エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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神の欠片

 

 走り続ける俺達の目の前に巨大な建造物が現れた。

 その中に、ノルンが駆け込んでいく。

 

「あれは?」

 

 走りながら俺はヨーデルへと語りかけた。

 それに対してヨーデルは答える。

 

「ワシらの神殿じゃ! 創世神様より託された神の欠片を安置した場所であり、竜の状態のワシらが普段住んでいる場所でもある!」

「あそこに、神の欠片が……」

 

 ヨーデルの説明を聞いた俺は思わずそう呟いた。

 そして、俺達はそのまま、神殿へとノルンに続いて入っていく。

 

「ノルン!」

 

 俺達が中に入って見たのは、燃える白い炎のような、不思議なものに興味を引かれ、それに思わず手を伸ばそうとするノルンの姿だった。

 

「いかん!」

 

 突如としてヨーデルはそう言うと竜の姿へと変貌する。

 そして、そのまま咆哮のような言葉をノルンにぶつけた。

 

「それに触れようとするのは許されん!!!」

「わっ!? いたっ!」

 

 その声の迫力に驚いたノルンは足を滑らせて後ろに倒れてしまう。

 そして、あっという間にノルンに近づいたヨーデルは、口でノルンの服を掴み、ノルンが身動きすることを出来ないようにした。

 

「あれほど、触れるのを嫌がるということは、あれが……?」

「ええ、あれこそが、アタシ達が創世神様より託された神の欠片ね」

 

 サマンサにそう言われて俺はそれを目にする。

 

 見た目は炎のようだが、周囲は熱くなったりなどはしていない。

 あれは炎ではない別の何かだということなのだろう。

 

「ノルン! それは神の欠片だ! 勝手に触れては駄目だ!」

 

 俺はノルンに向かってそう忠告する。

 ノルンは突然の事態に目を丸くさせながらも言った。

 

「神の欠片……? 何それ?」

「創世神様がワシらの為に残してくれた力じゃ」

 

 そう言って再び人化したヨーデルはその由来を語る。

 

「『ここにボクは神竜に到る為の神の欠片を託す。いずれ、この竜の里が危機に陥った時、しかるべき者に、その力を宿らせ、その危機を乗り越えなさい』と創世神様は語り、この神の欠片という強大な力をワシらに託したと伝えられているのじゃ」

「へぇ~。危機に陥った時ね……」

 

 結果的に敵に悪用されて里は滅んだけどね。

 俺はゲームでの出来事を思い出し、思わずそんな感想を持つ。

 

 何でも作られる存在でも未来は見通せなかったのか?

 いや、それとも、何らかの目的が……?

 

 俺がそんな風に考えていると、ヨーデルは神の欠片の側にいた、二体の竜に向かって怒りを見せながら言う。

 

「今日の守人は、タレスとドーラ、お前達じゃったな! ワシが止めたから良かったものの、あのまま進んでいれば神の欠片が失われておった! お主達は一体何をしていたのじゃ!」

 

 その二頭の竜はどうやら神の欠片の護衛だったようだ。

 あっさりと突破されて、ノルンに神の欠片を取られそうになっていた状況を詰められ、タレスはばつの悪そうな顔をする。

 

「そうは言ってもよぉ。その子が神の欠片を手に入れようと悪意を持って近づいたわけじゃないってのはわかってたし、何よりも子供を見るのなんて久しぶりだから、どう加減していいかわかんなかったんだよぉ」

 

 タレスはそのように弁明を述べる。

 

「神の欠片を確実に守るために、こんな可愛らしい子をミンチにすれば良かったって言うのかぁ?」

「それは、お主の修行不足じゃ! 普段から大雑把な力の扱いをしているから、いざという時に手加減が上手く出来んのじゃ!」

 

 そう言ってヨーデルはタレスを説教するが、それをあまり気にせずのんびりとした様子で答える。

 

「そうだなぁ。しばらくは気を付けて行動するかぁ。そうすれば、何時かちゃんと手加減出来るようになるよなぁ」

「そうするのじゃ!」

 

 相変わらずのマイペースさを発揮する竜という種。

 ぶっちゃけ、神の欠片なんて重要なものを任せるのには、危機感が足りなすぎるのではないだろうか?

