エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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旅路の果て

 

 クラウと話している途中で、これまで隠されていた空間への道が、こちらを招き入れるように突然開いた。

 俺はそこが紫の神がいる神界だと判断し、世界を救った俺を自分の領域に招き入れようとしているのだと考えて、その場に転移した。

 

「ここが神界か……」

 

 俺が転移した先、そこは物語でよくある精神世界のような、真っ白で何も無い空間が広がっていた。

 

「よくぞここまで辿り着いた。フレイ」

 

 万感の思いを込めたと言った感じの声色で、誰かが俺のことを呼んだことに気付き、俺がその方向へと目を向けると、紫色の髪をした俺と同い年くらいの少女が、白い玉座のような椅子に座っていた。

 

 あれが紫の神か……何か何処かで見たことがあるような……?

 

 何故か見たこともないはずの紫の神に既視感を感じながらも、俺はその御前で膝を突き、恭しく紫の神に向かって言う。

 

「ご拝謁に賜り光栄です。私は銀の神を務めさせて頂いているフレイ・フォン・シーザックという者です」

 

 俺は最上級の敬意を払いながら、紫の神に向かってそう言う。

 

「うむ、知っているぞ。我は其方のことをのう」

 

 まあ、そりゃそうか。

 紫の神はずっと下界の様子を監視しているわけだし、そこで異界神獣と派手に戦っていた俺の事を知らないはずがないか。

 

 俺がそう考えていると、紫の神が言う。

 

「ここに来たと言うことは、其方には言うべき事があるということだろう。遠慮せずにこの我にそれを言うがよい。其方は世界を救った英雄、どのような願いであろうとも、我がそれを聞き届けよう」

 

 これは有り難い。

 どうやって俺の力を預ける話に持って行くか悩んでいたが、向こうから話を切り出してくれた。

 さすがは世界を管理する主神、こちらの思いはお見通しってわけか。

 

「はい。それでは言わせて頂きます」

「うむ、うむ」

「私が持つ空間を司る世界神の力……それを貴方に預けることで、私は神の力を持たぬ、一般人に戻りたいと思います」

「……」

「?」

 

 『よかろう』と直ぐに返事が返ってくることを期待していたが、一向に紫の神から返事がやってこない。

 それどころか、場の空気が、少しずつ重たくなっていく気もする。

 

「……それは違う。……其方にはもっと別に言うべき事があるのではないか?」

「? 言うべきこと? これ以外は特にはありませんが……」

 

 遂に返事が来たかと思ったら、それ以外に言うべきことがあると、訳のわからないことを言い出す紫の神。

 当然、他に言うべきことなんて無い俺は、素直に無いと言い返す。

 

「其方は神となり、世界を救った」

「え? まあ、そうですが……」

「我は他の神から力を預かった身。この世界の主神として、特定の誰かに入れ込むことは出来ぬ」

「はあ……」

 

 突然、この世界の誰もが知っているようなことを言い出す紫の神。

 当然、俺の態度も、何を言ってるんだ此奴というものになる。

 

 そんな、俺の態度に焦れたのか、紫の神は言う。

 

「しかし、神同士ならその制約は働かぬ。つまり、其方なら、この我をヒロインにすることが出来ると言うことだ」

「んん?」

 

 話が変な方向に行きだしたところで、俺は疑問符を浮かべる。

 

「それに其方は世界を救った英雄――立場など気にせず、己の心に正直になって、この我を求めるがよい」

「え? 嫌ですけど?」

 

 紫の神の言葉に、咄嗟に本音で返してしまった後に俺は気付く。

 もしかして、これって――インフィニット・ワンの最終DLCである紫の神ルートのイベントなんじゃないか!?

 

 そう考えれば、紫の神がいきなり自分をヒロインにしろと言いだしたことも含めて、話の流れに辻褄が合う。

 恐らく、本来の流れだと、ギリギリ滅びかけで、何とか神となって異界神獣を一時的に追い返したアレクが、こうして紫の神の元に召還されて、今の紫の神の言葉を聞き、異界神獣を追い返した報酬として紫の神を手に入れたのではないだろうか。

 そして、そこから始まる紫の神とアレクとのラブラブの夫婦生活こそが、紫の神ルートのハッピーエンドだったのかも知れない。

 異界神獣を何とかするまでが紫の神ルートだから、やり方や被害状況はインフィニット・ワンでの流れと違っても、結果的にそれを成した俺が、銀仮面ファンクラブの時のように、その物語でのアレクの位置を乗っ取ったということだろう。

 

 まあ、それは俺に関係のない話だけど。

 

「……いま、何と言った?」

「嫌だと言いました。例え主神であろうとも、勝手に俺のヒロインを決めることは許しません。私に取って貴方は報償になり得ない。だから、先程私が話したとおり、私の力を預けることを報償として頂きたい」

 

 俺は誠意を持って正直にそう打ち明ける。

 

 さすがに紫の神に対して不敬だったか……?

