エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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子育て

 

「ノルン、いいか? 狩りというのは相手の動きを見極める必要がある」

「きゃう!」

 

 俺は頭の上にノルンを乗せて、街道に出た魔物と対峙していた。

 俺の言葉を素直に聞いたノルンは、目の前にいる狼タイプの魔物をしっかりと見つめ、そしてその一挙一動を観察していた。

 

「今回は俺からタイミングは伝えない。お前の判断でブレスを撃つんだ」

「きゃい!」

 

 俺達が話している間に狼は動き出す。

 それを見て、俺が撃つべきタイミングだと思うのと同じタイミングで、ノルンはしっかりとブレスを狼に向かって放った。

 それによって、狼の横っ腹は抉られ、魔物が死んだことで魔石へと転じる。

 

 それを見た俺は、頭の上に乗っていたノルンを手で掴み、そして掲げるように両手で持って、高い高いをしながら言う。

 

「よくやったぞ! さすが俺の娘だ!」

「きゃう~!」

 

 ノルンを育て始めてから早三日。

 俺は父親役としてノルンを立派に成長させることが出来ていた。

 

☆☆☆

 

「お帰りなさいませ。食事の準備は出来ております」

「ああ、わかった」

 

 あの海水浴場近くで取った宿に戻ると、来幸が昼食の準備をしてくれていた。

 俺が食堂に辿り着くと、俺を待っていたのか他の皆もそこにいる。

 

 席としてはルイーゼの隣と、エルザの隣で二つ空いていたが……。

 俺は無言で入口から遠い、エルザの隣へと移動した。

 

「な、なんで、そちらに行くんですの!? と言うか、わたくしのこと、ダーリンはずっと避けていませんか!?」

「だって、危険だから」

「はうっ!?」

 

 抗議をしてきたルイーゼに俺が思わず本音を言うと、ルイーゼは特大の精神ダメージを喰らったかのように、そんな泣き声を上げて突っ伏した。

 

「そんな……夫婦役なのに……」

 

 悲しげな表情でちらちらとルイーゼが俺の事を見てくるが、俺としては断固として拒絶の態度を取らせて貰う。

 何故なら、この三日間で嫌というほど、ラッキースケベに巻き込まれて、ルイーゼの危険さをこれ以上とないほどに思い知らされたからだ。

 

 少しくらいなら近くに居ても問題ない?

 いや、少しでも男が近くに居れば、ラッキースケベは発動する。

 

 どれほどラッキースケベが起こらないように見える状況だったとしても、ルイーゼの側に居れば、何かしらの出来事が連鎖して起こり、最終的にラッキースケベ状態に陥ることが分かった。

 それはもう、ピタ○ラスイッチかよ! と思わず叫んでしまいそうになるほどのものであり、しかもラッキースケベが連続して起こるほどに、耐性の出来た読者へのサービスを増やすが如く、その内容は過激化していった。

 このままラッキースケベが起こり続ければ、最終的にルイーゼが転んだ拍子に彼女の大事な所が俺の逸物へとぶつかり、そのままルイーゼの処女を散らしてしまうというような、バカみたいな出来事すら起こる可能性があるんじゃないか、と俺を恐怖させるのには十分だった。

 だからこそ、俺はどれだけ涙目で見られたとしてもルイーゼに近寄らないのだ。

 

 俺が席に着くと来幸が全員の料理を持ってきて机に並べる。

 そして、それが終わった来幸自身が席に着くと俺達は食事を始めた。

 

「きゃう!」

「あ~、はいはい。ご飯ね」

 

 俺はそう言うと自分が食事を取る合間に、ノルン用に用意された肉が入った器の中から、肉を手に取るとそれをノルンの前に出す。

 それに対してノルンは嬉しそうに食らい付く。

 

 そんな俺達のやり取りを見ていたエルザが言う。

 

「アンタ、それ毎回やらなくちゃいけないわけ? 其奴なら自分で器の肉に食らいつくくらい出来るんじゃないの?」

「……それをやってくれないから、わざわざこうしてるんだろ?」

 

