エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
斯くして――俺は異界神獣を倒す為に動き出すことになった。
世界各地を巡り、協力を取り付けて、少しずつ準備を行っていく。
そんな忙しい日々の中で、俺は久しぶりにシーザック領に戻ってきていた。
「それで、俺が世界神になれるってのはどういうことだ?」
「当機を使えば自然神から世界神になることが出来る。勿論条件はあるけど」
「その条件ってのは?」
「世界神の血を受け継いでいること。それと世界的に信仰を得ていること」
「……どちらも条件を満たしているか、準備がいいことで」
俺はそんな皮肉を言いながら、腰に差した剣に言葉を返す。
その剣こそは、剣の形態になったクラウだ。
彼女は、使い手の為に剣として振るわれることこそが、異界聖剣としての本懐と言い放ち、俺の愛剣としての立場を得るために、俺のお気に入りの剣だった烈火や常に腰に下げていた剣を退けて、俺の腰に収まっているのだった。
本人曰く、自分の能力で代用出来るから、自分以外の剣はいらないと言って、ぶっ壊そうとしたこともあったが、さすがにそれは困るので止めて今に至る。
記憶を失っていたゲームのクラウとは違って、異界聖剣としての記憶が残っているからか、妙に自分に自信があるというか、性能を自負しているところがある。
その為に、時折過激な行動に出るので注意が必要だが、言えば素直にこちらの言うことを聞いてくれるし、何よりも異界神獣を倒す為の知識として、今の話のように重要なことも知っているので、今は欠かすことが出来ない存在だ。
「まあ、戦力強化の為には必要か……」
さすがに世界神にまでなると、異界神獣を倒した後、生きていく上で邪魔になりそうだが、力が不要になればアムレイヤ達と同じように、それを紫の神に預けて、さっさと自然神に戻ればいいだけだ。
俺はこの物語をハッピーエンドでさっさと終わらせることを決めている。
その為のメリットが大きく、リスクが少ないと言うのなら、今よりも更に人間をやめることになることだって厭わないのだ。
「よし! それじゃあ、早速その機能を……」
俺はそこまで言った所で、目の前に誰かが転移して来たことに気付く。
「アムレイヤ様? どうしてここに……?」
「忙しい時にすみません。少々、問題が起こりまして、その解決の為に貴方に協力して欲しいのです」
転移によって突如として現れたアムレイヤはそう言うと俺に頭を下げた。
また何か面倒事か……? 勘弁してくれよ……。
俺は内心そう思い、顔を引き攣らせながらも、何とか言葉を絞り出す。
「わ、わかりました。私に出来ることなら、協力しましょう」
「助かります」
「それで問題と言うのは……?」
「かつては帝国だった国々についてのことなんですが……」
「元帝国の……? まさか決戦に参加しないと言っているとか……?」
俺はアムレイヤの話を聞いて思わずそう問い返した。
元帝国の国々は、どんな状況であろうとも、それまでの戦争を停戦して、異界神獣との決戦に兵を出す取り決めとなっている。
それは世界会議で、各国の合意の元で承認された議題であり、この世界の神である七彩の神の命令として発効されることになっている事柄だ。
まともな頭を持っているのなら、絶対に拒絶出来ないことだと思うが……。
「その通りです」
「嘘でしょ……?」
だからこそ、俺はアムレイヤが頷いたことで思わず唖然とした声を上げる。
そして、問い詰めるようにアムレイヤに聞いた。
「ほ、本気で神の命令を無視しようとしてるんですか!?」
「いえ、彼ら自身は命令に従うつもりはあると言っています」
「は? え? どういうことですか??」
俺は意味がわからず思わずそう問い返す。
アムレイヤは憂いを帯びた顔でため息を一つ吐くと、話すこと自体が気が重いと言った様子で、その事情を語り始めた。
「正確に言うと彼らはごねているのです」
「ごねる?」
「はい。神の命令には従うつもりはある。だけどそちらに懸念事項がある以上、そのままの形で命令に従うことは出来ないと……そう言ってごねることで、事態を有耶無耶にさせようとしているのです」
め、めんどくせぇ~!!
