エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「アイスショット!」
ユーナのその言葉とともに氷の礫がヴァレリーへと向かう。
その氷の礫は、黒い液体とぶつかるとそれを凍らせた。
そして凍った液体に向かって俺はナイフを投げる。
勿論、それはヴァレリーに躱されるが――。
「悪いが俺の攻撃は必中だ」
そう言うとナイフを転移させて凍った部分にナイフをぶつける。
ナイフによって氷が削り取られ、地面に氷の破片が落ちていった。
「そうやって、ちまちまやるより、一気に削った方が良いでしょ! ここはあたしに任せなさい! フレイムレイン!」
エルザがその魔法を発動させるのと同時に、炎の雨がヴァレリーに降り注ぐ。
「がぁあああ!?」
次々と落ちてきた炎がヴァレリーが身の纏う黒い液体にぶつかり、それによって黒い液体が暴れることで、ヴァレリーが悶え苦しむような叫びを上げる。
「どうよ! あたしだって、あの時から成長しているんだから!」
「やるじゃないか! なら、俺も奥の手を見せないとな……!」
ヴァレリーの状態を考えれば、あまり長くは戦い続けられないからな……。
黒い液体を剥がすためにヴァレリーも含めて攻撃しているため、時間が経つほどにヴァレリー自身へのダメージが蓄積されて行ってしまう。
頑丈で尚且つ火に耐性がある竜族だからこそ、俺やエルザの攻撃を受けても、しばらくは何とか持ちこたえるだろうが、それでも軽視していいことじゃない。
だからこそ、奥の手を使って、一気に勝負を決めに行く……!
俺はそう考えると烈火を握って構えを取った。
そして、そのままその場で振り抜きながら、叫ぶ。
「烈火鳳凰剣!」
烈火鳳凰剣は、熟練度による強化が基本的に炎属性強化という単純な性能向上の烈火の中で、最後まで熟練度を上げることで覚えられる唯一のスキル。
斬撃によって生まれる炎が鳳凰の形となり、敵を自動追尾するように飛んで、何かに命中するまで消えないという、強力無比な技なのだ。
俺の斬撃によって生まれた鳳凰はヴァレリーへと向かって行く。
ヴァレリーはそれを避けようとするが、この攻撃は自動追尾する。
「ガアアアアア!?」
追ってきた鳳凰に激突されたヴァレリーは、黒い液体ごとその体を燃やした。
そして、そこに――。
「これで焼き切る! 烈火! 力を示せ!」
直ぐ側に転移した俺が燃えるヴァレリーへの駄目押しをする。
俺の斬撃によって生まれた炎がヴァレリーに向かって――突如吹き渡った風によってかき消された。
「なに……!? 風魔法だと!?」
その事実に気付いたその時、風の刃が俺を襲う。
「っく……!」
直ぐさま、転移してその場から逃げる。
俺が先程までいた場所は、幾重にも放たれるカマイタチが、ひたすらにその周囲の空気を切り裂いていた。
「大丈夫!? フレイ!」
「掠り傷だ! 問題ない!」
俺は避けきれずに付いた腕の傷を押さえながらそう口にする。
そして、エルザ達に向かって言った。
「油断した……まさか魔法まで使ってくるとは……」
「ヴァレリーへの侵蝕が強くなっているのでしょうか?」
「かも知れないな……ここから先は竜の魔法も警戒しないと……」
レシリアの回復魔法を受けながら、俺は来幸の言葉にそう返す。
そうしていると、ヴァレリーを見ていたユーナが叫んだ。
「師匠! 雷が来ます!」
帯電したヴァレリーを見て雷魔法が来ると予想したユーナ。
その予想通り、ヴァレリーから天に昇った雷が、稲妻を纏った雲を発生させ、そしてそこから、大量の稲妻が俺達に向かって降り注いだ。
「させるか!」
俺は取り寄せで次々と盾を取り寄せ、そしてそれらを頭上に転移させる。
そしてその盾で稲妻をひたすら防いでいくが……。
「別の魔法がくるわ!」
チラリと目をそちらへと向ければ、竜の羽ばたきと共に、渦巻く二対の炎の渦が、俺達に向かって襲い掛かろうとしていた。
「こっちは一度発動させれば、オートなのか……!」
別の魔法が発生しているのにもかかわらず、継続して降り注ぐ稲妻を見て、思わずそんな言葉が漏れる。
「こっちはレシィ達が! ユーナお姉さん!」
「はい! アイスウォール!」
レシリアの結界と、ユーナの氷の壁が、それぞれの炎の渦を防ぐ。
そんな中で、エルザが攻撃に回る。
「これ以上はやらせないわ! フレイムレイン!」
エルザの発動させた炎の雨が再びヴァレリーを狙うが……
「がぁああ!」
そんな嘲笑うかのような鳴き声と共に、ヴァレリーはあっさりと躱し、そしてそのまま口に光を溜め始める。
「此奴……さっきまでと動きが違う……!」
