エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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オープニング

 

「クソ! 間に合わなかった……! 遂にこの時が――ルーレリア学園への入学の時が来てしまった……!!」

 

 ゲームで散々目にしたルーレリア学園の制服に身を包んだ俺は、そう言いながら自室の机に突っ伏していた。

 

「この日が来るまでに俺だけのヒロインを見つけるつもりだったのに……! それもこれも攻略対象達のせいだ!!」

 

 意気揚々と出掛けたエルミナへのバカンス。

 それが結果的にノルンやルイーゼと言った危険人物に目を付けられるだけという形で終わった事に対して、俺は危機感を抱くようになっていた。

 

 この調子でトラブルに巻き込まれていたら、ルーレリア学園入学までのあと一年ほどの期間なんて、あっという間に終わってしまうんじゃないか?

 

 この世界はインフィニット・ワンというゲームを元にした世界であり、インフィニット・ワンは多数の攻略対象による豊富なストーリーが評判を呼んだゲームだ。

 つまるところ、簡単に言ってしまえばそれは、この世界にはその多数のストーリーを紡ぐための大量のトラブルがそこらかしこに存在しているということでもある。

 

 考えて見れば、ナルル学園時代も、銀仮面で解決したものや、クーデターなどの俺が直接対峙することになったものも含めて、多数のトラブルに見舞われた。

 その殆どが攻略対象のストーリーに起因するものであり、それによって俺の大切な時間がかなり削られていたのは事実だ。

 

 この世界は主人公の為に多数の問題が仕込まれている。

 だからこそ、受け身な姿勢でぼーっとしていたら、そう言ったトラブル解決だけで人生が終わってしまう……!

 

 俺はそう考え、今まで以上に積極的に動くことを決めた。

 エスカレーター式でルーレリア学園に上がれるうえに、銀の神騒動で俺だけのヒロインが見つかる可能性の低いナルル学園に見切りを付け、俺はナルル学園をサボって世界各地を飛び回り、俺だけのヒロインを探し始めたのだ。

 

 なのに――!

 

「何処に行っても! 何処に行っても! 攻略対象が現れやがる!」

 

 俺は思わずそう憤りを露わにする。

 

 俺はそれこそ本当に、世界各地ありとあらゆる所に飛んで、俺だけのヒロインになり得る存在を探して回った。

 だが、そうやって各地を巡ると、まるでそれが運命であるかのように、何処からともなく攻略対象が現れて、いつの間にかその攻略対象の問題を解決するための騒動に巻き込まれて、対処を余儀なくされてしまう。

 やっとの思いでその騒動を乗り越えても、得られるものはイベントを攻略したことによる攻略対象の好意だけ、何の意味もない無駄な時間を、俺は攻略対象達のせいで強制的に送らされることになったのだ。

 

「攻略対象がいないと思われる地域に飛んでも、ルイーゼのように旅行でやってきた攻略対象が現れるし……マジでどうなってんだよ……」

 

 当然、俺も、攻略対象に合わないように幾つもの対策を行った。

 しかし、現実化したこの世界では俺自身が避けようとしても、攻略対象側が勝手に行動してこちらに寄ってくるため、避けきれずに出会ってしまうことになるのだ。

 

「なんなんだ! 呪われているのか! 俺は!!」

 

 俺はそう言いながら、思わず机を叩いた。

 一度、お祓いにでも行こうかと思ったが、よくよく考えれば、神社は攻略対象の一人である千里の領域であると気づき、それを取りやめた。

 本当に何処に行っても攻略対象が居るな、と苦笑いしか出てこない状況に陥ったところで、俺は状況を打壊するために発想を逆転させることにした。

 

 何処に行っても攻略対象が俺の邪魔をするというのなら――。

 先にその攻略対象達のイベントを全て終わらせ、邪魔をする存在を消し去ってから、俺だけのヒロインを探せば良い。

 

