エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

119 / 132
クラウルート

 

 現在、この世界に異界神獣という異世界からの来訪者がやってきているが、この世界に異世界から何かがやってくるのは、これが始めてではない。

 この時代より遥かに遠い昔、複数の異世界間航行を可能とする船が、この世界にやってきて各地に不時着していたのだ。

 それらは長い年月の中で遺跡となり、この世界の人々は異世界産とは知らずに、その遺跡を冒険し、大量の遺物を手に入れてきた。

 

 とあるルートで冒険者となったアレクがやって来たのも、そう言った異世界の船が遺跡となった場所だった。

 彼は熱心に情報収集をすることで、他の冒険者が見つけていない、未発見の遺跡を見つけることに成功していたのだ。

 

「やっぱりこれは未発見の遺跡だ……! この発見があれば俺も……! ん? あれは……剣……か?」

 

 未発見の遺跡を見つけたことで、そこから得られる遺物や、それを元にした栄誉などを想像し、歓喜の笑みを浮かべていたアレクは、遺跡の中央に突き刺さっている美しい剣に目を奪われる。

 

「こんな剣、見たことがない……! 取り敢えず抜いてみるか……!」

 

 そう言ってアレクは床に突き刺さった剣を持ち、勢いよくそれを引き抜くことで、剣を床から抜き放つ。

 

「っ!? なんだ今の音……!? まさか、壊した!?」

 

 剣を抜き放った時に聞こえたバキッという音に、アレクは困惑しながら抜き放った剣を見回す。

 

「う~ん。でも剣には異常が無いように見えるな……」

「ジジ……システム異常……ジシ……起……失敗……」

「うわっ!? 今度は何だ!?」

 

 突如として剣から音声が流れ始める。

 その音声はアレクが理解出来ない言葉を並べ立てる。

 

「……システム……ジジ……強制起……」

「クソ!? いったい何だって言うんだよ!?」

 

 やがて、その言葉を音声が放つと、剣が光に包まれる。

 眩しさに目を焼かれたアレクが、回復してきた視界で目の前を見ると、そこには握っていた剣はなく、全裸の幼い少女がいた。

 

「え!? 剣が……人に!?」

「ここはどこ? 私は……だれ?」

 

 この記憶喪失の少女こそが、異世界の聖剣であり、攻略対象の一人でもある、異界聖剣クラウソラスことクラウだ。

 この遺跡となった船は、別世界に異界聖剣を運ぶためのものであり、万全の状況なら、豊富な知識と強力な剣として機能を持った聖剣を得られるはずのものだった。

 しかし、この世界に機能を失って不時着し、そして機能停止状態で無理矢理アレクが剣を引き抜いた為に、システムに異常が起こり、クラウは過去の記憶と聖剣としての機能の殆どを失うことになってしまったのだ。

 

 遺跡に残された情報から、クラウと名付けられた少女が、剣が人化した存在であり、自分の無理矢理な取り扱いのせいで、過去の記憶を失ったと知るアレク。

 彼はそのことを後悔し、クラウに過去の記憶を取り戻させるために、他の遺跡を巡って少しずつクラウの機能を回復させていく旅に出るのだ。

 

 そうして記憶喪失のクラウと一緒に冒険を繰り広げるアレク。

 記憶喪失で自分を道具だと認識している上に、馬鹿正直に物事を受け取ってしまうクラウとの旅は楽ではなく、がさつなトレジャーハンターの話を真に受けて、間違った知識を学んで、そうとは知らずにアレクに迫るなど、お色気イベントが発生してしまったりしてしまう。

 

「アレク、トレジャーハンターに取って、パートナーは一心同体とも言うべきものだと習いました」

「ん? まあ、確かにそう言う一面はあるが……」

 

 夜中、テントの中で突然話しかけてきたクラウに、アレクは疑問に思いながらも、その言葉に対する返答を返す。

 

