エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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ピンチ

 

 ユーナの師匠になった日から俺の忙しい日々が始まった。

 ナルル学園ではいつもの通り相談所として活躍し、午後はユーナの師匠として魔法も含めた様々な技術を教えながら、銀仮面として攻略対象を救う。

 そんな中で何時ものように、トートとベッグ達と話していると、彼らが最近あった情報としてとあるうわさ話をし始める。

 

「そう言えば、メジーナ先輩が生徒会を辞めたらしいぜ」

「はっ!? マジで!?」

 

 俺は来幸が作った弁当に向けた箸を止めて思わずそう言った。

 

 ちなみに今日はエルザの弁当を食べていないが、来幸に怒られたからエルザの弁当は食べられないと固辞したところ、「彼奴はアンタのお母さんか何かなの!?」と暴言を吐かれた上で、「別の方法を考える」と引き下がっていったため、あれ以来、エルザが弁当を持ってくると言う事態は発生していない。

 

「何で、生徒会の一人であるお前が驚いてるんだよ……」

「いや、最近忙しくて生徒会に行けてなくて、自由参加だから行かなくても別にいいわけだし……」

 

 ユーナと関係を持つという目的は果たせたので、俺に取って生徒会に行く意味は殆ど無くなってしまっていたのだ。

 最近の忙しさもあって、完全に後回しになって、生徒会に行かない日々が続いていたため、そんなイベントが起こっていたとは知るよしもなかった。

 

「で、どうして辞めたんだよ」

「何でも他にやることが出来たんだとさ。一応後任は見つけて引き継ぎもしてあるから、生徒会に迷惑を掛けるってことは無いらしい」

「へぇ~」

 

 ゲームではメジーナは生徒会メンバーだったから、一時的な生徒会からの離脱ということだろうか?

 何が理由かは分からないが、やりたいことがあるのなら、それはそれで頑張ればいいのではないかと思う。

 

「それにしても、他にやることって何だろうね」

 

 ベッグの言葉にトートがそんな疑問を投げかける。

 それに対して、「これも噂だが」と言いながら、ベッグが答えた。

 

「何でも銀仮面とかいうのを探しているらしいぜ」

「ごふぉっ!?」

 

 俺はその言葉に、思わず口に含んでいた茶を吹き出してしまった。

 

「うわ! きったねえな! 急にどうした!?」

「いや、いきなり変な言葉が聞こえた気がして……」

「銀仮面のこと? 確かに変な名前だよね」

 

 俺の言葉にトートが追従するようにそう言う。

 俺は気を取り直しながら、ベッグに聞いた。

 

「それで、その銀仮面とか言うのを探してるって、どういうことだよ?」

「何でもお礼が言いたいらしいな」

「お礼?」

「危ないところを救われたらしいぜ。噂だとその銀仮面に恋してしまって、それで今までのメジーナとしての立場の全てを捨てたんじゃないかって」

「はぁ? 救われただけでそんなことになるか? 立場を全て捨てるとか」

 

 ゲームではメジーナはアレクと共にそのままの路線で国に尽くしたはずだ。

 で、あるのなら、銀仮面の行動でそうなったとは言えないだろう。

 

 俺がそう考えて言うと、トートとベッグは俺を見てから顔を見合わせた。

 

「お前には理解出来ないだろうけど、そう言うこともあるだろ」

「うんうん」

「言葉に棘があるんだが……」

 

 俺はそう言いながら二人をジト目で見る。

 二人は話を逸らすように言った。

 

「実際にメジーナ先輩の姿が変わってるらしいんだよね」

「姿が変わってる?」

 

 どう言う意味だと問い返した俺の問いに、ベッグは胸の前で球体を描くように手を動かして、大きな胸を表現する。

 

「胸をさ、隠さなくなったんだよ。今までのメジーナ先輩って、メガネを付けた優等生という言葉が、そのまんま歩いているような見た目をしていただろう?」

「そうだな」

「うん」

「それが、魔法薬を使うことでメガネを外して、髪も三つ編みから変えて、ゆるふわロングになって、体型を隠さない服装で歩くようになったんだと」

 

 それって夢世界メジーナの姿ってことか? 

 

 魔法薬はこの世界でのコンタクトレンズみたいなもので、目薬のように目に刺せば一定時間裸眼でも目を見えるようにするもので、それ以外の変化についても夢世界でのメジーナの姿と一致していると俺は思った。

 

「女子がそんな風に姿を変えるの時は、大体恋をしてしまった時だろ? だから、メジーナ先輩は、その銀仮面とか言うのに恋したんじゃないかってわけ」

「へぇ~」

「そ、そうなんだ~」

 

 ま、まあ、イベントを攻略した銀仮面に惚れるのは分かっていたことだし、生徒会辞めてまで銀仮面探しをするのは予想外だったが、俺を銀仮面と突き止められる訳もないだろうし、問題はないだろう。

 

 いつか、その気持ちも風化するさ。

 俺はそう考えてお茶をすすった。

 

☆☆☆

 

 ベッグとトートとの会話を終えて歩いていると、前から歩いてくる人影が見えた。

 俺はそれを見て、それが誰なのかに気付く。

 

「メジーナ先輩?」

「貴方は……フレイ君ね?」

 