 

「ドーラ、お主の方は何故止めなかった!」

 

 タレスの方の説教が終わったからか、今度はドーラに向かって、ヨーデルはそう声を張り上げた。

 その言葉に、ドーラの方は後ろめたいことがないと言った態度で、はっきりとその理由を説明する。

 

「この子がしかるべき者じゃないかと思ったからだ」

「なんじゃと……?」

 

 ドーラの言葉にヨーデルが思わず聞き返した。

 そんなヨーデルにドーラは言う。

 

「突然現れた里の者ではない子供、それが一直線で神の欠片を目指した。遂にこの欠片を受け取る者が現れた……そう考えてしまっても、おかしくはないと俺は思う」

「それは……じゃが、もし違ったら如何するのじゃ?」

 

 ドーラの言うことに一理あると思ったのか、ヨーデルが思わず口籠もりながら、そう問い返す。

 そんなヨーデルに、ドーラは言った。

 

「真にしかるべき者なら、誰が止めようとしても、神の欠片を得る。一方で、しかるべき者でないなら、俺が止めなくても、神の欠片を得ることなど出来ないだろうから、何の問題もないだろう」

 

 ドーラはそう言うと天を仰ぎ見て言う。

 

「あらゆるものは、創世神様の恩寵の上でなされる。起こった出来事こそが、世界を作った創世神様の御心のままということだ」

 

 創世神を崇めるようにしてドーラは言った。

 それに、ヨーデルは頭を抱える。

 

「創世神様を敬うのはよいが、それは思考放棄じゃぞ……。まったく、今後は守人の当番からお主を外す、よいな?」

「ああ、これもまた、創世神様のお導き……」

「まったく、お主と言う奴は……」

 

 呆れて困り果てた様子のヨーデルを尻目に、そう言ってドーラは頷き、そちらへの説教も終わりを告げた。

 そして、俺はそんなドーラの様子を見て思う。

 

 竜族は創世神を信仰しているのか……。

 

 この世界の信仰は、基本的に世界を管理している七彩の神に対するもので、世界を作ったのにも関わらず、創世神はまったくと言っていいほど信仰されていない状況にある。

 だが、神の欠片などで深い繋がりがあり、長い時を生きるために創世の時代のことを伝えやすい竜族に取っては、全てを生み出した神というのは、この世界のどの神よりも信仰するに値するなのかもしれない。

 

 っと、今はそんなことを考えている場合じゃないな……。

 

 俺はそう思うとノルンに近づいた。

 

「あ……パパ……ボク……」

「気にするな。いきなり、別れの話をされて、混乱したのはわかる」

 

 そう言って、幼子をあやすように抱きしめた。

 

「子供であるノルンには養い育ててくれる親が必要なんだ。だからこそ、今までは俺がその代わりを担ってきた。だけど、そんな俺よりも、ここにいる竜族の人達や、ノルンの親であるヴァレリーの方が、もっとノルンの為になることを出来る」

「……そ、それは……」

「今は感情がそれを否定するのかも知れない。だけど、それが最善だったんだといずれ理性が理解するはずだ」

 

 俺はその言葉の後にノルンをしっかりと見つめて言う。

 

「ノルンなら――俺の娘なら、それがわかるよな?」

「……」

 

 俺は必死の思いで説得を続ける。

 こじれても何とか出来るかも知れないが、円満に終われるならそれがベストだ。

 

「……せめて……」

「ん、何だ?」

「今日はボクとずっと一緒にいて」

 

 そう言ってノルンは里に残ることに了承した。

 それに、俺は内心でガッツポーズを決める。

 

「わかった。そのくらいのことならするさ」

 

 俺は喜びの声が漏れないように、神妙な面持ちでそう答えた。

 そんな俺達の様子を見ていたヨーデルが言う。

 

「うむうむ。話が纏まってよかったのう……。かけがえのないもので結ばれた親子の絆、良いものを見ることが出来たのじゃ」

 