 インフィニット・ワンはそれこそ既存のギャルゲーと比べものにならないほど、多数の攻略対象が存在するゲームだ。

 だが、多数存在すると言っても、その数は決して無限ではないため、潰していけばいずれ、イベントが残っている攻略対象がいないという状況を生み出せる。

 

 ――つまりは、誰も俺の邪魔をすることが出来なくなるということだ。

 

 俺はそう考えて、ヒロイン探しを一時的に中断し、銀仮面となり、片っ端から攻略対象のイベントをこなしていくことにした。

 だが、その計画はある面では順調に進み、そしてある面では失敗した。

 

 ……俺はゲームが現実化するという事象の厄介さに気付いていなかったのだ。

 

 ゲームの世界でなら、おつかいイベントのようなものが発生しても、画面上でプレイヤーを操作するだけで、あっと言う間に現地に着いて、次々とイベントをこなし、半日もかからずに攻略対象の一ルートをクリアすることが可能だ。

 

 だが、現実ではそうはいかない。

 

 空蝉の羅針盤で短縮出来るとは言え、行ったことがない目的地に着くまでは何日もかかることになるし、人を訪ねても、留守だったり、アポイントメントが必要だったりで、数日掛けてその人物に合うということもあるのだ。

 そうやって、ゲーム上では数分もかからずに出来た事が、何日もかかることになってしまえば、ゲームでは数百時間で出来ていた全ての攻略対象のイベントの完全クリアも、現実では数ヶ月――いや、数年がかりの大事業になってしまう。

 

 結論から言ってしまえば、俺はルーレリア学園入学までの期間の間に、全ての攻略対象のイベントを終わらせることが出来なかった。

 その結果として、ハイパー超絶モテ男のアレクが現れるこの日まで、俺だけのヒロインを見つけることも、その相手と恋人関係になることも出来なかったのだ。

 

「ああ~! なんでこんなことに!」

「フレイ様。嘆いていても、時は戻りませんよ?」

 

 そんな辛辣な来幸の言葉が部屋に響く。

 俺はその言葉に思わず呻きながら、来幸に向かって言う。

 

「わかってるよ~。でも、嘆くくらい良いだろう? 俺がどれだけこの日が来るのを嫌がってたか、来幸だって知ってるだろうに……!」

「そんなに嫌なら、ナルル学園のようにルーレリア学園もサボりますか?」

「――いや、今日はさすがに行く。アレクとアリシアのどっちがこの世界に存在しているのかを、一応は確認しておきたいからな」

 

 俺はそう言って、机から起き上がる。

 俺がルーレリア学園に入学するということは、同じ学年のアレクやアリシアも、今日、学園に入学するということ。

 

 つまり、今日こそが、この世界の元となったゲームの――インフィニット・ワンの始まりの日なのだ。

 

「アレクやアリシアの行く末に興味はないが……。それでもゲームの開始日って言うのなら、見るだけは見ておかないとな」

 

 俺はそう言って、来幸と共にルーレリア学園に向かった。

 

☆☆☆

 

「……何か、チラチラと見られているな……」

「まあ、何かと目立ちましたから」

 

 周囲を気にしていった俺の言葉に、来幸がそう返答をする。

 

 俺達は今、ルーレリア学園への道を二人で歩いていた。

 何故、メイドである来幸も共に歩いているかというと、ルーレリア学園はナルル学園と違って優秀な平民も通うことが出来るため、インフィニット・ワンの時と同じように来幸もルーレリア学園に入学することになっているからだ。

 

「はぁ~。こんなはずじゃなかったのに……。下手に目立つと俺だけのヒロイン探しに支障が出るじゃないか、こう言うのはアレクのような主人公の――」

 

 俺はそこまで言った所で、見覚えのある赤髪を見つけて、思わず足を止めた。

 そして、来幸に向かって慌てながら語りかける。

 

「お、おい! いた! いたぞ!」

「――っ! まさか、アレクですか!」

「ああ、それにそれだけじゃない――! アリシアも一緒だ!」

 

 俺達が見つめる先、そこには赤髪の少年と少女がいた。

 ゲームで散々目にしたその姿を見て、俺は感心するように言う。

 