「そして、一心同体とは、男と女が体を重ねて一つになることだと、別のトレジャーハンターが言っていました。アレク、私と一つになりましょう」

「ぶっ! ちょ、何を言っているんだクラウ!?」

 

 突然の話の転換に、アレクは飲んでいた水を思わず吹き出す。

 そんなアレクを見て、クラウは無感情ながら、首を傾げていった。

 

「アレクは、私と一つになるのは、嫌なのですか?」

「いや、それは……」

「私と気持ちいいことするのは、嫌なのですか?」

「それはちょっと違うんじゃないかなっ!?」

 

 アレクは焦りながらそう思わず叫ぶ。

 そして、必死にクラウの誤解を解こうと、クラウが言っているのはいったいどういう意味なのかというのを捲し立てるようにして語る。

 

「つまり、トレジャーハンターのパートナーはそう言うことをする必要がなくて、どちらかというと愛し合う男女がすることなんだよそれは。だから、クラウが無理をして俺とそれをする必要はないんだ」

「そうなんですか」

 

 アレクの説明を聞いたクラウはそう言って頷く。

 そして、直ぐ後に何てこともないように言った。

 

「それでも私はアレクと一つになりたいです。アレクは嫌なのですか?」

「――っ!!!!!」

「あっ。 アレク……んっ。これが一心同体……んっ!」

 

 その言葉でアレクの理性は吹っ飛んだ。

 そのままクラウを押し倒し、無感情な彼女が徐々に快楽という感情を知るまで、アレクはその完璧に作られた肉体を貪り続けていったのだ。

 

 そのような感じで、アレクとの文字通りの意味での精神的、肉体的交流の中で、クラウは徐々に自我を獲得していき、そして遺跡の攻略で記憶は取り戻せなかったが、機能に関しては順調に取り戻していく。

 

 そして、最後の遺跡を巡り、聖剣としての最低限の機能を回復した所で、クラウは遺跡などの施設の扱い方と異世界を救うという自らの使命を思い出すのだ。

 

「すみません。アレク……」

 

 使命を思い出したクラウは、その使命に愛しているアレクを巻き込まない為に、アレクに黙って自分が最初にいた遺跡に向かい、そこの施設を再起動させる。

 そして、そのまま異世界へと旅立とうとするが、その船に息を切らせてアレクが飛び込んで来てしまうのだ。

 

「アレク! どうして来てしまったんですか!?」

「そう言う君こそ、何故一人で旅立とうとしている!」

「私が行こうとしているのは異世界です! どんな危険がその先に待っているのかわからない……そんな場所に貴方を連れて行くことは出来ません!」

「そんなことで俺を置いていこうとしてのか! ふざけるな!」

 

 アレクはそう言って怒りながら、クラウの腕を逃げられないように握った。

 

「君は俺のパートナーだ! そこにどんな危険があろうとも、俺はずっと君と一緒にいる! だからこそ、掴んだこの手を絶対に離さない! あの日、君を引き抜いた時から――ずっと君は俺のものだ!」

「アレク……!」

 

 アレクの告白に感極まるクラウ。

 そんな、クラウに心配そうにアレクが問いかける。

 

「それとも、君は俺以外の誰かをパートナーにするのか?」

「ううん。私のパートナーはアレクだけです」

 

 そう言ってクラウもその胸の内を露わにする。

 

「アレクに引き抜かれたあの時、全ての記憶を失って、私は新しく生まれ変わった……今の私の全てはアレクに貰ったもの……だから、これからも、私の側に居続けて欲しい……私にはアレクが必要なんです!」

「ああ! お前が必要とする限り、俺はずっと隣にいる!!」

 

 そうして愛を確かめ合ったアレクとクラウは、異世界へと旅立つ、様々な世界を巡り旅をしながら、彼らは愛し合い、世界を救うための旅を続けていく――。

 

☆☆☆

 

 と言うのが、クラウルートの大まかなストーリーだ。

 