そんなエルザの驚愕を余所に、ブレスが放たれようとする。
「二度も同じ手は食わん! やれ! ユーナ!」
「はい! 師匠!」
俺はそう言うとユーナと共にヴァレリーの側に転移した。
そして、その場でユーナがラースの力を解放し、ヴァレリーの顔を殴る。
「があああああ!?」
放たれようとしていた光線は、ユーナに殴られたことで向きを上へと変え、空高く飛び上がっていき、雲を消し飛ばした。
「追撃は……無理か……!」
光線を防いだついでに、攻撃を仕掛けようとするが、再びヴァレリーが自らを守る結界のように、風の刃を纏い始めたため、俺達は転移でその場から撤退する。
「大丈夫ですかフレイ様」
「まだ大丈夫だが……思ったよりもきついな……」
「確かにね……正直言って竜を舐めてたわ……」
「ですね……」
来幸の質問に対して、前線で戦っている俺達三人は疲れを滲ませながら言う。
「ヴァレリーを殺さないで黒い液体を倒すって条件が厄介だな……ただ倒すだけなら幾らでも手があるが、ヴァレリーへの影響を考えると、どうしても威力の弱い攻撃を選ばざるを得ないし」
鉄球を落としてぶつければ、この戦いを簡単に終わらせられるが、それだと確実に黒い液体に取り憑かれたヴァレリーを殺してしまう。
ヴァレリーを生かすことを考えるなら、絶対に使えない手だった。
ナイフを加速させて貫通させる手も同様に使えないし、実質的に本来の俺の戦闘スタイルが完封されている状態なんだよな……。
全力を出し切れない状況の厄介さを思いながら、俺はどうやってこの状況を打壊するかを必死で考える。
「こちらの攻撃の威力が弱いと、耐えられた後に向こうから、魔法の反撃が襲ってきますらね……本当に厄介な状況です」
俺と同じように状況の悪さについて、ユーナがそう呟く。
「いっそのこと、倒すのを諦めるのもありかもしれないわよ」
「どうしてそう思う?」
エルザが唐突に言いだした言葉に、俺は思わずそう返す。
「フレイが言っていた、誰かが黒い液体を通して、ヴァレリーを操っているという予想だけど、あたしもそうなんじゃないかと思う。時間が経つにつれて、ヴァレリーの動きが良くなってるし、魔法まで使うようになってきた――黒い液体の侵蝕によって、ヴァレリーを操る者が操作できる範囲が増えたと考えるのが自然だわ」
エルザはこれまでの戦いを分析してそう口にする。
その分析は全員が同じ事を考えていたのか異論は出ない。
「だとするなら、ヴァレリーを操作している術者が近くにいる可能性も高いわ。それなら、あたし達は足止めに徹して、ルイーゼ達の動きを待つのもありだと思うの」
消極的な作戦ではあるが、確かに有効な手だ。
術者が消えれば、ヴァレリーの動きが鈍るだろうから、そこから一気に反撃して、黒い液体を削りに行けばいいだろうしな。
「相手を抑えるだけならレシィの出番だよ!」
これまで話を聞いていたレシリアが意気揚々とそう言う。
そして、そのままヴァレリーを拘束するように結界を発生させる。
「これで閉じ込めた! ルイーゼお姉さん達が、操っている人を見つけて倒すまで、レシィがこのまま相手を拘束するよ!」
「確かに結界で相手を抑えれば……。――いや、駄目だ!」
「え!?」
俺がそれに気付くのと同時に、ヴァレリーが動き出す。
ヴァレリーは結界の壁に、凄まじい勢いで、顔や翼をガンガンとぶつけ始めた。
それによって、骨が折れるような鈍い音が何度も響き渡る。
「な、なんで……? あんな勢いで体を結界にぶつけるの!?」
「操っている奴に取っては、ヴァレリーが死のうがどうでも良いってことか! レシリア! 結界を解除しろ!」
「う、うん!」
予想外の事態に戸惑うレシリアに向けて結界を解除するように命令を出す。
そして、結界の解除によって、ヴァレリーは再び空を飛び回り始めた。
「言ってしまえば、ヴァレリー自体が人質になってるな……。拘束系の魔法だと同じやり方で突破されるから、ヴァレリーのことを考えるなら使用できないぞ……」
普通の者なら拘束された時に自分の体を完全に破壊してまで、その拘束を突破しようとなんてしない。
だが、ヴァレリーを操る者からすれば、黒い液体の取り付け先であるヴァレリーがどれほど壊れようが構わない為、ヴァレリーの体を完全に壊しながら、拘束を突破しようとするという先程のような真似が実行されてしまうのだ。
「おかしいですね……」
そんな中で、飛び立ったヴァレリーを見て、来幸がそう言う。
そんな来幸に対して、俺は思わず問い返す。
「どうした? 何かあったのか?」
「先程の結界との衝突で翼の骨が折れた音を聞きました。それなのに、ヴァレリーは翼をはためかせて今も空を飛んでいます」
