エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「はい。これが竜の里に入るための許可証だよ。それと、これが里の位置を記した地図だ。この二つがあれば、竜の里に行けると思うよ」
転移でダンジョンの外に出た俺達は、自宅から許可証と竜の里の位置が記された地図を持ってきたリディアから、それを受け取っていた。
「これが許可証なのか」
俺はそう言ってリディアから渡された首飾りに目を向ける。
そして、リディアに向かって聞いた。
「これはどう使えばいいんだ?」
単純に身につけていればいいのか、それとも何処かにこの首飾りをはめる装置のようなものがあるのか、俺はそれを確認する。
「そのまま身に着けて結界を通ればいいんだよ。竜の隠れ里は、竜の里で元から登録されているか、許可証を身につけた者じゃないと、竜の里の存在を認識出来ず、里の方向に向かったとしても、気付けば別の場所に辿り着いているらしいよ」
ゼ○ダの伝説の迷いの森みたいなものか?
あれは、正しいルートを通らないと、強制的に入口に戻されていたけど、今回の場合は許可証を付けていないと、強制的に入口に戻される感じってことか。
「だから、全員がそれを身につけて、竜の里に向かってね」
リディアはそう言うと、持ってきた箱の中を見る。
そして、至極残念そうに呟いた。
「それにしても、一気に八個か~。いや~、あれだけあった許可証も、これで全部捌けちゃったな~。もう、これで金儲けが出来ないや」
「……ちょっと待て、今、お前、何て言った?」
聞き捨てならない言葉が聞こえ、俺は思わず問い返した。
「え? 何って……いっぱいあった許可証も全部捌けちゃって、お金儲けがもう出来ないな~って、言っただけだけど?」
「……他の奴らにも許可証を渡していて……其奴らの時は、金と引き換えに許可証を渡していたのか」
「そうだね。いや~帝国の人がさ、凄く良い値段を付けてくれたから、しばらくは金を稼がなくても、遊んで暮らすことが出来たんだよね~」
当時のことを思い出したのか上機嫌でリディアはそう言う。
一方で、俺の頬は盛大に引き攣っていた。
「エルフの試練は? 当然受けたんだよな?」
「はあ? そんなの受けるわけないじゃん。何言ってるの?」
馬鹿なのお前と言った目で見てくるリディア。
俺は怒りで今にも殴り掛かりそうになるのを我慢して言った。
「許可証は竜から託された特別なものだから、エルフの試練を乗り越えて、一人前のエルフとして認められるような相手にしか渡せないって言っただろうが!」
「ああ、ああ、それね! だって、それ嘘だもん! 別に竜の里に誰が行こうと、私達の知ったことじゃないし。エルフの試練なんか必要なわけないだろう?」
「は?」
「あの嘘は、シルフィーにエルフの試練を受けさせるのに丁度良いと思ったんだよね。それに何よりも、純愛を信じる貴方達が、エルフの試練に堕とされて、立派なビッチやヤリマンになる過程を見ていくとか、滅茶苦茶面白そうじゃん! だから、あんなそれらしい嘘を言って、貴方達をエルフの試練に放り込んだんだよ!」
嬉々として語るリディアの表情を見て、俺は自分を落ち着かせる為に、大きく深呼吸をすると、飛びっ切りの笑顔を見せて言った。
「よし、殺そう」
「ちょ、ちょっと待つのです!」
「駄目ですよダーリン!」
剣を取りだして、リディアに斬り掛かろうとした俺を、シルフィーとルイーゼが二人がかりで押さえにかかってくる。
「止めるな! 止めるなよ!! エルフとかこの世界の害虫だろ!? 世界の為にここで駆逐した方が! 世のための人の為だ!」
もう、エルフの森、燃やせよ。
害悪でしかねえ、この種族。
自分の快楽の為に嘘を吐いて人を陥れたのもそうだが、何よりも、エルフを信じて許可証を託した竜の気持ちを、此奴らエルフはなんだと思ってるのか。
此奴らがまともに査定もせずに売り飛ばした許可証のせいで、竜族達がどれだけの危険性を抱えることになるか――。
俺はそこまで考えたところである可能性に気付く。
竜の隠れ里を襲ったあの黒い竜――あれって、エルフが帝国の誰かに売り飛ばした許可証を使って、竜の隠れ里に侵入した襲撃者だったのでは?
インフィニット・ワンでの描写からすると、あの黒い竜の存在を、竜の里の者は知らないようだった。
つまりは、里に登録された竜では無かったということだ。
そして、そうであると言うのなら、あの里を襲撃しようとしても、結界に阻まれて、たどり着けないのが本来の出来事のはず……。
それなのに襲撃に成功し、里を滅ぼせたということは、竜達の知らない所で、里へ侵入することの許可が出ていたという事なのだ。
つまりは、許可証が使われたということ、竜族皆殺しの原因は、この腐れエルフ達だったと言う事だ。
これは、ノルンのことを聞く前に、結界について話さないと駄目だな……。
黒い竜が襲撃出来るように、既に竜の隠れ里の結界は、何の意味をなさないと言うことを早々に伝えないと、竜達の身が危ない。
俺はそんな風に考えながら、更にエルフへの怒りを強める。
「本当に碌なことをしない奴らだ! 己の罪を懺悔して死ね!」
「きゃぁ~! 殺されるぅ~!」
俺の言葉に笑顔を見せて楽しげにそう言うリディア。
一方で俺を必死に止めるシルフィーは言った。
「止めて欲しいのです……。こんなんでも、一応、拙の母親なのです……」
「くっ!」
友人の母親を、友人が見ている前で殺す。
確かに、さすがにどうなのかと考えてしまうような行いだ。
そんな俺の様子を好機とみたのか続けてルイーゼが言う。
「そうですわ! それにこの里のエルフを皆殺しにしたところで、結局は何も変えることが出来ませんし、それどころか、世界規模の騒乱が起こる可能性がありますわ!」
この世界でエルフはそれなりの数がいる。
それに帝国のようにエルフに侵蝕された国もある。
それを考えれば、怒りに任せてここでエルフを皆殺しにすることは、そう言った各地のエルフ達の扇動を招き、フェルノ王国を敵とした世界大戦を引き起こしかねない行為だった。
クソ! これだけの悪事をしているくせに、各国の中枢に潜り込んでるから、迂闊に仕留めることも出来ないとか……ほんと此奴ら面倒だな!