 ここで大切なのは、クラウは万全の状況なら、聖剣として強力無比な力を持っているということと、異世界からやって来ているため、この世界の者にはない異界の知識を持っている可能性が高いということだ。

 だからこそ、俺はあの会議の場で、この聖剣を使うことを提案した。

 

 クラウが異界神獣に対抗する為の知識を持っていればそれでよし。

 仮に異界神獣に対抗する為の知識が無かったとしても、強力な聖剣の力があれば、神の力が足りない分を補えるかも知れないと俺は考えたのだ。

 

 そして、俺はその考えに従って、クラウが眠る遺跡へとやって来ていた。

 

 本当は攻略対象に関わるのなんて嫌だが四の五の言ってられない。

 世界が滅んだら、ボーイミーツガールどころではないのだから、ヒロイン探しを中断してでも、この事態を何としても解決しないといけないのだ。

 

 俺は遺跡の中に入り、床に突き刺さった聖剣を目にする。

 だが、そのまま聖剣を抜くことはせず、くるりと来た方向へと向き直る。

 

 ここで闇雲に剣を抜き放てば、アレクの二の舞となってしまう。

 何も知らないアレクが、この遺跡の機能が回復する前に、無理矢理剣を引き抜いたからこそ、クラウは記憶と機能を失うこととなってしまった。

 

 だが、俺は思う。

 

 この遺跡の機能が回復する前に剣を引き抜いたことが、クラウが不完全な状態になってしまった原因だと言うのなら、剣を抜く前にこの船の機能を回復させてしまえば、完全な状態のクラウを手にすることが出来るのではないか?

 

 インフィニット・ワンの時のように、世界各地の遺跡を回る必要もなく、本来の機能の全てを取り戻せないという事態も発生しない。

 

 異界に関する完全な知識と、聖剣としての完全な機能。

 それを持った異界聖剣クラウソラスを手にすることこそが、俺が思いついた異界神獣への対抗策というわけだ。

 

 そして、この場には、それを成すための人材を既に集めている。

 俺は振り向いた先にいた、転移でこの場に集めた各国の一流の学者や無窮団の面々に目を向けて、息を整えると演説を始める。

 

「銀の神フレイヤフレイだ! それぞれが自らの研究で忙しい中で、こうして大勢の者がこの場に集ってくれたことを嬉しく思う!」

 

 まあ、世界を救うための案件で神様命令の徴集だから、ここに来ないっていう選択肢は殆ど無かったと思うけど。

 

 俺は内心でそう思いながらも、集まった研究者達をやる気にさせるために、演説の中でひたすら綺麗事を重ねていく。

 

「今! 世界は未曽有の危機に晒されている! 異世界からやって来た侵略者! 全てを飲み込む異界神獣という化け物を前に! 君達の家族や友人、周囲の者達は! 来るべき決戦に向けて! 戦う為の準備を始めているだろう!」

 

 世界の危機は既に全世界に告げられた。

 

 七彩の神が率いる世界救済の為の連合軍は、結界の状態から二ヶ月後を決戦の日と定め、それに向けて様々な準備が既に始まっている。

 

 世界を守るための戦いということで志願兵も多く、各国ではその志願兵も含めて、決戦までに少しでも練度を上げようと、厳しい訓練を始めている。

 それだけではなく、兵が使うための武器や物資なども、決戦に向けて最高品質のものを、必死になって職人が作り続けている状態にあった。

 

「まさに彼らは世界を救うための勇士! 命をかけて侵略者と戦う英雄だ!」

 

 俺がそう言った時、その場にいた学者達の顔が曇る。

 俺は彼らの顔が曇った理由に気付いている。

 

「だが、君達はその英雄になることは出来ない! それは君達が戦う力を持たない学者だからだ!」

 

