エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
次話を投稿します。
「ここまでは順調だな……!」
再び集めた雷を異界神獣に当てながら、俺は思わずそう呟く。
俺と異界神獣の戦いはパターン化し始めていた。
元より、転移能力しかない俺と、触手しかない異界神獣の戦いだ。
お互いに使える手札が限られている以上、それを使っての戦いは、結果的に同じようなやり取りに落ち着いてしまう。
異界神獣は触手で俺に襲い掛かるが、俺は転移でガン逃げしながら、その異界神獣に対して一方的に自然現象を利用した攻撃を当てることが出来る。
正直言って、戦況はこちらがかなり優勢だ。
このまま行けば苦労せずに削り切れそうだが……。
そんなことを考えていると、突如として異界神獣の動きが止まる。
これまで出していた触手を自分の元に戻し、そして何やら激しくマーブル模様の液体が踊るように蠢いていた。
「災禍の神炎!」
俺が世界中から集めた炎をぶつけるが、異界神獣はそれに対して一向に反応を見せず、そのまま蠢き続けている。
「マスター。異界神獣の様子がおかしい」
「何かをする気みたいだな……いよいよ第二形態か?」
俺の見ている前で異界神獣が変貌する。
液体が固体へと変わり、何かしらの形を形成していく。
俺はその間も何度も攻撃を続けていくがその変化は止まらない。
やがて、異界神獣は何らかの生物にその姿を変えた。
「あれは……悪魔……か?」
俺がその姿を見て感じた印象はそれだった。
人型でコウモリの翼を生やした、どちらかというとゲームの敵役として出てきそうな悪魔の見た目となった異界神獣は、その顔をこちらに向けてきた。
「まあ、何に変わろうと関係ない。こっちはこれまで通り、攻撃を当て続けていくだけだ! 災禍の神雷!」
俺は再び世界中から集めた雷を束ね、それを異界神獣にぶつけるが――。
それは、異界神獣の手によって軽く振り払われた。
「なっ!? 雷が効かない――!? なら、炎はどうだ!?」
俺は直ぐさま炎を転移させてぶつけるが、異界神獣はそれすらも大したダメージを受けずに、こちらに向かって手を振り抜いてきた。
俺はそれを転移で避けて、続けて風と氷もぶつけるが、それらに関しても先程までと違って、ほとんど異界神獣にダメージを与えられない。
「これは……どれも碌にダメージを与えられてないな。クラウ、何故こちらの攻撃が異界神獣に効かなくなったのかわかるか?」
「分体が生物情報を元に変貌したように、異界神獣自身も取り込んだ生物情報から何らかの生物に変貌したものだと推測される。そしてその生物が、おそらくは自然現象に強い耐性を持つ存在だった」
「なるほど、ようはこちらの魔法攻撃が嫌だから、自分の世界の属性攻撃に耐性を持つ存在に変わって、それを防ぎにきたってわけか」
「大体そんな感じ」
「つまるところ、これが奴の第二形態ってわけだな」
俺はそう口に出しながら、異界神獣を見据える。
悪魔のような存在の実体を得たことで、異界神獣は触手を出すことも無くなり、その行動パターンは完全に変化してしまっている。
「あのままの方が楽だったが……やり方を変えていくしかないか」
「当機を使う?」
「いや、まだだ。まだ手は残ってるしな」
第二形態になったし、そろそろ使うか? と聞いてきたクラウに対して、俺はそう言葉を返すと、異界神獣に向かって飛んでいく。
すると異界神獣はこちらに手を向けて、その手に魔法陣を浮かべた。
「なっ!?」
魔法陣を見た瞬間に咄嗟にその場から転移する。
すると俺がいた場所を巨大な炎の渦が駆け抜けていった。
それを見て、俺は戦々恐々としながら叫ぶ。
「魔法を使ってくるのか!?」
「向こうは元にした生物の能力を使えると見た方がいい」
「それにしては威力が強すぎる気がするが!?」
俺の後ろの空にあった雲を弾き飛ばした炎の渦を見て俺はそう叫んだ。
あんな国一つ落とせそうな威力の魔法を使っていたとか、向こうの世界はどんな人外魔境だったというのだろうか。
「元にしている能力は変貌した生物のものだけど、あちらの世界のあらゆる生物を内包している異界神獣は、その能力を強化することが出来るのだと思う」
「つまり、今の異界神獣は、あの生物の強化版ってことか……雷とかがほぼ無効化されているのも、属性攻撃への耐性が更に強化されているからってことだな……!」
「コ……オレ……」
