エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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デート練習

 

 レシリアが泣き疲れて寝てしまった後、レシリアを別荘に新しく作ったレシリアの部屋に寝かせて、俺は自室へと戻っていた。

 

「来幸、ミリー。今日はレシリアに付き合ってくれてありがとうな」

「はい」

「フレイ様と違って、レシリア様は良い子だから、お礼を言う必要はないです」

 

 相変わらずなミリーの辛辣さに苦笑しながら俺は二人を下がらせた。

 ミリーはそのまま仕事を終えて自室へと戻ったが、来幸はその場に残って何かを言いたそうにしている。

 

「あの、フレイ様……賞品のデートの権利についてですが……」

「ああ、遊びの事とはいえ、約束はちゃんと守るよ」

 

 俺は来幸の疑問にそう答えた。

 来幸はそれを受けてほっとしたような表情をする。

 

「ま、例えレシリアが勝っていたとしても、来幸とデートに行っただろうけどな」

「――っ! それは――」

「来幸は大切な協力者だからな。練習するなら来幸との方が良い」

「……まったく、フレイ様は……そういう所ですよ?」

「? そういう所?」

 

 ただの事実を言っただけだと思うんだが……。

 何処に、そういう所ですよ、と言われる要素があった?

 

「もう、良いです。……デート楽しみにしています。プランはお任せしても?」

 

 仕方の無い人だと言うように微笑みながら来幸がそう言う。

 それに対して俺は胸を張った。

 

「俺に任せておけ! 最高のデートプランを用意して見せるよ!」

 

 俺は自信を持ってそう答えた。

 

☆☆☆

 

 デートの約束の日になった。

 私は今日の為に精一杯のおめかしをして、何時ものメイド服と違い、清楚なワンピース姿でフレイ様が来るのを待っていた。

 

「少し早く来すぎましたか……?」

 

 デートの状況を再現するために、同じ家に住んでいるが、今日は順番に家を出てくることにしていた。

 私が先に出て、待ち合わせ場所で待ち、そこにフレイ様が来る形だ。

 

 別に早く出ても意味がないのに、デートにワクワクしていた私は、予定よりも早く出て、待ち合わせ場所で待ってしまったのだ。

 

「ねえ、そこの君。もしかして一人?」

 

 しばらく待っているとチャラチャラとした男達が私に向かってやってきた。

 

「人を待っています」

「へぇ~。そうなんだ? じゃさ、待ち時間の間に俺達とどっかに行かない?」

「お断りします」

「そんなこと言わないでさ!」

 

 そう言ってその男達は私の腕を掴んできた。

 

「止めてください!」

 

 私はそう言ってその腕を引き剥がそうとする。

 その拍子に帽子が揺れ、私の髪の毛が晒されてしまった。

 

「なんだ。此奴忌み子じゃん!」

「じゃあ、わざわざ断りを入れる必要なんてないよな!」

 

 そう言って男達はニヤニヤと笑った。

 もういっそ、闇魔法で廃人にしてしまおうか。

 私がそう考えたその時、男達の後ろから声がかかった。

 

「おい、俺の連れに何してるんだ」

「あん? お前誰だよ? この忌み子の彼氏? 趣味わりーやつだな」

「まったくだぜ!」

 

 そう言って男達は笑う。

 フレイ様は、心底愚かなものを見たように、呆れてため息を一つ吐いた。

 

「そう思うなら勝手にしろ、行くぞ来幸」

「はい、フレイ様」

 

 フレイ様は男達を無視して進もうとする。

 それが気に入らなかったのか、男達はフレイ様に対して殴り掛かってきた。

 

「てめぇ! 無視するんじゃねえ!」

 

 フレイ様はそのパンチを躱すと、そのままカウンターを男の腹に叩き込んだ。

 

「がぁ!」

「兄貴! てめぇ!」

 

 男が痛みに呻いているのを見て、他の男達が殴り掛かるが、その全てをフレイ様が叩き潰して、地べたへと這いつくばらせた。

 

「悪口くらいなら気にしなかったが、手を出すのは一線を越えているな」

「て、てめぇ……」

 

 フレイ様は男達を冷たい目で見下ろしながらそう言う。

 

「俺は悪は許さないことにしているんだ。じゃないとこんな世界じゃ舐められることになるからな。まあ、それは抜きにしても――」

 

 そう言うとフレイ様はリーダー格の男を触った。

 

「良い気分で始まったお出かけを、最初の一歩で潰されて、ちょっとぶち切れてるんだ。だから、ゴミはゴミ箱に捨てさせて貰うな?」

 

