エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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師匠

 

「精か出ますねユーナ様」

「――っ!? フレイ様……」

 

 俺は魔法の訓練を続けていたユーナに話しかけた。

 俺が話しかけた事に驚いたユーナは魔法の発動を止めると振り向く。

 

「こんなに遅くまで、何故王女である貴方が魔法の訓練をしているのですか?」

「それは……クリスティアお姉様のお役に立ちたいんです」

「今でも十分に役に立っているのではないですか? 生徒会の仕事だってわざわざする必要はないでしょう?」

 

 学園に王族がいるのなら、一人は権威を維持するために生徒会に入る必要があるが、それはクリスティアとレディシアの二人がいることで、既に条件は満たされているため、ユーナまで生徒会に入って活動する必要はないのだ。

 それなのに、生徒会に入会しているのは、クリスティアのことを助けたいと思って行っていることなのだろう。

 例えそこで上手く活動することが出来ていなかったとしても、少なくとも人一人分が増えただけの活躍は出来てはいるはずだ。

 

「それでは足りないのです。だってわたしは――」

「貴方達の母親を殺してしまったから……ですか?」

「!? どうしてそれを……」

「クリスティア様に教えて貰いました」

 

 驚愕するユーナに端的にそう伝える。

 

「では、わたしがその……」

「魔族の力を持ってしまったことも知っています」

「そうですか……気持ち悪いですよね。わたし」

 

 気落ちしたように、自笑しながらそう言うユーナ。

 俺はそれに対して正直に感想を言う。

 

「いや、別にそうは思わないですよ? どんな力を持っていようと、所詮力はただの力です。俺だって、妹と俺を殺しに来た魔族の力である魔道具を、こうやって」

 

 そう言うと俺は転移をして移動する。

 

「使い倒しているわけですしね。結局の所、どんな力を持っているかより、それをどう扱うかが大切なんだと思います」

 

 俺はそう言ってユーナに笑顔を見せた。

 

 まあ、物語の世界じゃ、忌み嫌われる力や仇の力を宿した存在とかは、普通に出てきたりもするものだからな。

 それこそ、そう言った問題を持った攻略対象を――。

 

 そこまで考えた所で、俺は内心で考えを切り替える。

 

 ないない! 絶対にない!

 確かにそう言った問題を持った攻略対象を慰めて、そしてその問題を解決するために一緒に仇を討ったりするのは物語の王道だけど、ユーナは俺が前世で散々プレイしたインフィニット・ワンで非攻略対象だと証明された存在だから大丈夫!

 

 そりゃ、ゲームの世界なんだから、そう言った濃い背景を持った存在だって、ユーナだけじゃなくて他にも沢山いるだろう。

 それにユーナはモブじゃなくて、サブキャラだ。

 アマーリエとかセリーヌに色々とほの暗い設定が山盛りなように、クリスティアの物語を盛り上げるためにこう言った設定になっているのかも知れないしな!

 

 俺はそう思い直してユーナに向き直る。

 やはり、最終ダウンロードコンテンツまで、ユーナが攻略対象でなかったことを知っているのはでかい。

 こうして変な疑いを持ったとしても、歴とした証明がなされているから、悪い方向に思い続けてしまうこともないしな。

 

 もしかしたら俺が死んだ後にインフィニット・ワン2が発売されて、そこでヒロインになっているのかも知れないが、そんな俺が直接見てもいないような可能性だけの存在は、端から考慮していないので問題にもならない。

 なぜなら、俺が欲しいのは俺だけのヒロインを手に入れたという、前世の俺も含めて救われるような強烈な納得感だからだ。

 自分だけが納得出来ればいいのだから、俺の認知しない所で何が発売されていようとも、俺自身がそれを知らないのなら何の問題もない。

 それこそ、そんな所まで気にし始めたのなら、俺が知らない所で二次創作とかで何処かの誰かが書いているのも含めてアウトなのかっていう話にもなるからな。

 つまりは、インフィニット・ワンで攻略対象でないのなら、それで十分なのだ。

 

「そうですか……そう言われたのは初めてかも知れません。力は力だから使い倒せばいいなんてことは」

 

 そう言ってユーナは笑った。

 恐らくクリスティア達の立場としては、魔族の力を持つことを気にしないとは言っても、好きに使えば良いだろうとまでは言えなかったのだろう。

 自分から取り外せない力なら、下手にそれを気にしないと言うよりも、好きなように使えば良いじゃんと言う方が気が楽だと俺は思うがな。

 

「そうか? それは良かった」

「はい、ありがとうございます……」

「……」

 

 それにしてもここから如何すればいいのだろうか。

 これがイベントなら、最後にはユーナが救われて、ユーナと恋人になれるような明確な答えとなる回答があるが、非攻略対象であるユーナにはそんなものはない。

 だからこそ、ユーナが立ち直れるような完全な回答が分からない。

 

 でも、それが本来なら当たり前な事なのだ。

 この状況になって、本気でユーナを恋人にするための言葉を考えて、俺はそこで心の底から強い気持ちで実感する。

 

 これが、これこそが本当の恋愛なんだ!

 前世の頃から憧れ続けた、自らの手で恋人を勝ち取る為の行い!

 

 ――今、俺はユーナ王女をヒロインとして攻略している!

