エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「おお、目を覚ましたぞ!」
俺が目を開けると、そこには至近距離でこちらを覗き込むように見ていた、セレスの顔があった。
ぼんやりとする頭で、俺はその顔を、メインキャラでも通じそうな美少女だな、と思って見ていた。
そうしているとセレスの言葉に気付いた他の者達がやってくる。
「フレイ、大丈夫!?」
「はい。大丈夫です。母様」
俺はそう言ってベットから起き上がった。
「フレイ、お前……最後の灯火を自ら使ったのか?」
険しい顔をしたジークがそう言う。
「はい。そうです。あの魔族に対抗する為にはそうするしかありませんでした」
「そんな……」
俺の言葉にリノアがそう言って泣き出してしまう。
そしてそれをジークが慰めていた。
この世界での貴族はより強い魔法使いになるために、強力な魔力回路を持つ貴族同士で婚姻し、より魔法に適性を持った子を産もうとするのだ。
それこそが、平民であるジークが、リノアの実家であるシーザック家から敬遠された理由でもあり、こうして最後の灯火によって、魔力回路がボロボロにされて、平民以下になってしまった俺の貴族としての未来は暗いものになってしまった。
もはや種馬としての価値しか……。
いや、遺伝には影響がなさそうに見えるけど、この世界の文明レベルだと子にも今の俺の魔力回路のダメさが遺伝すると思われてしまう可能性があるか。
どちらにしろ、俺は貴族としてかなり終わっている。
だが、それほど悲観してもいなかった。
学園に入る都合上、貴族には攻略対象が多い。
なら、いっその事、平民にでもなった方が、俺の為だけのヒロインを見つけやすくなるかも知れない。
「まあ、大丈夫ですよ。魔力回路が無くても生きていけますし」
「ほう、豪胆なことを言うのう」
その言葉に俺が視線を向けるとセレスがニヤニヤとしながら俺を見ていた。
俺はそれを見て頭の片隅で少し考える。
セレスは美少女だけど、モーリス司祭の娘。
モーリス司祭の娘はゲームに登場しなかったってことは、つまりセレスはインフィニット・ワンでのモブキャラってことか?
そこまで考えたところで思い直す。
まてまて、インフィニット・ワンは、DLCコンテンツでヒロインやヒーローをかなり追加していたし、そこで追加された人物かも知れない。でも死ぬ前に見た最新のダウンロードコンテンツの情報には、モーリス司祭の娘なんてワードなかったし、それに関係しそうなものもなかったよな……。
だとするなら、セレスは非攻略対象!
俺だけのヒロインになり得る存在か!?
そう思うと思わず気が引き締まる。
言葉を選びながら、彼女に答える。
「まあね。俺の人生の目的にも魔力回路は関係ありませんから」
「人生の目的とはのう。それはなんぞや?」
「それは父様が母様を見つけたように、俺だけのヒロインを見つけて、その相手と爽やかなボーイミーツガールの青春の日々を送ることです!」
「なんと!」
それを聞いたセレスは目を丸くし、ジークやリノア、モーリス司祭も驚いて絶句しているように見えるが、俺はここが押すべき正念場だと判断した。
何故なら、セレスは非攻略対象であり、俺と同年代に見える少女。
モーリス司祭の娘なら、エルフなどのような長寿で外見と年齢が合わないと言うこともないだろうし、見た目通りの年齢だと言うのなら、誰かと付き合うなどと言った色恋などは殆ど意識していない年齢のはずだ。
つまり、セレスはまだ誰のヒロインにもなっていない存在。
故にここで俺が彼女と付き合うことが出来れば、彼女はオレだけのヒロインになってくれる可能性が高いと俺は考えた。
出会ったばかりということもあり、俺とセレスはまだお互いのことを詳しく知らないが、この年齢なら交流を重ねていくことで、お互いのことを理解し、そして愛を深めていくことが出来る。
むしろ、彼女を俺だけのヒロインにすることを考えれば、他の男へと心変わりしないように、積極的に交流を重ねていくことが重要だ。
そう考えるとここは攻めるべきだと言える。
前世の頃は積極的に動かなかったことで恋人を作ることが出来なかった。
そもそも、俺みたいな非モテが、日常的な交流の中で、女性に惚れられるなんて言うことは、どだい無理な話だったのだ。
モテる人間なら何も意識せずとも女性が好意を持ってくれるが、そうでない存在などそこらに転がる石ころと同じでただの背景に過ぎない。
だからこそ、攻めることが必要になる。
俺が貴方に好意を持っているぞと言うことを、明確に相手に伝えることで、どんな感情であろうとも、相手にしっかりと俺の事を意識してもらい、そこから互いに興味を持ち、愛し合えるようにするための活動へと繋げて行くのだ。
「それで……セレス。良かったら俺と婚約とかどうかな?」
そう言って俺はいけている男のようにセレスに向かってウィンクする。
近くでモーリス司祭が思わず吹き出して倒れかかり、ジークやリノアが頭を抱えている気もするが、その全てを無視だ。
モーリス司祭の娘なら、階級的に俺との婚姻も問題ないはず。
なら大事なのはセレスの反応それだけ、セレスは唖然としていたが、しばらくすると事態を理解するように呟いた。
「それは我をヒロインにして、我とともに、ボーイミーツガールの青春の日々をおくりたいということか?」
「その通りです!」
そう言うとセレスは俯いてしまう。
失敗したか? そう俺が思っていると徐々に振るえていったセレスが、耐えきれないとばかりに大声を上げて笑い出した。
「ぷっくくく、はははははは~! まさか、我に対してそのようなことを言い出すとは! 一人で魔族に立ち向かった勇気といい! 其方は本当に面白いな!」
それを見て俺は内心にやりと笑う。
好感触、これは決まったのではないだろうか。
「しかし、我にも立場があるからのう。残念だが其方のその提案を受け入れることはできん」
「そ、そんな……」
あっさりと振られてしまい、俺は思わず落ち込む。
そんな俺を可哀想だと思ったのか、セレスが近づいてきた。
「それはそれとして、これだけのことをした者が、振られて終わるだけというのも忍びないのう。故に我から其方に褒美をやろう」
「褒美……?」
俺がセレスの方に顔を向けると、セレスは手で俺の顔を押さえた。
「な、なに――!?」
何をするんだ、そう言うとした俺の顔にセレスが顔を近づける。
そしてそのまま、セレスの口が俺の口とつながり、そしてセレスの舌が俺の口の中に入ってきて、俺の舌に絡みついてきた。
こ、これって……、お、大人の……!
「……!? ……!! ……!!!」
口の中を蹂躙され、なすがまま何も出来ずに狼狽える俺。
しばらくした後、満足したようにセレスは口を外した。
そこには俺の口から彼女の口へと銀の線のようなものが繋がっている。
「我の接吻じゃ。褒美には相応しいであろう」
ペロリとその銀の線を舐め取るとセレスはそう言った。
き、キスを俺が……キスを……。
あまりの事態に意識が遠くなる。
セレスの言葉が頭に入らない。
「もし、まだ我をヒロインにしたいというのなら――」
俺はそのまま意識を失った。