラってのはどうだ?」
見た目の色からきた安直なものだが割といい名前を提案する。
それを聞いたノルンは「きゃう!」と鳴き声を上げて横を向いた。
「この子はその名前が気に入らないみたいなのです!」
「ぐっ……!」
容赦の無いシルフィーの言葉に俺は思わず呻く。
「セイラ、カタリナ、ミシェル、メイ、アオイ、クウミ、キャサリン、カトリーヌ、エリザベス、ルキナ、ジャンヌ、マーガレット、パメラ、ドロシー!」
俺は何度も何度も名前を挙げる。
だが、ノルンは一向に首を縦に振らない。
そんな様子を見て、思わずと言った形でシルフィーが言った。
「こうも否定されるなんて、フレイって、センスがないのです?」
「はっ!? はぁあああ!? だったら、お前らが案を出せよ!」
ぶち切れた俺は思わずそう叫んだ。
どうしてこんなことで俺のセンスが疑われなくてはならないのか。
ノルンが首を振らないだけで俺のセンスは至極まともだ。
「そうですね……では、ノルンというのはどうでしょう?」
ルイーゼのその言葉を聞いた瞬間、俺と来幸の動きが驚愕で止まった。
そして、ノルンが喜んだように首を縦に振るのを見て、俺は戦慄と恐怖を覚えながら、目を見開いてノルンを凝視する。
嘘だろ……?
此奴、ゲームと同じ名前になりやがった……!?
名前なんて何百と種類が有ると言うのに、まるでそれが正しいことであるかのように、ノルンというゲームでの名前に収束していた状況を見て、驚きを隠せない。
確かに俺はこの世界がゲームを元にしたものだと強く実感しているし、それにバタフライエフェクトを受けても発生するイベントを見て、この世界の異常さを実感したりもしたが、それでもイベントの時期がずれるなど、この世界の状況に合わせて不自然な流れにならないように変わる部分があることも知っている。
特に今回のノルンの件は、バタフライエフェクトなどではなく、転生者でもあり、ゲーム知識を持つ俺が直接介入している案件だ。
名前なんて言うイベントに関わらない場所なら、来幸の時のように自由に改変出来てもおかしくないはずなのだ。
それなのに同じ名前にされた。
その事が無性に不気味さを際立たせていた。
「本人も納得しているようなので、この子はノルンなのです!」
状況を見ていたシルフィーが纏めるようにそう言った。
俺達はそれに異議を唱えることは出来なかった。
「……まあ、いいか」
俺は誰にも聞かれないようにそう呟いた。
深く考えても仕方ないことは考えない方が良い。
ノルンという名前に決まったのならそれはそれでいいだろう。
「きゅあ! きゅあ!」
俺が自分をそう納得させていると、ノルンが突然鳴いて暴れ始めた。
それを見て、俺とルイーゼは慌てる。
「ど、どうしたんだ!?」
「何ですの!?」
それを見ていたレシリアがふと思いついたことを言う。
「もしかして、お腹がすいたじゃない?」
シーザック家は聖女の家系であり、その家系の中で聖女の力を受け継ぐ者は、赤子に祝福を与えたり、治療の為に診療所に出入りするなど、幼い頃から医療関係の仕事を手伝い始める。
恐らくはその仕事で赤子を何度か見たことがあるからこそ、レシリアはノルンが鳴き始めた理由を推察することが出来なのだろう。
食事か……生まれたばかりの竜には何を喰わせればいいんだ? 赤ちゃんなことを考えればやっぱりミルク? それともいきなり肉とか喰わせた方がいいのか……?
そう、俺が悩んでいる間にルイーゼは動き始めた。
「ごはん……!? ごはんですわね!?」
ルイーゼはそう言うと、ノルンを手に取り、自らの上の水着を下にずらした。
勢いよく下げられたことによって、ルイーゼの胸を覆うものは何も無くなり、十五歳という年齢に見合う立派な胸が大きく揺れる。
「ちょっ!? こんな外で何をやって……!?」
「えっ!? きゃあっ!?」
俺は完全に丸出しになったルイーゼの胸を見てしまい、思わずそう言う。
その言葉で冷静になったのか、ルイーゼは自らの胸を見て、顔を真っ赤にしながら、その旨を思わず隠した。
だが、それによって手に持っていたノルンが強く掴まれ、それを嫌ったノルンは「きゅう!?」と叫びを上げて、逃げるように手から離れて動く。
「うおっ!?」
暴れたように走るノルンが足下を通り、それを避けるために動いたことで、足下がおぼつかなくなり、転びそうになってしまう。
「クソっ!? またかっ!?」
体勢を整えようとして、前と同じように体が動かないことに気付く。
そして、そのまま俺は吸い込まれるようにルイーゼの元へと倒れ、そして倒れ込んだ俺の顔はルイーゼの胸へと向かった。
「あんっ! そ、そこは! ダーリンのご飯じゃないですわ!?」
そもそも、子供を産んでないだから、まだ出ないだろ!
そんなことを思いながら、ルイーゼの胸に顔を埋める形になったとき、開いた口の中に入っていたルイーゼの突起から口を離して、急いでルイーゼから離れる。
そして戦慄を感じながら思わず呟いた。
「まさか、ここまで全部、ラッキースケベの影響じゃないよな……?」
ルイーゼのおっぱいをしゃぶらせるラッキースケベの為に、ノルンの孵化からママ役になるまでの流れが生まれたのでは? と恐ろしい考えが頭をよぎり、すぐさまそんな馬鹿なことはないだろうと、自分の考えを否定する。
ともあれ、どうやら俺はまだ地獄に居るらしい。
「絶対に生き抜いてやるこの地獄を……! 未来の俺だけのヒロインの為に! 絶対に俺の純潔は守り抜いて見せる!」
そんな俺の覚悟とともに七日間の日々は始まった。
ちなみにノルンの食事は干し肉で大丈夫だった。