エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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婚約

 

 食堂に着くとそこには討伐依頼から帰ってきていたジークの姿もあった。

 全員で食事をし、それが終わった後、食堂でのんびりとしていると、真剣な顔をしたジークがおもむろに喋り出す。

 

「フレイ。お前に大事な話がある」

「俺にですか?」

 

 唐突に話を振られた俺は思わずそう問い返してしまった。

 領内のことで俺が知らないことはもう無い気がするが、一体何の話だろうか。

 

「先日、ノーティス公爵領の近くに行ったとき、偶然、ノーティス公爵とあってな、そこでお前に対する婚約話を持ちかけられた」

「――は?」

 

 あまりの突然の言葉に、俺の口からそんな間抜けな言葉が漏れた。

 

「それで父さんな……OKしてきちゃった」

「はぁああああああ!? なにOKしてるんですか! 父様は知ってますよね!? 俺が、俺だけの理想のヒロインを求めてるって!! 政略結婚なんて、どう足掻いてもその目的達成出来ないじゃないですか!!」

 

 しかもノーティス公爵家って、ゲームでもフレイの婚約者だったエルザ・フォン・ノーティスの実家じゃねーか! 絶対、俺の婚約相手って、エルザだろ!?

 

「嫌です! 絶対に嫌です! 撤回してください! 今なら間に合います!」

「それがな……そうも言ってられないんだよ……」

「何でですか!」

 

 俺がぶち切れてそう言うと、横からリノアが会話に入り込む。

 

「お母さんのね。元々の婚約者がノーティス家の人だったのよ」

「は? つまり、父様のせいで破断になった婚約相手の家ってことですか?」

「その通りだ! 一応許して貰えたが、一方的に破断させたから、今回の婚約の件で、こちらからは強く言えなくてな……」

「ちょ……父様の不手際の後始末をしろって言うんですか!?」

「すまん! フレイ!」

「はぁああああ!?」

 

 もはや怒りが限界突破してそれしか言えない。

 そんな俺を見かねたのかレシリアが声を上げる。

 

「レシィも反対! そんな奴、にぃにに相応しくない!」

「旦那様……フレイ様の専属メイドとしても、同意見です。いきなり婚約を強制的に決めるなんて、フレイ様の意見を蔑ろにしています」

 

 レシリアと来幸という多数から反論を受けたジークは顔を歪ませる。

 

「うぐぐ、だがな親が婚約を決めることは貴族ではよくある――」

「だとしても先に一言話を通すとか、相手に対して顔見せするとかあるでしょ!? 何も知らない相手といきなり婚約なんて、貴族社会でもぶっ飛んでるよ! そもそも相手はなんでそんな婚約をいきなり持ちかけてきたのさ!?」

 

 俺は魔力回路がぶっ壊れている貴族社会では価値の低い男だぞ?

 そんな相手に無理矢理婚約話を持ってくるなんて、そもそも最初の出だしからおかしい。

 

 俺のその言葉に苦悩した表情を見せていたジークは、諦めたように言う。

 

「はぁ……。これは言わなければ駄目そうか……。フレイ、お前はノーティス公爵領がどんな場所か知っているか?」

「このフェルノ王国で最も肥沃な土地を持ち、王国の台所とも言われるほどの穀物生産の大拠点です」

 

 俺のその回答にジークは頷いた。

 

「そうだ。この国で流通する多くの穀物はこのノーティス公爵領産だし、それもあってノーティス公爵領には、毎月指定量の穀物を王家に収めなければならない、という誓約があるほどの重要拠点だ」

 

 そこでジークが痛ましそうな顔をする。

 

「だが、近年はその穀物生産が上手くいっていないらしい」

「穀物生産が上手くいっていない?」

 

 何だ? 何処かで聞いた事があるような……。

 

「原因は不明だが肥沃な大地の実りが年々失われていっているそうだ。ノーティス公爵家も方々に手を尽くして何とか状況を打開しようとしているそうだが、それも上手くいっておらず、財政負担だけが増えていて、このままだと遠くないうちにノーティス公爵家は王国への穀物提出が出来なくなり、それを補うための他国や他家からの穀物の購入で、完全に財政が破綻すると可能性が高いと聞いた」

 

 思い出した。

 これエルザルートで起こっていた問題だ。

 この時点から発生していたのか。

 