 そこまで言うと俺達に向かって言う。

 

「提案があるんじゃが……お主達、ワシらの住処を見ていかんか?」

「どうしたんですか? いきなり」

 

 俺はヨーデルに言葉に思わずそう返した。

 ヨーデルは俺のその疑問を受けて答える。

 

「ノルンもどんなところに預けられるかわからんと不安じゃろうし、預けるフレイの方も、娘を預ける場所がどんなところかわからないのは不安じゃろう?」

「それは……まあ」

 

 そんな俺の言葉を聞くとヨーデルは俺達に背を向ける。

 

「ワシらの住処はこの先にある。ついてくるといいのじゃ」

 

 俺達はそう言って歩き出したヨーデルを追って歩き出す。

 ノルンの手は逃がさないとばかりに俺の手を掴んでいた。

 

 そんな俺達の様子を見て、不機嫌そうにレシリアが話しかけてくる。

 

「……お兄様がそこまですることないんじゃない?」

「まあ、そうかも知れないな……。でも乗りかかった船ってやつだ」

 

 本来であれば、卵を拾っただけのノルンを相手に、ここまで尽くすようなことをする必要はないのかも知れないが、ここまで父親役として一緒に過ごしてきた仲だ。

 情だってそれなりに湧いているし、何よりも攻略対象として、幸せになる道筋が既に存在し、それを労せず行えると言うのなら、そのハッピーエンドのために、こうして一日付き纏われることくらい、大した問題じゃない。

 

 やがて、ノルンは慕った父親役と別れ、この里で竜について学んで成長し、そして運命の相手であるアレクに出会って、冒険の旅に出るのだろう。

 その過程でかつての父親についての思い出として俺のことを語ったりするのだ。

 

 まさに物語であるような、理想的な父親ポジションというやつだろう。

 ノルンと出会った当初の目的は、ここに完全に果たされる形となったのだ。

 

 俺はそんなことを考えて、そのまま歩いて行く。

 やがて俺達の前には大きな穴が現れた。

 

「ここから先は飛んで降りるのじゃ。ワシに乗るといい」

 

 そう言って竜化したヨーデルの背中に俺達は乗り込む。

 そして、この先のことを考えて、俺は思わずヨーデルに聞いた。

 

「竜の住処は地下にあるのですか?」

「そうじゃ。ワシらの竜としての住処は地下にある」

 

 その言葉とともにヨーデルは飛び立つ。

 そしてかなり深くまで降りたところで、周囲の景色が一変する。

 

「光……!?」

 

 誰があげたものなのかも分からない言葉が響き渡る。

 それほど、俺達全員はその光景を見て、驚きを隠せなかったのだ。

 

 ――そこはまるで一つの世界だった。

 

 地下だというのに太陽のような光があり、そしてその光の下で様々な草木が生い茂り、そこで得られた糧を竜達が美味しそうに食べていた。

 自然しかないと言うわけでもなく、俺達の住む世界より高度な技術で作られていそうな巨大な建物が並び、そこで竜達が生活を行っている。

 

「な……!? なんだ、これは!?」

「地下よね!? あたし達、下に降りたはずよね!?」

「え、ええ……そのはずだと思いますけど……」

「これは、美しい光景ですわ……」

「こんなものがあるなんて、世界は広いのです!」

「太陽がある? どうなってるかな、これ?」

「これは……フレイ様の知識にもないものですね……」

「ここが、ボクがこれから住む場所……」

 

 それぞれが思い思いの言葉を発する。

 やがて、俺達は竜の住処の地面に降り立った。

 

「あの太陽はどうなってるんだ? どう足掻いても今の文明レベルで、こんな地下都市が造れるとは思えないんだが……」

 

 俺は思わずそう呟く。

 

 前世の俺の世界でもこんなことは実現不可能だ。

 それなのに、俺の世界よりも文明レベルが低い、中世レベルのこの世界で、こんな未来の世界のような光景が展開されている。

 

 異世界から来た聖剣は高度な技術で作られた機械だし、この世界にもSF的な要素がないわけでも無かったけど、だからといって、こんな大規模な形で、このようなものが存在するなんて、インフィニット・ワンの世界観から外れすぎている。

 

 魔法を使えば可能なのか――? 