 ここにいるのは全て何らかの分野の学者だ。

 中には例外も居るだろうが、基本的には戦う事から遠ざかり、何かを研究することに生涯を捧げると決めた者達。

 そんな戦う力がない彼らは、世界に危機が訪れているのだとわかっていても、他の者達のように、それに対抗する為に華々しく戦う事は出来ない。

 

 その事実が、今の彼らを苦しめて、その顔を曇らせているのだ。

 

「もちろん、やろうと思えば戦場に立つことは出来るだろう! しかし、研究ばかりをしてきた君達では! 大した戦力にもならず、戦いの邪魔をするばかり! だからこそ! 世界を守るための戦い! それをただ見ているしかないと! 君達は心の中でそのように思っているのではないか!?」

 

 俺はそう彼らに問いかけた。

 俺の言葉に思い当たることがあるのか、学者達の顔が伏せられる。

 

「世界を守るためと誰もが自分に出来ることをする中で! 磨き上げていた知識や知恵を使うことも出来ず! ただ傍観者のように! いずれ英雄譚となる戦いを目にする! そんな末路が自分達の行く末だと! そう思っているのではないか!?」

 

 実際問題、侵略者との戦いにおいては、学者が出来ることは殆ど無い。

 敵が知能を持った相手なら、まだ相手の分析や交渉等で役立てるのかも知れないが、今回は知能もなく襲い掛かってくる獣だ。

 そんな相手では、磨き上げた知識や知恵があろうとも、何の意味もなく、純粋に相手を打ち倒すだけの原始的な戦いが起こることなる。

 

 その原始的な戦いの舞台に学者は必要ないのだ。

 

「君達はこう思っているはずだ! 知識や知恵があっても世界を救うことは出来ない! 戦えなければ世界は救うことはできないと――それは違う!!」

 

 戦えないと世界を救えないと言ったことを否定した俺に学者達の視線が集まる。

 俺は彼らを鼓舞するように、彼らに向かって思いの丈をぶつける。

 

「私は思う! 世界を救うのに不要な力はないと! 君達がこれまで磨き上げてきた知識や知恵! それらもまた! 世界を救うために必要なものだと!」

 

 俺はそう言って、手を大きく振り、遺跡の内部を示す。

 

「この遺跡は異世界から流れ着いてきた船だ! そしてあそこに刺さっているのが異世界の聖剣! これらの力は異界神獣との戦いに必要なものだ! だが、見ての通り、これらの機能は停止している! このままでは異界神獣との決戦に大きな影響が出てしまう!」

 

 現在の遺跡はアレクが始めて来た時のように機能が停止している。

 最終的にアレク達がこれに乗って異界に旅立ったことから、部品などの故障は無く、あくまでシステムダウンしているだけだとわかるが、未知の異世界の言語で記載されたシステムを動かすことは俺には困難だ。

 

 だから、丸投げする。

 

「だからこそ! 君達にこの施設の復旧を依頼したい! 君達が持つ知識と知恵を使って! 一ヶ月でこの施設を再稼働させて欲しい!」

「一ヶ月!?」

 

 未知の言語を解読し、施設を再稼働させろという要求に対して、あまりにも短い期間を告げられて、学者の一人が思わずそんな声を上げる。

 俺も正直、短すぎる納期だよな……とは思うが、二ヶ月後に決戦があることや、起動したクラウから対策を聞いて準備する時間を考えれば、それが用意出来る限界の時間となってしまう。

 

「たったの一ヶ月という短い期間――! だが! それでも! 世界最高峰の頭脳たる君達なら! きっと成し遂げてくれると私は信じている!!」

 

 故にひたすらにゴリ押す。

 何の為に演説しているかと言えば、士気を落とさないまま、無理な要望を実行して貰う為なのだ。

 

「今ここに! 知識と知恵こそが世界を救うのだと! 自分達こそが英雄として世界に名を刻む存在だと! 君達自身の手で証明して見せるのだ!」

 

 俺がそう話を締めくくると学者達の歓声がその場に響き渡った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。