エルフ達を駆逐するためには、帝国のようにエルフに侵蝕されてしまった全ての国から、エルフの影響を完全に排除してから、エルフを駆逐する行動に移る必要がある。
だが、ルイーゼの勧誘を断ったように、一個人でそれを行う事は難しく、そもそもフェルノ王国とエデルガンド帝国のように、互いが仮想敵国である国もあるため、全てに同様の意見を強いるというのも難しい。
つまり、計算してのものかは分からないが、気付けばエルフ達は、どれだけ悪事を働いたとしても、エルフという種族を根絶することが不可能な立ち位置に、自らの身を置くようになっていたのだ。
「――っ! 分かったよ! 殺さない! だから、離れろ! と言うか、ルイーゼはラッキースケベがあるんだから、俺に近づくなよ!」
俺はそうルイーゼ達に口にする。
俺の言葉でルイーゼ達は離れていくが、それでも距離が微妙に近い。
……帝都に行った辺りから、妙にルイーゼが近づいてくるが、此奴はラッキースケベのような破廉恥な出来事が起こるのが、嫌じゃないのか?
俺がルイーゼを理解出来ずに、思わずそんなことを思っていると、俺が剣を引いたのを見たリディアが、至極残念そうに言う。
「え~。殺してくれないの~」
「……お前はなんでそんな残念そうなんだ。殺されそうになったんだぞ? もっと怖がるのが普通じゃないのか?」
「え? 何で怖がる必要があるの? だって、これって勝ち逃げじゃん!」
「か、勝ち逃げ……?」
俺はリディアが言ったことを理解出来ずに思わずそう問い返す。
「やりたい放題したいことをして、楽しむだけ世界を楽しんで、楽しいままの状態で、嫌なことを感じる前に、あっさりと死ねるんだよ? これが勝ち逃げじゃなくて、何が勝ち逃げだって言うのさ?」
「本気で言ってるのか……?」
「本気だよ~。あ~あ。私もここで終われると思ったのにな~。誰か、私が人生の最高潮にいる時に、私のことを殺してくれないかな~」
俺は理解が出来ない怪物を見る目でリディアを見る。
普通の思考なら、人生の最高潮にいたら、死を惜しむものじゃないだろうか。
それなのに、リディアは真逆の言葉を口にした。
恐らく此奴らエルフに取っては、人々が忌避する死という存在は、人生を綺麗に終わらせるための、救済なのだ。
「これが精神性に見合わぬ長寿を得た末路か……」
もう、いっそのこと哀れに思えてきた。
此奴らに取って、生きるということ自体が、快楽で誤魔化さないとやっていけないほどの、辛く険しい苦行ということなのだろう。
「やめだ。殺す価値も、関わる価値もない。……行くぞ」
死が救いになるんだから、此奴らを殺すことに意味はない。
此奴らはこれまでの行いを懺悔することもなく、死によってこれまでの人生を賛歌しながら、そのまま息絶えるだろう。
――それじゃあ、罰にはならない。
俺はエルフと関わることを止め、そのままカルミナクの里から去ろうとする。
そんな俺に対して、リディアが言う。
「あ、待って、その前にシルフィードと二人っきりで話をさせてくれない? ほら、これが最後になるかも知れないし」
確かにシルフィーなら、二度とこの里に戻らない可能性があるから、この会話が今生の別れになるかも知れないのか。
親子との最後の会話となるかも知れない状況に、俺はシルフィーの意思を聞くために、シルフィーに向かって問いかける。
「どうする、シルフィー」
「……少しだけ、時間を貰うのです」
「分かった。終わったら、来てくれ」
俺はそう言うと、シルフィーとリディアの会話を離れた場所で待つことにした。
☆☆☆
「それで……何のようなのです?」
「好きなんだろ? あのフレイのことを」
「なっ! いきなり、何を言うのです!?」
唐突に自分の愛している人を当てられて、シルフィーがそう狼狽える。
そんなシルフィーに対して、リディアは何てことないように言う。
「シルフィーの寝取りの間の様子はしっかりと見ていたからね。シルフィーがどう言う恋心を抱いているのか、私は知っているつもりさ」
「……人の恋路を覗き見するなんて、悪趣味なのです!」
リディアの言葉にシルフィーは怒りを露わにする。
そして、そのまま、リディアに聞いた。
「話はそれだけなのです? それなら、これで失礼するのです!」
怒りのまま立ち去っていこうとするシルフィー。
そんな、シルフィーに向かってリディアは叫んだ。
「シルフィー! 幸せにね!」
その言葉にシルフィーの足が止まる。
「私にはシルフィー達の考えは結局理解出来ないけどさ。それでも、娘の幸せを願う気持ちは本当なんだ。シルフィーの進む道は、これから色々と大変だと思うけど、それを乗り越えて、見つけた運命の相手を必ず手に入れて、幸せになるんだよ!」
母親からの激励の言葉。
それを受けたシルフィーは、振り返らずに言う。
「ありがとう。お母さん。そして、さようなら……」
シルフィーは母親への感謝と、別れの言葉を継げると、覚悟を示すように、そのままフレイ達の元へと向かった。