エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「こ、これで、しばらくは大丈夫だろう……」
俺は教室のドアを内側から鍵を掛けて塞ぐ。
先程までの騒動で殆どの者が外に出ていたのか、入った教室は殆ど人がいない状況で、閑散としていた。
そんな中で、教室にいた二人組が俺に声を掛けてくる。
「大変そうだね。フレイヤフレイ様」
「お、久しぶり。フレイヤフレイ様」
その二人組――トートとベッグにそう声を掛けられ、思わずげんなりとしながら、俺は二人に向かって言う。
「お、お前らまでそう言うのか……」
「ははは、冗談だよ。フレイ」
「そうそう、今までナルル学園をサボって、ちっとも俺達に顔を見せなかったんだから、これくらいの冗談は言ってもいいだろう?」
そう言って、気楽な様子で語りかけてきた友人二人の態度に、俺は思わずほっとしながら、その二人の元に向かう。
「はぁ、それにしても疲れた……」
「何か凄いよね。あの騒ぎよう。この教室にも響いてきたよ」
「まるでお祭りだよな」
俺の疲れた様子を見て、外の騒ぎについて二人はそう意見を述べる。
そして、ベッグがにやりと笑って言う。
「でも、良かったんじゃねーの? フレイ、お前、モテモテじゃん。これなら、あの中からお前だけのヒロインを探し出せるんじゃね?」
「いや、あの中にはもういないことはわかってるんだよ。だから、あんなに纏わり付かれても困るだけなんだ」
俺はため息を吐きながら、そうベッグに言葉を返す。
俺のその言葉に、ベッグはまたかと肩を竦めながらも言う。
「まあ、仮にそうだったとしても、あんなに大勢の人間に、スゲースゲー敬われて、神様気分で何でもお願い出来る生活って結構良さそうだけどな」
「いや! むしろもう日常生活を行うのすら困難なんだが!?」
まるでゾンビ映画のように群がる人々を見て、俺は思わずそう叫ぶ。
確かに、ひたすら称賛されたかったり、ハーレムを築いたいというような欲求を持った奴なら、自分の身を捧げるために群がるあのイカれた信者達を思う存分に使って楽しめるのかも知れない。
だが、俺の願いは、俺だけのヒロインと二人で、慎ましくも微笑ましいボーイミーツガールの日々を送ることであり、あんなとち狂った集団なんかは、こちらとしては願い下げなのだ。
「クソ!? どうしてこうなった!? 何で俺がこんな目に……! 七彩教会の奴らめ……何を考えてやがる……!」
俺が神として認定されたのも、銀仮面だとばらされたのも、全ては七彩教会とその背後にいる七彩の神々の仕業だ。
奴らが起こした、俺という一般人に対するこの仕打ちに、俺は何故そんなことをしでかしたのかと、頭を悩ませる。
「フレイのことだから、どっかで神様をひっかけたんじゃないの?」
「だな。どうせいつもの調子で行動して、その女が神様と気付かずに、そのままこましたんだろう」
呆れたようにトートが俺に対してそう言うと、ベッグがそれに頷く。
俺は二人のその言葉に猛烈に反論した。
「はぁ!? ないない! 俺は天界から動かない紫の神以外の全ての神の顔を知っている! だからこそ! 知らずに神を落とすなんてことあり得ない!!」
そう、俺にはゲームでの知識がある。
そんな俺が知らずに神をこますなんてことがあるわけないのだ。
「ほんとか~」
「信用度ゼロだね」
そんな俺の絶対の自信から来る反論を二人は疑いの目で見る。
俺がそんな二人の目に思わず仰け反っていると、ガラガラと鍵を掛けたはずの扉が鍵を開けられて開かれる。
俺はそれを見て、思わずそれをなした相手に問いかけた。
「誰だ!?」
「私はクリスティア王女殿下からの使いであります!」
部屋に入ってきたのは銀仮面ファンクラブの面々ではなく兵士だった。
彼は手に持った紙を広げると、俺に向かって言う。
「銀の神、フレイヤフレイ様に招集がかかっています」
「――まて、フレイ・フォン・シーザックではなく、フレイヤフレイに、クリスティア様からの招集がかかっているのか?」