 俺はため息を吐きながらそう答えた。

 正直に言えば、一々肉を取って食わせるのは手間なので、直接器の肉に食らいついて欲しいのだが、何故かノルンはそれを行わないのだ。

 

「しょうがないわね。アタシが代わりにやってあげるわよ」

 

 そう言うとエルザは俺の代わりに肉を手に取った。

 そして、それをノルンの前に差し出した。

 

「ほら、食べなさい」

「ぐるるるっ! ぎゃうっ!」

 

 だが、ノルンはそれに食らいつくことをせず、尻尾でエルザの手を叩いた。

 

「いたっ!」

 

 思わぬ痛みにエルザが肉を落とす。

 ノルンはそれに目を向けず、俺に向かって食べ物をねだる目を向けた。

 

「こ、此奴……! アタシとフレイで態度が違いすぎでしょ!」

 

 善意で食べさせようとした手を叩かれてエルザは怒りを露わにする。

 それを見ていたシルフィーがその理由を推察する。

 

「親が差し出した食べ物以外を受け付けないのかもしれないのです」

「それはどうしてでしょうか?」

 

 シルフィーの推察を聞いた来幸がその理由を問いかける。

 

「肉食動物は基本的に自ら狩りを行って肉を用意しますが、狩りが出来ない子供の内は、親に代わりに狩って貰ってそれを食すのです」

 

 シルフィーは、過去を思い出すようにしながら、そう語り始める。

 

「言ってしまえば、親の手で渡された肉こそが、その子供に取って最も安全で警戒する必要がない食べ物だと言えるのです。竜の生態はよく知らないのですが、その食べ物に関する警戒心が、一般的な動物よりも強いのかもしれないのです」

「竜の強さならそんな警戒は不要って気もするが……。いや、竜が強いからこそ、その能力が発揮出来ない弱い子供の内は、安全が確保された親の手による食料しか食べないように、本能に刻み込まれてるってことか」

 

 シルフィーの語った内容から、俺はそんな風に考察した。

 

「わたくしが差し出したお肉も食べてくれないのですが……」

 

 俺達の話を聞いていたルイーゼがそんな泣き言を話し始める。

 それを聞いてシルフィーはその理由について語る。

 

「恐らく、親と思われてるのが、フレイだけということなのです」

「何故ですの!? わたくしだってママ役なのに!?」

 

 立派にママ役を果たして責任を取るつもりが、何も成せていない現状に、思わずルイーゼがそんな風に声を張り上げた。

 

「刷り込みと言って、特定の動物の中には、卵から生まれた後に見た存在を、親だと思い込むものがいるのです」

 

 そこでシルフィーは聞いた話を思い出すように言う。

 

「ノルンが孵化した時、拙のせいでフレイが卵に突っ込んだと来幸から聞いたのです。恐らくはその時に、ノルンがフレイを見て、フレイのことを親だとする刷り込みが行われたのだと、拙は思うのです」

 

 刷り込みか……前世でも聞いた事がある話だな。

 

 卵から孵った動物が主人公を初めに見て、親だと思い込み、そのまま仲間入りするってのは、物語としてはそこそこある話しでもある。

 だからこそ、すんなりとシルフィーの仮説を信じることが出来た。

 

 まあ、これはこれで都合がいいか?

 

 俺は思わずそんなことを思う。

 俺の最終的な目標は父親枠に収まって恋愛対象から外れること。

 それを考えれば、刷り込みによって親だと思われているこの状況は、まさに願ったり叶ったりといったものだ。

 

「家族って言うのは血の繋がりがあってこそなのに、血の繋がりもないのに家族だと勘違いするなんて、そんな頭のおかしな習性を持った存在がいるんだね~。レシィにはその思考が理解出来ないや」

 

 シルフィーの話を聞いたレシリアが思わずと言った風に呟いた。

 それを聞いて俺は思う。

 

 血統で引き継がれる貴族の立場だとそう言う考えになるよな。

 特にシーザック家は聖女の血統と言う点を重視しているわけだし。

 