「どちらか片方かと思ったけど、まさか二人ともいるなんてな~」

 

 ゲームではアレクとアリシアのどちらか片方を選んで物語を始める形だった。

 その為、選ばなかった方はその世界では登場しなかったが、現実となったこの世界では双方の主人公が存在する形のようだ。

 

 まあ、ともかくこれで、攻略対象を避けてきた俺の判断は間違ってなかったってことになるな。アレクがこの世界に存在するっていうのなら、ゲームと同じように攻略対象がアレクに惚れる可能性は高いわけだし。

 

 アレク自体がこの世に存在しないのなら、攻略対象とアレクの関係について考える必要はないが、アレク自体が存在するというのならそうもいかない。

 仮にアレクが別の攻略対象のルートを進んでいるのだとしても、現実化したこの世界では平行してルートを進めて、ハーレムエンドを目指せる可能性があるのだから、アレクにその攻略対象が落とされる危険性は否定出来ないのだ。

 

 俺はそこまで考えて、ふと来幸へと視線を向ける。

 来幸は真剣な様子でじっくりとアレクを見ていた。

 

 やっぱり来幸も主人公であるアレクに興味を惹かれているみたいだな……。

 よし! ここは主として、度量の高い所を見せておくか!

 

「来幸」

「? 何でしょうかフレイ様?」

「そんなに気になるなら行ってきてもいいぞ? 俺の専属メイドであろうとも、恋愛するのは自由だ。ここでアレクに話しかけるのは、ゲームとは違った展開になるが、今からアレクを落としに行っても――」

「は?」

 

 …………ちびるかと思った。

 

 俺の言葉を遮るように放たれた来幸の言葉。

 そして、それと同時に見せた来幸の顔を見て、俺は思わずそんな感想を思った。

 

「私が、何故あんな男の元に行かないといけないんですか?」

 

 にこりと笑顔でそう言う来幸に俺はビビりながら言葉を返す。

 

「い、いや、それは来幸がアレクを見ていたから……あ、何でもありません」

 

 俺はそれだけを言うと、足早に走り出した。

 その時、来幸の方へとチラリと視線を向けたが、来幸はアレクの方を、まるで人殺しのような目付きで睨んでいた。

 

 あれだな、俺が下手に話を突っ込んだせいで関係をこじらせてしまったようだ。

 まあ、よくよく考えてみれば、俺がやったのはお節介焼きおばさんが、結婚やお見合いを無理矢理斡旋しようとしたようなのと同じこと。

 

 お互い知り合ってもいないのに、恋愛前提でその背中を押すのは、自分達のペースでやりたい当人達に取っては、邪魔者でしかないか。

 

 俺はそう考え、先へと進んでいく。

 

 まあ、険悪な状態から始まるラブコメなんてごまんとあるし、むしろアレクと来幸の物語は、ここからってところかも知れないな。

 

 そうやって歩いていた俺達はルーレリア学園へと辿り着いた。

 だが、そこでは何故か大勢の生徒が門の先を塞ぐように固まっていた。

 

「? なんだ?」

「なんでしょう?」

 

 俺と来幸は思わずそんな言葉を放つ。

 大勢の生徒のせいで、アレクやアリシアも先に進めず、俺達と同じように門の中に入ったばかりのところで足止めを喰らっていた。

 

 インフィニット・ワンのオープニングにこんなイベントあったか?

 教室に辿り着くまでにヒロインとの出会いは幾つかあったような気がするけど、こんな風に大勢が集まるような展開はなかった気がするが……?

