エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
そんなこんなで生まれてから早くも六年の月日が流れた。
俺は今日も軒先で魔法と剣の修行に力を入れていた。
「なかなか筋がいいぞ! フレイ!」
「ありがとうございます! 父様!」
目の前にいるパパンが、フレイの父であるジーク・フォン・シーザックだ。
このシーザック侯爵家の現当主であり、そしてSランク冒険者でもあった男だ。
シーザック侯爵家はこのフェルノ王国では特殊な家柄で、公爵家に次ぐ権力を有している。
その理由というのが――。
「あなた、フレイ、食事の時間ですよ」
今現れたママン。リノア・フォン・シーザックだ。
シーザック家は元々ママンの実家であり、王国建国期に尽力した聖女が起こしたという家になっている。
そのためシーザック家の女性には代々少しだけ聖女の力が宿っており、その力があるからこそ、王国内で高い地位を得ることができているのだ。
「わかったよ。ハニー」
「もう、あなたったら」
そう言ってジークはリノアにハグして熱烈なキスをする。
それをリノアは嬉しそうに受け入れていた。
見ての通り、パパンとママンはラブラブだ。
何でも一目惚れだったらしい、聖女の力の修行として冒険者を始めたリノアを見たジークは恋に落ち、猛烈なアタックを繰り返した。
平民であるジークのその所業に貴族であるリノアの実家は怒り、ジークを排除しようとしたそうだが、リノアがジークに惹かれていたことや、ジークの強さやしつこさなどもあり、Sランク冒険者になれたのなら、結婚を認めてもいいと折れて譲歩したそうだ。
結果としてジークは愛の力で本当にSランク冒険者になり、リノアは婚約の話をなかったことにしてジークと結ばれたという経緯がある。
苦難を乗り越えて結ばれる姿はまさにボーイミーツガール!
俺が目指すべき理想の夫婦って奴だ。
そしてそのラブラブの愛の結晶はリノアのお腹に宿っている。
「もうすぐ生まれるんだっけ」
「え? そうね。そろそろだと思うわ」
突然の俺の言葉にリノアは一瞬戸惑ったが、俺が生まれてくる妹か弟のことを楽しみにしているのだと思い、直ぐに笑顔を見せてそう言った。
準備ができるのもあと少しか――。
だが、俺の中にはそんな風に喜んでいる余裕はない。
その子供、一人目のレシリアが生まれた日の夜――事件は起きるからだ。
☆☆☆
ゲームでのレシリアルートでは、彼女の苦悩と家族を滅茶苦茶にした魔族に対する仇討ちに焦点があたったストーリーが展開される。
ゲームでのレシリアの姉、一人目のレシリアは、歴代最高とも言える類い希なる聖女の才を持っていた。
それに気付いたとある魔族は、彼女が成長する前に殺そうと、強力な聖女の誕生を感知したその日に、レシリアを殺す。
ゲームでのリノアとジークは翌日になってレシリアが死んだことに気付くが、それを魔族の仕業と見抜けなかったのが不幸の始まりだった。
リノアが自分がちゃんと産めなかったせいで、産後にレシリアが死んでしまったと、心を病み、ジークと共にもう一度レシリアを産みなおそうという狂気の発想にいたってしまう。
そうして見事、二人目のレシリアであるゲームのレシリアが産まれるが、そのことによってこの家族は本格的に壊れていく。
リノアは産み直したレシリアが今度こそ死なないようにと、過保護になって彼女を守り続け、そして彼女に聖女としての期待をかけ続けた。
それによって割を食ったのはフレイだ。
両親の愛情がレシリアだけに向かうようになったことで、放置されるようになったフレイは、徐々にその心に寂しさを溜めていった。
やがてそれは最悪な形で暴発する。
両親に自分を見て欲しかったフレイは、レシリアに嫌がらせをしたのだ。
そしてそれに対して両親は「レシリアが死んだら如何するの!」と激怒し、それを聞いたフレイは、既に両親に取って自分は必要のない存在なのだと思い込んでしまい、家族の愛を諦めて、血統だけを頼りにする噛ませ貴族のような性格へと変わっていってしまうのだ。
ジークやリノアもその後のフレイの態度で、自分達が不味い事をしたということには気付いたが、もはや互いに関係の改善は不可能だった。
こうして彼らの家族は壊れ、血統だけを頼りにする噛ませ貴族のフレイと、所詮姉の代わりだという気持ちを抱えながら、聖女としての力が碌にないのに、聖女としての力を期待される哀れなレシリアという存在だけが残ることになった。
レシリアルートはこの状況から物語が始まる。
共通パートでアレクに負けたフレイは、周囲の蔑む目に耐えきれず、学園をそのまま去って、失踪してしまう。
レシリアはその出来事もあって、よりシーザック家としての期待を掛けられて、潰れそうになっているときにアレクと知り合うのだ。
