エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
四章完結まで毎日更新です。
それと、三章の開始時期の年齢を十一歳から十歳に変更し、インフィニット・ワンの本番は十八歳以上という説明周りを修正しました。
「おかしい……? 何故こうなった……?」
俺はナルル学園の庭園で昼食を取りながら思わずそんなことを呟いていた。
そんな俺の前で俺の友人となったトートとベッグが顔を見合わせる。
「何と言うか、順当な結果だと思うけど」
「だよな~」
友人達の辛辣な言葉に俺は思わず憤慨する。
「順当な結果だと!? 何処が!?」
「いや、入学式のパーティーで、ユーナ王女に公然と婚約を申し込む馬鹿が、真っ当な貴族令嬢からの好意を得られるわけないじゃん」
「だな」
「ぐぅ……!」
まさにぐうの音も出ない正論!
確かにあの行いは冷静さを欠いた愚かなものだった。
「でも、仕方ないじゃん。俺だけのヒロインの最有力候補が目に前に現れたんたぞ? 他の奴らが婚約を勝ち取る前に、先制攻撃しとくべきだって思うじゃん」
だからこそ、俺は飛び出したのだ。
ユーナ・フォン・フェルノ――このフェイル王国の第三王女であり、ゲームではバグ枠と言われていた非攻略対象の一人を確保するために。
ゲームで非攻略対象であった彼女なら、これからアレクに靡くこともなく、さらに超絶モテ男の主人公に靡かないような存在なら、恋人になってくれたのなら、俺を裏切る可能性もかなり低いはずだと考えていた。
故に彼女を俺だけのヒロインの最有力候補にしていたのだ。
そして、その相手が婚約者無しのフリーなのだから、他の奴らが彼女を手に入れる前に行動するべきだと思い、気が急いてしまうのも仕方ないことだろう。
そんな風に思っているとトートとベッグは呆れたような顔を向けてきた。
「出たよ。フレイの自分だけのヒロイン発言」
「お前、本当にそれ好きだよな~」
「当たり前だろ! これこそが俺の夢! 俺の人生の目的なんだから! お前らだって分かるだろう? 最高の彼女を作ってイチャラブしたい気持ちは!」
俺がそんな風に言うとトートとベッグは首を横に振った。
「いや、俺達、婚約者いるし」
「――は?」
「だから、ぶっちゃけ、ヒロインを求めるお前の気持ちが理解できね~わ」
「はぁあああああ!? お前ら、同士じゃないのかよ!? なんで婚約者なんて持っているんだ!?」
ヒョロガリとぽっちゃりという創作の世界においては非モテの象徴というなりをしておいて、このインフィニット・ワンの世界に居ながら、婚約者持ちとか世の中の摂理に反しているのではないだろうか。
俺が思わずそんな気持ちから叫ぶと、二人は呆れたように言った。
「俺も此奴も伯爵家。男爵家みたいな下位貴族ならともかく、高位貴族なら婚約者の一人や二人、普通はいるもんだろ」
「婚約者が二人とか不埒だぞ!」
「いや、ものの例えだよ。俺達だって婚約者は一人さ。ほら、ブレア家のノマ嬢と、アルノア家のシノン嬢だ。俺達の婚約者は」
ブレア家のノマ嬢とアルノア家のシノン嬢だと?
