エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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 かなり長くなっちゃいました。
 後書きのQAも含めて三万字くらいありますよ……。

 分割した方が良かったかな……?

 それと今回の話は結構エッチな感じになっているのでご注意ください。



エルフの試練

 

「あ、入口が……!?」

 

 ガシャンと言う音を立てて、入口の扉が完全に塞がれてしまった。

 俺達がそれに驚いていると、何処かから声が聞こえてくる。

 

『このダンジョンは一度入れば、一番奥の部屋に辿り着くまで、抜けることが出来ないんだよ』

「この声――リディアか?」

『その通り! エルフの試練はね、何か問題が起こっても対処出来るように、こうして外のエルフがダンジョン内の様子を監視できるようになってるのさ!』

 

 自慢げにそう語るリディア。

 俺はそんなリディアに思わず不満を漏らす。

 

「ダンジョンを攻略するまで出られなくなるのなら、先に言って欲しかったな」

『ごめんごめん! 私もうっかり、説明を忘れてたよ~』

 

 此奴、本当に忘れてたのか?

 

 俺は思わずそんなことを思う。

 快楽主義のエルフのことだ。面白そうだからと言う理由で、わざと黙っていたということも、十分にあり得るのだ。

 

 だからこそ、俺はこれ以上のうっかり忘れてたを出させない為に、あえてリディアに向かって確認を取る。

 

「あのエルフ像を確保すれば、試練は攻略でいいよな? この入口の件のように、後出しでルールや条件を追加しないよな?」

『そうだね。エルフ像を壊されたりしたら、さすがに失敗扱いにするけど、それ以外にルールの追加は特にないよ~』

「そうか、わかった」

 

 俺はリディアの言質を取ったところで、通路を進み始めた。

 

「こうしてフレイと一緒にダンジョンに潜ると、初めてあったころのことを思い出すわね」

「そうだな」

 

 何処か上機嫌な様子でエルザがそう言う。

 俺はそれに対して同じように過去を懐かしみながらそう答えた。

 

「それにしても――魔物が見当たりませんね」

 

 しばらく歩いていると来幸がそう呟く。

 ノーティス公爵領でダンジョンに挑んだ時は、それなりの頻度で魔物が湧いてきたが、このダンジョンは未だに魔物の姿が見えない。

 

「エルフがダンジョン自体も改造しているらしいからな……何かおかしなことになってるんだろう」

 

 俺はそんなことを言いながら、何が起きてもいいように警戒しつつ歩く。

 そうして歩いていると、遂に一つ目の部屋がやってきた。

 

「これは……何で坂が?」

 

 このダンジョンで初めて現れたフロア。

 それは部屋の入口から出口までが、下り坂になっているだけの場所だった。

 

「ここにも魔物はいないね」

「ただ坂があるだけなんて、何なのこのダンジョン」

 

 その部屋の様子を見て、レシリアとエルザがそんな感想を口にする。

 

「ひとまず、先に進もうか」

 

 俺達はそう言って、坂を下っていく。

 そして、少し下ったところで、唐突にゴゴゴという音が響いてきた。

 

「何だ? この音……」

 

 その音に俺が思わず音の発生源を探して振り向くと、入口側の迷宮の壁の上部分に、突如として穴が発生し、そしてそこから異音が響き始めた。

 

「嫌な予感がするんだが……」

「わたくしも同じですわ……」

 

 俺達がそう言ったのと同時に、穴から大量の液体が流れ出してきた。

 それは坂を伝い、スピードを上げながら、俺達に迫ってくる。

 

「っ! 走れ! 出口まで!!」

 

 俺はそれだけ言うと出口に向かって走り始めた。

 だが、どう見ても迫り来る波のスピードの方が速い。

 

「っち! 転移を……」

 

 足で逃げることを諦めて、転移を使おうとするが――。

 

「転移出来ない!? まさか……」

「ああっ!」

 

 俺がそう呟いたの同時に、ルイーゼが足を滑らせる。

 下り坂で俺の真後ろにいたルイーゼは、そのまま俺にのしかかるようにして倒れ込み、それのせいで俺もまた地面に転ぶことになった。

 

「クソ! ここでかよ!?」

「申し訳ありませんわ!」

 

 転移も使えず、転んだせいで、もはや逃げることは叶わない。

 ふと、迫ってくる液体の波を見ると、それに流されてエルザ達、他の面子も俺達の方へとやってくるのが見えた。

 

「うわあああああ!?」

「きゃああああああ!?」

 

 流されてきた者達も含め、団子状になりながら、俺達は液体の波に流されていくことになってしまった。

 それでも何とか立ちあがろうとするが、ぬるっと液体で手が滑って、そのまま再び転んでしまう。

 

 それを受けて、俺は思わず叫んだ。

 

「この液体……ローションか!?」

 

 迷宮の壁の上から流れてきたのはローション的な滑った液体だった。

 その為に、まるでローション坂を上るバラエティのように、上手く立ちあがることすら叶わず、ひたすらに他の者を巻き込んで、俺達は滑り落ちていく。

 

「く……と、止まったか……」

 

 流され続けていた俺達は、やがて下り坂を下りきる。

 だが、それと引き換えに、俺達は完全に絡まり合った形となっていた。

 だからこそ、俺は自分の上に乗っている相手に対して言う。

 

「来幸、悪いが退いてくれ」

「はぁ、はぁ……フレイ様……」

 

 だが、来幸から帰ってきたのは了承の言葉ではなく、荒い息づかいだった。

 

「来幸? どうした?」

「フレイ様……お慕いしています……。んっ、あっ!」

 

 来幸は惚けた顔でそう言うと、俺の上から退くのではなく、そこに居座り、粘液で滑った体を、何度も俺に擦り付けるように動き始めた。

 

「おい!? 何をしている!?」

 

 俺はそう叫び、来幸をどかそうと手を動かすが――。

 

「あっ! あっ! 師匠ぅ……師匠ぅ……!」

 

 来幸と同じように心ここにあらずといった表情のユーナが、俺の右腕をまるで抱き枕を抱きかかえるようにがっちりと掴み、そしてその掴んだ右腕に対して胸と股を擦り合わせるように何度も小刻みに動く。

 

「ユーナまで……! まさか他も……!?」

「あの時よりも、んっ!」

 

 見ればエルザがいつかのエロゲスライムの時のように、俺の足を自分の足で挟み込み、そして股を擦り付けるように動かしていた。

 

 加えて、エルザの反対側の足には――。

 

「パパ! パパ! ボク、なんかおかしい! ここがムズムズする! なんだろうこれ! こうするとなんか気持ちいい!」

 

 いつの間に人化をしていたのか、そう言いながら、エルザを真似るかのように、俺の足に抱きつき、そして小刻みに体を動かすノルンの姿があった。

 

 そして、それだけではなく――。

 

「うわっ!?」

「えへへ。お兄様の臭いだぁ~。それにお兄様の味がするぅ~」

 

 ペロッとなめられた感覚に思わずそんな悲鳴を上げて振り向くと、俺に顔を埋めて臭いを嗅いでいたレシリアが、更に俺の事を舐めようと動き出していた。

 

「な、舐めるな……! 兄を舐めるんじゃない!」

 

 ペロペロと耳や顔を舐められ、そしてそれは首筋へと向かう。

 妹にそんなことをされるという事態を何とかしようと、無事だった手を動かそうとすれば、その手はルイーゼに押さえられてしまっていた。

 そしてルイーゼは、押さえた俺の手を自分の服の中に入れ、自らの胸にその手を押し当てて、動かし始めた。

 

「お前は俺の手を何処に押し当てているんだ!」

「んっ! ダーリン……わたくしの胸を触ったのは初めてではないでしょう? それどころかもっと凄い所も……殿方にそんなことをされたのはダーリンが初めてですわ。責任を取ってくださいまし。もっとわたくしを触って欲しいのですわ……」

 

 そう言って、胸に当てた手を、お腹など全身へと動かして、這わせるようにして無理矢理体を触らせていく。

 やがて、その手はルイーゼの大切な所へと向かい始めていた。

 

「お前ら! やめろー!!」

 

 俺だけのヒロインの為に清い体でいたい俺からして見れば、まさに地獄のような状態にこの場は陥っていた。

 そんな中で、まだ正気を保っていたシルフィーが、顔を真っ赤にし、息を荒げて苦しそうにしながら、叫ぶ。

 

「こ、これは……! エルフ特製の媚薬なのです……! この滑った液体の中に、それが混ぜ込まれているのです!」

「つまり、発情状態にさせられてるってことか……!?」

 

 俺は何故こんな状態になってしまっているのかを理解する。

 様々な霊薬を扱うエルフとして、薬物への耐性が強いのか、エルフであるシルフィーは何とか踏みとどまっているが、それ以外の者が、見事に媚薬にやられてしまい、正気を失った発情状態に陥らされてしまっているのだと。

 

「師匠、しましょう?」

 

 いつの間にか手の拘束を止めてたユーナが俺のズボンへと手を掛けていた。

 そして艶やかな顔で行為をすることを誘ってくる。

 

「駄目です! 私で練習しないと……フレイ様のそれを知っている……私こそが何よりも適任です……!」

 

 そう言って、ユーナを止めて、自らが代わりを務めようとする来幸。

 

「知ってるって! 貴方はメイドの立場を使って、何をしてるんですか!」

 

 ユーナはそう言って、来幸を追い出そうとする。

 そんな中で、エルザもその争いに参加を始める。

 

「フレイは誰の者でもない――」

 

 そう自信満々に言うエルザ。

 俺は誰の者でもないと言って、助けてくれるのかと思いきや――。

 

「あたしのものよ!!」

 

 まさかの独占宣言をして、二人と押し合いを始めた。

 

「違う! パパは! ボクのパパだ!」

 

 そう言って、そのエルザにノルンが食ってかかる。

 

 明らかにおかしな事になっている俺以外の者達。

 だが、そんな中で俺は不思議に思った。

 

 何でだ……? 何で俺には媚薬が効いていない……?