 前世の世界よりもこの世界は血統を重視している。

 それは貴族制が残っているということもあるし、魔力回路や神の血などの実利の面でも、遺伝によって受け継がれるものが多いからだ。

 自分達の未来に血統が大きく関わるからこそ、そこに不純物が交わらないように、血の繋がっていない相手を家族扱いしない風潮があるのだ。

 

 そもそもそう言うのがない前世でも血の繋がりは大切だったからな~。

 自分の子が、実は托卵で血が繋がって無いって知って、それでも迷わずに自分の子だって認められる奴は、それほど多くないだろうし。

 

 その辺りのことを考えれば、レシリアの発言もさほどおかしな事ではない。

 ゴリゴリの血統主義だった原作のフレイだったら素直に頷いているだろう。

 

 まあ、俺はそこまで血統主義ではないけどね。

 

 そもそも、俺が恋人にして結婚しようとしている、何処かにいるだろう理想のヒロインだって、血の繋がらない赤の他人だ。

 血が繋がらなければ家族でないとするならば、そのヒロインだって家族にすることは出来ないということになるし、そうなると妹であるレシリアくらいしか結婚相手がいないということになってしまうだろうからな。

 

 そう言うことを考えれば、血が繋がらなくても家族になれると言える。

 誰だって恋をして結婚する相手は血の繋がらない他人だからだ。

 

 それを考えると結婚するって結構凄い事だよな……。

 

 前世でも、今世でも、俺以外の多くの人が、結婚相手を見つけて結婚をし、赤の他人を新しく家族にして生活を行っている。

 血のつながりという単純な家族になるためのツールも無しに、それ以外の何らかの要素で深い絆を結び、愛し合った結果として家族になっていくのだ。

 

 理想のヒロインを追い求める立場からすれば、素直に言って羨ましいと思う。

 ――もっとも、その大半はそう見せかけるだけの偽物だろうが。

 

 誰もがそんな理想的な関係を築けるなら不倫や離婚なんてものはない。

 

 血のつながり以上の深い絆を結んで、愛し合い続けている夫婦なんてものは、極一握りの選ばれた者達だけで、大半の者はそこまで深い関係を築いてなくても、周囲が結婚しているからと言った環境的要因や、もうこの相手でいいやと妥協の気持ちを元に、軽い気持ちで結婚をしてしまう。

 

 そうして深い絆を結んでいないからこそ、最終的にお互いの気持ちが離れ、相手に裏切られるという結末を迎える事になるのだ。

 

 だからこそ、相手をしっかりと吟味することが大切なんだ。

 何の繋がりもない赤の他人を家族にするからこそ、決して妥協することなく、自分が理想とするヒロインを追い求めなければならない。

 

 俺は内心でうんうんと頷いて、改めて理想のヒロインへの気持ちを強める。

 

 絶対に物語の主人公とヒロインのように、自分達だけのボーイミーツガールの青春の日々を送り、俺と深い絆を紡げる、俺だけのヒロインを見つけて見せると。

 

 ……そうじゃないと信用出来ないもんな。

 

 俺は、他の男と比べられて、常に自分が選ばれる何てことを考えるほど、自分の魅力に対して自惚れてはいない。

 むしろ、前世で一度も恋人が出来なかったことを考えれば、比較されたときに俺よりも他の奴を選ぶ可能性の方が高いと考える方が自然だ。

 だからこそ、俺でなくてもいい奴が、俺以外とも深い関係を築ける奴が、俺のヒロインで在り続けてくれるとは思えない。

 

 その点を考えると攻略対象が根本的に対象外になる理由がよく分かる。

 何故なら、攻略対象達はアレクと言う他の男と深い関係を築ける存在であり、そうでなかったとしても、レオナルドに対するクレアのように、イベントを攻略した相手なら誰とでも関係を築ける相手だからだ。

 

 誰でもいいならきっと其奴は俺を選ばない。

 銀仮面ファンクラブや、イベントを攻略したことで俺に惚れてしまった、来幸やエルザもそうだが、今は助けた相手が俺しかいないから、俺の事を好いたままで居続けてくれるだろう。

 だが、ここから先の未来で、アレクがルーレリア学園に現れて攻略対象達と仲良くなったり、或いは何かしらのイベントが起きて、俺やアレク以外の誰かがそのイベントをクリアして攻略対象達の目にとまるようなことが起こったらどうなる?

