エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
ああ、お兄様に抱きついていると、お兄様の魔力で包まれたあの時の事を思いだして、お兄様を愛している気持ちが高ぶって興奮してしまう……。
わたしはそんな事を思いながら、興奮しすぎて腰が抜けてしまったことを誤魔化して、お兄様の膝の上で座り続けることで、お兄様を全身で堪能していた。
最初に包まれた時に久しぶりだったのもあって、ちょっとイってしまったが、お兄様には気付かれていないようだから何の問題はない。
あの邪魔者を追い出して、最近の近況についても、滞りなく全てを聞き出せたし、わたしとしては上々の成果と言える。
「――だとさ、おしまい」
一禍ちゃんが持ってきた本を読み終わったお兄様がそう言う。
残念、もっと長い本なら、もっとお兄様を堪能できたのに、本当に一禍ちゃんは気が利かないな~。
わたしがそう言った目線で見てあげると、一禍ちゃんは明らかにイラッとした様子を、わたしだけに見せてきた。
そういう沸点が低いところがいけないんだよ~。
わたしはそう思いながら次はどうしようか考える。
このままお兄様に抱かれ続けてもいいけど、それだと同じ体勢でいる必要があるお兄様が少し辛そうだ。
出来る妹のわたしは、自分の事だけしか考えない一禍ちゃんや、エルザとか言うのと違い、ちゃんとお兄様に配慮することが出来るのだ。
「さて、次はどうする? レシリア」
優しいお兄様はわたしにそう聞いてきてくれる。
それが嬉しくて胸が温かい気持ちで一杯になる。
「じゃあ、これをやろ!」
わたしはそう言って元気がいい妹を演じながらあるものを取り出した。
それはいわゆるボードゲームというものだ。
「これは……へえ、人生ゲームみたいなものか、こっちにもあるんだな」
お兄様が小声で呟いたそれをわたしの盗聴魔術が聞き取る。
これでわたしはまた一つ前世のお兄様について詳しくなっちゃった!
思わず手に入れた情報に小躍りしたい気分だ。
「みんなで遊べるものなんだ!」
「みんなのことを考えるなんて、本当にレシリアは良い子だな」
お兄様はそう言ってわたしの頭を撫でてくれた。
わたしは折角なので、その時のわたしの表情を一禍ちゃんに見せてあげる。
「――っ!!!」
わたしの至福の表情を見て一禍ちゃんは憤怒の表情を取った。
そうだよね。いくら羨ましくても、敏腕メイドっていうポジションを取ることにした一禍ちゃんは、もう絶対に頭を撫でて貰えないもんね。
わたしは優越感に浸りながら怒れる一禍ちゃんを目にする。
こうして差があると、お兄様に一番近い存在が――、お兄様のヒロインに相応しいのが誰なのか――、一目瞭然になるからとても楽しい。
「四人ゲームなのか……。よし、来幸とミリーも、一緒に遊んでくれ」
「……わかりました」
「ミリーもですか? わかりました」
そう言って二人はボードゲームを囲うように座った。
「ミリーは勝負事では手を抜かないたちなので、来幸先輩であろうとも、フレイ様であろうとも、負けるつもりはありませんから!」
「いいぞ? ゲームはそうでなくっちゃ楽しくないからな! 身分を気にせず無礼講で互いに勝ちを目指そうじゃないか!」
楽しそうにミリーとか言うメイドとお兄様がそう言った。
一方で来幸は、あまり楽しそうじゃないし、やる気も感じられない。
明らかにわたしの提案で何かをするのが嫌って感じだ。
やれやれ、しょうがない。
ゲームを盛り上げるためにわたしが手を打とう。
わたしはそう考えると全員に向かって言った。
「それでお兄様! 一位を取った時の賞品は如何する?」
「賞品?」
「これを教えてくれた使用人の人が、友達とやるときは何かを賭けたり、賞品を付けたりして遊ぶものだって言ってたよ?」
わたしがそう言うとお兄様は思わず頭を抑えた。
「ギャンブルとしてゲームを使ってるのか……。まあ、息抜きは必要か……」
聡明なお兄様の事だから使用人の引き締めが必要な事態か考えたのだろう。
結局はそれほどのことではないと判断したようだった。
「でも、賞品と言われても急に思いつかないな」
お兄様が腕を組んで考えながらそう言う。
確かにいきなり言われたらぱっと出てこないだろう。
だからこそ、ここでわたしは提案する。
「じゃあ、お兄様とデートする権利を賞品にしよう!」
「は?」
唖然とした表情で一禍ちゃんがそう言った。
先程までの一禍ちゃんとお兄様の話は盗聴していた。
そして一禍ちゃんがメイドや協力者という立場を利用して、練習だからとお兄様を納得させて、お兄様の初めてのデートを横取りするつもりなのはわかっていた。
でもそのお兄様の練習相手役って――別に妹でも構わないはずだよね?
