エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
食事を終え、立ち去っていたフレイとエルザを見送ったベッグは、その場で弁当箱を片付けながら、同じようにしていたトートに声を掛けた。
「なあ、トート。ぶっちゃけフレイの夢、叶うと思うか?」
その言葉にトートは先程までのエルザの態度を思い出しながら言う。
「無理じゃないかな? フレイが来幸っていうメイドの名前を出したときのエルザ様のあの態度……正直殺されるかと思ったよ」
「メイドに対する殺意が溢れ出てたよな。アレを無視できるんだから、フレイはある意味大物だよな~」
そこまでベッグが言った所で思い出すように言う。
「俺はそのメイド当人にも会ったことがあるけど、あっちも似たようなものだったよ。何と言うか愛が重いというか、病んでるというか……。どうやったらあんな状態になるんだろうな……」
ベッグは思わずそう苦笑いした。
それを聞いて思わずトートが言う。
「二人のどっちかにしとけばいいのにね。そうすればきっとフレイを愛して、フレイが望むヒロインを演じてくれると思うのに」
「なんかよくわかんない理由でそれを拒絶してるからな~。自分を好きな奴を片っ端から振って、その上でヒロインが欲しい~って他の女に粉をかけ続けるとか、彼奴いつか刺されるんじゃね?」
「そのヒロインを見つけるという目的も、候補となる人間が現れた所で、あの二人が相手を排除するだろうから、確実に叶わないのがなんともね」
完全に詰んでいる友人の状況を思って思わず二人はため息を吐く。
フレイ自身は相手をしっかりと振っているから関係ないと思っているのかも知れないが、愛というのはそんなに簡単に終わらせられるようなものじゃない。
身を焦がす情熱を無理矢理消すことは出来ず、むしろそうやって水を掛ければ掛けるほど、油を掛けるように歪に燃え上がる。
その結果があの二人なのだろうとトートとベッグは思った。
そして燃え上がった情熱はフレイの周囲に向く。
来幸とエルザ、二人にとっては自分以外の相手をヒロインにして、フレイが目的を叶えて幸せになるなんてことは絶対に許せないはずだ。
だからこそ、そんなことになる前に暗躍して其奴らを潰すし、もしそれが実現したらどうなるのか分からない。
実際にフレイを良いなと思った下級貴族の女子が、次の日から突然フレイのことなんて何も思っていないと洗脳されたかのように態度を変えたり、フレイに婚約を申し込んでいた幾つかの家が、圧力でそれを取り下げられたりしたという噂をトートとベッグは少なからず耳にしていた。
「良い奴なんだけどね~」
「ああ」
フレイは自分達の友人になるのが勿体ないほどの凄い奴だと二人は思っていた。
魔力回路が壊れているため、魔法関係の成績は圧倒的に悪いものの、それ以外の成績は常に学年トップを取っており、細かい所に気が利いて、困っている人を放っておけない性格のため、多くの人がフレイによって助けられている。
何だかんだ、どんな相手だろうと分け隔て無く話してくれるし、どんな下らないことだって真剣に聞いてくれるし、話もそこそこ面白い。
そんな完璧な人間。
それこそ既に豊富な人生経験がある――二度目の人生なんじゃないかと、ふとそんなあり得ないことが思いつくほどの超人だ。
フレイを知る誰もが言うだろう。
フレイは、とてもいい人で、そして凄い奴だと。
「でも、恋愛が関わると頭がおかしくなるんだよな……」
「だね……」
フレイの唯一の欠点。
それは恋愛になると頭がおかしくなることだ。
普段は、相手の気持ちもしっかりと察せるし、フォローとかも完璧にこなして見せるのに、恋愛要素が出てくるだけでその全てが出来なくなり、相手の気持ちを考えず、自分だけの都合を優先するクズのような行動を連発する。
本当にこれがあのフレイかと最初は目を疑ったくらいだ。
完璧超人の優等生が恋愛に関しては頭のおかしなクズになる。
まさに恋愛関係についてこじらせまくっているとしか言えない状況だ。
あれほどモテそうな奴が、何を如何したらあんなに恋愛について、こじらせまくった状態になってしまうのだろうと、二人に取っては不可解でならない。
「頭のおかしな麒麟児か……噂の通りというか女子は大変だね……」
「だな……」
そんなフレイの被害に遭うのが女子達だ。
そして普段のフレイが完璧超人なのがたちの悪さを際立たせている。
何でも出来てどんな話でも聞いてくれる王子様のような相手に、自分のことを何度も助けて貰ったら、惚れない女子なんてそうそうはいないだろう。
だが、その王子様は自分の事なんか恋愛対象として見てくれない。
何処かにいる――いや、そもそも存在してないかも知れない、ガラスの靴の持ち主を探し続け、王子様を好いている自分の前で、ヒロインを探しているのだと口走り、自分に何の価値もないと思い知らされる。
