エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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vsディノス

 

 モーリス司祭と約束を取り付けた俺は、メイド達にレシリアの部屋で今日は寝るとだだをこねて、何とかレシリアの部屋に潜むことに成功していた。

 

 メイド達は新しく生まれた妹と一緒に居たいのね、と微笑ましいものを見るような顔をしていたが、俺にはそんな余裕はない。

 こっそりと自分でも扱える大きさの短剣を用意し、物陰に隠れる。

 

 びびりなディノスは大人がいる場所へはリスクを考えて出てこないが、子供である俺がいるだけなら、気にせず出てくるだろうと俺は踏んでいた。

 

 そして、その狙いは当たる。

 空間が湾曲し、その中から一人の神経質そうな男が現れた。

 間違いない、魔族であるディノスだ。

 

「これが新しく生まれた聖女ですか……。ここで殺しておいた方がよさそうですねぇ……」

 

 そう言ってレシリアに魔術を放とうとしたディノスへと俺は突撃した。

 だが、それは魔術の発動を止めたディノスにやすやすと止められる。

 

「これはこれは可愛らしい子供がナイトの真似事ですかね」

 

 そう言ってにやにやと笑うディノス。

 

「妹に手を出すな!」

「ククク、立派なお兄様ですねぇ」

 

 そう言うとディノスは俺の腹を蹴飛ばす。

 俺はそれによって吹き飛ばされ、お腹を押さえて思わず呻いた。

 

「ぐぁ……」

「覚悟が立派ですが、貴方では私に傷一つ付けることはできませんよ」

「まだ……まだだ……」

 

 そう言って俺は立ちあがる。

 ディノスの目が嗜虐の気持ちで彩られた。

 

「いいですねぇ……。何処までできるか試してみましょうか!」

 

 そう言ってディノスは剣を取り出すと、俺を斬り付ける。

 

「うぁああああ!」

「もっと! もっと! 泣いてくださいよ!」

 

 何度も何度もディノスに痛めつけられる中で、俺は思った。

 これでいい、注意を俺に引きつければ、時間を稼げる。

 そして時間を掛ければ掛けるほど、俺の仕掛けは完成する。

 

「……おかしいですねぇ」

 

 ふと何かに気付いたようにディノスがそう言った。

 

「いくら何でも頑丈過ぎませんか? 子供のくせに……貴方、何かしてますね?」

 

 びびりであるが故に自分の危機に敏感なディノス。

 それが仕掛けに気付いたことに気づき、俺はにやりと笑い顔を上げた。

 

「今更、遅い! ファイアアロー!」

 

 それと同時に俺は炎の矢を放つ。

 それは子供が出した思えない威力で、ディノスは焦りながらもそれを転移の力を利用して消し飛ばそうし……。

 

「な!? 転移が発動出来ない……! ぐぁ!」

 

 炎の矢が直撃し、大きなダメージを受ける。

 思わず地面に膝を突きながら、ディノスが言った。

 

「どうして転移が……いや、そもそもこの威力は……」

 

 そう言って周りを見渡すディノス。

 そして彼は気付いた。

 

「これは……! 周囲に誰かの魔力が満ちている。貴様……! 自分の魔力回路を暴発させているのか……!」

「そうだ。これでお前は転移はできない!」

 

 俺は前世の記憶を持ち、子供の頃から活動できた。

 だが、だからといって、大人でも苦戦するような相手に、六年間という短い期間で、たどり着けるとは決して思っていなかった。

 

 そんな俺でも一時的にディノスを足止めする位の力を出す方法はある。

 それは自分の将来を犠牲にすることだ。

 

 作中人物には、火事場の馬鹿力とか、最後の灯火だとか言われる現象。

 これは所謂『もうこれで終わってもいい……だからありったけを』的な技であり、作中では各脇役キャラの死亡間際の見せ場として、敵と相打ちになるときなどに使用されていたものだ。

 