「今回の婚約話もこれに絡んだことなんだ。ノーティス公爵家は援助を必要としている。だが、貴族社会では対価のない援助を受けることは出来ない。その時は対価が無くとも、あとでどんな要求がされるか分からんからな」

 

 まあ、援助に対する対価がないと、見えない部分で密約したのでは無いかと、周囲の貴族に疑われる可能性もあるし、その点を考えれば、何かしらの対価を無理矢理作ってそれで手打ちにするという考えは理解できる。

 

「だからこそ、ノーティス公爵は自身の一人娘であるエルザ様を、人質として援助をして貰う相手に渡すことにしたんだ。つまり、これは婚約という名の人質であり、両家間の援助の盟約ということだな」

「もし、ノーティス公爵家がたち行かなくなったら、入り婿の形になる俺がそこに干渉して、シーザック家の利益になるように行動出来る。その為の婚約で、エルザは自領の為に俺に身を捧げる覚悟を決めたと」

「そう言うことだ」

 

 なるほどな~。ゲームでもエルザはフレイの婚約者だったけど、その婚約話にはこんな裏があったのか。てっきり領地が近いから婚約したんだと思ってた。

 それにこれならゲームでエルザが、フレイを一度も愛さず、そして嫌いまくっていたのにも納得がいく。

 援助の為に決められた破れない婚約だからこそフレイを嫌ってたと。

 

 ああ、まるでエルザは悲劇のヒロインだな。

 自領の為にその身を犠牲にするなんてなんて可哀想。

 

 なんて――。

 いうと思ったかクソボケがぁあああああああ!!

 

「ふざけるなよ!!」

「ふ、フレイ!?」

「なんだその犠牲になった私可哀想ムーブは! 本当の被害者はこっちだろうが!  したくもない婚約をする羽目になったのは俺もだぞ! お前らの事情で無理矢理押し売りしてきたのに! 被害者ぶってんじゃねー!」

 

 俺は怒りのあまり机を思いっきり叩く。

 その力を受けて木材で出来た机が真っ二つに砕けた。

 

「はあはあ……」

「ちょ……」

「お、落ち着きなさいフレイ」

 

 俺の発狂した様子を見て家族全員と使用人が目を丸くする。

 だが、これが怒らずにいられるだろうか。

 

 ゲームでのフレイは誰かの愛を求めていた。

 それはきっと本当に誰でも良かったのだ。

 

 レシリアルートで語られた通り、少しの愛でも貰えれば彼はマル○ォイ的な傲慢な貴族ではなく、真っ当な貴族になることが出来た。

 それはビーチェルートでのアレクと協力する彼の姿からも言えることだ。

 

 そしてその愛を与える存在にエルザはなれたのだ。

 婚約者である彼女がフレイのことを少しでも思ってくれたら、彼は真っ当な道に進むことが出来たかも知れない。

 

 だが、エルザはそうしなかった。

 婚約者になったのは自領の為、自らの身を犠牲にした望まぬ婚約だからと、フレイのことを考えず、毛嫌いして関わりを絶った。

 婚約者になったのは向こうからの押しつけなのに、フレイはそんなものが無ければ自分を愛してくれる婚約者が得られたのかもしないのに、それなのにそれを潰した張本人は自らだけが被害者と、婚約者なのにフレイを無視した。

 そして、フレイが失踪すると早々にアレクに乗り換えて、馬のように後ろから突かれながらヒンヒン言ってエッチを楽しんでいたのだ。

 

 とんでもない性悪女じゃないか!

 元から攻略対象だから恋愛対象ではないが、こんな奴と婚約関係を維持することになるなんて、俺は絶対に嫌だ!

 

「ねぇ。父様?」

 

 ぎぎぎと壊れたロボットのように首を動かしてジークを見る。

 それを見てジークがぎょっとしたような顔をする。

 

「この婚約がノーティス領の問題に対する援助の為なら、その問題が解決すれば、俺が婚約する理由はもうないよね?」

「え、あ、ああ。うん。そうかも――」

「んん? かも?」

「っひ! ああ、そうだ!」

 

 何か恐ろしいものを見たような態度でジークがそう断言する。

 

「そっか~。よかった~。じゃ、俺はその問題とやらを解決してくるから」

「お、おい。フレン? ちょっと」

「来幸、行くぞ」

「かしこまりました」

 

 俺は来幸の手を握り、自室へと転移した。

 

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