エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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ハッピーエンド至上主義

 

 そんなレシリアバットエンドルートの事を思い出しながら俺は思わず言った。

 

「いや、あのルートはほんとドン引きだったな……」

 

 最強ボスがいると聞いて倒しに言ったら、負けて強制的にそのイベントを見ることになった俺は、その内容の余りのひどさにメンタルをやられ、それ以降は自発的にバットエンドルートを収集することはなく、攻略サイトで「これいいよ」と書かれているものだけを、警戒しながら確認するだけというような状況になったのだ。

 

「ヒロインは救われるべきだ」

 

 俺だって曇ったヒロインが嫌いというわけじゃない。

 うたわれる○のの曇ったネコネは大好きだったし、優等生を拗らせて暴走するウィク○スのちーちゃんとかは、共感を感じるものもあり、その行く末と行動をハラハラしながら見守ったものだ。

 でも、曇ったヒロインをそう言った気持ちで見ていられたのは、最後にはその曇った原因がなくなって、ヒロイン達が笑顔になれると信じていたからだ。

 

 やがて救われると分かっているからこそ、そこに到る過程でどれだけヒロインが酷い目に合ったとしても、それを楽しんで見守ることが出来る。

 

 それが創作を楽しむ人々の大概のスタンスだろう。

 

 乗り越える絶望が大きければ大きいほど、それが晴れた時のカタルシスも大きくなるからこそ、その物語を楽しんでいるのだ。

 

 言ってしまえば俺は、ハッピーエンド至上主義なのである。

 他の吹っ切れた性癖の方々ほどは、曇ったヒロインが曇ったままで終わるような、バットエンドを受け入れることが出来ないのだ。

 

 その観点で言えば、レシリアのバットエンドは最悪だった。

 あんなの、あの後、絶対にレシリアは救われない……確実に俺の許容範囲外だ。

 

 他の攻略対象のバットエンドルートは殆ど見ていないが、あのレシリアルートと同じように最悪な結末を迎えるものもあるかも知れない。

 そう考えれば攻略対象を助けないという選択肢はなくなる。

 

「インフィニット・ワンの世界だしな」

 

 ここがゲームの世界だからこそ、その思いを強く感じる。

 これが前世の頃だったら、俺は隣町の人物が不幸な目に合っていると何らかの手段で知ったとしても「ふーん」と一言だけで済ませてしまっただろう。

 なぜなら、俺はその人物のことを何も知らないから。

 

 大抵の人間は、知らない奴が何処でどんな目に合おうとも興味がない――いや、それどころか、そのニュースを話の種にするくらいはするだろう。

 現実における知り合ってもいない他者の扱いなどそんなものだ。

 

 その点を考えたら俺の行動はおかしなものになる。

 だって、この時点で俺は、助ける相手の攻略対象と知り合っていない。

 前世の価値基準なら全てが終わった後に「ふーん」と言って終わりだろう。

 

 だが、今は違う。

 俺がいるのはインフィニット・ワンが元となった世界だ。

 

 俺は知っている。

 攻略対象達がどんな人物でどうなっていくかを。

 攻略対象達がどれほど危険な状況にあるのかを。

 

 ――そして、攻略対象達がどんな思いで、恋人であるアレクやアリシアと共に、どれほど頑張って問題を乗り越えて愛し合い、幸せになったのかを知っている。

 

 基本的にゲームの攻略対象とは、プレイヤーに嫌悪感を持たれないために、誰からも好かれるようないい人としてデザインされている。

 

 全てを知り尽くした俺に取っては、あれだけいい人である攻略対象達が、バットエンドルートに入って悲惨な目に合うのはメンタル的に耐えられない。

 なぜなら、俺は、誰かが特定の行動を取れば、ヒロイン達は確実に救われて幸せになることが出来ると知っているから、それを実行しなかったことでヒロイン達がバットエンドに陥って、不遇な日々を過ごし続けることになってしまえば、それは俺がヒロイン達をその状況に追い込んでしまったと思ってしまうかも知れないからだ。

 

 俺は自分のことを良い人間だとは思っていない。

 猜疑心に塗れ、人を信じ切れず、最終的には自己の思いを優先する自己中で、自分と関係無ければ他者がどんな目に合っていようとも傍観できる――そんな物語の主役になることが出来ない、前世ではありふれていたごく普通のただの人間だ。

 そんな人間だからこそ、助けられると知っている相手を放置して、何事もなかったかのように過ごすことは出来ないのだ。

 

 だってそうだろう?

