エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「ふ、リューク様! ペース速く無いっすか!?」
「まあな、今日中にこのダンジョンを片付ける! もう隠し球は全部無しで、全力で行くぞ!」
再びダンジョンに潜った俺達は疾走していた。
出てくる敵は俺が殆ど転移で仕留め、残りを仲間が倒すことで、殆どスピードを落とすこと無く先に進んでいく。
エルザがダンジョンのことをノーティス家に喋ってしまった以上、ノーティス家は直ぐにでもジークに派遣依頼を行うだろう。
そのジークにダンジョンを攻略されたら全てが終わりだ。
だからこそ、速攻でダンジョンを攻略しなければならない。
故にこれまで使わなかった空蝉の羅針盤を全力で使用し、敵を倒しながら先へと進んでいるのだ。
「あ、前方に罠!」
「飛ぶぞ!」
罠があっても転移でよけ、手強い敵も転移でよけ、簡単に倒せる奴を適度に仕留めながら、俺達は先に進んでいく。
あっという間に昨日のポイントを越え、そして次々と次の階層へと進んでいく俺達はついに最終地点であるボス部屋の前に到着した。
「ここが迷宮の守護者がいる部屋……!」
ごくりとクレアが息をのみ、他のものも緊張を露わにする。
「迷宮の守護者なんていっても、ただの強い魔物だ。殺せない相手じゃない」
俺は仲間を落ち着かせる為にそう宣言する。
「俺達ならやれる! ダンジョンを攻略し! 婚約破棄するぞ!」
「「「「「おお~!」」」」」
俺の思わず出た本音に全員が同意の声を上げた。
……よかったエルザの婚約破棄を手伝うという形にしておいて。
そして中に入る。
そこに居たのは石で出来たミノタウロスだった。
「ストーンミノタウロスと言った所ですかねぇ……」
ケイトスがそう宣言する。
俺はそんなケイトスとエルザに言った。
「ケイトス! エルザ! 最大火力を叩き込め!」
「アクアスピア!」
「ファイア!」
二人の魔法がストーンミノタウロスに命中する。
水蒸気で視界が塞がれる中でレオナルドが言った。
「やったっすか!?」
「馬鹿!」
俺がそう言うのと同時に、俺に向かって斧が降り注いだ。
俺は転移で避けると、ストーンミノタウロスの頭部に乗り、剣でその頭部を斬り付ける。
「かた……!」
だが、その剣はストーンミノタウロスを傷付けることなく弾かれてしまった。
上に乗る俺を吹き飛ばそうとストーンミノタウロスは暴れる。
俺は転移で仲間達の元へと逃げた。
「攻撃が効かないな……誰かあの防御を突破出来る技を持っているか?」
俺のその言葉に全員が首を振った。
「自分の最大魔法であるアクアスピアで傷つかなかったことを考えると、かなりの威力のある攻撃じゃないと効かないと思いますぅ……!」
「そうか、厄介だな……」
俺は思わずそう呟いた。
面子的に火力役を担えるものがいない。
このままでは敗北もあり得る状況だった。
「リューク……」
心配そうにエルザがそう言う。
だが、俺はそこまで状況を悲観していない。
「レオナルド! 少しの間、足止め出来るか?」
「っす! 何とかなると思うっすけど……」
「奴の防御を突破する攻撃をする」
「わかったっす!」
俺がそれだけ言うとレオナルドはストーンミノタウロスの前に行き、囮役を買って出てくれた。
スキルと盾を上手く使いながら時間稼ぎをしてくれている間に、俺はあのストーンミノタウロスを攻撃するための準備をする。
「ナイフ?」
俺が取り出した二本のナイフを見てエルザがそう言った。
俺はそれを宙に放り、そして一定地点に落ちた瞬間に、再度上空に転移させる。
「何を……」
仲間達がそう疑問に思っている間にナイフは加速し続けた。
それを見たケイトスが何かに気付いたように叫ぶ!
「ああ! そう言うことですかぁ! さすが、カミィ! それならば、ストーンミノタウロスにダメージを与えられますぅ!」
俺は何度も上下へと転移を繰り返す。
目で見えないほど速くなったそれを見てエルザ達も気付いた。
「一定座標の移動を繰り返すことでナイフを加速させているの!?」
「そうだ! そして最大限加速したナイフは!」
俺はそれだけ言うと、転移の方向を変えた。
そしてそれは狙い通り、ストーンミノタウロスの方へと真っ直ぐ飛ぶ。
「がぁあ!?」
「凄まじい破壊力を持つのさ!」
ストーンミノタウロスの腹部がナイフによってはじけ飛ぶ。
すさまじい勢いで飛ぶナイフにはそれだけの破壊力があったのだ。
「それ! もう一発!」
次弾の準備をしながら、最初に用意したもう一発も発射する。
その一撃もストーンミノタウロスを削り取った。
攻撃は順調に効いているが俺は内心で思わず舌打ちをした。
普通の生物ならとっくに死んでいるだけの深手を負わせているが、ストーンミノタウロスは生物ではないのか、それでもまだ元気に動いていたのだ。
このままだと不味いか……?