 とは言え、いらないものはいらないしな……。

 

 油断なく紫の神を警戒しながら俺はそう思う。

 

 しかし、全部終わったと思って完全に油断してたな……。

 あとは力を預けて新しい人生を始めるだけだと暢気に思ってたから、ここに来るまで紫の神対策を何もしてきてない。

 ……まあ、仮に紫の神がぶち切れたとしても、転移で異世界航行船まで逃げられれば、その異世界航行船を使って、この世界からおさらばすることも不可能じゃないし、何とかならないこともないか。

 

 俺はそう考えて、いざという時の為の転移の準備を開始する。

 そして、そうやって準備をしながら、紫の神の様子を伺っていると、紫の神が唐突に笑い出した。

 

「フフフ、ハハハッ! あのおなご達がどうしてあんな状況になるのかと、不思議に思っておったが、なるほどこう言うことだったのか! 我は初めて知ったぞ! 他者への執着がこれほど心地よいものだったとのう!」

 

 なんかやべぇ!

 

 俺はそう思い、咄嗟に転移を発動するが……。

 

「は!? 転移が出来ない!?」

「ここは神界。主神である我の力が満ちた我が支配する空間だ。この場の全てが我の思うがままよ」

「馬鹿な……俺は空間を司る世界神だぞ!?」

 

 今の俺なら神の結界ですら転移で通過出来るはずだ。

 それなのに転移が出来ず、捕らわれたことに対して、俺は思わずそう叫ぶ。

 

「空間を司ると言っても、たった一柱の力。七つの神の力を持つ我に、神としての力で勝てるはずがなかろう」

 

 そう言うと紫の神は立ちあがった。

 そして、何と、その肉体が若返っていき、どんどんと子供へと変わっていく。

 やがて、六歳くらいの姿になったところで、俺は目を見開いた。

 

「この姿に見覚えがあるのではないか?」

「そんな……まさかセレス!?」

 

 若返った紫の神――その姿は幼き日に出会ったモーリス司祭の娘であるセレスの姿そのものだった。

 

「そう、我こそが紫の神セレスティア。セレスとは、我が下界を歩くときの仮の姿に過ぎん」

 

 驚いている俺に対してネタばらしをするようにそう言うと、セレスは再び俺と同年代の少女の姿に戻る。

 

「あの時は、あれほど情熱的にヒロインになれと言ってくれたのに、この我の誘いを断ると言うのか?」

「いや、それはあの時は――」

「『セレスが攻略対象とは知らなかったから』とでも言うつもりかのう?」

「!?」

 

 紫の神から攻略対象という言葉が出て、俺は思わず驚く。

 だが、それと同時に納得もしていた。

 

 そうか、あの時から俺を見続けていたのか、だからこそ、銀神教の設立を後押ししたり、銀仮面の正体をばらすことが出来たわけだな。

 

 ふつふつと怒りが湧く中で、俺はセレスに向かって言いきる。

 

「それを知っているのなら話は早い! 俺は攻略対象であるアンタを! 俺のヒロインにするつもりはない!!」

「確かに我は攻略対象だ……。しかし、其方は最終DLC――すなわち我の物語を知らないはずだろう? それでも我が駄目と言うのかのう?」

 

 確かに俺はセレスルートの物語を直接見たわけじゃない。

 だからこそ、他の攻略対象とは少し事情が違うのは事実だ。

 だが、それでも――。

 

「それでもアンタは攻略対象だ! 創世神によってアレクとの運命が紐付けされた存在には違いない! それに、むしろ何も情報がないってことは、これから先のセレスルートで俺が知らないイベントが起こって、アレクに寝取られる可能性が消えないってことだろ!? より駄目じゃないか! 普通の攻略対象よりも危険だ!!」

 

 俺はそう言いきると走り出した。

 

 今すぐは無理でも、じっくりと時間をかけてこの空間を観察すれば、脆弱性を見つけて、空間を司る俺の力でこの空間から抜け出すことは出来るかも知れない。

 

 その為には、彼奴から少しでも逃げないと――。

 

「うべっ!?」

 

 そう思って走っていた俺は、突如として足を何かで掴まれて、その場で前のめりにこけてしまう。

 そして、何とか起き上がり、足を何が掴んだのかを確認しようとすると、俺の両足には立派な足枷がついており、その鎖はこの空間の地面に繋がっていた。

 

「こんなもの……壊せばいいだけだ……!」

 

 そう言って、腰に手を向けるが、その手は空を切った。

 

 ないよ、剣ないよぉ!!