 いや、魔法を考慮に入れても、これは明らかにおかしい。

 

 俺は警戒心を強めながらそう考える。

 原作知識があるのにも関わらず、どうやってこの都市が造られたのか、まるで見当も付かない。

 

「あの太陽もこの街も、創世神様がワシらにくださったものじゃ」

「創世神が……?」

「そうじゃよ。神の欠片を守るワシらの為に、こうしてワシらがこの地で生活することが出来るような環境を整えてくださったのじゃ」

 

 世界すら作り出す創世の神なら、世界の中に世界を作り出すことも可能か……。

 

「ふ~ん……。でも、それならどうして、神の欠片があそこにあるの?」

 

 ヨーデルの話をあまり興味が無いように聞いていたレシリアが、軽い調子で思いついた疑問についてヨーデルに問いかけた。

 

 確かにレシリアが思う疑問はもっともだ。

 こんな地下世界があるのなら、あんな入口に置くよりも、この地下世界の奥に神の欠片を安置した方が、確実に防衛には向いているだろう。

 

「……わからん。じゃが、きっと何か大きなお考えがあってのことじゃろう」

 

 その質問の答えを持っていなかったのか、少し口籠もったヨーデルは、そんな風に創世神のことを思いながら答えた。

 

「意図か~。取りに来てくださいって言っているようなものだと思うけど」

「あれが、フェイクってことも無いんですよね?」

 

 レシリアに続いて、ユーナがそう問いかける。

 それに少し苦々しい顔をしたヨーデルが答えた。

 

「そうじゃ、あれが本物じゃ、竜が触れれば、力を得てしまう」

「なるほど、それならば、誤って竜が触れるのを防ぐ為に、竜が生活を営むこちらではなく、あの場所に置いたのかも知れませんね」

「そうじゃな! そうかも知れんな!」

 

 来幸の助け船にヨーデルは全力で乗っかって話を終わらせた。

 そして、俺達は都市を歩いて行く。

 

 竜の隠れ里……ゲームでは地上でドラゴンゾンビに襲われたから、あそこがノルンが襲われた場所で、竜が生活を営んでる場所だと思っていたが……作中で映像が出なかったからわからなかっただけで、実際には別場所だったってことか……。

 

 俺は周囲の風景を見ながら思わずそんなことを思った。

 ここは俺が気付かなかっただけで、実は話には出ていた場所なのだと。

 

 やがて俺達は地下都市の中央にある塔に到着する。

 

「ここが結界を制御する魔法陣がある塔じゃ、結界を改修するためには、ここに竜が揃って、結界の魔法構成を弄る必要がある」

「今から、竜達を集めて作業を始める形ですか?」

 

 俺は結界について語ったヨーデルにそう問いかけた。

 それを聞いたヨーデルは首を横に振る。

 

「今日はもう遅い。作業は明日にするのじゃ」

 

 ヨーデルが俺達に向かってそう言う。

 確かに今は時間的には夜になってしまっている。

 

 ここに来るまで時間がかかったからな……。

 万全の状態で襲撃に備えた方がいいだろうし、ヨーデルの言う通り、結界の改修は明日にするべきだな。

 

 俺はそう考えてヨーデルに向かって言う。

 

「そうですね。それでいいと思います」

「うむ。お主達が宿泊する場所じゃが、地下はサイズが合わんじゃろうし、地上の家をワシらの代わりに使って構わないのじゃ。地上へはワシが送ろう」

 

 ヨーデルはそう言ってくれるが、俺達にその必要はない。

 

「俺が転移の力を持った魔道具を持っています。地上に転移ポイントを設置しておいたので、自分達の力で戻れます」

「わかった。それじゃあ、食料だけ受け取っておくといいのじゃ」

 

 そう言って食料を渡された俺達は転移で地上に戻った。

 そして、来幸達が作った料理を食べた後、念のためと言う事で、交代で神の欠片がある神殿に侵入者がいないか見張りをしながら、借り受けた家で寝ることにした。

 

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