「その通りであります!」
確認の為に告げた俺の言葉に兵士は迷いなく答えた。
貴族である俺ではなく、神である俺を呼び出す――。
「どう考えても、厄介ごとの臭いしかしないんだが!?」
「そうだね。でも、行くしかないんじゃない?」
「頑張れよ~フレイ」
友人二人のお気楽なその言葉を恨めしい顔で見ながら、俺は兵士の案内でクリスティアの元へと向かった。
☆☆☆
さすがに王家の命令を邪魔できなかったのか、銀仮面ファンクラブの妨害を受けることもなく、俺は無事、クリスティアの元へと到着していた。
「それで、クリスティア様、何のご用でしょうか?」
「ああ、やめてくれ、その敬語を」
「? どうしてでしょうか?」
俺がそう言葉を返すと、クリスティアは疲れた様子でため息を吐く。
「世間から神として認められた者が、例えその国の貴族であるのだとしても、そんな風に一国の王家を敬わったら、我が国が、貴族としての関係を利用して、神を私的に利用するつもりかと、他国に糾弾されかねんのだ」
「ああ、そういうこと……まあ、わかった」
クリスティアの言わんとしていることを理解し、俺は口調を改める。
そして、再度、クリスティアに対して聞いた。
「それで、フレイヤフレイとして呼び出すなんて、何の用だよ。厄介ごとの臭いしかしてなくて、関わりたくないんだが?」
「それがな……私にもよくわからん」
「はぁ? いや、わからんってどう言うことだよ?」
俺はクリスティアの言葉に思わずそんな言葉を返す。
「つい先日のことだ。急に七彩の神が――アムレイヤ様がやってきたんだ」
「アムレイヤ様が?」
神が突然訪問してくるという事態を聞いて、俺は思わず聞き返す。
「ああ、そして、アムレイア様は『今、この世界に危機が訪れています。それへの対応を考えるために、世界各国の首脳で会議を行う必要がある――つきましては、フェルノ王国に議長国をお願いしたいと考えています』と言われた」
「世界の危機? 嘘だろ?」
何か明らかにやばそうな言葉に、俺は思わず頬が引き攣る。
「その世界の危機とやらが何かはわからんが、我々は議長国として会議の準備をしなければならなくなったというわけだ」
「それで、クリスティアが動いていると……国王は何をしてるんだ?」
俺のその言葉にクリスティアは思わず顔を押さえて言う。
「この話を聞いた後、心労から倒れた。小心者の父上には、世界の危機も、議長国という大役も、受け止められないほど重いものだったらしい。今は私が国王代理として、諸々の準備を執り行っている形だ」
「それはまた……」
俺は思わず同情の目でクリスティアを見る。
クリスティアはそんな哀れみの目をなげやりな雰囲気で受け取った。
「ともあれ、アムレイヤ様からはお前も連れてくるように言われている。だから、私と一緒に会議に参加してくれ」
「はいはい。行きたくはないが……逃げられそうにもないからな……」
俺とクリスティアは揃ってため息を吐いて、クリスティアが用意したという世界会議の会場へと向かい始めた。
その中で俺はふと考える。
こんなイベント、インフィニット・ワンであったか?
確かに俺の行動によるバタフライエフェクトでこれが発生した可能性もあるが……それにしては規模が大き過ぎるのではないか?
インフィニット・ワンを遊び尽くした俺が知らず、そしてバタフライエフェクト程度では起こりえない規模の出来事でもある今回の事件。
それを受けて、俺は一つの可能性に思い至る。
もしかして――最後のDLCのイベントがこれなのか?
俺が前世でプレイする事が出来なかった最後のDLC。
もし、それが今回の事件の大本だと言うのなら――。
俺はこの出来事の正答を知らない……。
今までは主人公ではない俺でも問題を解決してこれた。
だけどそれは、先に答えを知っていたから出来たことだ。
それが出来ない今回の事件に対して、俺は不安を感じながら、クリスティアが用意した会場へと足を踏み入れた。