エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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無窮団

 

「ああ、それと無窮団の活動報告です」

 

 そう言ってリガードはもう一つの紙を渡してくる。

 俺はそれをペラペラと捲り、そして言った。

 

「今年の収穫は去年の倍以上になりそうか……順調なようだね」

「はい。新型の鍬や品種改良した農作物の影響が大きいようです。それと鍛治分野や漁業、領内の治安も含めて、全てに向上が見られます」

「結構結構。順調なのは何よりだ」

 

 俺はその成果を見てホクホクとしながらそう答えた。

 そんな俺を見てリガードが畏怖するかのように言う。

 

「二年前、突如として坊ちゃまが、子供達やはみ出し者の研究者を集めて、無窮団を立ち上げた時は、正直来幸の一件のようにとち狂ったのかと思いましたが、少なくとも麒麟児の部分は真実だと信じて、活動を手助けしたかいがありました」

「……言葉に毒があるな。俺は思いつきで行動はせず、しっかりと計画を練って、確実な成果を上げていくタイプだぞ? ああやって殆ど無名のものを集めたのだって、こうやって成功するのが見えていたらやったんだ」

「……そう言うことにしておきましょうか」

 

 本当に計画を練るタイプか? と疑ってそうなリガードの視線を無視し、俺は再度、資料に目を通す。

 無窮団――インフィニット・ワンの名前の一部を冠する、俺が作ったこの組織は、想像以上の成果を上げていた。

 

 ま、でもそれも当然か、なんたって無窮団に所属しているメインメンバーは、攻略対象やストーリー上で活躍する大人達で構成されているのだから、結果を出せないということの方があり得ない形だ。

 

 二年前のあの日、来幸を協力者にした後、俺はあることに気付いた。

 それは、各地に存在する優秀な攻略対象達を片っ端から雇ってやれば、その優秀さを使って領地発展がスムーズに行くんじゃね? というものだ。

 

 これが、主人公の座を乗っ取ることを考えるタイプの転生者だったり、或いはゲームの物語を崩さないように立ち回りたい転生者だったら、この判断は絶対にしなかっただろう。少なくとも、ゲーム本編が始まる十五歳までは、無闇矢鱈に行動するのを控えたはずだ。

 

 だが、そんなこと俺には関係ない。

 攻略対象を恋愛対象にしていないから、相手を惚れさせるためにその攻略対象のイベントの発生まで待たなくていいし、アレクが誰と乳繰り合おうと興味がないから、ゲームでの物語も全部ぶっ壊すつもりで行動出来る。

 つまり、俺としては幾らでも攻略対象を回収出来る状態にあったと言うわけだ。

 

 そして攻略対象達は個別にストーリーが用意されていることもあって、中にはアレクと共に新技術を開発するというヒロインや、不遇な立場にいる天才をアレクが見いだすなんていうストーリーも多い。

 というか、平民の攻略対象は大体そう言った形で、優秀なのに何らかの原因で窮地に陥って、それをアレクやアリシアが解決するというのが基本だ。

 

 だからこそ、この行動には意味があった。

 攻略対象という何らかの実績を残す存在と、その話のメインキャラとして、主人公達を助ける優秀な大人達を、簡単に青田買い出来るのだ。

 

 勿論、彼らを雇うためには彼らの問題を解決しなければならない。

 だが、物語開始まで時間があるからか、そこまで問題がこじれてなかったり、優秀な親を嫉んだ他者に殺されるというような、後に起こる事件も、まだ発生していないなど全体的に手遅れになる前の状況だった。

 そして、俺は権力を振るえる貴族であり、何処にでもいける便利な転移魔法君や、悪人を強制改心したり、記憶を覗いて悪事を暴ける便利な闇魔法君がいる。

 

 俺はそれを駆使して活動しまくった。

 

 悪人によって路頭に迷いそうになっている攻略対象が居れば、闇魔法を使って悪人の悪事を集めて破滅させてやり、貴族の横暴に悩んでいる平民がいれば、侯爵家の立場を駆使してそれを止め、転移で移動して自領に引き込み、悩める攻略対象がいれば真摯にその相談に乗ってやる気を出させた。

 そうやって兎に角、攻略対象達に恩を売りまくり、集めたメンバーを使って、無窮団を結成させたのだ。

 

 ちょっと恩を売りすぎたせいか、無窮団の連中の忠誠心というか、熱意がやばいことになったので、数人の連絡役を置いて運営は基本任せる形になったが、それでもこれだけの成果を出せるのだから充分だ。

 

「あとでこの世界の最新技術や現代知識も伝えないとな」

 

 今まではストーリー上の彼らの成果を出すことに注力して貰っていた。

 だが、そろそろ余裕が出てきたところだ。

 

 俺には公式設定資料集で見た他国の最新技術の知識もあるし、現代日本の技術に関する知識も、モテる為に良い大学を目指したから結構覚えている。

 それらを彼らに再現させればシーザック領は更に発展しそうだ。

 