 

 俺は状況を打壊するために必死でそれを考える。

 このままでは俺の貞操が危ない。

 

 エルフの媚薬の効果がやばいのか、それともイベントをクリアしたことで、俺に好意を持ってしまっていることが影響しているのか、来幸達への発情効果の効きが洒落にならないものになっている。

 

 このままだと何をされるか分からない状況に、危機感を抱いた俺の脳は高速で事態の把握を始めた。

 そして、そこで俺は自分の手に嵌まった指輪に気付く。

 

「そうか状態異常耐性――! これは状態異常扱いか! それなら!」

 

 俺はそう言うと意を決して状態耐性リングを外そうとした。

 だが、それを妨害しようとするように、ルイーゼが俺の手の拘束を強め、改めて全身を触らせようとしてくる。

 

「駄目ですわ、ダーリン。ダーリンはもっとわたくしのことを触って――」

「そうはさせないのです!」

「きゃっ!?」

 

 俺の手を再度好き勝手に使おうとしたルイーゼに、シルフィーが飛び込むようにしてタックルを行い、俺の側から弾き飛ばす。

 自分の主人を吹き飛ばすその行いによって、俺の手は自由になった。

 

「助かったシルフィー!」

「同士として当然なのです!」

 

 俺はシルフィーのその言葉を受けながら状態耐性リングを外す。

 これによって、俺自身が発情してしまう可能性があるが、現状を打破するために、背に腹はかえられない。

 

「レシリア! 指を出せ!」

「お兄様ぁ……」

 

 惚けながらも左手の薬指を出すレシリア。

 俺はこの状況では致し方ないと、その指に状態耐性リングをはめた。

 

「お兄様の指輪ぁ……これでレシィが――あれ?」

 

 状態耐性リングをはめられたことで正気に戻ったレシリア。

 周囲の状況に困惑しているレシリアに向かって俺は叫んだ。

 

「リフレッシュ! 状態異常を回復しろ!!」

「えっ!? あっ! うん! リフレッシュ!」

 

 意図に気付いたレシリアはその回復魔法を発動させる。

 それによって淡い光が全員を包み――やがて発情状態に陥っていた来幸達の精神を、元通りに回復させた。

 

「……」

 

 正気に戻った来幸達は、それまでの自分の行いを振り返ったのか、興奮で真っ赤になっていた先程と違って、羞恥の気持ちで顔を真っ赤に染める。

 

 何も言わずに固まってしまった来幸達に、俺は言った。

 

「……退いてくれるか?」

「は、はい……」

 

 素直に俺の上から降りていく来幸達。

 そして、俺から降り終わった後に弁明をするように話し出す。

 

「フレイ様、あれは――」

「わかってる。薬の作用だろ? 俺は全く気にしていないから大丈夫だ」

「……そう……ですか……」

 

 気を遣って俺は何も気にしていないと言ったのに、まったく相手にされていないのも、それはそれで何かやだ、みたいな複雑な表情でそう呟く来幸達。

 

 俺はそんな彼女達のことは無視して、この状況を見守っていたであろう、今回の件の主犯に大声で問いかけた。

 

「おい! リディア! これはどういうことだ!?」

『え~? 何のこと~?』

 

 明らかにニヤニヤと笑いながら言ったその言葉に俺の怒りは頂点に達する。

 

「わかっていてそう言ってるだろ! 魔物が出てくることもなく、エルフの媚薬なんてものを使った罠があるなんて、明らかにこのダンジョンは、侵入者と戦うという本来のダンジョンの意図から外れている!」

『ふふふ、はははは~!』

 

 俺がそう言うとリディアは大きな声を上げて笑い出した。

 そして種明かしを楽しむように俺達に向かって言う。

 

『このダンジョンは未熟なエルフを一人前にする施設さ! そう、エルフとして未熟な――恥ずかしがり屋さんな女の子を、どんな相手でも進んで股を開くような立派なビッチに育てあげる! エルフ特製の矯正施設なのさ!』

「未熟なエルフってのは、お前ら腐れエルフの観点でかよ!」

『そうだよ~。シルフィードが言葉で言って分からないて言うならさ、この施設を使って、その体に分からせてあげるしかないもんね? 何も考えずに色んな相手とただ肌を重ねる――その快楽の味をさ!』

 

 そう言うと再び笑い出すリディア。

 

「ふざけるな! 頭のおかしい施設に放り込みやがって! 今すぐこのダンジョンを抜け出して、お前を叩きのめして許可証を手に入れてやる!」

 

 怒りに任せて俺がそう言うと、リディアは煽るように言う。

 

『あれあれ~。そんなことをしてもいいのかな~』

「何が言いたい?」

『君達は運命の相手と添い遂げることを目指しているんだよね。その信念があるのなら、どれだけ快楽への誘惑があったとしても、それに耐え抜いて、運命の相手が見つかるまで、自分は清い体でいなきゃいけないわけだよね?』

 

 リディアはそう俺とシルフィーの信念について語る。

 その上で、嘲笑うようにして言った。

 

『ここでこのダンジョン攻略から逃げるってことは、このまま進んだら貴方達は、快楽に負けると思ったということでしょ? それは貴方達の信念を貫けないと、自らで証明したということだよね?』

「それは――」

『関係ない……とは言わせないよ?』

「っち!」

 

 このダンジョンを攻略しないことと、俺達の信念は関係ない。

 そう言おうとした俺の言葉に被せるようにリディアはそう言う。

 

『あそこまで啖呵を切ったんだからさ、見せてよ! 貴方達が言う運命の相手を見つけるという信念を! それで幸せになるという覚悟を! 貴方達の足掻きで! 私を楽しませて欲しいな! あははははっ!!』

 

 それだけ言うとリディアの声はしなくなった。

 俺はリディアに見世物にされている怒りで手を強く握りしめる。

 

「拙のせいで申し訳ないのです……」

 

 そんな俺を見て、立ちあがったシルフィーは申し訳なさそうにそう言った。

 そのシルフィーに対して、俺は何てことない態度で答える。

 

「いいさ、やることは変わらないからな」

「フレイは、このままダンジョンを攻略するつもりなのです?」

「ああ、俺はな、俺の志を馬鹿にされることだけは許せないんだ。だからこそ、何処かで高笑いしているであろうリディアに見せつけてやろう! 運命の相手を見つける――俺達のその志の強さと、その思いの崇高さって奴を!」

 

 俺はそう言うと、ローションでベトベトになった状態のまま立ちあがった。

 そして、そんな俺の元にレシリアがやってくる。

 

「お兄様、この指輪……」

 

 そう言って、レシリアは外した指輪を返そうとしてくる。

 だが、俺はそれを手で止めて、レシリアに向かって言った。

 

「それはレシリアが持っていてくれ、またさっきのような何らかの異常な状態にさせる攻撃を、相手がしてくるかも知れない。そうなった時、聖女の魔法でそれを治癒出来るレシリアが、まともに動ける状態じゃないと困るからな」

「うん、わかった!」

 

 俺が理由を言うと、レシリアはそれを素直に受け止め、再び自分の左手の薬指にはめて、その指輪がはまった指を楽しそうに見回した。

 

「えへへ、お兄様の指輪!」」

 

 正直に言うと別の指にはめた方がいいのではとも思うが、まあ、幼い妹がつけるくらいなら別にいいかと考え、そのまま出口へと向かう。

 

 そうして俺は粘液で服がベトベトになったまま、同じように服がベトベトのままとなっている来幸達とともに、先に続く扉へと手を掛けて、その中へと入った。

 

 そして中に入って見たのは――。

 

「何だこれ――大きなベットが一つだけ?」

 

 巨大なベットがぽつんと中央に置かれた新たなフロアだった。

 先に進むための扉と思われるものは、完全に施錠された状態になっている。

 

『ようこそ、第二の部屋、情交の間へ!』

「名前だけで嫌な予感しかしない部屋だな……」

『その通りだね。ここはいわゆるセッ○スしないと出られない部屋ってやつさ! 一つ前の弄りの間で興奮した後に、この部屋でパーティーメンバーと、強制的に行為をさせる! それがコンセプトなんだよ!』

 

 俺はその言葉にわなわなと震えながら叫ぶ。

 

「強制的に行為をさせるって! 何が『信念を見せてよ』だ! もとから、そんなことをさせる気がさらさらないじゃないか!」

 

 信念を見せて欲しいと言った割りに、その信念を無くさないと、先に進めない仕組みを用意していたことに、俺は怒りからそう叫ぶ。

 

『あはは、ごめんね~。でも、どんなものだって、やってもらわないと、その良さは分からないからさ~。と言うわけでさっそくやってみようか!』

 

 だが、圧倒的な優位に立つリディアはそれを受け流し、さっさと行為を始めろと、俺達に促し始めた。

 

「誰がそんなことをするか」

『まあ、そういうのは勝手だけどね。その部屋の仕組みは、もう始まってるよ?』

「なにを……」

 

 俺がそう言った時、俺は自分の体に起こった異変に気付いた。

 

「なんだ? 体が動かない……!?」

 

 まるで金縛りにあったかのように体が動かない。

 俺がそう言ったのを皮切りに仲間達もその事態に気付く。

 

「師匠! わたしも動きません!」

「どうなってんのよ! これ!」

「何これ!? パパ! 助けて!」

「レシィも動けないよ!?」

「レシリア様もという事は状態異常ではない……?」

「まさか、またわたくしのスキルが……」

「いや、それとは何か違う感じがするのです!」

 

 来幸の言う通り、レシリアが動けないと言う事は、状態耐性リングによる耐性で、この事態を防げていないと言うこと、つまりは状態異常によるものではない。

 

 それに、シルフィーが言う通り、ルイーゼのラッキースケベによる強制的な行動の制御とも違う気がする……。

 向こうは勝手に体が動き、絶対に抗えないものだが、こちらはどちらかと言うと、外側から無理矢理、体をそうなるように動かされている感じだ。

 

「体が……勝手に!?」

 