 

 同じ条件に立った時、俺はその相手に勝つことが出来るのか?

 俺はこう思ってしまう、それは無理だと。

 

 そもそも、イベントの攻略だって他人から奪った代物だ。

 何一つ俺の魅力で落としたわけではない相手に、どうやって俺の事を好きで居てもらい続ければいいと言うのだろうか。

 

 相手は本来の自分の姿でヒロインを魅了できる奴なのだ。

 ゲームをなぞったことで、好きになってしまっただけの、紛い物の魅力では、どう足掻いたって太刀打ち出来るわけがない。

 

 ……こういうことを気にしなければ、幸せになれるんだろうけどな……。

 

 多くの物語のように、愚直にヒロインを得ることを喜べるのなら、きっとこんなことを気にしないで楽しく過ごせるのだろう。

 

 だが、前世の非モテだった経験が俺にそれを許さない。

 過去の出来事としてモテないことを強く実感しているからこそ、俺は目に見える形で示される、俺に対する相手の好意に、どう足掻いても疑いの目を持ってしまう。

 

 ――それは本当に俺に対してだけの好意なのかと。

 

 こう思ってしまうのは、自分でもどうかと思わないこともないが、それでもこれがこれまで生きてきた俺という存在が思ってしまう考えなのだ。

 結局、自分の心には嘘をつけないのだから、俺はこの考えに向き合って、その上で自らの求めるものが得られるように生きてくしかない。

 

 だからこそ、俺は俺だけのヒロインが欲しいのだ。

 

 他の奴では絶対に無理で、俺でなければならないヒロイン。

 他の相手と比較することもなく、俺だけを愛し続けてくれるような存在――。

 

 俺だから好きになってくれた。

 それこそが、俺が求める絶対的なもの。

 

 恋愛をする誰もが思っている自分だから愛されたという気持ち。

 そう言う気持ちに対する思いが、俺はきっと人一倍強いのだ。

 

 思えば俺がボーイミーツガールが好きなのもそう言う部分なのかもな。

 ふと、そんなことを俺は思う。

 

 多くのボーイミーツガールの物語では、主人公とヒロインは彼らでなければ体験出来ないような特別なイベントを共に過ごすことになる。

 そうしてそのイベントの中で少しずつ仲を深めていき、やがて二人は愛し合うようになって物語はハッピーエンドを迎える。

 

 尊い――思わずそう思ってしまいそうになるほどの純然たる愛。

 それこそが、俺が何よりも羨む恋愛だ。

 

 彼らの関係には代わりなんてものはあり得ない。

 主人公もヒロインも、彼らでなければその物語は紡げなかった。

 だからこそ、彼ら自身が愛し合うことになるのは自然だし、そんな彼らがその相手以外の奴を好きになるなんて決してあり得ない。

 故に描かれることが無かったハッピーエンドのその先だって、彼らは幸せに愛し合う事が出来たんだろうなと想像することが出来る。

 

 誰でもいいわけじゃないからこそ、その未来は保証されているのだ。

 絶対的に幸せなものになると――。

 

 ギャルゲーとかラノベとかを読んで、俺が楽しんでいたのはそう言う部分だ。

 物語を読む過程で主人公に感情移入し、ヒロインとの替えの利かないボーイミーツガールな日々を堪能することで、読者である俺自身も、自分だけのヒロインを手に入れたような気分を味わうことが出来る。

 

 それこそが俺がボーイミーツガールが好きな理由だ。

 だが――。

 

 こうして物語の世界に転生して実感した。

 結局それはただの代替行為だったんだって。

 

 俺と主人公は違う。

 それなのに俺は主人公になったつもりで物語を楽しんでいた。

 ヒロインとの掛け替えのない日々を堪能し、そのヒロインのことを推しとして好きになったり――まるで自分のもののように物語に興じていたのだ。

 

 主人公という俺と違った他人のものだと言うのに――。

 