 

 このイベントは俺だけのものだ。

 今この瞬間、ここにいる俺だけが、他の誰もない、自分の意思で、自分の考えで、どれが正解かも分からない中で必死で行動し、ユーナを助けようとしている。

 多くの創作の主人公達が、現実のモテ男達が、立っていた領域――ボーイミーツガールと言えるような世界に、この俺も立つことが出来たのだ。

 

 そう思うと全身を多幸感が包み込むような気すらした。

 だが、そんな風に至福の時間に酔いしれている暇はない。

 

 ゲームと違ってリセットは出来ないのだ。

 本気で悩み、本気で考えて、ユーナの為になる最善の道を選ばないといけない。

 

 様々なギャルゲーやエロゲーをプレイしてきた俺からして見れば、恐らくユーナは誰かに必要とされたいのではないかと思う。

 母親を殺してしまった罪悪感から、償いとしてその罪悪感を消せるだけの貢献を、誰かに対して行いたいという感情だ。

 だからこそ、クリスティアの役に立とうと、こうも必死に訓練を重ねるなど努力をしているのだろう。

 

 ここでユーナが俺に取って必要な存在だと甘やかし、そしてその上で二人でクリスティアを支えていく形で、ユーナを落としていくことは不可能じゃないと思う。

 だけどそれよりも――。

 

「ユーナ様はクリスティア様の為に強くなりたいんですね?」

「はい、そうです。でも、どれだけ訓練しても上手くいかなくて……」

「では、俺が貴方の師になりましょう」

「フレイ様が……?」

 

 俺の提案にユーナは目を丸くしながらそう答えた。

 俺は追い打ちを掛けるようにユーナに自分をアピールする。

 

「俺は成績は学園で一番です。それに魔術回路こそダメですが、魔術に関する知識なら、そこらの者よりも優れていると自負しています。そんな俺が師となれば、ユーナ様を確実に強くすることが出来るとお約束出来ます」

 

 ユーナの師匠になること――それが俺の考えたユーナの攻略ルートだ。

 これは単純な所感だが、恐らく甘やかす方向で行ったら、ユーナとクリスティアは表面上では問題を解決出来るかも知れないが、根本的な部分に爆弾を抱えたままとなってしまうだろう。

 それこそ、繋ぎ役の俺が何かしらの問題でいなくなれば、また同様の懸念が発生して双方の絆に問題が起こる可能性がゼロではない。

 だからこそ、ユーナを強くする――そんな抜本的な改革が必要なのだ。

 

 さっき、威勢良くやれるだけのことはやるって言っちゃったしな。

 

 俺はそう考えてユーナとの返答を待つ。

 ユーナが自らの力で強く立ちあがり、俺が関わらない形でクリスティア達との問題を解決することこそが、彼女達に取って最良の方法だと俺は考えていた。

 俺はその過程で師弟物のストーリーのように、ユーナを強くする日々の中で、凄腕の師匠ポジとして、イチャイチャラブラブして、仲を深めて行けばいいのだ。

 

「その……いいのですか? フレイ様はお忙しいのでは?」

「それくらいの時間は確保出来ますよ。何よりユーナ様の為なら、時間をひねり出すくらい、何の問題もありません」

「どうして……どうして、そこまでしてくれるんですか? わたしと婚約したいから、そこまでするんですか?」

 

 ユーナはそう言って素直な疑問を俺にぶつけてきた。

 それに対して俺は思わず考える。

 

 ここで、「その通りです。貴方を俺だけのヒロインにしたいから、こうやって手を尽くしているんです」と言ってしまうのは簡単だ。

 だけど、今のタイミングだと好感度が足りなくてまた振られるかも知れないし、師匠になるというルート自体が潰されてしまう可能性がある。

 

 ギャルゲーやエロゲーをプレイしまくってきた歴戦の戦士である俺には、ここで正直に打ち明けた場合のリスクが目に見えて分かっていた。

 だからこそ、俺はユーナに向かって言う。

 

「それは、ユーナ様が俺の弟子として一人前になったら教えますよ。それまではただ俺のことを信じて付いてきてくれませんか?」

「……」

 

 俺の言葉に熟考するユーナ。

 やがて藁にも縋るように俺に対して言った。

 

「これまで一人で頑張って来ましたが、わたし一人では強くなることが出来ませんでした。フレイ様、どうか、わたしの師匠になってください!」

 

 き、来た~~~~~~~!!!!!!

 

「任せてください。貴方を今よりももっとずっと強くすると誓いましょう」

 

 俺は内心で歓喜しながらすまし顔でそう言った。

 そして、欲張って更に注文を付けてみる。

 

「それと、これからは俺のことは師匠と呼ぶように」

「それではわたしの事はユーナと呼び捨てにして、もっと気安い態度で話しかけて貰っていいです。わたしは教えて貰う立場なので」

「わかった。これからよろしくなユーナ」

 

 欲張って注文したらおまけを付けてくれたみたいな状況に、思わず自然と笑みが零れてしまう。

 弟子系ヒロインに師匠って言われるのも、自分より立場が上のヒロインに、敬語はやめてもいいですよと言われるのも、ある意味ではお約束というか、やってみたかったことの一つではある。

 

 そんな風にヒロインが出来たらやりたかったリストを埋めながら、俺はユーナの魔法の改善点を次々と説明していくのだった。

 

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