 来幸がそう口にするのと共に、俺も含めて全員の体が勝手に動き出し、そして自らの服を脱ぎ始めた。

 

「クソ……!? どうなってる……!? 何が……」

 

 まるで原因が分からない状況。

 そして抵抗によって妨害は出来ているが、完全に防ぐことが出来ず、少しずつ脱がされていく服というタイムリミットの存在。

 

 焦りが広がる中で、来幸がこの状況の原因となる存在に気付く。

 

「フレイ様! 影です! 全員の影が!」

 

 来幸の声に従って、影を見ると、それぞれの影に、何らかの魔物が取り憑き、影を操ることで、俺達の肉体を動かそうとしているのが見えた。

 

「此奴が俺達の体を操っているのか!」

『あ~あ。もうバレちゃったか~』

 

 俺達がその影の魔物に気付くのと同時にリディアがそう声を上げる。

 

『その通り! 其奴らシャドウバインドは、影に潜んで相手を縛り、その行動を操ることが出来る魔物なのさ! 特にここにいる個体は私達エルフが特別に動きを仕込んだ特殊な個体でね! その部屋に入ったのがどれほどうぶでマグロな子だったとしても、勝手に体を操作することで、歴戦のテクニシャンのような動きで行為を行い、極上の快楽を味合わせてくれる優秀な子達なのさ!』

 

 リディアはそう自慢げに語る。

 

「勝手に体を動かして行為をさせるとか、趣味が悪いな……!」

『そうかな? 初めての行為で失敗することもなく、むしろプロの技を覚えることが出来るんだから、とってもいいことだと私は思うけど?』

 

 相変わらず意見の合わないエルフの言葉を聞きながらも、俺はシャドウバインドから逃れようと動く。

 

『むだむだ~。しっかりと強化してあるそのシャドウバインドは、人の力じゃ抜け出すこと何て出来ないよ! 貴方達に残された選択肢は、それに操られて大乱交をし、シルフィードと一緒にめくるめく快楽の日々を堪能することだけさ!』

 

 リディアの言う通り、力でシャドウバインドを引き剥がすことは難しいようだ。

 そして、体の動きを制御される以上、背後にいるシャドウバインドを魔法などで狙うことは難しく、他の者に取り憑いたシャドウバインドを狙おうにも、動き回られて回避されるような状態になってしまっている。

 

 そうこうしている間に、他の者はまだ服を脱がないように抵抗している中で、一人早々に全ての服を脱ぎ捨ててしまったエルザが言う。

 

「体が勝手に……! 悪いわね! フレイ!」

 

 何処か、野獣のような目を見せながら、そう言って俺に向かって、抱きつくように飛び込んでくる。

 

 目の前に迫り来る、生まれたままの姿のエルザ。

 だが、俺はこの状況を乗り越える手を既に見つけていた。

 

「これがラッキースケベではないと言うのなら――! 転移!」

 

 それによって、俺は全く別の場所へと転移する。

 そして、それに気付いたエルザは叫んだ。

 

「しまった! 転移があった!」

 

 ……しまったって言葉、ここで出るのはおかしくない?

 

 俺はそう思いながらも、取り寄せでナイフを手元に召還する。

 当然、それを許さないシャドウバインドは、それを俺の手から落とすが、それこそが俺の狙いだった。

 転移の力を利用し、落としたナイフを移動させ、加速させることで、鷹の目のイヤリングの三人称視点で把握した、自分の影にそれを突き刺す。

 

「ぎしゃあ!?」

 

 ナイフが刺されたシャドウバインドは、そんな断末魔の声をあげて死に絶える。

 

『ああ! 育てるのに苦労したのに!』

 

 そんなリディアの嘆きの声を聞きながら、俺は更にナイフを取り出し、その場にいる全員の影に向かって投げつけた。

 

「ぎしゃああああ!?」

 

 それによって、全てのシャドウバインドが倒されて、その場にいる全員が、体の自由を取り戻す。

 そんな中で、ノルンが俺に向かって、抱きついてきた。

 

「パパ! 怖かったよ!」

「お~。よしよし。恐ろしい魔物はパパが倒したからな。もう怖がらなくて大丈夫だ。……それと服をさっさと来てくれ、いつも言っているが淑女の嗜みだぞ」

 

 俺がそう言うとノルンは服を着た状態に変化した。

 俺はそれを見て、思わず思う。

 

 最初に出会った時は全裸で、それ以降は服を着た状態で人化するけど……こう言う人化する奴らの服ってどう言う扱いなんだ? 全裸の竜から変化しても着てるから、好きなように変化出来る肉体の一部って感じのものなのか?

 

 追求してはいけない深淵を垣間見たような気になりながらも、俺も脱ぎ捨てた服を着込み、他のメンバーもいそいそと服を着込み直す。

 そんな中で、ユーナが、エルザに軽蔑の目を向けて言った。

 

「エルザさん。さっきのはないと思います」

「あ、あれはシャドウバインドに操られて――」

「それは分かりますけど、もっと抵抗できましたよね?」

 

 同じように操られていたユーナからして見れば、あの早さで服を脱いで俺に飛びかかったのは、明らかに自分の意思でやっていたように見えたようだ。

 

「そ、それは――」

 

 厳しい追求の目にさらされたエルザは思わず口籠もる。

 

「フレイ様も、それ以外の方も、全員がエルフの思惑に乗らないように、快楽に墜ちないように必死で頑張っている中で、あっさりとエルフの手口に墜ちて、そしてフレイ様を一人抜け駆けして襲うなんて――やはり貴方は卑しい雌犬ですね」

 

 ユーナと同じように軽蔑の目でエルザをみる来幸。

 エルミナの事も合わせて罵倒され、そして来幸とユーナ以外にも、厳しい目で見られたエルザは、耐えきれなくなったのか土下座をして言った。

 

「う、ぐ……すみませんでした。魔が差してしまったんです。あたしはそこのメイドが言う通り、卑しい雌犬です……」

 

 そんな風にエルザが謝る中で、リディアの声が再び響く。

 

『全部殺すなんて酷い! 其奴らがどれだけ価値があるのかわからないのかい!? 何百年と技術を蓄積した、エルフの妙技を受け継ぐシャドウバインドなんだぞ!』

 

 憤りを露わにしてそう言うリディア。

 その声を聞くだけで、むしろ俺には笑みがこぼれる。

 

「それは良かった。これで悪の芽を一つ摘めたな」

『っ~!? いいよ! それならそれで! どちらにしろ、その部屋を出るためには誰かとセッ○スしないといけないんだ! プロの技で行為が出来なくなったんだから、素人同然の君達で苦労しながらエッチすればいいさ!』

 

 吐き捨てるようにそう口にするリディア。

 だが、何かに気付いたのか、その声色に愉悦が混ざり出す。

 

『そうだよ。よくよく考えて見れば、そっちの方が面白いかも知れない。お互いに初めての行為に対して貴方達が、どんなたどたどしい愛し合い方を見せてくれるのか、それをじっくりと拝ませてもらおうじゃないか!』

 

 そう言った後、『ほら、さっさとセッ○スしろよ~』と何度も煽りのような言葉を俺達に向かって投げつけるリディア。

 

「本当に此奴、しつこいし、やかましいな……」

 

 俺は思わずそんなことを呟く。

 その時、ノルンが服の袖を引っ張っていることに気付いた。

 

「どうしたノルン?」

「ねえ、パパ。さっきから気になってたんだけど、セッ○スってなに?」

 

 唐突に娘からエロ用語について質問を受ける。

 まさか、恋人もまだ出来た事ないのに、そんな事態が起こるなんて思わなかった俺は、思わず回答に困って固まった。

 

「……いや、ノルンにはまあ早い。大人になってからの話だな」

「ええ~。教えて~」

 

 ノルンの言葉を無視して、俺は扉へと目を向ける。

 変にエロ用語を教えて、逆レイプロリドラゴンに覚醒されても困るため、俺はノルンの質問に答えることを避けたのだ。

 

「しかし、どうするつもりですかフレイ様?」

 

 俺の側に来た来幸がそんな風に問いかける。

 俺はそんな来幸に笑顔を見せて言った。

 

「もう、突破する方法は見つけているんだ」

「え!? そうなんですか!? さすが師匠です!」

 

 俺の言葉を聞いたユーナがそんな声を上げた。

 そして、シルフィーが俺に向かって聞いてくる。

 

「いったい、どうやって突破するのです?」

「それは勿論決まっている……! 物理で越えるのさ!」

 

 俺はそう言うとおなじみの鉄球を出して、繰り返し落下をさせることで、その鉄球をどんどん加速させていく。

 

 これがゲームとしてプレイしているのなら、俺はこのセッ○スしないと出られない部屋に対して、為す術なく敗北することになっていただろう。

 なぜなら、ゲームにおいてはマップというのは絶対だからだ。

 

 だが、ここはゲームが現実化した世界。

 マップなんてものは存在しないし、自由に行動することが出来る。

 そしてここが現実化していると言うのなら――。

 

「絶対に壊れない――不壊属性なんてものがあるわけもない! どんなものであろうとも……! 殴ればいずれは壊れるんだよ!!」

 

 俺はそう言うと鉄球を発射した。

 鉄球は扉や迷宮の壁へとぶつかり、そこを大きく破壊する。

 

「はははっ! まだまだ! 幾らでも球はあるぞ!」

 

 俺は再び鉄球を転移させ、まるでマシンガンのように、何度も加速させて、何度も迷宮へとぶつける。

 通常では壊せないと言われるほど、強固さを誇る迷宮の壁が、何度も鉄球をぶつけられたことで、次々と抉られ、そして破壊されていく。

 

「はははっ! 物理は全てを乗り越える! 理不尽なエロゲーのお約束を! この俺が全て! ぶち壊して行ってやろう!」

 

 その言葉とともに、俺は迷宮の壁だけではなく、その先にあったエルフが用意したフロアも、鉄球を用いてズタズタに破壊して行った。

 

☆☆☆

 

「そ、そんな!? 私達の迷宮が……壊されていく!」

 

 リディアは迷宮の入口にあった、この迷宮を監視するための部屋で、次々と迷宮を破壊していく、フレイの姿を見て、思わずそんな悲鳴を上げた。

 

「ああ、何の障害物もない部屋で、尿意を促進する霧を散布して、強制的におしっこプレイをさせて、羞恥心を削り取り、新たな扉を開かせる尿の間が! 霊薬で感度100倍にしてから、ハケなどの様々な道具で全身を弄り、肉体の全てでイクように開発する目覚めの間が! それだけじゃない。その先にあった他の部屋まで!」

 

 エルフの試練は未熟なエルフ――性に消極的な陰キャエルフ達を放り込み、性に奔放な悪のパリピエルフへと生まれ変わらせるための矯正施設だ。

 その為に、徐々に性への抵抗をなくさせ、そしてその上で、様々な性癖や、あらゆる快楽への興味に目覚めるように、それこそありとあらゆるエロを行わせる仕組みが各フロアごとに備わっていたのだ。

 

 それはある意味で快楽主義を極めたエルフの傑作と言っていいものであり、エルフで無かったとしても、このダンジョンに潜れば、立派なビッチやヤリチンへと、成長させることが出来るような代物なのだ。

 

(実際に里のエルフが人族を連れて来て、このダンジョンに放り込んだ時は、ちゃんとエルフ色に染め上げることが出来たって言うのに……! こんな運命の相手なんてものを信じている奴を相手に……!)