どちらも知っている、非攻略対象として俺が目を付けていた相手だ。
ノマ嬢は眼鏡女子の読書家でさりげない気配りが出来る良い子であり、アルノア家のシノン嬢は騎士を目指して剣の鍛錬を続ける活発なスポーツ女子。
どちらも、どちらも……。
「最高の婚約相手じゃねーか! 何でお前らが!?」
「いや、家の付き合いだし」
「まあ、僕達みたいなのを馬鹿にしない。良い相手で良かったと思うけどね」
「クソー! この上、自慢までされるなんてー! うわ~!」
本気で悔し泣きをし始めた俺を見て、見てトートが言う。
「フレイだって、侯爵家なんだから幾らでも婚約者作れるんじゃないの?」
「そうだよな。俺達から見たら、お前みたいな俺達より高位な貴族に、まだ婚約者がいないことの方が不思議だぜ」
そこでブレアが思い出したように言う。
「――ああ、高位貴族で婚約者がいないのは、ノーティス公爵家のエルザ様とユーナ王女も同じか。というかその三人くらい何じゃないのか婚約者がいないのは」
「っく……!」
攻略対象であり振った相手でもあるエルザ。
それとこの間のパーティーで婚約を断られた相手であるユーナ。
その二人しか、婚約相手がいないものがいないということを知り、思わず呻く。
「婚約の申し込みなんて沢山来てるんだろ? お前ならさ。そんな中から、理想のヒロインとやらを選んだらどうなんだ?」
「――いやだ」
「嫌だって……」
俺はその言葉にガバッと顔を上げて応えた。
「だって! 今の俺に向こうから婚約を申し込んで来るなんて、どう考えても侯爵家の立場や、発展しているシーザック家の利益を得たいだけのクソ女共だろ? そんな集ってくるハエのような奴らは俺のヒロインに相応しくない!」
利権が欲しいからというだけで大切なその体を許す女達。
こちらを愛さず簡単に裏切るようなそんな相手をヒロインにしたくない。
「まあ、言っている事は分かるけど……。それが一般的な貴族の婚姻というものだと思うよ……最初は利権を狙う家の事情で無理矢理だったとしても、案外付き合って見ればちゃんとフレイのことを思ってくれるかもよ?」
「そんなのギャンブルじゃないか! 俺の童貞は俺の大切なヒロインに捧げるって誓ってるんだよ! そんなこちらを愛さないかも知れない女なんかに、俺の大切な童貞を捧げてなるもんか! 一般的な貴族の婚姻なんか知ったことじゃない! 俺は! 今を! 生きているんだ!」
「わ~お。勢いがあるせいで何か格好いいこと言っているように聞こえるな」
「内容自体はドン引きの台詞だけどね……」
おどけたようにいうベッグとドン引きしたように言うトート。
そんな中、トートが俺に向かって言う。
「それなら、エルザ様と婚約すればいいんじゃない? 家の立場としては相手の方が上だし、フレイが言うような利権目当ての婚姻にはならないと思うけど」
「それはない」
俺が端的にそう答えると、トートは首を傾げた。
「なんで?」
「もう振った……というか婚約破棄済みだからだ」
それを聞いてブレアとトートが驚きで目を見開いた。
「お前とエルザ様が婚約相手がいないのは、お前達自身が婚約してて、それを婚約破棄で解消したからなのか!?」
「どうして婚約破棄なんてしたのさ!?」
そんな二人の質問に俺はどう答えるか悩む。
攻略対象とかゲームに関することを此奴らには話せないよな……。
正直に無理な利用を話して、相手の好意を無視して振るために、エルザ達のような攻略対象に話すならともかく、別にそんな理由もない、ゲーム内でモブとされていた存在にゲームの事を話すのは酷というものだろう。
仮に俺が前世で、転生者か何かに「ここは恋愛ゲームの世界だ。お前はモブだから、ハーレムを作っているあの主人公と違って、こんな女っ気もないつまらない人生しかおくれないんだぞ」とか言われたら、確実にぶち切れる自信があるからな。
人は誰だって自分の人生の意味を求め、何かの主役でありたいと思っている。
ゲームでの主役達は、作られたものだとしてもそれが保証され、そしてそれに相応しいような人々が憧れる物語のような日々を送れるが、端役やモブ達は逆にその人生に何の意味がないことを証明され、画面の端で主人公を彩る飾りとして、かませとして踏み台にされたり、血涙を流しながらハーレムを眺めたり、雑兵として雑に殺されるなど、ゴミのように消費される日々を送ることになる。
自分がそんな存在であると誰だって知りたくないはずだ。