 まあ、その辺の技術を伝えたら、彼奴らの俺を見る目がどうなるか分からないのがちょっと怖い所だけど……。

 

 そろそろ神格化とかされそう。

 とか冗談のような不安を抱えながら、税務資料へと目を通す。

 

「うん。問題ない。嘆願書は後で処理するよ」

 

 無窮団の結成ついでに、シーザック領内で腐敗していた役人や使用人を処分して、優秀な人材を集め直した影響もあって、この程度の税務処理では不正やミスが出ないようになっていた。

 ま、仮に不正が見つかったとしたら、転移で飛んでいって、良い子になるようにちょこっとばかし洗脳するか、ダメそうなら処刑して次の奴に切り替えるだけだから、大した手間では無いけどね。

 

 いやはや、人権意識が低いなんちゃって中世はやりやすくていい。

 

 領民が必死で収めた税を、その苦労も分からずに勝手にかすめ取るような悪人は、さっさと根切りするに限るからな。

 

「あ、それとレオナルドにここに来るように伝えておいて」

「かしこまりました」

 

 俺がこうやって頑張った甲斐もあって、現在のシーザック領は未曾有の発展を遂げており、その経済力や軍事力は侯爵家筆頭どころか、公爵家にならんだり、それを上回るほどにもなった。

 あまりの発展ぶりに、初代聖女からこれまでのシーザック領の歴史とはなんだったんだろう、と本気でそう思う住人も多いらしい。

 

 まあ、ポテンシャルは元からあったけどな。

 海洋交易都市だし、領土もそれなりに広いし。

 今までいいようにかすめ取られていただけで。

 

 内政がくだくだでも何とかなっていたのは、ポテンシャルが高かったために、かすめ取られても、ほどほどで維持出来るだけの資源があったからだ。

 それのせいで、歴代のシーザック家は、窮地じゃないからと、なあなあで今までの状況を維持してきたのかもしれないが、俺が来たからにはそうは行かない。

 

 徹底的に精査して最強のシーザック家を目指してやるぜ!

 

「っす。フレイ様。自分に何のようっすか?」

 

 そんなことを考えているとレオナルドがやってきた。

 俺はレオナルドに事前に用意していた資料を渡す。

 

「銀光騎士団に依頼だ。この住民が何やらきな臭い騒動に巻き込まれているらしい。情報を調査して敵がチンピラだったらそのまま征伐、裏に組織がいそうならシーザック騎士団に情報を回して討伐して貰え」

「っす。わかりましたっす!」

 

 銀光騎士団とは無窮団と同じように各地から集めた人材で作った、このシーザック領で起こるトラブル……クエストを解決するための俺直下の騎士団だ。

 こうやって後に起こるクエストや、嘆願書等で上がってきた最近問題になっている事案、そして手が足りない攻略対象の救助などを依頼している。

 俺と同い年の年若いものが多く、賊討伐などの実践的なことは難しいが、こういう街中の問題を片付けるのには丁度良い存在なのだ。

 

 そのリーダーであるレオナルドは、俺の依頼署を見ると、それまでの様子が打って変わり、真剣な様子で内容を精査し、質問をしてくる。

 俺がそれに答えられるだけ答えると、聞きたいことを聞き終えたレオナルドは、部屋を出て行こうとした。

 

 そこで俺は思わず声を掛けた。

 

「クレアとのその後はどうだ?」

 

 俺のその言葉を聞いたレオナルドは、にへらとだらしなく表情を緩めた。

 

「聞きたい? 聞きたいっすか? そりゃあ、もうラブラブっすよ! 昨日だってお祭りデートしたっす!」

「……そうか、それは良かったな。恋人なんだ。大切にしてやれよ?」

「っす! それじゃあ、失礼するっす!」

 

 レオナルドが出て行ったのを見て、俺は笑顔を崩す。

 

「結局、攻略対象は、攻略対象か」

 

 レオナルドに助けに行って貰ったクレアは、インフィニット・ワンでの攻略対象となる平民の一人だった。

 俺が改革をしまくったことによるバタフライ・エフェクトか、本来ならアレクが学園に入学してから発生するイベントが、何故か五年前に発生するという状況に陥ってしまっていたのだ。

 

 俺はそれに気付いたのだが、無窮団のメンバーのための問題解決で忙しく、そこまで危険度の高くない問題だったため、問題解決のために必要そうな手順を伝えた後、レオナルドに解決を依頼したのだ。

 

 結果としてレオナルドはアレクと同じように問題を解決。

 そして助けられたクレアはアレクに惚れたのと同じように、レオナルドに惚れ、先程聞いたように現在進行形でラブラブな関係にある。

 

 俺が思っていた通り、イベントを攻略するなら誰でも良かったというわけだ。

 それがアレクでも、俺でも、レオナルドでも……。

 

「元から分かってたことだろうがよ。気にするなよ」

 

 俺は自分に言い聞かせるようにそう言って、書類の決裁に戻った。

 

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