 

 目の前の事が理解出来ずに、思わず指を噛むリディア。

 彼女が為す術なく見ている間にも、ダンジョンは次々と破壊されていく。

 

「はは……だが、その快進撃もここまでさ!」

 

 力なく笑ったリディアはそう気合いを入れ直す。

 

「この先には最強の守護神がいる! 其奴は鉄球じゃ倒せない!」

 

 リディアが映像を見る中で、フレイの鉄球は何かに受け止められた。

 そして、その存在に気付いたフレイは思わず叫ぶ。

 

『此奴は――エロゲスライム!?』

「ははは! そうだよ! それこそが、このダンジョンの最奥の部屋を守る最強の守護神! どんな相手だろうと、快楽の墜ちさせる最強の魔物さ!」

 

 リディアはフレイ達に聞こえるようにしてそう叫んだ。

 

「そうだよ。このスライムが負けるはずがない。だって、実証実験の為に各地にダンジョンを放逐させた時は、女性であるならS級冒険者ですら、為す術もなく快楽墜ちさせた魔物だもん」

 

 リディアは自分に信じ込ませるようにそう口にする。

 

「私達エルフが、あらゆる霊薬や魔法を使って改造し、作り出した最強のエロスライム――私達の技術の集大成が負けること何てあるはずがない!」

 

 リディアはそう言葉にし、再び映像へと目を向け直した。

 

☆☆☆

 

「これは……あの時の……」

 

 エルザがトラウマを刺激されたのかそのようなことを口にする。

 そして、俺も見覚えのあるそれを見て、思わず声をあげた。

 

「此奴は――エロゲスライム!?」

『ははは! そうだよ! それこそが、このダンジョンの最奥の部屋を守る最強の守護神! どんな相手だろうと、快楽の墜ちさせる最強の魔物さ!』

 

 鉄球を止める何かがいると思ったら、まさかのエロゲスライムだった。

 スライムの液体で出来た体には、加速させた重量物をぶつける俺の攻撃は、あまり相性がよくない。

 

「っち! 厄介なものを出してくる……!」

『ははは! 幾ら貴方でも! これは越えられないだろう! そのスライムによって、全員快楽墜ちしてしまえばいいのさ!』

 

 そんなリディアの声が聞こえる。

 だが、俺はそんなリディアの台詞に、思わずにやりと笑った。

 

「確かに初見だったら、為す術もなく負けていたかもな」

『え?』

「だが、俺は此奴と以前に戦ったことがある!」

 

 俺はそう言うと取り寄せで薬が入った瓶を取り寄せた。

 そしてそれを俺はエロゲスライムに向かって投げる。

 

「一度戦った敵は! しっかりと対策を取って! 次あった時は確実に倒せるようにするのが! ゲーマーってもんだんだよ!」

 

 何処にどんな敵が出るのかを把握し、耐性装備を用意して準備万端で挑むのが、一般的なプレイヤーの遊び方というものだろう。

 

 俺はそれに習って、以前に戦ったエロゲスライムの断片と魔石を渡したケイトスに、エロゲスライム用の特殊な薬剤の開発を依頼していたのだ。

 

 今投げた瓶の中身はその成果。

 あらゆるエロゲスライムを完封する、最強のエロゲスライム特攻を持った、インフィニット・ワンには存在しなかった――この世界オリジナルの薬なのだ。

 

「エロゲ世界であろうとも……! 二番煎じはいらないんだよ!」

 

 俺はそう言うとナイフを投げて瓶を割る。

 それによって飛び出した中身が、エロゲスライムへとかかり、エロゲスライムは苦しそうに蠢きながら、その体を蒸発させていく。

 

 やがてエロゲスライムは、そのまま死に絶え、魔石へと転じた。

 

『そ、そんな……馬鹿な……!? 嘘だっ!? スライムが……スライムが倒されるなんて!? そんなのあり得ない!? 嘘だ! 嘘だ! 嘘だぁああああ!!』

 

 事実を受け入れられないリディアのそんな叫びが聞こえる。

 

「これはスカッとするな」

 

 俺はそんなリディアの声に達成感を覚えながら、エロゲスライムの魔石を回収し、その先にある扉に目を向ける。

 

「さて、ぶっ壊すか……」

『ま、待って! ちょっと待って!』

 

 俺の言葉を聞いたリディアは発狂から立ち直り、そう俺に言ってきた。

 

「今更何だよ。迷宮を壊さないってのはルールにはない。このダンジョンに入るときに、俺はしっかりと確認したはずだぞ? 他のルールはないって」

『そ、それは分かってるよ! だからこそ、これまで文句を言わなかっただろう! でも、さすがにそこを壊すのは止めさせて貰うよ!』

「何でだよ?」

 

 俺は素直にリディアにそう問い返す。

 そんな俺にリディアは言った。

 

「そのスライムは最奥の扉を守る番人なんだ。つまりその先にはエルフ像が置かれた部屋がある。そんなところをその鉄球で吹っ飛ばしたら、エルフ像も粉々になっちゃうよ! 最初に言ったよね? エルフ像は万全の状態じゃないと、エルフの試練を達成したと認めないから!」

「そう言えば、そうだったか」

 

 俺は鉄球で次の部屋を吹き飛ばすのを止めて、目の前にある扉を見る。

 扉はこのダンジョンに挑んでいる人数分存在していた。

 

「一人一個の扉か――何が待ち受けているんだか」

「普通にエルフ像が置いてあるだけじゃないんですか?」

 

 俺の言葉にユーナがそう言う。

 

「ここまで色々とやらかしたエルフが、素直にエルフ像だけをおくか?」

「あまり、想像できませんわ」

 

 俺の言葉にルイーゼが頷く。

 

「それでも、進むしかないでしょ?」

「そうだな。……もしもの時は壁を破壊するから、全員、中に入るときは、壁から離れた場所にいるようにしてくれ」

 

 エルザの言葉にそう言うと、俺達はそれぞれの扉を決め、一斉にその中へと足を踏み入れた。

 

☆☆☆

 

「ふう、何とか、部屋を壊されずにすんだか……」

 

 リディアはその様子を見ながら一人呟いた。

 スライムが倒されたことに動揺してしまったが、それでも最後の部屋に行かせるという目的は達成することが出来たのだ。

 

「貴方達の予想の通り、そこはただの部屋じゃない」

 

 そう言って、リディアは笑う。

 シルフィードを快楽に染め上げる最後の一手は残っていると。

 

「その部屋は寝取りの間。幻術によって、部屋の中にいるエルフが、その時、自分が最も愛している相手に見える特別な部屋さ」

 

 寝取りの間は、部屋に入ってきた者の異性となるエルフがその部屋に召還される仕組みになっている。

 そうして、召還されたエルフは、部屋の仕組みである幻術によって、入ってきた者が最も愛していると思う存在へと姿を変えるのだ。

 幻術によって姿を変えたエルフは、部屋の仕組みによって、その存在になりきり、部屋に入ってきた者を誘惑し、情交を交わすために動く。

 エルフの言動や或いは行動は、幻術によって補正がかけられ、部屋に入ってきた者が、愛している相手に望む言葉へと置き換わってしまう。

 それによって、エルフを愛している相手だと誤認し、部屋に入ってきた者が、そのエルフと行為を初めてしまうと、その行為のさなかに幻術をあえて解き、自分が全く違う相手としていたことを知らしめるのだ。

 

 だからこそ、寝取り間とこの部屋は呼ばれている。

 何故、そんな回りくどいことをするのか。

 その理由は――。

 

「まさにビッチに落とすために最適の部屋だよね! 好きな相手と思って肌を重ねた相手が、実は全く違う別人だったと気付く……その時に、その子は気付くのさ! 相手が誰であっても気持ちいいのは変わらないって! そうして、その子は立派なビッチへと――一人前のエルフへと成長するのさ!」

 

 このスライムの間に来るまでの部屋は快楽と性癖の追究だ。

 それによって、性に奔放になることは出来るが、それだけではビッチやヤリチンに――完全なエルフとして完成することは出来ない。

 

 何故なら、快楽を得るための相手を、シルフィードのように、添い遂げると誓った、運命の相手だけに絞ることが可能だからだ。

 

 快楽を得るということを知るだけでは、より大勢の相手とするという、ビッチやヤリチンの思想には繋がらない。

 しっかりと節度を持っている者なら、快楽を得ることにのめり込むようになっても、その相手を自分の好きな相手だけにするだろう。

 つまり、このエルフの試練は、ただ愛し合う二人のプレイの幅を増やしただけ、という形になり、その者を一人前のエルフにするという目的が果たせなくなる。

 