実体を得て模倣した生物の知性と声帯を手に入れたのか、異界神獣はそのように言葉を発すると、周囲を覆うように冷気の壁を生み出す。
「広範囲攻撃……! 触手よりも厄介だな……!」
俺は転移で距離を取る。
俺の戦い方の都合上、転移先も含めて攻撃が可能な、魔法による広範囲攻撃は正直言って相性がかなり悪い。
下手に転移したら、その場所を攻撃されるな……。
触手と違って、攻撃の起点が見えないから、転移直後に相手の動きを見て、再度転移するということも難しい。
「ヒカ……リ……ヨ。カゼ……ヨ」
「盾よ! 来い!」
異界神獣が放った光魔法の光線を呼び出した複数の盾で防ぐ。
そして、その直後にやって来た風の魔法を転移で躱す。
「二段階攻撃とか……盾で防がなければ、今のでやられてたな……!」
「マスター。防戦一方だと手札の少ないマスターの方が不利」
「わかってる……! 準備はした! 今はもうしばらく時間を稼ぐ!」
俺はそう言うと盾を周囲に展開する。
そして、そのままの状態で異界神獣を牽制するように飛び回った。
先程までと違い、此奴にはもう触手は無い。
だからこそ、こうして周囲を自由に飛び回ることが出来る。
「モエ……ヨ」
そんな俺の動きを鬱陶しく思ったのか、異界神獣が広範囲を焼き尽くす魔法を俺が飛んでいる領域一帯に向けて放つ。
「どれだけ強かろうとも拡散すれば威力は落ちるよな!」
だが、その魔法は俺が複数展開した盾によって完全に防がれた。
壊れた盾を別の盾に換装しながら、俺は異界神獣の注意を引きつけるために、周囲を飛び続ける。
「マスター。来た」
「頃合いだな」
クラウの合図と共に、俺はその場に立ち止まった。
そして、異界神獣を見据え、にやりと笑うと言い放つ。
「異界神獣……お前に対して属性攻撃が効かなくなったというのなら――」
そこで俺は天に手を向けた。
その手が指し示した方向には、塔と見紛うばかりの巨大な槍があり、それは異界神獣に向かって、もの凄いスピードで落ちてきていた。
「――今度は文明の利器でお相手しよう!」
「ガアァアァァア!!!」
俺のその言葉と共に巨大な槍が異界神獣を地面に縫い付ける。
頭上から全身を貫かれた異界神獣は、生物を模したことで生まれた声帯で、その激痛による叫び声を発した。
「第二形態になったからと言って、必ずしも強くなるとは限らない」
異界神獣は自分の世界の生物を模倣したことで形を持った。
それによって、奴は属性攻撃が効かなくなるというメリットと引き換えに、物理攻撃が効かないという液体故のメリットを捨て去ったのだ。
そして、これは俺に取っての僥倖だった。
先程まで俺はちまちまと自然現象を転移させて戦っていたが、それは俺本来の戦い方ではないし、その戦い方が得意というわけでもない。
あくまで、相手が液体で物理攻撃が効かなかったから、そう言った戦い方をせざるを得なかったというだけなのだ。
だが、その制限は今取り払われた。
だからこそ、俺は俺自身が最も得意とする戦い方で戦える。
「悪いが俺はこちらの方が得意でね。こっから先は全力で行かせてもらう!」
俺はそう言うといつもの如く、武器を取り寄せして落下による加速を加え、そして充分に加速しきったその武器を異界神獣に打ち出す。
射出された武器は異界神獣を貫き、その肉体に次々と風穴を開ける。
「ウセ……ロ!!」
異界神獣が風魔法を放ち、射出された武器を弾き飛ばそうとする。
「残念、それは悪手だ」
俺はそう言うと、弾き飛ばされた武器を再度転移させ、その弾き飛ばされた勢いをそのままに、異界神獣へと向かわせ直す。
「ガァ!?」
予想だにしてなかった背後からの一撃を受けて異界神獣が呻く。
そして怒りに染まった顔で俺を見る。
「エサガ……ズニノルナ!!」
そう言うと異界神獣は自分に刺さった巨大な槍を掴む。
そして、ブチブチと音を立てて、強引にその肉体から抜き取った。
「コレハ、ワレノ、モノダ!」
そう言うと異界神獣は、槍を抜いたことで裂かれた肉体を再生させながら、こちらを嘲笑い、そしてその槍をぶんぶんと振り回した。
面積が大きい巨大な槍は、乱雑に振り回すだけで、俺が射出する武器を次々と容易く撃ち落としていく。
……やはり、部位が欠損しても、肉体を再生させることが出来るのか。
まあ、再生出来るにしても、その為に様々な存在を取り込んで得たエネルギーを消耗することにはなるんだろうが。