 

 そんなことを考えながら、俺が集団を無視して通り過ぎようとすると、その集団の中から、一人の少女が現れて、俺の道を塞ぐように踊り出てきた。

 

「メ、メジーナ先輩……何かようですか?」

 

 俺は目の前に現れた少女――メジーナに思わずそう問いかける。

 それに対して、メジーナは満面の笑顔でにっこりと答えた。

 

「貴方だったんですね……」

「えっと……何が?」

 

 要領を得ない言葉に思わずそう返す。

 メジーナはまるで自分の世界に浸るように、俺の質問に答えた。

 

「フレイ・フォン・シーザック……貴方こそが、銀仮面様だったんですね!」

「はぁ!? い、いや、違うけど!?」

「違いません! 貴方こそが! 我等の救世主です!」

 

 否定したにも関わらず、断言するように答えるメジーナ。

 その確信に満ちたという態度に、俺が銀仮面だと知っている、数少ない人物の一人である来幸に、俺は思わず視線を向けた。

 

 俺のその視線を受けた来幸は、顔を真っ青にして、冤罪事件に巻き込まれた人物のように、アイコンタクトで自分はやってないと伝えてくる。

 

 じゃあ、誰が……と俺が考えたところで、その答えはメジーナから齎された。

 

「七彩教会が正式に布告したのです! 世間で人々を救っている銀仮面――その正体は新しく神となった銀の神であるフレイヤフレイであると!」

「は? はぁあああああ!?」

 

 ざけんな!? あのクソ神共!? どうやって知ったのかは知らないが、こっちがどんな気持ちで、正体を隠して活動してきたと思ってんだ!? それを、こんなにあっさりと、俺の正体をばらしやがって……!!

 

 俺が、あまりの怒りでどうにかなりそうになる一方で、周囲の者達は「銀仮面! 銀仮面!」と次々と盛り上がっていく。

 そんな中で、メジーナや、サラ、ナタリアなどの攻略対象の少女達が、上着を緩めてはだけさせながら、俺へと近づいてくる。

 

「ああ、銀仮面様……いやフレイ様……。私達は貴方に救われました。だからこそ、私達の全ては貴方様のものです。貴方様の為なら私達はどんなことでも――」

「ひぃ……!」

 

 俺は思わず、そんな少女達から後ずさるが、気付けば後ろにも千里やステラなど同じような集団が出来上がっており、完全に囲まれた状態になってしまっていた。

 

 進退極まった俺は、必死に頭を回し、そして周りの者に言う。

 

「いや、あの、その……。こ、これは、神として当然のことをしただけだ! だから、お礼とかそういうの不要だから!!」

 

 俺がそう言うのと同時に周囲から大歓声が響き渡った。

 

「銀の神! 銀の神! フレイヤフレイ! フレイヤフレイ!」

「あ、あははは……」

 

 俺は引き攣った笑いをしながら、周囲の声援に応える。

 そして、ふとアレクとアリシアの方に目を向けた。

 

「何か、凄い事になってるね」

「ああ、そうだな。まさか神様が学友にいるなんてな……。ま、俺達には関係ない話だろ、さっさと教室に行こうぜ!」

「うん!」

 

 イベントを見る傍観者のような、ごく普通の反応をして去って行く二人。

 そんな二人を見て、俺は思わず心の中で叫ぶ。

 

 おい! アレクにアリシア! 違うだろ! こう言う俺スゲー展開は、お前達主人公の役割だろ!? 俺の役割じゃねーんだよ!? 何でそれなのに、お前達がまるでモブみたいな態度を取って、ここから離れていくんだ!!

 

「フレイ様……神に身を捧げる準備は出来ています! さあ、私達の全てを受け取ってください!」

「ち、近づかないでください! フレイ様! 逃げて……!」

「ははは……」

 

 アレクに押し付ける予定だった銀仮面への名声や好意が、全て自分に降りかかってきて、もはや笑うことしか出来ない。

 

 来幸に助けて貰うことで、必死に押し寄せる人々から逃げ、更に途中でやってきたユーナやエルザにも助けてもらいながら、必死で教室へと逃げる俺は思った。

 

 もう、ルーレリア学園に来るのも止めようかな……。

 




ついにインフィニット•ワンの原作主人公登場。
そして、あっという間に出番終了です。

まあ、仕方ないよね。
アレクとアリシアがどの攻略対象と付き合おうとも、フレイにとっては恋愛対象にならない他人同士の恋愛で、どうでもいいことなので。
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