 

 あああ~!! クラウをあそこに置いてきたから武器がねぇ! 他の武器は転移出来ないこの空間じゃ、取り寄せられない!!

 

「なら、手でこじ開けて……! 俺は絶対に諦めない……!」

 

 俺は足枷を握り、身体強化を使用して何とか壊そうと足掻く。

 そんな俺の元に、セレスは悠々とした足取りで近づいて来た。

 

「フレイよ。其方に教えておこう」

 

 唐突にそんなことを言い出すセレス。

 俺がそれを無視していると、セレスは語り続ける。

 

「其方が自分だけのヒロインを求めるように、我等おなごも自分だけのヒーローを求めておるのだ」

「それがどうしたって言うんだよ!!」

 

 俺はどうにもならないこの状況に苛立ちながらそう言った。

 俺の言葉を受けて、セレスは目が笑っていない笑みを浮かべると言う。

 

「――つまりは、逃がさんということだ」

 

 その言葉と共に、セレスが指を鳴らすと、俺を囲むように少し離れた位置に、六つの光が立ちあがった。

 そして、その光が晴れると、そこにはなんと、来幸、レシリア、エルザ、ユーナ、ノルン、そしてクラウの姿があった。

 

「は? なんで、来幸達が……」

「此奴らは、其方の為に、銀の鎖を結成したのだ」

「ぎ、銀の鎖……?」

 

 何故ここに来幸達が現れたのかという疑問に、セレスは銀の鎖がどうたらと、わけのわからない回答を返してくる。

 その言葉で混乱している俺に対して、来幸たちを微笑ましいものを見るような顔で見ていたセレスが言う。

 

「其方を愛し続けるシステムのことじゃ。自らがただ一人のヒロインになりたいという欲を捨てて、全員でヒロインとなり其方を愛することで、其方に対する永遠の愛を実現しようとしているのだ。本当に愛い奴らよのう……」

「まさか、ハーレムを実現しようって言うのか……?」

 

 セレスの言葉を聞いた俺は思わずそう呟く。

 それに対して、クラウが言う。

 

「ん、その通り、クラウ達はマスターのハーレムを実現する。マスターの目的を叶え、そして同時にクラウ達がヒロインとして幸せになるために」

 

 明らかにこちらの意思を無視したハーレム宣言。

 理想の俺だけのヒロインを相手に、ボーイミーツガールの物語のような、素敵な日々を送る純愛を得たい俺は、それを許せずに叫ぶ。

 

「攻略対象のお前らは俺のヒロインになれないって言っただろ!」

「攻略対象がどう言うのかは、クラウに記憶を見せて貰って知ったわ……だけど、そんなことで諦められるほど、安い思いをしてないのよ。私達は」

 

 俺の叫びにエルザがそう返す。

 

 クラウに記憶を見せて貰ったって――此奴らまさか俺の記憶を見たのか!?

 

 他の誰にも見せないと言った言葉を破り、あっさりと俺の個人情報を他人に見せたクラウを俺は睨むが、クラウは悪びれる様子もなく平然としている。

 

「俺の記憶を見たなら! 自らが得られるはずの運命も知ってるだろう! お前達には約束された幸せが――アレクと一緒に過ごすハッピーエンドが用意されているんだ! それを捨てるって言うのか!?」

「何が幸せかはわたし達の意思で決めます。そう、わたし達は自分の気持ちをしっかりと理解したからこそ、大切な何かを取りこぼさないように、定められた運命を捨てること選んだんです」

 

 かつての俺の教えを使用しながら、固い決意を込めた表情でそう宣言するユーナ。

 そして、それと同時に来幸達は、こちらに向かって歩き始める。

 自らの服を脱ぎ捨てながら――。

 

「なっ!? お前ら!? 何をする気だ!?」

「パパが二度とボク達から逃げられないように、ヤルことをやるんだよ! このチャンスを逃がしたら、二度とこんな機会はないかもしれないからね!」

 

 ノルンの言葉から何が行われようとしているか理解した俺は思わず叫ぶ。

 

「ふ、ふざけるな! こんなことがあっていいわけないだろう!」

 