俺は来幸の言葉を受けて、ヴァレリーに目を向ける。
これまでの戦いの影響もあり、見るからにボロボロの姿だ。
問題となっている翼に関してもそれは同様であり、明らかに普通であるならば、はためかせることなど出来ないダメージが見て取れた。
それなのに、それを無視するかのようにヴァレリーは空を飛んでいる。
そこで、俺はある可能性に気付いた。
「まさか……体の内部に侵蝕した黒い液体が、ヴァレリーの骨や肉の代わりをして、無理矢理、ヴァレリーを動かしているっていうのか!?」
「がぁああああ!」
それが真実だと証明するかのように、翼をはためかせるごとに、ヴァレリーが苦痛によって悲痛な叫びを上げ続ける。
それを見て、俺は更なる状況の悪化に頭を悩ませる。
「これ以上のヴァレリーへの直接的な攻撃は不味いか……!」
ヴァレリーの肉体の状況を無視して、黒い液体がヴァレリーを動かしているため、既にヴァエリーの肉体は悲鳴を上げて、限界を迎え始めている。
この状況で今までのように、それなりに威力のある一撃をヴァレリーに食らわせてしまえば、今度こそ中身であるヴァレリーが死にかねない。
これから先、どう攻撃するか……。
俺がそう頭を悩ませていた時、ヴァレリーに変化が生じる。
「が、が、がぁああああ!」
「何だ……? 何が起こっている!?」
ヴァレリーがそこで悶え苦しんだかと思うと、ヴァレリーの体に取り憑いた黒い液体が膨張し、スライムの化け物のように幾つもの触手を伸ばす。
誰も敵がいないその場所で、伸びたり縮んだり、暴れる触手を見て、俺達は思わず唖然としながらも、その理由について考える。
「何だあれ? まるで黒い液体が自由を得たような……。まさか――黒い液体に対する制御が効かなくなった? ルイーゼ達が何かをしたのか?」
俺はそれを理解するのとともに笑みを浮かべる。
「これは好機だ。あの暴れる触手を切り落とせば、ヴァレリーにダメージを与えずに、黒い液体の残量を減らすことが出来る」
「でも、ちょっと待って! あんなに暴れ回ってるんじゃ、地上からだと魔法で殆ど狙いが付けられないわよ!」
ヴァレリー自体に動きがないが、黒い液体が生み出す触手が、縦横無尽に伸び縮みをしながら動き回っている為、魔法で狙うことは難しい。
エルザがその事実を口にした時、空に半透明の板が大量に出現する。
「レシィが作った結界の足場だよ! 魔力を多く消費するから、長くは持たないけど、その間に黒い液体を倒して!」
レシリアはそう言うと、俺、エルザ、ユーナの三人を風魔法で、その結界で出来た足場の上に飛ばした。
「助かるレシリア! やるぞ! ユーナ、エルザ! 伸びた触手を、凍らせて壊すか、炎で焼き切って、切り落とせ! 少しでも黒い液体を削る!」
「了解です!」
「わかったわ!」
かけ声とともに、俺達は結界で出来た足場の上で、黒い触手と戦う。
「この液体には直接触れるなよ! 氷か炎で間接的に戦うんだ!」
「わかってるわよ!」
魔法で炎を身に纏って防御しながら、火魔法を次々と放って、黒い触手を切り落としていくエルザ。
「ラースとわたし、双方の力を使えば!」
氷で近づく触手を凍らせて身を守りつつ、遠い相手にはラースの炎を飛ばし、そして近づくものは凍らせて殴り壊す戦いを行うユーナ。
「触手プレイはごめんなんでね!」
そして俺は烈火を振るいながら、転移で次々と触手を避けて、俺を狙ったことで伸びていた触手を、更に烈火で切り落とすと言った動きを繰り返す。
お互いがお互いをカバーし合い、上手く立ち回る俺達。
全ての黒い液体を排除することはまだ出来ていないが、このまま行けば大半の液体は消せると思うほど、順調に黒い液体を切り落としていった。
ゴールデンウィークがあれば完成出来ると思ってたけど……無理でした!
残りは全部で六話くらいなので、あとちょっとで本章は終わるのですが、微妙に時間が足りませんでしたね。
まあ、それもこれもエルフが悪いです。
本来ならエルフの里での話は試練も含めて一万字くらいで収めるつもりだったのに、気付けば五万字くらいになっていて、その増量のせいで時間が取られまくってしまいました。
見通しがちょっと甘かったですね……。
ともあれ、本章の先の物語についてですが、毎日更新ではなく、出来上がり次第、投稿していく形で更新します。
平日は基本的に仕事が忙しくて執筆が難しいので、土日に執筆を行うため、今週や来週の土日に更新する形になると思います。
筆が早ければ、来週の土日には完成出来ると思うので、毎日更新では無くなりますが、お待ち頂けると幸いです。