俺がそんな風に思考しながら様子見をしていると、俺が手出しできないことに気分を良くしたのか、異界神獣は俺が射出した武器を一通り防ぐと、その槍を俺に向かって突き放った。
「シネ!」
目の前に迫り来る巨大な槍。
だが、それでも俺に焦りはない。
「俺の武器で俺が殺せると? それは甘い考えだな!」
俺はそう言うと格好付けるように指を鳴らした。
それと同時に巨大な槍が異界神獣の手から消え失せる。
「ナニッ!? ダガッ! コノキョリナラッ!!」
異界神獣は握りしめた槍が消えた事に驚くが、直ぐに俺が近くに居ることに気付き、そのまま突き出した手で俺を掴もうとしてくる。
「武器が無くなればそうなるよな……。本当に――読みやすい!」
俺はその言葉と共に、世界中の織物職人が協力して作り上げた巨大な布をその場に取り寄せる。
その布の両端には重しが取り付けられており、それによって振り子のように両端が動いて、異界神獣の両腕を包み込んだ。
「お前は無機物を取り込めない! こうして布で囲ってしまえば――!」
俺は異界神獣の腕を囲んだ布の上に降り立つ。
「触れたところで何の問題もない!」
「ホノウヨ!」
俺に向けて火の魔法を放つ異界神獣。
俺はそれに合わせて、大勢の農家に頼んで集めて貰った燃えやすい枯れ葉を、周囲に展開しながら、異界神獣の腕を足蹴にして、その場から飛び立つ。
「グァアアアア!!」
「自分の魔法で燃える気分はどうだ?」
「キサマァ!」
異界神獣が放った火の魔法が自らの腕にあたり、用意した枯れ葉を媒介にして、異界神獣の腕を炎上させていく。
自らの腕が燃える中で、異界神獣は憤怒の表情で俺を見た。
第二形態になって弱くなったのは物理耐性を失ったことだけじゃない。
下手に知性を得たせいで、行動を読まれやすくなってしまっている。
正直に言えば、まだ第一形態の方が、何かを考える知性もなく、こちらの行動にただ対応してくるだけだったので、何をしてくるかわからない怖さがあった。
だが、今の異界神獣が相手なら、巨大な槍を残したままにするなど、わざと相手が取れる手段を用意しておけば、行動を誘導することは可能だ。
攻撃を受ければ一撃死の状況では、予想できない行動こそが一番恐ろしい……。
だからこそ、このまま、俺の手の上で踊り続けて貰う!
俺はそう考えて異界神獣を煽り続ける。
「喚き散らしても、俺に攻撃は当たらないぜ!」
「ダマレェ! ガァ!?」
世界中の鍛冶師が協力して作り上げた巨大なギロチンが、布で一纏めにされた異界神獣の両腕を切り落とす。
両腕を失った異界神獣は、その両腕が再生するまでの間、俺に攻撃するために魔法を放とうと言葉を紡ごうとする。
「イカ……」
「させるかよ!」
俺はそう言いながら、世界中の木工職人に大量に作らせた木の杭を、次々と取り寄せて異界神獣の口に突き刺していく。
それ自体は刺さったところで大したダメージを与えられないが、そのぶつかった衝撃で、木の中に仕込んであった瓶が割れ、瓶に込められていた世界中の錬金術師達が作った薬品が混ざり合い、化学反応によって大爆発を引き起こした。
「!?!?!?」
この世界で即席で作った、ミサイルの模造品のようなもので顔を吹き飛ばされた異界神獣は、驚きを表すことも出来ずに倒れていく。
――俺はアレクのような英雄じゃない。
創世神が俺を主人公に選んだとは言え、それで俺の何かが変わる訳でもない。
転生者である俺の本質は、モブであった前世の頃と同じ、ただの凡人だ。
異界神獣のような何かの存亡を左右する戦いにおいて、英雄なら相手がどれほどの強敵であろうとも何らかの力に覚醒し、その相手を独力で打ち倒すことが出来るだろうが、ただの凡人ではそんなことが出来るはずもない。
だからこそ、ただの凡人である俺個人の力では、異界神獣を相手に打ち勝つことは出来ないと考えていた
それこそが英雄ではない凡人の限界――。
――だが、そんな凡人でも英雄になれる方法がある。
お金を持たない貧乏人でも、世界中から一円ずつを集めれば、何十億という大金を持ったお金持ちになれるように――。
世界を使い果たせば――凡人だって英雄になれる!
「言ったはずだぜ、お前の相手はこの世界だってな!」
俺は自分の力の限界を知っている。
だからこそ、初めから、俺だけの力で異界神獣と戦うつもりはない。
そう、俺は――この世に存在するありとあらゆるものを利用し尽くしてでも――絶対にこの戦いの勝利を得てみせる。