 だからこそ、この寝取りの間が最後に存在している。

 

 これまでの様々なフロアで、度重なる快楽によって身も心もボロボロになり、ようやく辿り着いたスライムの間。

 そこで、圧倒的なスライムと戦って敗北し、それでもこれが最後だと知って、これまで共に乗り越えてきたことをパーティーメンバーである異性と喜び合う。

 

 そうして、油断して安心した所で、寝取りの間に放り込むのだ。

 

 これまでのダンジョン攻略で、苦楽を共にしてきた、パーティーメンバーである異性との仲は深まっているだろう。

 互いに快楽を貪る形となるフロアの特製を考えれば、それによって全てをさらけ出した相手を、好きになってしまっている可能性すらあるかも知れない。

 そうして好意を持つ相手が存在する状況で、この部屋へと入ってしまうことで、この悪辣な罠は機能し始めてしまうのだ。

 

 疲れ切ってゴールした者の前に現れる愛しい相手。

 多少おかしいと思っても、これまで頑張ったご褒美に、エルフがここに連れてきてくれたと言われれば、疲労困憊なその者は正常な判断が出来ず、信じてしまう。

 

 そうして、その相手の言葉を信じ、その相手を自分の愛しい存在だと、完全に誤認してしまった時、成り代わったエルフは動き出す。

 言葉巧みに愛を囁き、ダンジョンクリアのご褒美だと言って、その場でこの部屋に入った者と、肌を重ねて愛し合うのだ。

 

 愛しい人との行為……。

 これまでのダンジョン攻略という苦労が全て報われたという状況に、部屋に入ってきた者の気持ちも盛り上がり、その行為はより激しく盛り上がり、愛し合う気持ちはより強くなっていく。

 

 そうして、愛しい人とだからこそ、心の底から実感出来る、最高の快楽と幸せを感じている中で、幻術を解き、それが別人だったと知らせるのだ。

 

 行為を行っている相手が別人だと気付いた時、その者はこれまでにないほどに、混乱することになるだろう。

 

 別人だというのに、愛しい人と同じように幸せと快楽を感じていた。

 別人だと分かったのに、それまでと同じように幸せと快楽を感じる。

 愛しているはずなのに、肌まで重ねているのに、別人だと見抜けなかった。

 

 その頭の中に沸きあがる様々な思い。

 

 偽りでも感じる快楽、偽りと知ったのに続く快楽、愛しい人を見抜けなかった後悔、そんな自分への侮蔑、自己嫌悪しながらも続ける浅ましさ、もっと気持ちよくなりたいと望む行為に対する情欲――あらゆるものでぐちゃぐちゃになった精神はやがて一つの答えに辿り着く。

 

 ――ああ、誰であっても気持ちいいのは変わらないんだ、と。

 

 そうしてその者は、一人前のエルフとして新生するのだ。

 

 それこそが、このエルフの試練の締めくくり、最後にして最大の罠。

 

「シルフィード。誰かを好きになるってことはね。脆さにも繋がるんだよ。相手を好きだからこそ、相手のことを勘違いして、この寝取りの間に墜ちていく」

 

 恋愛とはある意味でだまし合いだ。

 相手に好きになって貰うために、普段の自分を偽り、男ならより格好良く見えるように、女ならより可愛く見えるように自分を飾り立てる。

 

 だからこそ、相手のことを本当の意味で理解出来ない。

 

 何故なら、その者が好きだと考えて燃え上がった思いは、その相手の努力によって、作られてしまったものだからだ。

 元から作られたものだからこそ、同じようにそれを作った者を、その誰かに成り代わろうとした者を、その相手だと誤認して身を捧げてしまう。

 

 好きだから悪いところを――本当の相手を見切ることが出来ずに、自分の空想上の好きな相手を信じ切り、その結果として騙されることになってしまう。

 

「運命の相手なんて、そんなものを望んでるシルフィードは絶好のカモだ! 物語のように完璧な相手を望むほど、相手の悪いところを見ないようにして、自分が作り上げた理想の恋人像に浸り、自分を騙して愛し合う事になるんだからね!」

 

 リディアは確信していた。

 思い描く理想が高ければ高いほど、純愛を求めれば求めるほど、この寝取りの間に逆らえないということを。

 

☆☆☆

 

「あれが目的のエルフ像……」

 

 その部屋についたシルフィーは目の前に安置されたエルフ像に目を向けた。

 そして、そのエルフ像を取るために近づこうとするが……。

 

「シルフィー?」

「え? フレイがなんでここにいるのです?」

 

 唐突に目の前に現れたフレイに思わずそんな言葉を投げかけるシルフィー。

 そんなシルフィーに対してフレイは言う。

 

「あそこの扉から来た。どうやら部屋が繋がっていたみたいだな」

 

 フレイの指し示す方を見るともう一つの扉があった。

 それを見て、フレイがそこから来たことに納得するシルフィー。

 

「でも、それだとエルフ像はどうなるのです?」

 

 ここには目の前にあるエルフ像一つしか無い。

 フレイもここに来たというのなら、エルフ像は二つ必要になるはずだ。

 

「もしかしたら、何処かに隠されているのかも知れない。探してみよう。シルフィーも探すのを手伝ってくれるか?」

「もちろん、なのです!」

 

 そう言ってシルフィーとフレイは捜索を始める。

 そんな中で、フレイはシルフィーに語りかけた。

 

「俺達の勝ち――だよな?」

「え? 何のことです?」

「このダンジョン攻略は言ってみれば、エルフ共のクソみたいな考えと、俺達の運命の相手を求めると言う志の対決だったわけだろ?」

 

 フレイはそう振り返るように口にする。

 

「確かにそうなのです」

「だからこそ、俺達の勝ちってことだよ。もう後はエルフ像を手に取るだけで終わる。あのエルフ達が用意した悪辣な罠を俺達が全て乗り越えたんだ」

 

 そう晴れ晴れとした表情で語るフレイ。

 そのフレイの言葉にシルフィーが言う。

 

「拙達の勝ち……? 拙はお母さんに勝って、志を貫けたのです……?」

「ああ、そうだ! 俺達だからこそ乗り越えられた! 言っただろう? 一人では難しくても、純愛を尊ぶ俺達二人なら、エルフのような巨悪が相手だろうと、きっと立ち向かえるって! 俺達は成し遂げたんだよ!」

 

 フレイはそう喜びを共有するようにシルフィーに向かって言う。

 そして、フレイはシルフィーの前に移動し、シルフィーの肩を掴んだ。

 

「だからこそ、俺は今回の件で思った」

「何を……なのです?」

 

 フレイの真剣な表情、そして話の流れから来る雰囲気によって、シルフィーの心はもしかして……という気持ちでトクンと高鳴る。

 

「俺達は相性が抜群だってことさ。互いに運命の相手を求め合う俺達なら、絶対にお互いを裏切らない! だからこそ、俺達なら! ずっと互いを愛し続けたまま、幸せに添い遂げることだって出来るはずだ!」

 

 そこでフレイは意を決すると言う。

 

「だから……シルフィー、俺をお前の運命の相手にしてくれ!」

「……」

 

 フレイからシルフィーへのプロポーズ。

 それを受けたシルフィーは押し黙る。

 

「どうしたシルフィー? 返事を聞かせてくれないか?」

 

 そんなシルフィーを見て、フレイが思わずそう聞いた。

 

「違うのです……」

「ん? 何が違うんだ?」

 

 ぽつりとそう呟くシルフィー。

 シルフィーの意図が分からなかったフレイは思わず聞き返す。

 それに対するシルフィーの回答は――拒絶だった。

 

「お前は偽物なのです!」

 

 シルフィーはそう言うと自分の肩に掛かっていた手を払いのける。

 そして、偽物のフレイに対して叫んだ。

 

「それは確かに拙が言って貰いたい言葉なのです! でもきっと、拙が好きになったフレイはそんなことを言わないのです!」

 

 シルフィーは理解していた。

 ――自分がフレイを好きになっていることを。

 

 最初はただの同士としての安心感だけだった。

 だが、七日間という短い期間とは言え、共に過ごし、そして常に自分の志を肯定してくれるフレイに、少しずつ気持ちが動いていっていた。

 

 決定的に好きになったのはこのダンジョンに入る前のリディアとのやり取りだ。

 リディアの言葉に晒され、思わず自分の夢を諦めそうになったその時、フレイは手を差し伸べて、自分の為にリディアに立ち向かってくれた。

 それだけではなく、シルフィーの思いは何も間違っていないと、だからこそ、自分の道を信じろと、シルフィーの思いを全肯定してくれた。

 それによってシルフィーの心は大きく揺り動かされ、そして自分の志を信じる勇気をフレイに貰うのと共に、フレイへの思いも大きくなっていったのだ。

 

 その時にシルフィーは思った。

 

 自分の運命の相手はこのフレイなんだと、自分が添い遂げたいと願うのはフレイなんだと、それに気付くのと同時に、沸きあがる自らの恋心を知ったのだ。

 

 だけど――同時にシルフィーは実感していた。

 きっと、フレイが思う、運命の人は自分じゃないんだろうな……と。

 

 これまでの日々の中で、フレイはシルフィーを同士として尊重しながらも、恋愛相手としては一歩引いた態度を取っていた。

 お互いに運命の相手が欲しいと言っているのに、シルフィーの方は運命の相手として少しずつフレイを意識していたのに、フレイの方はそんなことも全くなく、シルフィーを完全な対象外として扱っていた。

 

 運命の相手を同じよう求めるシルフィーだからこそ。

 そのフレイの細かな心の機微に気付くことが出来たのだ。

 

 だからこそ、心の何処かで願っていた。

 フレイが自分のことを運命の相手にしてくれることを。

 

 ――先程のようなプロポーズを待ち望んでいたのだ。

 

 だけど、それは自分が好きになったフレイじゃない。

 好きな相手に勝手に押し付けた自分の理想だ。

 

「拙が望むことを言えば、拙の好きな人に成り代われると思ったのです?」

 

 シルフィーは怒りを滲ませながらそう口にする。

 

 好きな相手に自分が望む言葉を吐いて貰う……。

 その甘い嘘は、恋する乙女には何よりも効く行為だろう。

 

 だって誰もが望んでいることだからだ。

 好きな相手に、自分の理想通りに、自分を好いて貰うことは。

 

 だからこそ、この甘い嘘に多くの者が嵌まってしまう。

 それが、自分が好きになった相手を捨て、自分の理想像に逃げるという、裏切りであったとしても――。

 

 だが、シルフィーはそうならなかった。

 なぜなら、シルフィーには信念があったからだ。

 

(添い遂げるというのは、お互いの思いがあってこそなのです! 拙は運命の相手を見つけたいのと同時に、その相手に取っての運命の相手になりたいのです!)

