エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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目覚めるヒロイン(ノルン)

 

「パパ~どこ~?」

 

 ボクはそう言いながら転移で何処かへと消えたパパを探していた。

 先程までは取り込んだ神の欠片の力で、パパの生命力を感知することで、パパがこの世界の何処に居るのかを把握することが出来たが、お爺さんを筆頭に多数の竜達によって施された封印術のせいで、神の欠片の力を私的に使えなくなってしまった。

 

 その為、パパの行方を追うことが出来ず、ボクはこうして周囲の空を彷徨うことになってしまったのだ。

 

「ううっ……なんで逃げるの……?」

 

 ボクの目に涙が浮かび、ボクは近くの大地に降り立って思わずそう呟く。

 竜の姿から人間の姿へと姿を変えると、近くにあった湖で自分の姿を見た。

 

 子供だった自分とは違う、立派に成長した肉体。

 もう、大人である自分なら、パパとつがいになっても良いはずなのに。

 あの空間で読んだ物語では、大人になった娘は育ての親に好意を伝えて、そしてそのつがいとなって、幸せに暮らしていたのに、どうしてボクはそうならない?

 

「どうして、ボクを拒絶するの……? パパ……?」

 

 ぐるぐると考え続けた思いがそんな言葉を呟かせる。

 そして、その原因を必死で考える。

 

「いきなり、大人になったのが良くなかったのかな?」

 

 読んだ物語ではどれも大人になるまでの長い期間を、育てて貰っている娘とその父親役となった存在は過ごしていた。

 だけど、ボクはアケロンに勝つためにその過程を飛ばして、神の欠片の力で大人になってしまった。

 

 そのせいで、ボクとパパが過ごした時間は一週間程度だ。

 あの物語のように、何年も掛けて築いた関係とは言えない。

 

「でも、ボクはもう大人になってしまった。子供に戻るなんてことは……神の欠片の力を使えば出来るかも知れないけど……」

 

 子供から大人に成長する過程。

 保護対象の娘から、一人の女性へと成長する流れが、父親役に恋愛対象として意識して貰う為に必要なことならば、ボクはそれを取り逃したということになる。

 

「でも、本当にそれだけかな?」

 

 何とかお爺さん達に話をつけて、神の欠片の力で生命力を弄り、子供の姿に戻ったとしても、パパからつがいとしての――恋人としての好意は得られない気がした。

 

「攻略対象って何のことかな……。もしかしてパパは、初めからボクをつがいにしないようにするために、ボクを自分の娘にした?」

 

 パパが最後に言った攻略対象と言う言葉。

 そして、そこから来るボクが恋愛対象にならないという宣言。

 それを受けて、ボクにそんな考えが浮かび上がる。

 

「親子なら恋愛関係にはならないから、娘として他の男を愛して、その男の元に嫁ぐことが出来るようにするために……?」

 

 竜が持つ優れた賢さが、パパの言動や行動を分析し、その考えが正しいのではないかということを気付かせる。

 

「ふ、ふふふ……ボクを他の男の元に行かせるためにか~」

 

 自分を育てた理由が、善意によるものではなく、自分の為の打算だった。

 その事実に気付いた時、気付けば不気味な笑いが口から零れていた。

 

「パパの愛は偽物だったんだね」

 

 パパから向けられた愛情の全てが偽物だったわけでないとはわかっている。

 でも、根本的な始まりは、偽物の愛からそれは始まっているのだ。

 

 正直に言えば、裏切られたという気持ちがある。

 だけど、だからと言って――。

 

「もう、パパ以外の相手なんて考えられないもん」

 

 裏切られたからと言って、パパを相手に完全に失望できない。

 そんなことでパパへの好意が消えることはなく、むしろ、失望よりも、他の男に靡くと思われたことに対する悲しみと怒りの方が大きい。

 

 なぜなら、始まりが偽物だったとしても、パパがボクのことを大切に思ってくれたのは事実だと知っているからだ。

 一週間というあの空間で過ごした時間と比べれば圧倒的に短い日々だったけど、その日々はボクの宝物であり、その中でパパの良い部分をしっかりと見てきた。

 

 だからこそ、好きになったのだ。

 早く大人になってつがいになりたいと思ったのだ。

 

 ――生まれて最初に最高のものを見てしまったボクが、今更別のものに目移りして、それを選ぶなんてこと出来るわけない。

 そう、それこそ、パパの愛が偽物だったとしても――。

 

「ああ、そうか。偽物か。偽物だから良いんだ」

 

 ボクはそこでその事に気付く。

 そして同時にウルズの最後の言葉を思い出した。

 

「ボクに取ってのヒロインは何か」

 

 ボク以外のパパの周囲にいる女共が持っているというヒロイン像。

 あの時、ウルズの質問に対してボクが答えられなかったもの。

 

「血の繋がった本物の親子なら、愛し合ってつがいになることはない――でも、物語で見たように、偽物の親子なら愛し合う事が出来る」

 

 本物のような確定した関係ではなく、偽物のような不確かな関係だからこそ、その関係性を変えて、お互いの立場を変化させていくことが出来る。

 

「始まりが偽物であっても――いや違う。始まりが偽物だからこそ、その偽物を本物に変えていくことが出来るんだ。偽物の家族である血の繋がらない親子が、本物の家族であるつがいへと変わっていくことが出来る――! そうだ! それこそが!」

 

 思考に耽っていたボクは結論へと到る。

 パパのヒロインに相応しいのはどんな人物なのか。

 そして、パパに取っての自分がどんな存在なのか。

 

「パパ! 物語のヒロインというのはね! 主人公との偽物の関係を、一緒に過ごす日々の中で、少しずつ本物へと変えていくことが出来る――そんな偽物を本物に変えられるという特別な立場と、新しい関係性を得るという意思を持った、主人公との関係を変えていくことが出来る女性を指す言葉なんだよ!」

 

 それこそがボクの結論。

 

 偽物の家族である親子が、本物の家族であるつがいになるように。

 偽物を本物にしようとするからこそ、互いの立場と関係性が変わるからこそ、そこに物語は生まれ、そしてその物語の主人公とそのヒロインが現れることになる。

 

 だからこそ、ボクは確信するように言い放つ。

 

「パパ! パパのヒロインはこのボクだ!」

 

 他の誰も変われはしない。

 パパのヒロインに成れるのはこのボクだけだ!

 

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