つまりはあれか、『仕方ないから命令には従うつもりだけど、命令している側に問題があるから、どう言った形で命令を実現するかこちらで勝手に決めるよ。それが受け入れられないのなら、命令する側の不備だから命令を聞けなくても、俺達が悪いわけじゃないよ』ってな感じで命令を拒否しようとしているのか!
ある意味では政治的駆け引きの一つなのかも知れないが、世界の存亡がかかっているこの場面で、そんなちょこざいな真似をして欲しくなかった。
「そ、それで……その懸念事項というのは何なのですか?」
俺は思わず怒りで頬をピクピクとさせながらもアムレイヤにそう問いかける。
「帝都が崩壊した時、実は何人かあの災厄から救助できた人がいました。そして、その内の二人が――」
そう言うとアムレイヤは誰かをこの場に転移させる。
その人物を見て、俺は思わず声を上げた。
「ルイーゼ!?」
「お久しぶりです。ダ……フレイ様」
「……」
ぺこりと頭を下げるルイーゼ。
そして、その足下にはもう一人、幼い女の子が身を隠すようにルイーゼに張り付いていた。
アムレイヤはそんな二人を手で示して続きを話す。
「皇女である彼女達なんです。元帝国の国々は、私達が彼女達を保護していることを知り、私達が彼女達を使って帝国を蘇らせるために、自分達を戦場で使い潰そうとしているのではないかと言い掛かりをつけて、ごね始めたというわけです」
なるほど……確かにそう見えなくもない状況か。
世界の存亡に関わる戦いで、彼女達を保護しているのが神だからこそ、俺はそんなことはしないだろうと言い切ることが出来るが、これが人同士の普通の戦で、神ではなく大国が保護しているのなら、俺も同じような疑念を抱いていたかも知れない。
それに誰もが俺と同じような見方をするとも限らない。
この世界の神は現実に存在し、その神々は感情を持っている。
特にアムレイヤとウライトスは、勇者や聖女と共に暮らしたエデルガンド帝国に思い入れがあってもおかしくないのだ。
それを考えれば、その二人が贔屓をして、エデルガンド帝国を蘇らせようとしていると、陰謀論的な考えを本気で抱いている人もいるかも知れない。
「勿論、そんな言い掛かりを無視して、無理矢理彼らに命令を聞かせることは可能です。しかし――」
「下手な疑念を抱いたままでは、各国の連携に傷が付きますか……」
自分が何の為に戦っているか。
それを理解することは、戦争において、士気を保つために必要なことだ。
正義を守るため、家族を守るため、出世をするため……それがどんな理由であったとしても、自分の得になると言う認識が無ければ、殺し合いの舞台に自ら立ち、命をかけて他者を殺すなんてことは出来ない。
元帝国の国々は、頑張って戦ったとしてもすり潰されるだけで何の得にもならず、それによって戦力が減ったことで、エデルガンド帝国復権の為に国が滅ぼされるという、自らの損になる事態が起こるのではないかと考えている。
そんな状況では、無理矢理命令で決戦の舞台に招集したとしても、士気は低く、あの手この手で戦闘から逃げようとして、前線の崩壊に繋がるだろう。
だからこそ、建前上では彼らに文句が言えない状況にする必要がある。
別に完全に彼らの信認を得る必要はない。
元帝国の国々の王が疑念を抱いていたとしても、実際に現場で戦う兵士や将軍の不安を取り除けさえすれば、それを気にせずに戦わせる事ができるはずだ。
……一番手っ取り早いのは、ここでルイーゼ達を殺すことなんだよな……。
帝室の血統を完全に絶やせば、エデルガンド帝国の復権はあり得ないし。
俺はそう考えながら、ちらりとルイーゼとその足下の女の子を見る。
だけど、折角助かった命だ。
それに、あんな子供を殺すのは忍びない。
俺はそこまで考えたところで、ため息を一つ吐くと言った。
「ここに連れてきたということは、彼女達を俺に預かって欲しいということですね?」
「ええ、貴方は既に、フェルノ王国の姫であるレディシアと、魔王国の姫であるプリシラを預かっていますよね? それと同じように、彼女達をこのシーザック領で預かり、ただの少女としての幸せな日々を送らせてあげて欲しいんです」
また、うちの領に居候が増えることになるが、致し方ない。