 

 好きな相手の運命の相手になりたい――。

 

 それは夢見がちな恋する乙女なら誰もが抱く思いだ。

 だが、その一方で、これは、愛されるための努力をするという、不退転の覚悟で臨む、好いた相手への誓いとなる思いでもある。

 

 なぜなら、好きな相手の運命の相手に――特別な存在になるというのは、その言葉のロマンチックさと裏腹に、とても過酷で辛く苦しいものだからだ。

 それは何故かと言うと、シルフィーのように、どれだけ自分が相手のことを、運命の相手だと思って、好きになったとしても、その相手が同じように、自分のことを好いてくれるとは限らないからだ。

 

 相手のことが好きであればあるほど、見向きもされない日々は、辛く苦しいものであり、ロマンチックで甘い夢を見ていただけの者は、その苦しさに耐えきれずに、愛した相手の特別になることを諦めて行ってしまう。

 だからこそ、その過酷さを知った上でなお、愛した相手の特別な存在になりたいと、好きな人の運命の相手になりたいと言い切れる者には、どれだけ困難があったとしても、絶対に好きな相手に相応しい存在になるという覚悟があるのだ。

 

 故に、好きな相手の運命の相手になりたいという言葉は、愛されるための努力をするという、不退転の覚悟を語った、好いた相手への誓いの言葉になり得るのだ。

 

 そしてそれを理解しているからこそ、シルフィーは思う。

 

 こんなところで甘い嘘に騙されて、自分の理想像に逃げるような奴なんかが、本当に自分が好きになった相手に相応しいのか?

 

 ――そんなわけがない!

 

 例え、好きになった相手が、自分のことをなんとも思って無かったとしても、好きになった相手に、貴方が恋するのに相応しい人なんだと、自分のことを誇れるように、身勝手な自分の理想に逃げずに、立ち向かわないといけないのだ。

 

 これこそが、運命の相手とした相手と添い遂げるための覚悟。

 好きになったからこそ、その相手に好きになって貰うための努力をする――そんな恋愛に取っては当たり前で――何よりも大切な行いに対する覚悟なのだ。

 

 だからこそ、シルフィーはこんなものに唆されるわけにはいかない。

 それに何よりも、シルフィーには許せないことがあった。

 

 好きな相手に成り代わり、甘い嘘に浸らせれば簡単に墜ちる――。

 

 色々な思いを積み重ねて、自分が育んだこの恋心を、そんな風に他人に勝手に決めつけられるのが許せなかった。

 何よりも大切で心地よく感じる自分の恋を、簡単に壊せてしまう、その程度の恋だと、軽く扱われることが許せなかった。

 

 そう、シルフィーの中で燃え上がる恋心が、この状況に対して、強烈な怒りを感じていたのだ。

 だからこそ、シルフィーは叫ぶ。

 

「拙の思いを……! 馬鹿にするな!!」

 

 そう言うとシルフィーは偽フレイを蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされた偽フレイは、壁に叩きつけられると「ぐぇ」という情けない声を出して、そのまま気絶して地面に崩れ落ちる。

 

「人の恋を軽く見て! 好きな相手に成り代われるなんて! 勘違いをしているクズ野郎は! そこで寝てろ! です!」

 

 そう言うとシルフィーはエルフ像を手に取り、本物のフレイに会うために、部屋の外へと向かっていった。

 

☆☆☆

 

「ここが最後の部屋ね……」

 

 俺はその部屋を警戒しつつ周囲を伺う。

 そして、最後に部屋の中央に安置されたエルフ像へと目を向けた。

 

「あれが目的のエルフ像か、何かあるかわからんし、さっさと確保して、この部屋から退散するか」

 

 俺はそう言って歩き出す。

 すると唐突に、その部屋に何者かが召還される。

 

「っ!? なんだ!?」

 

 俺は取り寄せた剣を構えながら、その様子を伺う。

 現れたのはエルフの少女だった。

 見覚えのない其奴は、親しい相手にやる雰囲気で、両手を広げて言う。

 

「待っていたわ! 貴方の事を!」

「なんだ此奴……」

 

 唐突に俺の事を待っていたと見知らぬ相手に言われ、エルフの少女のその行いに対して、不気味さを覚える。

 

「これまで大変だったわね。でも、私達だから乗り越えられた。そう私と貴方だからこそ、ここまでやってこれたの!」

 

 まるで舞台を演じる女優のようにそう語って近づいてくるエルフの少女。

 俺が警戒してその動きを観察していると、その少女はまるで恋い焦がれた相手が目の前にいるかのように、瞳をうるうるとさせ、艶やかな顔で言う。

 

「その時に私は思ったの。ああ、貴方のことが好きだったんだなって、もし貴方も私の事を好いてくれているのなら……ここで貴方と愛し合いたい」

 

 そう言って服を脱ぐためか自らの服に手を掛けるエルフの少女。

 それを見た俺の気持ちは一つだった。

 

「なに此奴……気持ちわる!!」

 

 嫌悪感満載の目でその少女を見る。

 見知らぬ相手が突然親しいムーブをしながら、好きだと言い始めて、行為を要求するとか、気色悪くてたまらない。

 

 そんな俺の状況にようやく気付いたのか、エルフの少女は顔を引き攣らせた後、俺に対して素直に質問してきた。

 

「あれ? もしかして幻術が聞いてない?」

「幻術って何のことだよ」

「貴方、私のことどう見える?」

「見知らぬエルフ」

「……。え、なんで!? 幻術でこの部屋に入った者が最も愛する存在に姿を変えるはずなのに……! どうして元のままなの!?」

 

 ……どうやら、予想通り、まだ罠があったらしい。

 俺はそのエルフに近づくと、剣を首元に突きつけた。

 

「っちょ!」

「おい、今言ったのがどういうことか、お前が知っていることを全て話せ」

 

 俺がそう言うとエルフは逃げようとしたのか動きを見せた為、そのエルフを足払いで倒し、その顔の横に剣を突き刺す。

 

「何をしようとしても無駄だ。武器ありなら俺の方が強い。くだらない抵抗は止めて、大人しく知っていることを話せ」

 

 俺のその言葉に、エルフの少女は顔の横に突き刺さった剣を、そしてその後に、上から見下ろすように少女を見る俺へと視線を移す。

 そして顔を真っ赤にさせて、嬉々とした表情で言った。

 

「ああんっ! 私、こう言うの好きなの~! もっと、横暴にしてぇ~! もっと、乱暴にしてぇ~! もっと、私に命令してぇ~! ああ、潤っちゃう!」

「……」

 

 さすがエルフ。この少女はとんでもないどMの変態だった。

 

「床ドン! これって床ドンよね! ああ、夢にまで見た床ドン! まさか、こんなところで体験出来るなんて!」

「……無駄口を叩いていいと誰が言った? いいからこの部屋のことを話せ、お前の価値はそれだけだ」

 

 もう、長々と相手をするのが面倒になって、あえて相手の望みである俺様キャラを演じることで、相手に口を割らせようとする。

 

「はい! ご主人様! それだけが価値の雌ブタは何でも喋りまーす!」

 

 それからそのエルフの少女はこの部屋について語り出す。

 ざっくりと内容を纏めると、どうやらこの部屋は入ってきた者の愛しい相手に幻術でエルフが成り代わり、部屋に入ってきた者と情交を交わす中で、幻術を解いて正体を現し、相手を寝取ってビッチに貶めるという事が目的の部屋らしい。

 

「相変わらず悪趣味だなエルフは」

 

 俺は寝取りの間とされた部屋の詳細を聞いて思わずそんな侮蔑の言葉を吐く。

 そして俺は少女への尋問を止めて、エルフ像を手に取った。

 

「ええっ!? もう行っちゃうの!? もうちょっといてよ!」

「黙れ! 縋り付くな!」

 

 そう言って俺はエルフの少女を蹴り飛ばす。

 

「あんっ!」

 

 蹴り飛ばされたのにもかかわらず、エルフの少女はそんな嬌声を上げて、愉悦を浮かべながら、壁へと叩きつけられた。

 

「しゅき~」

 

 壁からしな垂れ墜ちるようにして、惚けた目でそう言うエルフの少女。

 

 俺はそれを見ながら、こんなエルフ達との付き合いも、これで終わりだと思い、さっさと解放されたい気持ちを抱きながら、部屋を出た。

 

☆☆☆

 

 俺が最奥の部屋からスライムがいた部屋に戻ると、そこには既にルイーゼとシルフィー以外の全員がいた。

 

「お前達、早いな?」

 

 他の部屋に入って、助け出さないといけないかと思いきや、幻術が効かなかった俺よりも早い段階で、既に元の部屋に戻っていたことに素直に驚く。

 

 この時間なら幻術に騙されて行為をしたってわけじゃなさそうだしな……。

 

 俺は部屋に入って直ぐにエルフの少女を尋問し、そしてエルフの少女があっさりと話した事もあって、それほど時間を掛けずに部屋を出ることが出来た。

 それよりも早かったとなると、それこそ出会い頭に幻術を見破って、そしてエルフを吹っ飛ばして、そのままエルフ像を取って部屋を出た、と言う動きをしたとしか、考えることが出来ない。

 

 そんな風に俺が思っていると、レシリアが俺に抱きついてくる。

 

「お兄様!」

「レシリア、大丈夫だったか?」

「お兄様、怖かったよ! 見知らぬエルフがいきなり言い寄ってきて、レシィに襲い掛かってきたの!」

 

 そう言って震えるレシリア。

 俺はそんなレシリアを安心させるように抱きしめる。

 

「大丈夫だ。もう、大丈夫だぞ、レシリア」

「だから、レシィ、そのエルフをぶっ飛ばしちゃった! それで、エルフ像を取って、そのまま部屋を出たの!」

「そうか、レシリアが無事でよかった。正しい判断をしたぞ、レシリアは」

 

 レシリアは優しいから、襲い掛かってきたとは言え、エルフをぶっ飛ばした事を気にしていたのだろう。

 だからこそ、俺はその行いには問題なかったと、レシリアを褒める。

 

「えへへ、ありがとう、お兄様!」

 

 俺に頭を撫でられて上機嫌でそう言うレシリア。

 

 しかし、それにしても――。

 レシリアも幻術が効かなかったってことは、これも媚薬による発情状態と同じように、状態異常扱いだったのか?

