エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
つまり、今日の夜にディノスは現れる。
俺は生まれたレシリアの姿を見ながらそう考えた。
今、教会から来た神父がレシリアに祝福を授けていた。
聖女が生まれる家だからというのもあり、教会から来たこの神父は位が高く、同時に実力も高い優秀な神父である。
レシリアルートでは、一人目のレシリアを守れなかった責任から、色々とレシリアやアレクを手助けしてくれるお助けキャラ的な存在だった。
祝福を終え、帰っていく彼を、その場をこっそりと抜け出した俺は追う。
そうして家から少し離れた所で彼へと声を掛けた。
「モーリス司祭! 少しお待ちください」
「ん? 君はフレイ君だったかな」
モーリス司祭がこちらに振り向く。
俺はその時に、側に居た同い年くらいの子供に目が向いた。
先程まではあの子は居なかったはずだ。
「えっと……」
「ああ、この子は私の娘だ。仕事が終わるまでここで待たせていたんだよ」
モーリス司祭に娘なんて居たっけ?
ゲーム知識ではそんな話は出てこなかったように思うが、メインキャラじゃなかったというだけで、娘自体は居たのかも知れないと思い直す。
「娘さんですか、フレイ・フォン・シーザックです」
「セレスだ」
素っ気なくそういうセレス。
それを聞いてモーリス司祭は苦笑いを浮かべた。
「ごめんね。うちの子は人付き合いが悪くて、それで何の用かな」
「お願いしたいことがあるんです」
「それは何かな?」
俺に目線を合わせてそう聞いてくれるモーリス司祭。
それに対して俺は言った。
「今日の深夜に完全武装してレシリアが居る部屋に来て欲しいんです。できれば父さんを連れて」
「それは……なぜそんなことを?」
「理由は話せません! どうかお願いします!」
そう言って俺は頭を下げた。
下手に情報を漏らせばびびりなディノスは逃げるかも知れない。
そうなると厄介だ。
奴は転移の力を持っており、今回のような確実に襲撃が分かっているようなタイミングで仕留めなければ、今後の襲撃を防ぐことは難しいのだ。
勿論、レシリアが殺される事を見逃せば、一時的な俺の安全は確保できるが……俺にも聖女の家系の血は流れているため、何処かで奴は俺を殺しに来る可能性は否定出来ないと思っていた。
だからこそ、奴はこの場で殺さなければならない。
俺の態度にモーリス司祭は困ったような顔をする。
そんな司祭に後押しをしてくれたのはセレスだった。
「いいではないか、助けてやったらどうだ?」
「しかし――」
「何も起きなかったら、それはそれよ」
娘と父の会話に見えない状況に、疑問が浮かぶが、ここでそれに突っ込んでもいいことはないなと思い、ただ黙って成り行きを待つ。
「分かりました。フレイ君、君の頼みを聞きます。夜中に完全武装して、ジーク様とともにレシリアが居る部屋に向かえばいいんだね」
「はい! よろしくお願いします!」
俺はそれだけ言うと頭を下げてから屋敷に戻ろうとする。
だが、その前にセレスの前によって、その手を取った。
「っな!?」
「ありがとう!」
俺の提案を受け入れるための援護をしてくれた彼女の手を握り、本気の感謝の気持ちを込めてそう言うと、俺は屋敷へと駆け出した。
☆☆☆
去って行ったフレイを唖然として見送りながら、セレスは自分の手を見た。
「我の手を握っていったぞ、あやつ」
「それは……正体を知らないので仕方ないでしょう。なにとぞ、寛大な処置を」
そう言ってモーリス司祭は冷や汗を流しながら頭を下げた。
セレスはそんなモーリスに視線も向けずに、ただ自分の手を見続ける。
「よい。気にしておらん。……それにあれほどの感謝を直接されたのも久しぶりだったからのう。むしろ、少しばかり嬉しかったぞ」
セレスはそう言って視線をフレイが去って行った方へと向けた。
「さて、今宵何が起こるのか……楽しませて貰おうではないか」
そう言うとセレスはにやりと笑い、モーリス司祭とともにその場を後にした。