初めは兄の失踪の原因となったアレクを避けていたレシリアだったが、やがて自身を聖女や一人目のレシリアとして見ないアレクに心が引かれていく、そしてアレク自身も頑張り屋なレシリアに引かれて親密になっていくのだ。
だが、そうやってアレクとレシリアが仲良くなることを好まないものがいた。
それは一人目のレシリアを殺した魔族――ディノスだ。
魔族は、魔物と同じように、魔素が集まる事によって生まれる存在だ。
魔物と違って発生する数は少ないが、その代わり強力な力を持っている。
一応、魔王という存在もいるが、それらは魔族の一部が他の魔族を従えて、名乗りを上げたものであり、実際に魔王という種がいるわけではない。
故にそれぞれの魔族は生まれた時から、自分勝手に自分のしたいことをするために行動し、人類に様々な迷惑を掛けているわけだが、このディノスという魔族は一人目のレシリアを殺した事からも分かるように、自分を脅かすかも知れない存在を許しておけないびびりな気質だったのだ。
だからこそ、力を付け始め、仲間も得始めたレシリアを許せずに、その存在を排除することを決めた。
そうして彼が目を付けたのが、学園を飛び出して彷徨っているフレイだ。
ディノスはフレイに、妹である憎きレシリアと、自身を学園から追い出したアレクが恋仲であると伝え、その憎しみを煽った。
それによって二人への憎しみを強くしたフレイは、ディノスとともに様々な暗躍をしながら、レシリアとアレクを追い詰めていくのだ。
様々な暗躍の中で、レシリアとアレクは最終的に、姉であるレシリアの死の真相と、その犯人であるディノスの存在に気付く。
彼らは家族を滅茶苦茶にしたディノスを討つために、ディノスとフレイを追い詰め、そしてその中でレシリアの人生を滅茶苦茶にしたディノスへの怒りで、勇者に覚醒したアレクがディノスに深手を負わせるのだ。
自らの危機にディノスが逃げ出した後、レシリアはフレイへと語りかける。
「兄さん! ディノスは姉さんを殺した相手だよ! 家族を滅茶苦茶にした犯人だよ! もう、それに従って私達と戦うのは止めて!」
それに対してフレイは絶望しきった目をして答えた。
「知っている」
「え?」
何を言っているのか分からない顔をするレシリア。
それに対してフレイはただ淡々と語りかけた。
「確かにレシリアを殺したのはディノスだ。だが、それがどうした? 確かに切っ掛けはレシリアが死んだことだったのかも知れない。だが、俺を排除し、無かったものにしたのは、リノアとジーク、そしてお前だ! レシリア!!」
そう言ってレシリアへと斬り掛かるフレイ。
それをアレクが剣で受け止める。
「俺はただ少しだけの愛があれば良かったんだ! ほんの少しでも俺を見て貰えば良かったんだ! そのくらいなら幾らでもできたはずなのに! それなのに俺はそれを与えられなかった! だからこそ! 全てを奪ったお前が憎いんだ!」
そう言って何度も斬り掛かってくるフレイ。
「俺は絶対に止まらない! お前を殺すまで! 止めるなら俺を殺せ! 俺から命すら奪ってみせろ! レシリアぁあああーーー!!!!」
そうして襲ってくるフレイにレシリアは思わず反撃した。
避けられるはずのその攻撃、それをフレイはわざと致命傷となる場所で受ける。
「ククク、俺から奪った全てを背負いながら生き続けろ、愚かな妹よ」
そう言ってフレイは死んでしまう。
レシリアは、兄が抱えていた闇を知り、兄を自らの手で殺してしまったことで、塞ぎ込むようになってしまうが、それを慰めたのがアレクだった。
「お前が背負ったものは俺も一緒に背負う。だから前を向いてくれレシリア」
「アレク……」
ここで慰めックスが発生し、レシリアとアレクが、パンパンしながら美麗なCGと声優の演技で迫真の濡れ場が発生する。
そうして勇者であるアレクの種がレシリアの中に入ることで、レシリアの聖女としての力が刺激されて目覚め、レシリアは聖女として覚醒するのだ。
エッチで覚醒とか、なにそのエロゲーみたいな展開? と思ってしまうが、インフィニット・ワンはエロゲーなので仕方が無い。
エロゲーとは、体液が魔力の受け渡しに優れてるからエッチするしかないとか、プレイヤーの為に何かと理由を付けてエッチをさせようとするものなのだ。
もっとも、目覚め方が目覚め方だったので、プレイヤーからは聖女ではなく、性女(笑)とか言われていたが……。
まあ、そんなこんなで覚醒した二人は、聖女の力で結界を作ることで、転移を得意とするディノスの逃げを封じ、見事打ち倒す。
そうして幸せな二人がシーザック家をもり立てていったと、その後に関する状況が少し流れてハッピーエンドがレシリアルートの概要だ。