 

 俺はレシリアを撫でながら、思わずそんなことを考える。

 

 あの時も、媚薬の影響を俺も受けるかもと警戒しながら指輪を外したが、結局俺はその状態異常を受けることはなかった。

 それに先程の部屋の幻術についても、レシリアと同じように、状態異常を受けずに、相手をただのエルフと認識出来た。

 

 ――状態耐性リングを既に外しているのにも関わらずだ。

 

 知らない間に状態異常に対しての耐性が出来ている? 

 どうして――。

 

 その理由について考えた時、レシリアの髪が目にとまった。

 そして、俺はその可能性に思い至る。

 

 そうか、俺の髪色と同じ理屈か!

 精神生命体の肉体への作用……それで本来の状態に戻る動きが働いて、状態異常のような肉体の異常に対して、継続的に治癒効果が働いているのか!

 

 言ってしまえば、神とされる存在は、パッシブで状態異常回復を持っており、軽度の状態異常なら、無効化と言えるような形で回復出来るのだろう。

 

 ……やっぱり、本格的に神化が始まってるのか……。

 

 俺は思わず、そう思いながら、自分を誤魔化すように、レシリアに先程の部屋で起こったことの理由を話す。

 

「どうやらあの部屋は、部屋に入った者が愛している存在に、エルフ達が化けて誑かそうとしてくる部屋らしい。レシリアは状態耐性リングを付けているから、それが効かずに普通のエルフに見えたんだろうな」

 

 俺がそう言うと、レシリアは俺が聞こえないくらいの小さな声で何かを喋る。

 

「へえ~。て言うことはあのエルフはお兄様に化けたつもりでいたってこと? ……そんな万死に値することをしたのなら、もっとこの世の地獄を味合わせるような痛めつけ方をして倒した方が良かったかな」

「ん? どうしたレシリア?」

「ううん。なんでもないよ!」

 

 にこっと笑顔を見せるレシリア。

 先程の件がトラウマになっていないようで良かった。

 

 そんな俺達の元に来幸達が近づいてくる。

 

「あれはそう言うことだったのですね。フレイ様の話を聞いて納得しました」

「来幸は状態耐性リングがないから幻術は効いたのか」

「はい、そうですね。相手がフレイ様に見えていました」

「そ、そうか……」

 

 イベントをクリアしたから俺に惚れていることは知っているとはいえ、愛しい存在が現れる幻術に、俺が現れたと聞くのはちょっと戸惑うな……。

 

「俺よりも早くこの部屋にいるってことは幻術を見破ったんだな」

「ええ、あんな紛い物に気付かないわけがありません。現れた時から、あれが偽物だと私には分かりました」

「そうか、それは凄いな」

 

 幻術がどんなものか俺には分からないが、少なくとも俺の姿に見えている相手を、一瞬で偽物と見抜いたことに素直に称賛の声を上げる。

 

「偽物だと分かりきっているのに、私の好きな人の――フレイ様の振りをして、私に行為を迫るなんて――本当に、殺したくなるほどむかつきましたね」

 

 普段は冷静な来幸が隠しきれない怒りを露わにする。

 

「だから、潰してあげました」

「え? 潰すって……何を?」

「その不届き者の股間をです。エルフのような不埒なゴミには、不能となってそう言うことが出来なくなるのが、一番の罰となるでしょう」

 

 恐る恐る聞いた俺の言葉に晴れやかかな顔で来幸がそう言う。

 するとそれを聞いたエルザが、同じような顔をして言った。

 

「あ、アンタもそうなのね。あたしも股間を焼き尽くしてやったわ!」

「わたしもラースの力を使って、ぶん殴ってやりました! やっぱり、エルフに対する仕置きとしては、不能にしてやるのが一番ですよね!」

 

 きゃっきゃ、きゃっきゃと、まるで私達同じデザートを頼んでいたのね! 的な軽いノリで、相手を不能にするという、恐ろしいことを話す来幸達。

 

 ええ……。一応、幻術で俺に見えている相手ですよね……その相手の股間を潰して、不能にさせちゃったんですか……。

 

 俺は来幸達の話を聞いて、思わず、自分の玉がひゅんとする気持ちを味わう。

 そんな目にあったエルフ達は大丈夫なのかと心配にもなるが、エルフは人間と違って頑丈だし、魔法適性が高くて回復魔法もあるから何とかなるだろ、と思い直して恐ろしい会話から意識を反らしてノルンを見る。

 

「ノルンも見破ったのか?」

「うん! 臭いが違ったから! パパじゃないって分かったよ!」

 

 愛しい者判定で俺が出てきたの!?

 いや、よくよく考えて見れば、ノルンがまともに話した異性は、俺くらいなものだろうから、消去法で俺が出てきてもおかしくないのか……?

 

 ちょっとノルンとの先行きが不安になっていると、また扉が開き、その中からシルフィーが出てくる。

 

「シルフィー! 大丈夫だったか? あの部屋は、部屋に入った者が愛している存在に、エルフ達が化けてくる部屋みたいなんだが……」

「ああ、やっぱりそう言うことだったのです」

 

 納得したような顔でそう言うシルフィー。

 そして、その後に俺に対して笑顔を見せながら言う。

 

「心配ご無用なのです! 運命の相手を求める拙が! あんなのに騙されるわけがないのです!」

「さすが、俺の同士だ!」

 

 運命の相手を求める者が、こんな悪辣な罠に負けるわけがなかった。

 俺はシルフィーの無事な帰還を素直に喜ぶ。

 

 そして、そんな俺をシルフィーはじっと見つめた。

 

「まだまだ、これからなのです」

「ん? 何か言ったか?」

「なんでもないのです」

 

 ふとシルフィーが何かを呟いたような気がして、思わずそう聞くと、上機嫌そうにシルフィーはそう言葉を返す。

 

「わたくしが、最後ですの?」

 

 そうこうしていると、シルフィーに続くようにして扉が開く。

 そこから顔を出したルイーゼは、部屋に自分以外の全員が揃っているのを見て、思わずそんな言葉を出した。

 

「ルイーゼも無事か? あの部屋は――」

 

 そう言って俺は再びあの部屋について説明する。

 

「心配いりませんわ。偽物だとわたくしも気付いたので」

「よく気付けたな」

 

 相手が誰かは分からないがルイーゼが見破ったことを素直に驚く。

 

「ええ、あの破廉恥な出来事が起こりませんでしたから……」

「ん? どう言うことだ?」

「なんでもありませんわ……」

 

 顔を真っ赤にしてそう押し黙るルイーゼ。

 

 男に近づけば発動するラッキースケベが、幻術のせいで上手く機能しなかったら、幻術のようなものに掛けられていると気付いたってことかな?

 要領を得ないルイーゼの言葉に対して、俺がそう理由を付けて納得していると、ついにリディアの声が響いてくる。

 

『クソ~! まさか一人も寝取りの間に堕とされることなく、あっという間に突破してエルフ像を手に入れるなんて! 貴方達、全員、頭がおかしいよ!』

「頭がおかしいのはお前達、エルフだろ?」

 

 お前が言うな案件に俺は思わず突っ込む。

 ともあれ、これで俺達は試練を達成した。

 

「俺達はこうして全員がエルフ像を手に入れた。つまりは、エルフの試練を突破したってことだ。許可証を大人しく渡してくれるよな?」

『……分かったよ! 私の負けだ! 許可証は私の家にあるから、取ってくるよ! それまでに、そのダンジョンを脱出しておいてね!』

 

 それだけ言うとリディアとの会話が終わる。

 それを聞いて、俺は来幸達に対して言った。

 

「よし、転移でダンジョンを脱出するぞ。手を握ってくれ」

「……その前に聞きたいことがあるのですが、いいですか?」

 

 俺の手を握る前に、神妙な顔をした来幸がそう聞いてくる。

 

「まあ、構わないが……なんだ?」

「その……フレイ様はあの部屋でエルフが誰に見えていたのですか?」

 

 緊張した様子で来幸はそう口にする。

 その来幸の一言で、全員が何も言わずに動きが止まり、そして俺の回答を待つように視線を向けた。

 

「ああ、俺もレシリアと同じように見知らぬエルフだよ。どうやら、髪色と同じように、肉体を元に戻す動きが働いているみたいで、今回の幻術のような状態異常なんかも、勝手に回復するみたいだな」

「そうですか……」

 

 俺がそう正直に言うと、至極残念そうに、そして同時にどこかほっとしながら、来幸はそう言葉を口にする。

 

「ああ、そうだ。だから、その状態耐性リングはレシリアにあげるよ。俺にはもう必要のないものだからな」

 

 俺がそう言うとレシリアは目をぱちくりさせる。

 

「えっ? えっ? ほんと? やった! やった~!!」

 

 そして、死ぬほど嬉しいという気持ちを爆発させたように、ぴょんぴょんとそこで飛び跳ねて、全身で喜びを表し始めた。

 

