エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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システム起動

 

「見事な演説でちた」

 

 演説を終え、剣を抜かないようになど、幾つかの注意を行った後、学者達が遺跡の調査を始める中で、遺跡の外で一息をついていた俺はそう話しかけられた。

 

「エミリアか……お前もあっちで調査を始めたらどうだ?」

 

 俺はその人物――現在は無窮団の団長を務め、ゲーム時代は賢者ちゃんと呼ばれていた攻略対象の幼女に対して、そう言葉を返した。

 

「あちしが居たら、部下達が伸び伸び調べられないかも知れないから、後回しにしてるんでち」

 

 エミリアはそう言うと俺の顔を覗き込んでくる。

 

「どうやら、フレイ様はお疲れのようでちな。顔色が悪いでちよ?」

「まあ、そりゃな。世界の危機を前にすれば、誰だって顔色が悪くなるさ」

 

 正直言って胃が痛い。

 

 諦めかけている連中に、打つ手がない何て言ったら、始まる前から試合終了するから、必死で『異界聖剣クラウソラスなら何とか出来まーす!』とか、それらしいことを誇張して言って、何とか今の状況を作り出してはいるが、実際に異界聖剣クラウソラスで事態を解決出来るとは限らないのだ。

 

 言ってしまえば、全世界の人々を騙しているようなもの。

 異界聖剣クラウソラスに最低限目的を果たせる能力があればいいが、それすらもなく、俺が嘘を言っていたとバレてしまえば、その時はその報いとして俺がどんな恐ろしい目に合うか……想像するだけで恐ろしい。

 

 大丈夫だよな……マジで頼むぜ……異界聖剣クラウソラス……。

 

 俺は内心でそう思う。

 

 ただの転生者に世界の命運は重すぎる。

 他にやれる奴がいないからやっているが、正直言ってこんなものは、もっとキラキラした凄い奴に全部押し付けたかった。

 

 何と言うか、様々な物語で、突然湧いた主人公に、物事の解決を全部任せる周囲の人の気持ちがよく分かる。

 問題解決のためのボールが、自分にあり続けるのって、それだけで苦しくて辛いもんだもんな、誰かに全部押し付けたくなるのもわかるよ。

 

 正直に言えば、俺もクエストを発行したい……。

 

 【クエスト】

   世界の救済

 【報酬】

   100000000000ゴルド

 

 みたいな感じで、誰かに問題解決の責任ごと丸投げしたいな……。

 

 俺がそんな下らないことを考えていると、エミリアは懐から水筒を取り出し、それをコップに注いでてから言った。

 

「良かったらあちし特製のこの薬を飲むでち? 疲れに聞くかもでちよ?」

「いらん。どうせまた、変な成分でも入ってるんだろう? 俺はお前の薬の実験台になる気はない。その内、良い奴を紹介するから、それまで待ってろ」

 

 俺はエミリアの提案をすげなく断った。

 下手に薬の実験台になれば、エミリアルートが始まるかも知れないからだ。

 

 俺が此奴を無窮団の団長にした理由――。

 それは、此奴のイベントが放っておいても問題ないものだからなんだよな……。

 

☆☆☆

 

 賢者の血統を受け継ぐエミリア。

 彼女はその血に流れる神の血のせいで、幼女の姿のまま成長しないという業を背負っているが、実はハイセトアから受け継いだものはそれだけではなかった。

 彼女達、賢者がハイセトアから受け継いでしまったもの……それは、幼い子が好きというロリコン、ショタコンの性質だ。

 

 もっとも、彼女ら自身が幼い姿なので、幼い子が好きという性質も、見た目上は同年代となるため、そこまで問題はなかったが……一族の中でも、エミリアだけは他の賢者達と違い、ある野望を持っていた。

 

 それはおねショタがしたい! というものだ。

 