 

 線路に嵌まった人が助けを求めるように叫んでいて、自らの目の前に緊急停止ボタンがあったとして、俺には関係ないからと気にせずに見なかったことに出来る強い心の持ち主がどれだけいるだろうか。

 大抵の人間はここで押さなかったら、何かしらの罪に問われるかも知れないし、何よりもこの人が死んだのは自分のせいということになる――そう考えて、少なくとも行動したという結果を残すためにボタンを押すのではないだろうか。

 線路に嵌まった人がどう言う経緯でそうなったのかも、ボタンを押したことでその人が助かるかも関係無く、ただ自分が責任を負いたくないから、楽になりたいからと、誰かを救う行動をする、それが現実的な人間と言うものだ。

 

 物語の主人公のように自分すらも顧みない善意から助けに行ったわけじゃなく、自己保身から来る消極的な善意の感情で誰かを助ける――創作のようなご都合主義の綺麗な世界ではない、薄汚れた現実世界から来た転生者にお似合いの精神性だ。

 

 だからこそ、俺は行動する。

 善良な人間が幸せになれる方法があり、そしてその為の行動を俺が行えると言うのなら、自己保身から来る善意と、なけなしの良心を振り絞って、その相手を救うために行動を開始する。

 自分を顧みずに行動出来る本物である主人公(ヒーロー)には、決して勝てないような紛い物だったとしても、代役を果たすくらいのことは出来るのだ。

 

 それに――と同時に俺は思う。

 

 何より、ゲームならハッピーエンドで終えたいじゃないか。

 ハッピーエンドがそもそもないならともかく、ゲーム内で条件を満たせばトゥルーエンドとしてハッピーエンドを見ることが出来ると言うのなら、モヤモヤしたバットエンドやビターエンドで終わるよりも、誰もが幸せになれるかも知れない、そのトゥルーエンドを見ようと大抵の人間が努力するものじゃないだろうか。

 

 そう、ここがゲームを元にした世界だと言うのなら。

 ゲームがハッピーエンドで終わるように攻略対象達も救われるべきなのだ。

 

 だからこそ、こうやって攻略対象達の状況を調べ、彼らがイベントによって危機的状況に晒されていたら、それを救おうと思っているのだ。

 

 そしてその行動の為にはこの仮面が必要だ。

 

 攻略対象はイベントを攻略した相手に恋をしてしまう。

 来幸やエルザ、そしてクレアのように、それは既に実証された出来事だ。

 

 それは攻略対象を恋人にするつもりがない俺に取っては困った事態であり、そしてそんな相手を好きになってしまう攻略対象にとっても不幸な事態と言える。

 

 だからこそ、この仮面だ。

 こうやって仮面を付けて相手を救うことで、攻略対象達が恋する相手は、実在しない謎の存在である銀仮面になる。

 そうなれば、その相手に恋心を抱いたとしても、実在する人物ではなく、偶像的なヒーロー相手だから、やがてその恋心は風化する。

 仮に風化しなかったとしてもモテ男である他の者達なら、そんな相手であろうとも問題なく愛すことが出来るだろう。

 

 現実にだってアイドルが大好きだが彼氏がいる女性なんてごまんといる。

 

 俺的にはそんな二心を持った人物は、そのアイドルから好きと言われたら、簡単に寝取られそうだから、絶対に嫌で付き合いたくもない存在だが、真っ当に恋愛が出来るモテ男なら、そんなことを気にせずに広い度量で受け入れる事が出来るだろう。

 

 つまるところ、攻略対象達の本来の恋――アレクやアリシア達か、それ以外のイベントを起こした誰かと、恋をすることが出来ると言うというわけだ。

 