前世がモブであり、今世はかませに転生した俺がそう思うのだから間違いない。
そう思った俺が、結果的に言ったのは、無難な一言だった。
「俺のヒロインに相応しくない……好みのタイプじゃなかった」
「あちこち告白するような奴の言葉じゃないんだが!?」
「フレイに好みのタイプなんてものが存在するなんて……明日はもしかしたら槍が降ってくるかも知れない……!」
「お前ら、俺のこと何だと思ってるんだ!」
「「色々とこじらせたまくった、恋愛モンスター」」
「く……! 正当な評価ありがとうよ!」
前世の俺のこと何もしらないはずなのに、それを含めて正確な俺の分析をしてきた友人の言葉に俺は顔を引き攣らせて思わず答えた。
「はぁ、学園にいるのに彼女と過ごさず、こんな所で友人とだべってるなんて、なんでこんなことになってるんだろうか……」
まるで前世の俺のようだ。
今世では必ず素敵な彼女を作ると意気込んでいたのに現実は厳しい。
「そりゃ、お前がそんなんだからじゃねーの?」
「非モテは結局は非モテだと言うのか……?」
ベッグの辛辣な一言に思わずそんな弱気が口から出る。
だが、俺は直ぐにかぶり振ってそれを打ち消した。
「――否! 非モテだってモテ男になれる! 俺はそれを証明して見せる!」
「いや、お前はモテてないってわけじゃないと思うが……メイドとかなあ?」
そう同意を促すようにトートは見ると彼は頷いた。
「確かにね。モテてないってわけじゃないね」
「なになに! 俺に好意を持ってくれてるメイドがいるの!? 誰のメイドだ!? 其奴の名前を押してくれ! 調査するから!」
俺は思わぬ情報に嬉々としてそう聞くと、二人は顔を見合わせた。
「誰って、お前のメイドだよ」
「そうそう」
それを聞いた俺の気持ちが一気に萎えていく。
「なんだ来幸か。来幸はダメだ俺のヒロインにはならない」
「それはなんで?」
「……好みのタイプじゃないからだ」
「またそれかよ!」
俺の言葉にベッグがそう叫んだ。
そして呆れたように言う。
「そんなんだから、お前はこじらせてるって言われるんだよ。恋人求めてるくせに、恋人になれる奴を片っ端から否定してたら、マジで誰とも付き合えないだろ」
「こじらせてるって言ったのはお前らだけどな!」
そんなことを言われても、無理な相手から好かれたって、無理と答えるしか無いのが普通ではないだろうか。
攻略対象である以上、彼女達は俺の恋愛対象にはならないのだ。
ゲーム知識がある俺は彼女達以上に彼女達のことを知っている。
だからこそ、今の彼女達が言う好意なんてものが嘘っぱちであることは、俺がよく分かっている。
イベントで奪った恋心なんて、別のイベントで奪われるし、そもそも彼女達の運命の相手は、ゲームで描写された通りアレクだ。
ゲームであれほど幸せそうにアレクと愛し合った彼女達が、素知らぬ顔で俺と愛し合うなんてことはあり得ないだろう。
そう、ヒロインを得ることが出来るのは、それに相応しい主人公だけなのだ。
そうではない俺では、俺に対するヒロインの心を留め続けておくことなんて出来はしない。
故に彼女達はいつか必ず俺を裏切る。
そのタイミングがアレクと出会った時か、別のイベントが発生して彼女達が誰かに救われた時かは知らないが、俺を裏切る以上は俺だけのヒロインにはなり得ない。
「なあ、もういっそのこと、お前のメイド相手に一発やったらどうだ? そうすればお前も、そのよく分からない拘りを捨てて、幸せになれるだろう?」
「一発って何をだよ」
ベッグの言葉の意図が分からずに俺は思わず言い返す。
来幸相手に何をすれば良いと言うのか。
「そりゃ、お前、性交だよ。あのメイドもお前相手なら嫌がらないだろ」
「は? はああああ!? 何を言ってるんだよ!」
俺はベッグから飛び出してきたとんでもない言葉に思わずそう叫んだ。
そして思わず言い返す。
「おまっ! 俺達はまだ十二歳だぞ! まだまだ子供じゃねーか!」
「だからやることやって大人になるんだろ? さすがにこの年齢でやってる奴は少ないが、それでも婚約じゃなくてちゃんと婚姻した家では、このくらいの年齢でもやってる奴はいるし、俺達はしないけど貴族の嫡子の中には、異性に興味が出てきた俺達くらいの年代で、平民を使い捨てにしてそう言うことをやる奴はいるって話だぜ」
ベッグのその言葉にトートは頷く。