一体どれだけの女の子が草葉の陰で泣いたのだろうか。
女子側の情報に疎い、二人が知るだけでも、かなりの犠牲者が出ていた。
そんな状況だからフレイには気を付けろと、女子側では情報共有がなされているようだが、それでも犠牲者は後を絶たない。
それもそうだ。
誰かに恋をしてしまうと言う心は、理性ではダメだと分かっていても、止めようがないのだから。
「フレイ自身の行動も、クズいけど、悪って訳じゃ無いのがなんとも……」
「ああ、心折られる女子たちも付き合ってる訳じゃ無いからな……」
フレイが付き合っている女子が居るのに、今のような自分だけのヒロインを探す行動を取っていたら間違いなく悪だ。
それは確実に浮気という行為だし、付き合っている相手を蔑ろにしている。
しかし、フレイは今のところ誰とも付き合っておらず、断り方は思わずクズだと思ってしまうほど苛烈だが、告白してきた相手にはちゃんと断りを入れている。
その点を考えれば、フレイ自身に悪いところはないと言えるだろう。
状況としては、フレイが落とそうと思った相手ではない女子が、フレイの行動で勝手に惚れてしまい、そしてその後に心折られて酷い目に合っているだけだ。
その責任をフレイが持て……というのは、幾ら何でも暴論だと二人は思うのだ。
「まあ、僕達男子にはあまり関係の無い話だけど」
「まあな」
女子に取っては釣り上げた上で、心をへし折って雑にリリースする悪魔のような男だが、男子に取ってはそんな所もない最高の友人だ。
その為に男子の中ではフレイの人気は高い。
「まあ、俺達は見守るしかないだろ」
「そうだね」
そう言って弁当を片付けた二人は立ち上げた。
「そう言えばあの二人も犠牲者なのかな」
「そりゃそうだろう。あんなになるまで惚れてるんだから」
ふと呟いたトートの一言にベッグが答える。
あんなになるまで恋心を募らせたのだ。
きっとそれだけのことをフレイがしたのだと思うし、同時にそれだけの振り方をフレイがしたのだと思う。
そう考えると――。
「まあ、自業自得かな」
「だな」
フレイの行いに悪はない。
だが、それはそれとして、キャッチアンドリリースして、女子を病ませ続けてきたのは、フレイの行動の結果だ。
その状態に責任がないのだとしても、自分が引き起こした結果は、甘んじて受けなければならないのではないかと二人は思う。
だからこそ、きっとこの状況は自業自得なのだろうと二人は考えていた。
「何と言うか、ご愁傷様」
「なむなむ」
二人は友人であるフレイの冥福を祈りながら教室へと向かった。
地味にハイスペックだったフレイ。
これは、聖女の血統であるフレイの体が優秀だと言うこともありますが、前世でフレイがモテる為に、勉学や運動、話術の研鑽など、頑張って鍛え上げてきたものが活きている感じです。
それなら、前世でモテていたんじゃないのと思うかもしれませんが、本編の何処かでフレイが言ったように、ゲームのように学力が一定以上になったら攻略可能のフラグが立って、以降は好感度が上がるというような、頑張ってスペックを上げれば恋人が出来る、なんてことは現実ではなく、現実では個人のスペックは、人によって許容範囲に差がある足切り要素で主に使われるものなので、モテるということには繋がらなかった感じです。
また、話術に関しても、会話のテクニックだけではなく、相手を飽きさせないような話の種の多さや、現在の流行を追い続けられるセンスとか、集団の中の立ち位置に合わせて空気を読んで立ち回ったり、気の乗らない話でも「それなー」と相づちを打ったりなど、会話を面白くするだけのテクニックじゃどうしようもないことも多いので、結局は覚えた技術も無駄になってしまったという感じですね。
そんな感じで前世の世界ではあまり評価されませんでしたが、今世でなぜ評価されているかというと、単純に世界情勢の違いです。
この世界では、魔物がいて強さが必要だったり、機械文明が発展していなくて、誰でも同じことが出来ると言うのは少なく、個人の才覚で仕事などの出来が大きく変わるなど、どんな物事も、その個人の能力に影響される状況になっています。
そのため、前世ではあまり評価にならなかった、頭の良さとか、運動神経の良さとか、純粋にスペックが高いというのが、こちらではかなりのプラスポイントになるわけですね。
加えてネットがないこの世界では流行の変わりも遅く、全体的に話の種も少ないため、同じ話でもどれだけ面白く出来るかが重要になって来るので、そこで鍛えあげた話術が生きてきている感じです。
集団の中の立ち位置もリア充がカーストトップになる前世と違い、こっちはどんな人物とか関係無く、家格で全てが決まるゴリゴリの貴族カーストなので、最上位側の家格のフレイには特に関係がない感じです。
そんなこんなが、トートやベッグのような周囲のフレイへの高評価へと繋がっている感じです。