 エルザの時は失敗したが今度は失敗しない。

 

 俺はそう強く思って足を進める。

 

 エルザの時は、俺の存在がエルザに知られてしまったからこそ、最終的には俺に恋をすることになってしまったのだ。

 だからこそ、相手に知られないようにすると言うこの手は妙案とも言えた。

 

 実際にこれまで銀仮面としてかなりの人数を救ってきたが、学園生活などでその相手と接しても、俺に対する恋心を向けられるようなことはなかった。

 

 俺の思惑は完全に成功したのである。

 故に俺はこうやって気兼ねなく攻略対象を救いに行けるのだ。

 




 消極的な善意がわかりにくかったという方の為に例を上げると、目の前で突然苦しんで倒れた人がいたとき、周囲に他の人が居たら「大丈夫かな? まあ、だけど俺以外の誰かが助けに入るだろ」と状況を心配そうに伺いながらも、周囲の状況に関わらず助けに行く主人公気質の人達を横目にしながら、傍観者として通りすぎるけど、倒れた時に周りに自分しかいなかったら、「他に誰もいない? ってことは俺が助けないとこの人死んでしまう? やばいじゃん!」とその人の生死に責任が生じてしまっているため、自分が無視してその人が死んだと言う罪悪感等を抱えたくないという自己保身から、その人を助けに向かう感じの善意のことですね。

 攻略対象のピンチと救い方を知っているのは、ゲーム知識を保持している自分だけだとフレイは思っているので、その状況で攻略対象を放置すると言うことは、先の例での倒れた人の周囲に自分しかいないのに、無視して通り過ぎて、その人を死なせると言うのと同じ位の行いであり、そんなことをしたら罪悪感で耐えられないので、基本的に助けに行かないという選択肢がないという感じです。

 加えて今回の話では、攻略対象をゲームキャラの色眼鏡で見ていることによる良い影響が登場しました。
 ゲームの時と同じように見ているからこそ、ゲームの時のように攻略対象達には、ハッピーエンドで終わって欲しい、幸せでいて欲しいと思ってるわけですね。

 もっとも、どんな人間でもそうだと思いますが、「自分の幸せ > 他の人の幸せ」なので、攻略対象に幸せになって欲しいとは思うけど、自分が相手をする気はさらさらなく、アレクなどの他の男相手に幸せになってくださいというのがフレイの基本的なスタンスです。
 「他の人の幸せ > 自分の幸せ」に出来るのは、それこそ他者の為に全てを投げ出せる主人公だけの特権で、ただの転生者であるフレイにはそこまでの気概は持てないということです。

 そんなフレイに取っては、自分の目的である俺だけのヒロインを得る邪魔になることもなく、攻略対象を救える銀仮面活動は、まさに水を得た魚というようなものであり、様々な攻略対象を救っています。


 あと、無駄話ですが、ウィク○スのちーちゃんは良いですよね。
 こじらせてるものは、恋愛と優等生で違いますが、実はフレイ君の元ネタの一つとしても利用しています。
 すずという自分を思ってくれる相手や、周囲の人達がいい人でこじらせている思いを捨てれば直ぐ幸せになれるのに、捨てられずに暴れ回ってどんどんどつぼに嵌まっていったりとか、自分を慕ってくれているすずに対して、「私の中にね、いらないものがあるの。すず、あなたよ」とか言ったりするところとかが主な参考ポイントですね。
 それでもちーちゃんを諦めないすずとか、ウィク○スのロスト○イジは本当に良い作品でした。
 それだけに最新作がアイドルものになってしまったのは、正直言って残念で仕方がない感じです。

 あとアニメという面では、「アン○ュ・ヴィエルジュ」のアニメ版も、色々とこじらせてるキャラが多くてオススメですよ。

 こじらせたり、執着しているヒロインが出てくるもので良作は、割と百合系のものが多い気がしますが、やっぱりフレイのように異性間だとちょっと気持ち悪い感じになっちゃうからなんですかね
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