このままアムレイヤ達が保護している状況だと、幾らでも元帝国の国々がごねる理由になってしまうし、仮に国として何処かが引き取るのだとしても、その国が皇女達を使って戦後に干渉してくる可能性があるという言い分を与えることになる。
その点を考えれば、七彩教に深い関係を持つが、結局のところ一領主でしかないシーザック家で彼女達を預かり、皇女としての身分を捨てさせ、普通の少女として過ごして貰うというのは、妥当な落とし所だ。
もし、これでもごねるようだったら――もう切り捨てた方が良い――とおそらく神々も各国もそう認識して動いてくれるはずだ。
「わかりました。彼女達は私の方で預かりましょう」
「もう、お家にかえれないの……?」
ルイーゼ達を預かる……そう言った俺の言葉に、ルイーゼの足下に縋り付いていた女の子が涙を浮かべながらそう口にする。
それを聞いたルイーゼは、その女の子を咎めるように言った。
「ティナ! 駄目ですわ! そんなわがままを言っては! 私達の家は……もう無くなってしまった……もう戻ることは出来ないのですわ」
「うぇえええん!!」
ルイーゼの言葉を聞いて泣き出してしまうティナと呼ばれた子供。
俺はそれを見て、その場に屈み、ティナと目線を合わせると言う。
「確かに君達はもう二度とあの地に帰ることは出来ないかも知れない。――だけど、君達の家だったあの場所は必ず化け物の手から取り戻して見せるよ」
異界神獣との決戦で勝ったとしても、元帝国の皇女である彼女達が再び帝都で暮らすことは出来ないだろう。
俺はそれを踏まえた上で、彼女達に語りかける。
「だから、泣くのを止めて待っているといい。失われてしまったものは取り戻せないけど――それでも残るものはある。あの地に帰って暮らすことは出来なくても、人の手に戻ったあの地に寄って、楽しかった思い出を振り返ることは出来るはずだ」
そもそも負ければ世界は滅ぶ。
これは全勝ちするか、全負けするか、そう言う戦いなのだ。
だからこそ、俺は断言するように言う。
「君達がそうなれる状況を作る。俺が必ずそれを叶える。そう約束するよ」
「お兄ちゃん……」
「だから、今はその未来を楽しみにして、待っているんだ。いいね?」
「うん!」
「よし、いい子だ」
俺はそう言ってティナの頭を撫でる。
どうやら、説得が功を奏して泣き止んでくれたみたいだ。
「ダ……フレイ様……ティナを励ましてくれて、ありがと……きゃっ!?」
「は?」
感動した様子のルイーゼは、そう言って俺に近寄ろうとして、何かに足を躓いて、こちらに向かって転び始める。
「おいおいふざけるな!? 何でこんないい感じで終わったところでっ……!!」
俺は当然のように逃げようとするが、何時ものように体が動かない。
それを実感して俺は叫んだ。
「クソが! この能力もお前の企てか! そうせい――」
だが、その叫びは最後まで続かず、物理的に俺の口が塞がれる。
気付けば、目の前にルイーゼの顔があり、その唇は俺の唇へと当たっていた。
「うわぁあああ!?!?!?」
自由に動けるようになった俺は咄嗟にルイーゼを突き放す。
そして、自分の身に起こったことを呆然としながら振り返った。
「そ、そんな、俺のファーストキスが……。俺だけのヒロインの為に大切に取っていたファーストキスが……」
「も、申し訳ありませんわ! ダ――」
ルイーゼの謝罪も耳に入らず、俺はあまりのショックから、目の前が真っ暗になり、その場で意識を失った。
一応ですが、今回の件は冤罪です。
創世神は、皇女であるルイーゼと平民のアレクがくっ付く運命を無理矢理作るために、ルイーゼに対して、好意を持つ異性に対するラッキースケベ能力を付与しましたが、それだけだったのでこんな事故を起こそうと言うつもりはありませんでした。
それでも、フレイから犯人扱いされてしまうのは、創世神の日頃の行いの悪さってやつですね。
それとファーストキスなら、とっくにセレスに奪われてるのではと思うかも知れませんが、童貞を拗らせたフレイには、唐突な不意打ちのディープキスは刺激的過ぎて、それによって気絶した後に、その時の記憶を完全に飛ばして忘れてしまっているので、全く覚えていません。
目次でタイトル名が褒美となっている辺りのお話ですね。