 自らの容姿が幼いことがコンプレックスだった彼女は、賢者という神の血の呪いに打ち勝ち、ナイスバティのお姉さんとなって、子供のように愛らしい少年達を愛でたいという欲望を得るにいたったわけだ。

 

 エミリアルートは、そんなエミリアが、自分が大人になるための薬品作りをしている時に、その素材集めのためにアレクを雇ったところから始まる。

 アレクと共に様々な素材を集め、そしてそれを元に試作品を作り、それを自分やアレクで試して、大人になる薬の完成を目指していくエミリア。

 そうやって薬を作っていく中で、薬の効果によって、エミリアが透明になって何処にいるかわからずに、アレクが透明になったエミリアを弄ったり、お互いに自分達が発情した犬だと認識改変されて、そこらで獣のような交尾をするなど様々なトラブルが発生していってしまうのだ。

 そんな、『あれ? 君達、大人になる薬を作ってたんだよね? 別の意味で大人になる薬を作ってたのかな?』と思わず思ってしまうような、ギャグみたいなイベントを経て、二人は少しずつ愛を深めて行く。

 

 やがて、エミリアはついに念願の大人になる薬の開発に成功し、その薬を飲んで幼女だったエミリアから想像も出来ないほどのナイスバディのお姉さんに変化する。

 アレクがこれまでの苦労を思い、それにほっと一息をついて、近くにあった水を飲むと、エミリアとは対称的にアレクは子供になってしまうのだ。

 

「か、からだが……!? エミリア!? これは!?」

「私はおねショタがしたいの。だから、私が大人になったのなら、アレクには子供になってもらわないといけないでしょう?」

 

 そう言って、ショタになって、身動きが直ぐに取れないアレクに近づき、その顔を手で持ち上げて、自分を見るようにするエミリア。

 

「これからはお姉さんとしっかりとリードしてあげるからね……」

「わ、まて……エミリア……胸で息が……!」

 

 そうしてエミリアの豊満な胸で顔を押さえつけられたアレクは、そのまま逃げ出すことも出来ずに、ショタとしてエミリアに美味しく頂かれてしまう。

 そしてその後も、大人な賢者とショタな冒険者のコンビは、彼女の工房で毎日のようにおねショタプレイをして、幸せに暮らしたとなるのがエミリアルートだ。

 

☆☆☆

 

 とまあ、こんな感じで、数ある攻略対象の中でも珍しく、イベントを放置しても誰も不幸にならないことから、俺は此奴のイベントをガン無視している。

 そして、イベントが発生しないのなら、その攻略対象は俺に惚れることもなく、何の気兼ねもなく接することが出来るため、俺は此奴を無窮団の団長に据えて、他の攻略対象達との緩衝材に利用しているのだ。

 

「それは残念でち。まあ、今は色々とゴタゴタしてるから、あちしも薬の研究を後回しにして、この解析を頑張るつもりでち」

 

 そう言って、エミリアはコップに入った液体をその辺の草木に捨てた。

 すると、見る間に草木が若返っていき、ただの新芽に変わっていく。

 

 何入れてんだよ……その薬……。

 

 俺がその様子に戦々恐々とする中で、エミリアは小声で何かを言う。

 

「……その方がポイント稼げて、あとで要求を通しやすそうでち。まあ、あのメイドがいない間に色々動きたい気もあるでちが、さすがにこの状況でそんな風に遊んでたら、好感度がマイナスに行っちまいそうでちからな~」

「何か言ったか?」

「何でもないでち!」

 

 にっこりと屈託無く笑うエミリア。

 それだけ言うと、自らも調査を始めるために遺跡へと向かった。

 

「はぁ……。俺ももうひと頑張りするか」

 

 幾ら歴戦の学者達でも、何の情報もなしに遺跡の調査なんて出来はしない。

 前世で、ゲームの開発者が遊びで、初回特典の設定資料集の最後のページに記載していた、遺跡の古代文字で記されたという『ご購入ありがとうございます。インフィニット・ワンを是非楽しんでください』という文言は伝えているが、それだけでは言語解析の為の資料は足りていないだろう。