近しい人がデートの練習相手になると言うのなら、そこらにいるメイドではなく、血の繋がったわたしがやる方がよっぽど適しているはずだ。
何より、お兄様の初めてを一禍ちゃんに譲るつもりはない。
「ちょっと待った。デートが賞品と言われても困るんだが」
当然のように、勝手に賞品にされたお兄様が困惑の声を上げた。
だけど、わたしには、そんなお兄様を説得する準備は出来ている。
「デートって言っても、妹か専属メイドと街を回るだけだよ? それなら、何時もやってることと変わらないと、レシィは思う!」
お兄様は、どちらかというと理屈や根拠を大事にする合理的な性格で、親しい相手に対してはなんだかんだで甘いところがある人だ。
だからこそ、気乗りがしないことであっても、お兄様が絶対に嫌というもの以外は、こうやって理由をしっかりと用意してあげれば、一禍ちゃんが自分を恋愛の練習相手にするという立場を押し切ったように、その頼み事を押し切って無理矢理納得させることが出来るのだ。
普段は凜々しく、何でもかんでもきっぱりと判断するのに、こうやって押しに弱くて甘い、うぶで可愛らしいところがあるのも、お兄様の魅力の一つだよね!
「まあ、確かにそうか……。わかったよ。それでいいよ」
狙い通りお兄様は頷いていくれた。
だけど、分不相応にも、ミリーが嫌そうな顔をする。
「ええ……ミリーはそんなものいらないんですけど……」
「じゃあ、ミリーお姉さんが勝ったら、その権利をレシィに頂戴! 代わりにレシィがミリーお姉さんに何かプレゼントするよ!」
「まあ、それなら」
わたしはミリーを上手く丸め込む。
ほらほら、一禍ちゃん、これで二対一だよ。
状況を理解したのか、一禍ちゃんは焦り始めた。
「ちょっと待った。よくよく考えたら、それって俺が勝った場合はどうなるんだ?」
お兄様がそんな至極真っ当なことを言う。
だから、わたしは、わたしの為にさらに手を打つ。
「お兄様が勝ったら、一日レシィを好き放題してもいいよ?」
「いや、好き放題って……」
「肩たたきでも何でもするから!」
「ああ、なるほど、そういう感じか……わかったそれでいいよ」
これでお兄様も説得出来た。
お兄様を説得するために肩たたきと例を出したけど、一日好き放題にしていい権利は、本当にレシィを好き放題にして良いんだよ?
それこそ、二人っきりでベットの上で、お兄様に包まれて、きゃあ~~~!!
わたしがその時のことを妄想して至福な時を過ごしていると、一禍ちゃんが何かを言い出そうとしていた。
「私は……」
「ねえ、来幸お姉さんも、レシィに権利を譲ってくれる?」
わたしは一禍ちゃんの言葉を妨害し、先制攻撃を掛ける。
これで乗ってくれれば楽だけど……。
「いえ、普通に賞品を頂きます」
まあ、そう簡単には頷かないよね。
わたし、一禍ちゃんのそう言う、どれだけ哀れでも滑稽でも、お兄様を得ようとする気持ちを諦めないところ、結構好きだよ。
同じお兄様を追い求める者として好感が持てるからね。
むしろ、この程度で簡単に諦めてたら、お兄様に集る邪魔な虫として、さっさと処分しちゃうところだったよ。
お兄様に恋する価値もない奴は、妹がちゃんと処分しないといけないからね!
「それじゃあ、賞品も決まったことだし、始めるか。ええっと……まずはサイコロを振って順番を決めるのか」
「あ、ミリーが最初みたいですね」
サイコロを振った結果、ミリー、お兄様、一禍ちゃん、わたしの順番に決まった。
「じゃあ、振ります! 六ですね!」
そう言ってミリーは駒を六回進める。
「ええっと……炎属性の魔剣を手に入れるですか」
「なんか、幸先良さそうだな……次は俺だな……っと四だ」
お兄様は駒を四回進めた。
「なになに……神に見初められて加護を得るか……何か嫌だな」
「嫌なんですか? 特殊能力を得られるみたいですけど?」
「いや、ちょっとな……」
お兄様は何故か納得していない様子でそう呟く。
「では、私ですね」
そう言って一禍ちゃんがサイコロを振った。
わたしはその時にちょっとした風魔法を使って細工をする。
ほいっと。
わたしがサイコロを気付かれないように動かしたことで、サイコロはわたしの目的通りの目であった二になった。
「……二ですね。止まったマスは……『財布を道端に落とす、資産をマイナス五百する』ですか……」
「あっちゃ~。いきなりマイナスか」
「そう言うこともありますよ来幸先輩! まだゲームは始まったばかりです!」
「ええ、そうですね」
二人の言葉に平然とそう返しているが内心動揺しているのがわかる。
ごめんね。一禍ちゃん。
わたし、確かに一禍ちゃんの諦めない所は好きだけど、それでもお兄様の側には、一禍ちゃんみたいな人は相応しくないと思うんだ。
だって、お兄様の側にいるべき存在は、お兄様のヒロインになるべきなのは、妹であるわたし、ただ一人なんだから。
だから、ここでわたしが徹底的に叩き潰してあげるよ。
「じゃあ、いっくよ~!」
わたしは振ったサイコロに風魔法でイカサマをして六の数字を出させた。
天才であるわたしなら、誰にも気付かれないような、小さな風を操って出目を変えることくらい造作も無いんだ。
「やった! 炎属性の魔剣ゲット!」
焦りで歪む一禍ちゃんの顔を見て、わたしも内心で笑みを浮かべる。
どれだけ頑張っても無駄だよ?