 此奴らは、理想の俺だけのヒロインに捧げる予定だった俺の初めてを奪うことで、俺だけのヒロイン相手に誠実であろうとする俺の心を折り、前世からの夢である俺だけのヒロインと互い同士だけを愛し合うと言う俺の夢を諦めさせようとしているのだ。

 そんなことを絶対に認めるわけにはいかない俺は、誰か一人でも味方にしようと、レシリアに向かって話しかける。

 

「レシリア! お前と俺は血の繋がった兄妹だ! 道徳的に近親相姦なんて許されるはずがないだろ! 兄である俺を助けてくれ!」

「ごめんね、お兄様。血の繋がった兄妹でも愛さえあれば関係ないの」

 

 何処かのラノベタイトルのような物言いで、レシリアに助けを求める俺の手はあっさりと振り払われた。

 この場に味方が一人も居ないことを理解し、俺の顔が絶望に染まる。

 

「お、お前らはそれでいいのか!? ハーレムなんてそんなもの! ただ一人に向けられるはずだった愛を分割することになるだけだろ!」

 

 追い込まれた俺は、ただひたすらに来幸達を止めるために叫び続ける。

 

「自分がたった一人の恋人になるのではなく! 恋人という名のその他大勢の一人にされ! 増えて行くヒロイン達の中で! トロフィーヒロインのように一時の愛を得られるだけで忘れ去られるかもしれない! それでもハーレムを! お前達は望むと言うのか!? 今なら、まだ間に合う! 考え直せ!!」

「フレイ様、これは考え抜いた上での結論です」

 

 いつの間にか、下着も含めて全ての服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿になっていた来幸が俺に向かってそう言う。

 

「私達は何を引き換えにしてでも、フレイ様の愛が欲しい……。例え、それによってフレイ様の愛が一時のものになるのだとしても、愛されたという事実さえあれば、私達はその愛を糧に生きていけます」

 

 来幸はそう言うと俺の腕を取った。

 それと同じように服を脱ぎ捨てて、攻略対象に相応しい綺麗な裸体を俺に見せた他の者達が、抱きつくように次々と俺の体を拘束し、そして俺の服を脱がしていく。

 

 柔らかな少女の肌の感触に、喜びよりも恐怖を感じながら、俺は叫ぶ。

 

「いやいやいや! 待って待って! 違う違う! こんなの俺の望んでいたボーイミーツガールじゃない!!」

「諦めよ。おなごの心をさんざん踏みにじって来た罰じゃ」

 

 気付けば、他の者と同じように裸になって、いつの間にか眼前に迫っていたセレスが、俺に向かってそう言う。

 

「其方の望む理想のボーイミーツガールはもはや手に入らん。しかし、其方が真に欲していた。変わることのない永遠の愛は手にできる」

 

 そう言うとセレスは来幸達に拘束されている俺に口づけをしてくる。

 唇が触れるキスではなく、俺の口の中にその舌を入れて、そして俺の口内を蹂躙するディープキス――それを受けて俺は思い出す。

 

「こ、これはあの時の――」

 

 ディノスを倒したあの日、今の俺と同じようにディープキスによって、セレスに俺のファーストキスを奪われていたと言う事を。

 

 俺がそれを思い出したことに気付いたのか、セレスはにやりと妖艶に笑い、俺の口から彼女の口へと繋がった唾液による銀の糸をペロリとなめ取ると言う。

 

「我等の永遠の愛を其方に捧げよう。我等の愛を受け取るがよい」

 

 その言葉と共に、服を剥ぎ取られた俺にセレス達が群がってきて――。

 

「や、やめ……! うわっ!? うわあああああああああああああああ!!!!」

 

 ………………

 …………

 ……

 

 ――こうして、理想の俺だけのヒロインを求める俺の旅路は、ここに終わりを迎えることになったのだった……。

 




 ヤンデレ連合大勝利! と言う事で、フレイの理想の俺だけのヒロインを求める旅はここで終わりを迎えることになりました。
 まあ、しょうがないよね。一人でも厄介なヤンデレが徒党を組んだら、そんなのもう勝てっこないもんね。

 そう言ったわけで、一区切りとなりますが、フレイが「ざまぁ」されることを待っていた読者の方は、読むのをここまでにして評価を貰いたいなと思います。
 一方で、フレイやヒロインにもう少し救いがあって欲しい、ハッピーエンドを迎えて欲しいという方は、次の後日談まで読んでから評価をお願いします。
 ※後日談というタイトルですが、作者的には次話まで含めて、この話が綺麗に終わると思っています。
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