 メジーナも俺に気付いたのかこちらに向かって話しかけてきた。

 

「生徒会に入ったって聞いたわ」

「はい。まあ、忙しくてあまりいけてないですけどね」

「私は生徒会を抜けてしまったから、申し訳ないけど、貴方も出来る限り、クリスティアを支えて上げて欲しいわ」

「出来る限りの努力はします」

「お願いね」

 

 俺は短くそれだけ話してそのまま進もうとする。

 だが、隣を通り抜けた時、メジーナが後ろから話しかけてきた。

 

「ねえ」

「はい? どうかしましたか?」

「少し、臭いを嗅いでもいいかしら?」

「はい????」

 

 俺がメジーナの言葉に困惑していると、メジーナは俺に顔を近づけて、その臭いを何のためらいもなく嗅ぎ始めた。

 俺は思わず、そんなメジーナから飛び退いて距離を取る。

 

「ちょっ!? 何をするんですか!?」

「似てる……」

 

 メジーナは俺の言葉を無視してそう言うと、おもむろに懐から瓶詰めの何かを取り出して、瓶の蓋を開けるとその臭いを嗅ぎ始める。

 

「え~……」

「やっぱり似てる……」

 

 俺がドン引きする前で、瓶詰めの臭いを嗅いでいたメジーナは、再び俺の臭いを嗅ぎ始めようとした。

 

「な、何なんですか!? メジーナ先輩!」

「何って? 臭いを嗅いでるんだけど?」

「いや!? それは分かっていますけど!? そもそもその瓶は何ですか!?」

「これ? これはね。銀仮面様のマントの切れ端よ」

「切れ端!?」

 

 よくよく見てみると瓶の中には布の欠片が入っていた。

 メジーナ先輩はその瓶詰めの臭いを、まるで危ない薬でも嗅いでいるかのように、恍惚とした表情で堪能している。

 

「何でそんなものを!?」

「銀仮面様が残してくれたの。きっとこれは、これを使って銀仮面様を探せという事なんだと、私は理解したわ」

 

 完全な間違いなんですけど!?

 俺としても想定外で残してしまっただけなんですけど!?

 

「だから、こうして近い臭いの人の嗅ぎ分けで使用しているのだけど……やっぱり、貴方は似ている気がするわね……。もしかして銀仮面様じゃない?」

「いや、違いますけど?」

 

 俺は素知らぬ顔でそう答える。

 ここで銀仮面と気付かれる訳にはいかない。

 

 と言うか、臭いで判別とかなに!?

 マジで怖いんですけど!?

 何で俺を特定しそうになってんだよ!?

 

「もっとよく嗅いでみてくださいよ」

「そう。じゃあ、失礼して……」

 

 俺は疑いを晴らすためにあえてメジーナ先輩に臭いを嗅がせた。

 しばらく臭いを嗅いでいたメジーナ先輩は、俺の臭いと瓶詰めの臭いを、何度か臭いを嗅ぎ比べると首を傾げた。

 

「なんだろう? 少し違う?」

「そうでしょう? そもそも臭いなんて似てる人なんて幾らでもいるでしょうし、その日の体調や湿度でも変わるものでしょうから、嗅ぎ分けて特定するなんて無理なことだと俺は思いますよ」

 

 俺は緊張からバグバグと言う心臓の音を聞かれないようにそう強がって見せた。

 俺の発言を聞いたメジーナ先輩は落ち込んだような表情をする。

 

「そう、なのかしらね……。悪いことをしたわね、フレイ君」

「いえ、別に気にしていないから大丈夫です」

 

 俺はそれだけ言ってメジーナから離れた。

 そしてメジーナが見えなくなった所で、思わず小声で叫ぶ。

 

「あっぶね~! 普段は香水付けてて良かった~!!」

 

 へなへなと安堵で俺はその場に座り込んだ。

 銀仮面の時は特に何も付けていないが、フレイとして活動している普段は、女子から臭いと言われない為に、臭いの強くない香水を付けていたのだ。

 それがあったからこそ、あえてメジーナ先輩に臭いを嗅がせて、俺が銀仮面であるという疑いを晴らさせたのだ。

 

「しかし、臭いで相手を特定しようとするまで惚れるなんて、やっぱりイベントの効果というのは恐ろしいものだな……銀仮面として活動しておいて本当によかった」

 

 俺は心の底からそう思うと歩き始めた。

 メジーナの方に注意が向いていた俺は、周囲の警戒が疎かになり、曲がり角で走って来た相手と思わずぶつかってしまった。

 

「きゃっ!」

「あ、ごめん」

 

 俺は直ぐにその相手に謝る。

 その相手は俺にぶつかった後、それほど強い勢いでぶつかった訳でもないと思うのに、何故か吹き飛ばされていて、尻餅を付くように倒れていた。

 俺は助け起こそうとその相手に目を向けて、そこでその相手に気付き、白けた目つきでその相手に向かって言う。

 

「パンツ見えてるぞ、エルザ」

「見せてんのよ」

 

 そこにはわざとらしくスカートをめくり上がらせて、明らかに見せるために履いてきたと思われる色っぽい黒いパンツを俺に対して見せびらかしながら、顔を恥ずかしそうに赤らめながら言う、当たり屋であるエルザの姿があった。

 

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