一禍ちゃんはわたしには絶対勝てないんだから。
これで、お兄様の初めてのデートは、わたしのものだね!
☆☆☆
ゲームは進み最終局面まで来ていた。
これまでの順位は一位がわたし、二位がミリー、三位がお兄様、四位が一禍ちゃんとなっている。
「レシリアは次でもうゴールか……強いな……」
「そうですね。聖女には運が良くなる効果でもあるのかな?」
お兄様が感心したようにいい、ミリーがそう首を傾げて言う。
「……」
一方で一禍ちゃんは既に言葉もない状況だ。
まあ、それも仕方ないかな。
どう足掻いてもここから逆転は無理なのだから。
「――行きます」
意を決した一禍ちゃんはダイスを振るった。
わたしはそれを風魔法で操作する。
出目は一で決まり、わたしの勝利は確定した。
お兄様と何処に行こうかな~。
ショップで衣装の着せ替えをするのもいいし、王都の美味しいレストランとかで食事とか、最近出来たっていうアトラクションを見に行くのも――。
「出目は五ですね」
「え?」
わたしは一禍ちゃんが言ったその一言で、楽しい妄想から現実に引き戻される。
一禍ちゃんの手元にあるサイコロを見ると、確かに出目は五となっていた。
そんな、あり得ないよ!?
だって、わたしはちゃんと一にしたはずなのに!?
よくよく目をこらしてそのサイコロを見る。
すると、一瞬サイコロの黒い穴がブレたように見えた。
わたしがそれに気付いた瞬間、一禍ちゃんはサイコロを回収して、出目をわからなくすることで証拠を隠滅する。
こいつ――! 闇魔法で出目を変えたんだ!
「い――」
わたしはその事に気付いて思わず叫びそうになった。
だが、慌ててそれを取りやめた。
イカサマをしていたのはわたしも同じだ。
既にサイコロが回収されてしまっているから、先程見た黒い闇魔法によって穴を増やした事による出目の変更を、一禍ちゃんに問い詰めることも出来ない。
「それでは五マス進めますね」
わたしに見えるように、にやりと笑った一禍ちゃんは、わざとらしく、一つずつゆっくりとマス目を進めて行く。
その先にあるマスを見て、わたしの顔が真っ青なった。
「五マス目、マスの効果は――『大逆転! 一位の人と資産と位置を交換する』とのことみたいですよ? レシリア様?」
「あ、あ……」
「では、変えさせて頂きますね」
わたしの見る前で、わたしの駒と一禍ちゃんの駒が入れ替わる。
わたしは最下位に、そして一禍ちゃんは一位となって、ゴール直前に移動した。
こいつは! このタイミングを狙っていたんだ!
だからこそ、今までも闇魔法でイカサマ出来たのに、あえてそれを隠して、わたしの風魔法で、嬲られている振りをし続けていたんだ!
「レシリア。ショックなのはわかるが順番だぞ?」
「あ、はい。お兄様……」
わたしはサイコロを振るが何が出たところで何の意味もない。
その後も粛々とサイコロは振られ続け、そして一禍ちゃんの次のターンで。
「また五ですね。どちらにしろ、これで上がりです」
一禍ちゃんは満面の笑みでそれを宣言した。
そんな一禍ちゃんをお兄様とミリーが称える。
「いや~。見事な逆転だった!」
「さすが、来幸先輩ですね!」
「ありがとうございます」
二人の称賛に礼を言う一禍ちゃん。
そしてふと一禍ちゃんはこちらに目を向けると、頭を撫でられている時に、わたしが一禍ちゃんにしたように、わざとらしく至福の表情をわたしに向けてきた。
それを見ていたら目に涙が浮かび始めてきた。
あの称賛をお兄様から受けるのはわたしだったはずなのに!
お兄様のデートを勝ち取るのはわたしだったはずなのに!
あそこで勝ち誇っていたのはわたしだったはずなのに!
お兄様に愛されもしない女なんかに!
このわたしが――負けた!!
お兄様の初めてが奪われた!!!
それを実感すると涙が止まらないほどあふれ出してきた。
わたしはお兄様に頭から抱きついてその涙を隠す。
「うぇえええん! 来幸お姉さんにいじめられた~!!」
「いじめられたって……確かに酷い逆転のされ方だったけど、勝負は時の運っていうし、仕方のないことたぞ?」
「うわぁあああん!!」
「あー。よしよし」
お兄様は子供相手に理論的に説明してもしょうがないと思ったのか、泣いているわたしをただただあやしてくれる方向にシフトしていた。
わたしはお兄様に包まれて慰めながら決意する。
今日はずっとこのままお兄様に慰めて貰う!
そして明日からは絶対に一禍ちゃんなんかに負けない!
お兄様のヒロインになるのは何があろうともこのわたしなんだ!!
主人公の見知らぬ所でわからされる妹――まさしくエロゲですね。