 

「雇った冒険者達と一緒に、各地の遺跡を攻略しないとな……」

 

 だからこそ、俺が転移を利用して各地の情報を集めないといけない。

 幸い、シーザック家の決戦への準備は、俺の代わりに来幸が何とかしてくれているが、休んで無駄にしていい時間は俺にはないのだ。

 

「世界を守るのに、二ヶ月は短すぎるだろ……せめて一年はくれよ……」

 

 俺はそんな泣き言を漏らしながら各地に転移した。

 そして各地の遺跡を次々と攻略し、そこに学者を運んで調査させたり、各地の学園に転移して、調査した内容を共有して更なる調査を委託したり、学者達が快適に過ごせるように様々な物資を運んだり……ともかく雑用をひたすらこなしていると、あっという間に一ヶ月の月日が経ってしまった。

 

 一時期は間に合わないと思われた調査だったが、七彩の神が創世神から託された異界に関する資料を持ち込んだことで、作業は劇的に進み、そしてついに今日、今まで調査した内容を元に、施設の再起動を試すことになっていた。

 

「全員、位置についたでちな?」

「はい!」

「では、始めるのでち!」

「了解! スフィアリアクター起動!」

 

 その言葉に学者の一人が頷くと、手元にあるレバーを引いた。

 すると、各部にエネルギーが行き渡り始めたのか、消えていた照明が光り始め、待機している学者達の前にディスプレイが現れる。

 学者はそのディスプレイをなんだか凄まじい勢いで操作し始めると、そこに流れている情報を見ながら、他の学者に向かって叫んだ。

 

「導力回路、各部正常接続を確認!」

「わかりました! 基礎機能の起動を始めます!」

 

 何と言うか、ここは剣と魔法のファンタジー世界のはずなのに、SF世界さながらに高度な語句が周囲を飛び交い、学者達が慌ただしく、この船の各スイッチや、ディスプレイを操作して、次々と機能を復元していく。

 

「団長! 不味いです! ここの機能が……!」

「そこは後回しにするでち! こちらの機能を優先して回復!」

「解読したマニュアルに記載された量よりも、スフィアリアクターが発するエネルギー量が多い……!?」

「っち! 元から改造されている部分があるでちか! 関連する資料があるはずでち! 概算でもいいからそれでエネルギー量を見積もって、各部の使用エネルギー量を見直して、最適解を探すでち!」

 

 忙しなく進んで行く起動シーケンス。

 見ているしか出来ない俺は、ただその流れを見続ける。

 そして――。

 

「システム起動――オール・グリーン!」

 

 学者の一人がそう言って、歓喜の笑みを浮かべながら、エミリアを見る。

 それに対してエミリアも笑顔を見せながら頷いた。

 

「システムの起動は――完了でち!」

「や、やった~!!」

 

 その場にいた全ての学者も、映像水晶でこの様子を見ていた者達も、誰もがその結果に歓喜の叫びを上げ、そして飛び回って仲間とそれを喜び合う。

 

 そんな中で、こちらに振り向いたエミリアは、恭しく俺に対して言った。

 

「フレイ様、準備は全て終わったでち」

「ああ」

 

 俺はそう言って頷くと、聖剣の元まで進み、その持ち手を握る。

 

「……」

 

 これで失敗したら何もかもが終わる。

 そのプレッシャーで思わず引き抜く手が止まる。

 

 ふと周りを見れば、誰もが固唾を呑んで、俺が引き抜く瞬間を待っていた。

 俺はそれを見た後、意を決して、剣を引き抜いた。

 

「おおっ!」

 

 周囲からその事に対する驚きの声が漏れる中で、剣が喋り出す。

 

「……システム正常起動……対話インターフェイスを構築します」

 