「お兄様の指輪~お兄様の指輪~! お兄様の指輪はレシィのもの~!」

 

 そう言ってその場で踊るようにくるくると回るレシリア。

 俺は妹が喜んでいるその姿にほっこりとしながら、ふと異様に静かな周囲の様子に気付いて、視線をそちらへと向けると、レシリアが喜ぶのと反比例するかのように、不機嫌になっていく来幸達に気付き、思わず目を逸らす。

 

「そ、それじゃあ、さっさと転移しようか!」

 

 何か問題が起こる前に話を変えよう。

 そう思った俺はそう言うと、俺の体を掴む来幸達の何時もより強い力に、ちょっと痛みを覚えながらも、ダンジョンの外へと転移した。

 




今回の話について、感想で質問が来そうな所のQAを乗せておきます。

[Q]
 何で、ラッキースケベ能力があるって分かってるのに、ルイーゼがフレイの真後ろにいたの?
[A]
 蝶よ花よと育てられたルイーゼは、ダンジョンに潜るのは今回が初めてのことであり、ダンジョンに対する不安から、一番頼りになるフレイの側に、ひっそりと忍び寄った形となります。
 フレイは魔物や罠を警戒して、周囲を伺いながらも、前方に意識を向けていたため、背後から忍び寄るルイーゼに気付きませんでした。
 異音がして振り返った時に、ルイーゼが近くにいることに気付きましたが、そこからは走って逃げることを優先して、そのことについて気に掛ける余裕がなく、そのままラッキースケベが発動した形です。

[Q]
 フレイは何で転移でさっさと、ローションの波から逃げなかったの?
[A]
 ローションの波はフロアの全体を覆う形で流れてきました。
 その為、キメラキマイラの時のように、突き飛ばすだけではその範囲から外すことが出来ない為、転移で助けるとなると、全員を救出することが出来ない状況でした。
 そうなってくると、誰を助けるのかという問題が発生するため、あえて転移を使わずに行動し、全員が走って逃げ切れる可能性に賭けました。
 しかし、波の速さからそれが不可能と分かると、このまま全滅するよりも、自分一人でも生き残る方がましだろうと考えて、転移で波から逃れようとしてましたが、その時には既にラッキースケベの術中だったので不可能でした。

[Q]
 何で空を飛べるノルンが波に巻き込まれてるの、それとなんで人化しているの?
[A]
 カルミナクの里についてから、ノルンは基本的にフレイの肩の上に、竜の状態で乗っていました。
 波から逃げるときも、フレイの上に乗ったままだったのですが、ラッキースケベによって、ルイーゼによってフレイが転ばされた時に、フレイの上から振り落とされて、波に巻き込まれた形です。
 エルフの媚薬の効果を喰らって、発情状態になったノルンは、発情先であるフレイが人間だったため、無意識に人化をした形です。


[Q]
 何でシルフィーはエルフの媚薬が効きにくかったの?
[A]
 幼い頃から陰キャエルフの兆候が見えていたシルフィーを心配したリディアが、シルフィーが立派なエルフ(ビッチ)になるようにと、食事などに少しずつ媚薬を混ぜていたため、耐性が出来ていました。

 正気を失わない程度の量だったので、シルフィーは意思の力でそれをはね除けて、自分が何かを盛られているのを察し、それについて調べた結果、エルフの媚薬について知ることになった形です。

 その為、シルフィーだけが特別に効きが悪かっただけで、他のエルフなら来幸達のように正気を失う形となっていました。
 ※薬に強いエルフにも効くほどの強力な媚薬を使ってます。

[Q]
 結局、エルザの所で発生したダンジョンって、エルフが手を加えたダンジョンだったの?
[A]
 かつてエルフ達がエルフの試練用のダンジョンを開発している時、ある問題が発生しました。
 それは、このダンジョンが本当に陰キャエルフを一人前のエルフに変えられるだけの力を持っているか分からないということでした。

 陰キャエルフというのはエルフの中ではごく僅かな存在であり、ダンジョンの性能を試すために用意することは難しいです。
 だからと言って、自分達でダンジョンに挑むにしても、元から快楽墜ちしているような存在であるエルフ自身では、単純にこのダンジョンを楽しむだけになってしまい、本来の用途が果たせるのか判別出来なかったのです。
 
 困ったエルフ達は、自分達で試すことが出来ないなら、陰キャエルフと似た価値観を持つ、他の種族達で試せばいいんじゃね? という思考に思い至り、世界各地にこのダンジョンをばら撒いて、そこで実証実験を行うことでこのダンジョンの性能を測ろうとしたのです。
 この考えは成功を収め、女ならS級冒険者であろうとも快楽墜ちさせたのを見たエルフ達は、実験を終わらせてエルフの試練を完成させましたが、その時に面倒くさがってダンジョンを回収することなく、そのまま放置してエルフの里に帰りました。

 エルザの所で発生したダンジョンは、そうやってエルフが回収せずに放棄した、エルフの試練のダンジョンのプロトタイプの子孫です。
 その為、エルフの試練と同じように、エロゲスライムなどの、様々なエロ要素が発生するようなダンジョンになっていました。

 この世界の本来のダンジョンは、そう言ったエロ要素なく、普通に侵入者と命の取り合いをするタイプなので、エロ要素が存在するダンジョンは、全てこのエルフがばら撒いたダンジョンの血統を受け継いでいます。

[Q]
 寝取りの間で、なんで偽フレイは、本物のフレイ達しか知らないような、純愛を尊ぶ二人なら立ち向かえる~的な言葉を知っていたの?
[A]
 寝取りの間ではシルフィーのような部屋に入った者は、常に幻術を掛けられた状態になってしまいます。
 その幻術は言わばフィルターのような役目を果たしており、シルフィーの場合だと、エルフの姿や行動に発言は、フレイフィルターを通すことで、シルフィーが望むフレイの動きに変換されると行った形です。

 端的に言うとエルフは、シルフィーが聞いた言葉とは全く違った言葉を言っていて、行動なども差異がある状況ですが、それをシルフィーが作中で語られた言葉や行動だと、幻術によって誤認識している感じです。

 幻術で行われるフィルターは、幻術にかけられた者が認識する、愛しい対象の情報を元に作られる形になります。
 その作成の仕方の都合上、幻術にかけられた者の願望や理想像などが大きく反映される形となるため、本来の人物像よりも、幻術にかけられた者が望む人物像になってしまいます。

 その為に、フレイがシルフィーを運命の相手にすることのような、フレイなら絶対に言わないことでも、シルフィーが言って欲しいと望んでしまっているために、シルフィーの認識で出来た偽フレイは、その望み通りの言葉を言ってしまうと言う事になります。

 その為、この試練を突破する鍵は、本来の愛しい人と、自分の妄想の産物である幻術との差異に気付き、自分が望む愛しい人の姿だからと流されずに、本来の愛しい人を愛せるかという所になります。

 寝取りの間という名に相応しい試練ということですね。

[Q]
 レシリアは状態耐性リングで幻術が効かなかったけど、幻術が効いていた場合はどうなっていたの?
[A]
 第六感であるお兄様センサーで一瞬で偽物だと見破りました。
 ただ、そこから先は来幸達とは違った流れになります。

 レシリアは、この世界だけに存在する、唯一無二のオリジナルである自分とフレイだからこそ、これは何ものにも代え難い運命の愛の物語であり、故に自分以外にヒロインに相応しい者はいないと考えています。

 そんなレシリアからして見れば、今回の幻術フレイや、レシリア(ゲーム)のような、自分達の偽物という存在は絶対に許せない事柄であり、その存在が目の前に現れた時点で、ガチ切れして、その偽物の存在を抹消しにかかります。

 その為、レシリアが幻術にかけられた場合は、来幸達のように不能にするなんて、生易しいことだけでは済まず、もっと悲惨な状況にエルフは陥ることになってしまう感じです。
 ※来幸達はぶち切れましたが、一応は、偽フレイの中身は、このダンジョンに召還された存在で、召還された役割を果たそうとしただけ、と言う事を理解していたので、怒りを必死に押さえて、手心を加えて不能にするというだけで、偽フレイへの仕置きを終わらせた感じです。

 その為、レシリア担当のエルフは、命拾いしました。

[Q]
 エルフが快楽主義になったのってこのダンジョンが原因? エルフはみんなこのダンジョンに放り込まれるの?
[A]
 エルフが快楽主義になったのは、長い時を生きる中で色々あって、種族全体が過去と未来を嫌いだしたのが原因です。

 過去を思い出しても辛くなるからと、思い出や文化と言った過去を全て捨て、未来の長さを考えると怖くなるからと、経験や努力と言った未来への為の行動を止めて未来を捨てる。
 そうやって何もかもを捨てて、楽しい今だけがあればいいと、はっちゃけちゃったのが現在のエルフ達です。

 そうして過ごしている内に、皮肉にもこれがエルフ達の文化という過去になり、そしてそれを維持するために皆が悪のパリピエルフを目指すという未来の為の行動を行うようになってしまったという感じです。
 社会全体がそう言う風潮なので、エルフ達に取ってはこれが普通であり、陰キャエルフとかはむしろ異端者にあたります。
 その為、陰キャエルフが家族から発生するというのは、エルフ達に取っては、頭のおかしな分からず屋を家族から出してしまったと言う、一緒の恥と言うことになるわけです。

 話を戻しますが、基本的に陰キャエルフがエルフの試練で、一人前のエルフに調教されることは少ないです。
 と言うのも、エルフの価値観では、エルフの試練という施設を使わなければ、一人前のエルフになることが出来なかったというのは、もっとも不名誉な行いであるため、リディアのように我が子を思うエルフは、この施設の利用をあくまで最終手段として、食事に媚薬を盛るなどそれ以外の方法で何とか一人前のエルフにしようとするからですね。

 なのでエルフの試練の利用者は、陰キャエルフよりも、自分のプレイのレパートリーを増やしたい、悪のパリピエルフの方が多いと言うのが、現状となっている感じです。
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