 他人のものを好き勝手に使って、まるで自分のもののように誇って、そしてそれで必死に満たされた気になる――改めて考えると滑稽なことだ。

 

 だって、結局俺は何も得られてなんていないのだから……。

 

 物語の世界を物語として見られていた前世の頃なら、きっと俺はこんな考えに到ることは無かったと思う。

 だけど、実際に物語の世界に転生した今となっては、物語の主人公は読者である俺とは別人なんだなと強く実感することになってしまった。

 だからこそ、そんな考えが頭をよぎるようになってしまう。

 

 そうしてそれに気付いてしまったからこそ、前世の頃のようにギャルゲーやラノベなどを楽しんで、恋愛出来ないことに対する慰めにすることはもう出来ない。

 だって、それは俺のものではない偽物だともう知ってしまっているから……。

 

 だからこそ、俺は、俺は本物が欲しい……!

 

 誰かのものではない俺だけのものを……!

 心から俺が誇れる俺だけの理想のヒロインを……!

 

 そうだ。どれだけ困難があっても手に入れなければならない。

 だって、俺はもう、偽物じゃ満足出来なくなってしまったのだから。

 

 俺は必ず――俺だけの理想のヒロインを――。

 

「お兄様? お兄様?」

 

 レシリアのそんな声が響いてくる。

 

「ん? どうした?」

「さっきからレシィが話しかけてるのに、全然反応してくれないから」

「すまん。ちょっと考え事をしていた」

 

 俺は素直にそう謝った。

 家族の話から思考が明後日の方向に飛んでいたようだ。

 

「考え事って、何を考えてたの?」

 

 レシィが素直にそう聞いてくる。

 俺はそれに少し戸惑って、誤魔化すように考えていたことと別のことを話す。

 

「もう三日目だし、そろそろノルンの両親の捜索の方も進展がないと、不味いかも知れないと考えていただけだ」

 

 俺はそこまで言ったところで捜索の役目を負っていたメンバーに聞く。

 

「そう言えば、今日の成果はどうだったんだ?」

 

 俺のその言葉にユーナが少し言い辛そうにしながらも答えた。

 

「今日もそれらしい人物はいなかったです」

「これで三日連続で成果ゼロか……」

 

 俺は難しい顔をしながらそう呟いた。

 

 ノルンを見つけてからもう三日。

 さすがにそろそろ、ノルンの両親が動き出していないとおかしな時期だ。

 

「何処から流れてきたのかは知らないが、竜なら一日もかからずにここまで来ることは出来るだろうからな……三日も動きがないとなると……」

「ノルンのご両親に何かあったということですか……」

 

 俺の呟きに心配そうな顔をしながらルイーゼがそう返す。

 

「その可能性が高いな」

「それなら、少し早いですが、竜の隠れ里を探しに行きますか?」

「……いや、もう少しだけ様子を見よう。問題自体を自分達で解決して、ここに来る可能性も否定出来ないしな」

 

 来幸の提案に対して、俺は少し考えてそう答える。

 

 竜の隠れ里を探しに行くのも時間がかかる。

 下手に行き違いになる可能性を出すよりかは、元から決めていた日数待って、こちらに来る可能性はないと判断してから動き出した方が良いだろう。

 

 それに緊急を要する事態――黒い竜の襲撃が起こっているのなら、どちらにしろもう手遅れだろうから、そこまで急いで行動する意味はない。

 だからこそ、竜達が解決出来る問題が起こっているという前提で、ここは行動した方が良いと判断したのだ。

 

「結局、朝と同じ事をしろってことね」

「今度はきっと見つかると思いますわ!」

 

 そんなやる気満々のルイーゼの言葉とは裏腹に、結局その日もノルンの両親達が見つかることは無かった。

 

☆☆☆

 

「朝から晩まで……さすがにちょっと気疲れするな……」

 

 その日の夜、エルミナで取った宿の一室に戻った俺は、一緒にその部屋に入ってきたノルンを見て思わず呟いた。

 

 父親枠に入るためとは言え、自分を脅かすかも知れない存在と、常日頃から行動を共にするのはさすがに神経を消耗する。

 