 聖剣が発したその音声とともに、聖剣自身が光出す。

 

「うわっ!?」

「なんだっ!?」

「まさか、壊れた!?」

 

 その事態に学者達が驚きの声を上げる中で、光はやがて収束し、近未来的な衣装を身に纏った一人の少女がそこに現れた。

 

「ん、おはようマスター」

 

 そう言って眠そうに欠伸をした少女は俺に向かって言う。

 

「当機は聖剣、異界聖剣クラウソラス。クラウと呼んで」

「俺がマスターなのか?」

「ん、当機を最初に引き抜いた者がマスター」

 

 特に認証等は必要なく、引き抜いた俺がマスターになっているらしい。

 正直に言えば、わざわざマスターになるつもりはなかったが……。

 ま、色々と質問することを考えれば、今はマスターである方が手っ取り早いか、さすがにマスターを後で変えることは出来るだろうし、決戦の時には、七彩の神辺りをマスターに変えれば、戦闘で使うのも問題ないだろうしな。

 

「そうか、クラウ。聞きたいことがあるんだが……」

「なに? 何でも言って」

「お前、過去の記憶はあるか? 聖剣は本来の機能を保持しているか?」

 

 不安で胸が張り裂けそうになりながら、俺はその一言を絞り出す。

 それに対して、クラウは何てこともないように答えた。

 

「問題ない。当機は万全の状況。過去の記憶もちゃんとある」

「っ! そうか!!」

 

 俺は思わず内心でガッツポーズをする。

 そして、直ぐに冷静になった。

 

 いや、いかん。まだ異界神獣に対抗出来るものがあるとは限らないのだから、ここでぬか喜びして詰めを誤るのは不味い。

 

 そう考えた俺は、その場に居る学者達に告げる。

 

「君達は成し遂げた! 知識と知恵が世界を救うに足るに相応しいと証明した! ここにある聖剣こそが君達の活躍の証! 君達もまた英雄であるという証明だ!」

 

 俺のその言葉に、固唾を呑んで事態を見守っていた学者達が歓声を上げる。

 

「一ヶ月という短い期間で本当によくやってくれた! これまでの戦いで君達もボロボロになっているだろう。この後の聖剣からの聞き込みは私に任せ、明日からの作業に備えて今日はゆっくりと休むといい」

「え? 明日?」

「ん? どうした?」

 

 引き攣った笑みを見せながらそう言う学者達に俺はわざとらしくそう返す。

 

「えっと……。まだ何かあるんですか?」

「一ヶ月はこの聖剣を得るための期間だ。まだ決戦までにはもう一ヶ月ある。それまでの間、世界を救う可能性を少しでも上げるために、他の遺跡も復旧して、異世界の武装を可能な限り使えるようにしておいて欲しいのだ」

「ひ、人使いが荒いです~! フレイヤフレイ様~!」

 

 ほんとごめんね?

 それと文句は二ヶ月という納期を持ってきた異界神獣と七彩の神に言ってね。

 俺はただの中間管理職で、納期の決定権は無いんだ。

 

「すまない……だが、これもこの世界のためだ。君達のその力をまた貸してくれ」

「く……! そう言われると断れないじゃないですか……!」

 

 俺がそう言って頭を下げると、もはや逃げ出せぬと悟った学者達は、少しでも明日からのブラック労働に備えるために寝床に向かって行った。

 

 そうやって、無理矢理人払いをした後、周囲に人がいないことを再度確認した俺は、クラウに向き直った。

 

 さてと、人払いも済んだ。

 これでクラウが何か不味い事を言ったとしても、その内容を俺が改変して伝えることで、士気を下げるのを防ぐことが出来る。

 

 俺はそこまで準備を終えたところでクラウに聞く。

 

「クラウ、聞きたいことがある」

「なに?」

「今、この世界には異界神獣という脅威が迫っている。それを打ち倒すための手段を――俺に教えてくれ」

 

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