「それに都会はともかく何も無い田舎の方だと、娯楽扱いで僕達くらいの年代からそう言うことしているって噂も聞くね。あくまで噂で僕が見た訳じゃ無いけど」
そんな二人の言葉を聞いて俺は思わず叫んだ。
「これだからクソ中世はっ!!」
確かに日本でも戦国時代とかでは前田利家が十二歳と結婚して子供作ってたり、外国の中世時代の田舎の方はそう言うノリだったってのは何かで見たことがあるが、そんな所までこのなんちゃって中世で再現しなくていいのではないかと思う。
まあ、性に寛容な方がエロゲらしいっていえば、エロゲらしい世界観なのかも知れないが、まともな倫理間を持つこっちとしたら偉い迷惑だ。
「ちゅ、ちゅうせい? いきなりどうした?」
俺の叫びにトートとベッグが意味が分からず首を傾げているが、俺はそれを無視して二人に言った。
「どちらにしろ俺はそんなことはやらん! 立場を使って無理矢理メイドとするとか、そんなのただのセクハラ、パワハラだろ!?」
「貴族が自分のメイドに手を出して妾にするとか割とありがちだけど」
「俺が嫌なの!? それに俺はシーザック家! 聖女の家系だ! そんな俺が不埒な真似なんて出来るか!!」
家系的には聖職者よりの家なのだ。
別に神に仕えて結婚しないとかそういうルールはないが、最低限の倫理感を守らないのは問題がある。
「ああ~。まあ、お前の場合は家の立場があるか。いずれ何処かに入り婿することになるだろうしな」
ベッグが納得したようにそう言い、トートが頷く。
「それにそんな爛れた関係を持ったら、俺は理想のヒロインとのボーイミーツガールの青春の日々を気持ちよく送れないからな!」
「結局そこに戻るんだね……」
俺の態度に諦めたようにトートが言った。
「だからこそ、ユーナ王女を是が非でも婚約者にしたい! お前達、何かその為のいい手は思いつかないか!?」
俺の助けを求めるような言葉に二人は顔を見合わせる。
ユーナには俺と婚約することを既に断られてはいるが、婚約自体は個人の感情だけではどうにもならないところもあるので、まだ完全に振られたという訳ではない。
むしろ、会場を追い出された時の表情を見れば、少なからず脈はありそうな感じだったので、諦めるのはまだ早いのではないかと俺は考えていた。
何より、前世とは違って今世では、理想のヒロインを得るために、直ぐに諦めるようなことはせずに、モテ男達のようにガンガン行くと決めている。
だからこそ、ユーナを婚約者にするための情報を二人に求めた。
このナルル学園での出来事はゲームでは設定だけで描写されていないことだ。
故に、俺のゲーム知識が完全には通じず、ユーナを落とす為の行動に限界が発生していたため、この世界の貴族事情にも詳しい友人を頼ったのだ。
俺も一応は貴族だが、魔力回路がダメで入り婿前提だったせいで、社交界にもまるで呼ばれずにその辺の事情には疎いからな。
こう言うときはそう言ったことに詳しい相手に頼るに限る。
気にせずに自分の知識が通じるルーレリア学園入学まで待てばいいじゃないかと思うかも知れないが、既に俺の行動によって数々のバタフライエフェクトが発生してしまっているため、攻略対象などのメインキャラクターの行動はともかく、どちらかと言えば背景設定用のモブに近いサブキャラクターの婚約関係くらいは、ゲーム時代と何らかの変化が発生してしまう可能性は捨てきれない。
だからこそ、ユーナ王女に婚約者が出来る前に動かなくてはならないのだ。
「う~ん。それなら生徒会に入ったらどうかな?」
「生徒会か……ありかもな」
トートの言葉に俺はそう呟いた。
生徒会――学園物で必ず存在する、何故か学園を運営している者達よりも、強い権力を持っているという、生徒達による超組織。
それはゲームでのルーレリア学園にも存在し、そしてこのナルル学園でも同様にあり、王族は必ず参加することになっているものだった。
「ああ、そう言えば、これは噂なんだが、ユーナ王女は毎日夜遅くに人気のない第三訓練場で人知れず魔法の鍛錬をしてるって聞いたことがあるぜ」
「マ?」
あまりに有用な情報に俺が思わずそんな風に返すとベッグは肩を竦める。
「あくまで噂だけどな」
「いや、それでも充分だ! やはり持つべきものは友だな!」
そう言って俺は二人の友人を称えた。
それに二人は恥ずかしそうに苦笑する。
「全く、調子が良いんだから」
「だな」
そう言って和気藹々と話す俺達。
そんな俺達に後ろから誰かが声を掛けてきた。