今は押すことが出来ているが、ストーンミノタウロスに攻撃を通せるのが俺だけと気付かれれば、時間のかかるこの攻撃方法を使用することが出来なくなる。
そうなってしまえばこちらが尻損で負けることになりかねない。
そんな俺の不安を吹き飛ばしたのはケイトスだった。
「こう! ですねぇ!」
そう言うとケイトスは自分の手に水魔法で生成した水を維持し、それをその上でくるくると回転させ始めた。
やがてそれは遠心力によって、徐々に回転を増していく。
「さすがだなケイトス! 連れてきて良かったよ!」
「カミィ……! ありがたきお言葉ですぅ……!」
制御が難しいのか汗を浮かべながらケイトスはそう言い返す。
そして充分に加速した水をストーンミノタウロスに向かって放った。
その水流は現代の工場であるようなウォーターカッターのように、ストーンミノタウロスを切り裂く。
「よし! 効いてるぞ!」
「あたしだって!」
それを見ていたエルザが同じように遠心力を付けようとするが、それを俺は止めて別の方法を伝える。
「火は勢いを付けても効果は薄い! 火の勢いを圧縮して火力を増やすんだ!」
「わかったわ!」
エルザは俺に言われた通り火を圧縮して放つ、
「ファイア!」
青白い炎となったファイアはケイトスほどではないが、ストーンミノタウロスへのダメージを与えた。
「やった!」
「いいぞ! エルザ!」
「当然でしょ!」
「このまま削りきるぞ!」
それからしばらく同じやり方でストーンミノタウロスを削り、やがてコアのようなものが露出したので、それをレオナルドが潰すと、ストーンミノタウロスは力を失ったように倒れて、魔石へと変化した。
「や、やったっす~!」
「やった~!」
「やりましたねぇ……」
ストーンミノタウロスのコアを潰したレオナルドはそう言うと、疲れ果ててその場に倒れる。
そして、クレアとケイトスもそれぞれ喜びを露わにした。
「ふう、何とかなったな」
「お疲れ様です、ふ、リューク様」
一息はいた俺に来幸がそう話しかけてきた。
「や、やったのあたし達……」
「そうだ。やったな」
俺は唖然とするエルザに手を上げた。
エルザはそれを見た後、同じように手を上げる。
「俺達の勝ちだ!」
その手を俺は叩いてハイタッチした。
その手の衝撃でようやく実感が湧いたのかエルザも喜び始める。
「そうね! あたし達の勝ちよ! これで婚約破棄が出来るわ!」
「ああ、そうだな! じゃあ、さっさとダンジョンコアを取るとするか」
そう言って俺達は守護者の部屋の奥にある部屋に向かう。
そこにはクリスタルの球体が宙に浮いていた。
「よし、エルザ、あのダンジョンコアを取ってくるといい」
「あたしが取りに行くの? ここまで来ることが出来たのはあんたのおかげなんだから、あんたが取りに行けばいいじゃない」
ダンジョンコアを前にして、俺とエルザの押し付け合いが始まる。
「いやいや、ダンジョン攻略の依頼主はエルザだから」
「そんなことを言うなら、このパーティーでのリーダーはリュークでしょ?」
「……」
「……」
イベント攻略を是が非でも押し付けたい俺と、何故かダンジョンコアを取るのを俺に譲ろうとするエルザ。
お互いに押し問答が続き、最終的には二人で黙り込む。
ただダンジョンコアを取るだけじゃん何が嫌なんだよ。
俺がそう思い、少しばかりいらつき始めると、それを見かねたクレアが俺達に向かって言う。
「それなら二人で一緒に取ればいいんじゃない? お宝を得た瞬間の感動は分かち合うべきだよ!」
「そうっすね! それがいいと思うっす!」
クレアの言葉にレオナルドが追従する。
俺は思わず苦い顔をした。
「二人で取れってな……」
「あたしはそれで良いわよ」
そんな俺と打って変わって、エルザはそれを快く了承する。
そして俺の方を見て断言するように言った。
「あんたが取らないなら、あたしも取らないから」
「……分かったよ。一緒に取ろう」
どう足掻いても意思を曲げる気は無さそうなので、俺は諦めて二人でダンジョンコアを取ることにする。
まあ、一応はエルザが攻略した形になるし、最低限攻略対象に自分のイベントを攻略させるって目的は果たせているか。
俺はそう自分を無理矢理納得させ、ダンジョンコアに手を掛けた。
「よし、行くぞ……せーの」
俺の言葉に合わせてエルザと共にダンジョンコアを空中から引き抜く。
するとダンジョンコアは光を失い、そしてダンジョンから地響きのような音が鳴り始めた。
「これは……」
「ダンジョンが崩壊する! 脱出するぞ! 掴まれ!」
俺のその言葉で仲間が全員捕まったのを見て、俺は転移を発動させた。