 今のところは上手くいっていると思うが、下手な発言をして父親枠から外れてしまえば、その後は逆レイプロリドラゴンと化したノルンに狙われ続ける日々を送ることになってしまうかも知れないのだ。

 だからこそ、絶対に失敗するわけにはいかないし、それを考えれば普段のノルンとの付き合いですら、緊張しながら行う事になるのは当然の流れだ。

 

「きゃいきゃい!」

「気楽なもんだな此奴は」

 

 何も考えずにはしゃぐ様子を見せるノルンに思わずそんな言葉が漏れる。

 

「ま、ある意味、この気楽さが動物の良さなのかもな」

 

 俺はそんなことをふと思った。

 

 前世では恋人を作ることを諦めてペットを飼い始めたら負けな気がしていたから、ペットを飼うということをしてこなかったが、実際に飼っていたらこう言ったマイペースな動物の姿に癒やされていたのかも知れない。

 

「こう言う行動の意図とかも、自分で勝手に決めつけられるしな、それにそれが間違いだって指摘されることもない」

 

 ノルンは今俺の手にスリスリと体をすり寄せているが、これだって実際は「此奴嫌いだから鱗で刺そう」という考えの行動かも知れない。

 だが、ノルンが人の言葉を喋れない以上、それが真実であったとしても、その事を俺達人間が知ることもなく、俺達は勝手に俺に懐いているからこういうことをしているんだろうと解釈して、その行いを楽しむことが出来る。

 

「恋人を作るのを諦めた人がペットに逃げる理由がよく分かる。自分で自由に意図を決めつけられるから、絶対に裏切られないもんな」

 

 人と人との関係なんて隠し事や裏切りの連続だ。

 そして、それはお互いの愛が必要となる恋愛ではより顕著になる。

 手酷い裏切りを喰らって恋愛を信じられなくなった者が、絶対に裏切らないペットへと依存していってしまうのは、仕方の無い流れなのかも知れない。

 

「もっとも、此奴は人化するから、後々その前提は崩れるわけだが」

 

 娯楽作品とかで安易な人化が嫌いな人の気持ちが今ならよく分かる。

 これまで自分勝手に決めつけて都合のいい夢を見れていたのに、人化して人の言葉を話せるようになれば、それが出来なくなるどころか、これまでの夢も含めて全部ぶっ壊される可能性があるわけだしな。

 

 そりゃ、恐怖を覚えて仕方ないって話だろう。

 

 俺だって、父親枠に入るという計画が上手くいっているというのは俺の決めつけで、実は既に計画が失敗しているという事実を突きつけられるかも知れないと考えると、此奴が人化した時のことが恐ろしくなってくるからな。

 

「まあ、生まれたばかりだし、俺が育てている間は人化しないか」

 

 俺はそんな風に思い直した。

 

「ともかく、此奴が育ちきる前にさっさと、此奴の両親に返したいところだ」

 

 さっさと仕事を終わらせて解放されたい……。

 そんな思いから、俺はそう一言呟いた。

 

☆☆☆

 

 そして次の日――。

 

「パパ! パパ! ボク、お話出来るようになったよ!」

「はは……ルイーゼの言う通り、竜族って知能が高いんだな……」

 

 俺は朝起きたら見事に人化していたノルンを見て、あまりにも早いフラグ回収に、思わずそう思った。

 




 結構難産でした。
 ここだけで何日もかかっちゃいました……。

 『学園生活への期待』の話とかで、ミリーとかの好意を勘違いしてたりするのに、相手の好意を疑ってしまうと言う話が出るのは、おかしくないと思うかも知れませんが、それは自分からだと「もしかしてこの人、俺の事が好きなんじゃ……」と相手の行動を見て、好意を勘違いするわりに、相手から実際に「好きです」などの直接的で明確な好意を言われると、「俺を好きなんてそんなことあるはずない。此奴は俺を騙しているんじゃないか?」と疑い初めるという、非モテが自然と手に入れてしまう、悲しいメンタルによる、面倒くさい考えによるものです。
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