 作中世界観ではその現象の詳細は不明となっているが、インフィニット・ワンの設定資料集では、魔法などで使用する魔力を扱うための経路である魔力回路を自ら燃やし尽くすことで、本来得られるはずもない強大な魔力を一時的に得ることができると記載されていた為に、俺はこうして使用することができた。

 

 これを使用したら、俺は魔法を満足に扱えなくなることは分かっていたが、それでもここでディノスを倒す為にはこの力が必要だった。

 

 何故なら転移魔法のような緻密な魔法は、他者の魔力が周囲に満ちていると発動させることができなくなるからだ。

 結界などはこの現象を応用して、対象を中に閉じ込めるが、結界魔法を扱えなくても、こうやって魔力回路を燃やし尽くせば、一部屋くらいなら、転移を妨害するくらいの量の魔力を揃えることは可能だ。

 

 ディノスにして見れば想像もしていなかっただろう。

 自分を捕らえることができる結界魔法を覚える聖女を殺しに来たら、そこにいた子供が魔力回路を暴走させて、相打ち覚悟で自分を殺しに来たなどと。

 

「ガキが……! 調子に乗ってるんじゃありませんよ! シャドウサイズ!」

 

 口調が悪くなったディノスが魔法を放つ。

 俺はそれを飛び退いて避け、再びファイアアローを放つ。

 

「っち! クソガキが!」

 

 ディノスと俺が互いに魔法を打ち合う。

 時折接近戦が発生するが、魔力で身体能力を強化しているため、何とか打ち負けること無く戦えている。

 

「ならこれでどうです!」

「……!」

 

 そう言ってディノスはレシリアに向かって魔法を放った。

 俺はその前に立ってその魔法を別の魔法で相殺する。

 

「ははは! 魔力回路の暴走は長くは持たないでしょう! このまま嬲り殺しにしてやりますよ!」

 

 俺はその場で釘付けにされ、ひたすら防戦一方となっていた。

 

 分かっていたことだ。

 こちらには守らなきゃならない相手がいて、そして戦える時間の制限がある。

 だとするなら、こうして護衛対象を狙った方が速いということは。

 

 ――だからこそ、俺も準備をしていた!

 

「フレイ!」

 

 そう言って扉を開けたのはジークだ。

 その側にはモーリス司祭と、何故かセレスやリノアの姿があった。

 

 俺は彼らに向けて簡潔に状況を説明する。

 

「魔族! 転移する! 部屋を閉めて!」

「フレイ、お前……」

 

 その言葉だけで、周囲に満ちる魔力に気付いたジークは、悲痛そうな顔をしながらもディノスへと向かって行く。

 

「Sランク……!」

 

 ディノスがそれを見て呻くような声を上げた。

 ディノスは能力が厄介なタイプで、強さ的にはそこまで強い方ではない。

 

「ぐぁ……! クソ!」

 

 片腕を切られながらも、ディノスは壁へと向かった。

 部屋を壊して転移をするつもりなのだ。

 

「させません!」

「うちの子に……! 何してるのよ!!」

 

 だが、それをモーリス司祭とリノアの二人の神聖魔法使いが封じる。

 

「ぎあぁあああああ」

 

 壁に付与された聖属性で焼かれたディノスは、自らの死を悟った。

 そしてその目をレシリアと俺に向ける。

 

「せめて! お前達だけでもぉおお!!」

 

 ジークに斬り付けられたことすら無視して俺達に向かってくるディノス。

 俺は短剣を構えて、レシリアを守るようにそれを迎え撃った。

 

「もとよりお前は俺が倒すつもりだ! フォトンソード!」

「ぐあぁあああああ。こ、こんなガキにぃいいいい!!!」

 

 奴に突き刺さった剣が、光の剣を発生させ、奴を真っ二つにする。

 奴は断末魔の声を上げながら消え去り、そこには一つの魔道具が残された。

 

「や、やった……倒した……」

 

 俺はそれだけ言うと、魔力回路を暴走させた反動で意識を失った。

 

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