 そう言うとフレイ様と男は消えて、直ぐにフレイ様だけが帰ってくる。

 それを見て、男の仲間達が叫んだ。

 

「あ、兄貴を何処にやった!?」

「言っただろう? ゴミ箱だよ。安心しろ、お前達も同じ所に送ってやる」

「ひぃ! や、やめろ~!!!」

 

 次々と消えていく男達。

 やがてその場には、フレイ様以外の存在がいなくなった。

 

「っと、待たせて悪かった来幸」

「いえ、フレイ様、ありがとうございます」

 

 私はフレイ様に恋愛小説のように助けて貰ったことで、喜びで思わず胸を躍らせながら、フレイ様にそうお礼を言う。

 

「あ、それ」

「? 何ですか?」

「今日はフレイ様は禁止。デートの練習なんだから、呼び捨てで頼む」

「え――」

 

 フレイ様からそう言われて私は戸惑った。

 だって、フレイ様はフレイ様なのだ……それ以外の呼び方なんて……。

 

「ふ、フレイ……君」

 

 私は精一杯呼び捨てにしようとしたがそれが限界だった。

 そんな私を見て、フレイ様は仕方ないと言った感じで苦笑する。

 

「じゃ、それで」

「わかりました。フレイさ……君」

「よし、取り敢えず、最初の店に行こうか」

 

 そう言ってフレイ様は私の手を握った。

 私はドキドキする心を抑えながら、その手を握り返して進む。

 

 フレイ様にとってはこれはただの練習なのかも知れない。

 だけど、私に取っては間違いなくフレイ様とのデートなのだ。

 私はこのデートを一生の宝物にするように楽しむつもりだ。

 

☆☆☆

 

 始めにやって来たのは王都の雑貨屋さんだった。

 そこに入った私達は一緒に店内を物色する。

 

「来幸の黒い髪にはこの赤い髪留めとか似合うんじゃないか?」

 

 フレイ様はそう言って手に持った髪留めを渡してくれる。

 わたしはそれを自らの髪に寄せて鏡で見てみた。

 

「確かにそうかも知れません」

「じゃ、まずはこれにしようか」

「いいんですか?」

「デートだからね。俺からのプレゼントだ」

 

 そう言うとフレイ様はその髪留めを手に取る。

 そして私に対して言った。

 

「他に欲しい物とかあるか?」

「そうですね……」

 

 私は雑貨屋の商品を見回していると銀色のアクセサリーが目に入る。

 

「あの……これ……」

「そのアクセサリーか?」

「はい、フレイ様の髪の色と同じなので」

「俺っていうかシーザック家の人間はだいたい銀髪だけどな。まあ、そこを考えれば、こう言うシルバーのアクセサリーもありか、黒には銀が合うとも言うしな」

 

 フレイ様はそう言うとそのアクセサリーを手に取る。

 

「先程から黒に似合うかを気にしてますけど、そこまで気にすることですか?」

 

 私は思わずフレイ様にそう聞いてしまった。

 

「それはそうだよ。来幸のためのアクセサリーなんだ。来幸らしさが活かされるようなものじゃなければ意味がない」

 

 フレイ様はそれだけ言うと、シルバーのネックレスを私の首にさげた。

 

「うん。似合うな」

 

 フレイ様は、ネックレスを付けた私を見て、満足そうに頷いた。

 私はフレイ様に着飾った所を見られて、恥ずかしさで顔が赤くなる。

 

「来幸の黒髪は幸せを呼ぶ黒髪だ。俺がそう決めてそう名付けた。だからこそ、さっきの男達のような雑音は聞き流して、黒髪を好きなように見せびらかして、似合うアクセサリーで着飾れば良いんだ」

 

 フレイ様は優しい声で心配ないとそう言ってくれる。

 

「ただ、自分と……俺を信じて堂々としていれば良いんだよ」

「はい……!」

 

 私は感極まって、ただそれだけを答えた。

 そうしている間に、フレイ様は黒い髪留めを手に取った。

 

「それは……?」

 

 私が疑問に持ってフレイ様に聞くと、フレイ様は笑って答える。

 

「デートなのに来幸の分だけを買うのも違うだろう? これは俺の分だ」

 

 そう言うとフレイ様は長髪をその黒い髪留めで纏めてポニーテールした。

 

「さっきも言ったが、黒には銀が合うからな、それは逆でも同じ事だ。……男がポニーテールってのは似合わないかも知れないが、案外イメチェンとしては悪くないものだろう?」

「はい! 似合っています! フレイ……君!」

 

 私は新たなフレイ様の姿を最初に見られたことに喜びを感じる。

 そうして私達はアクセサリーの購入を終えると、次の目的地へと向かった。

 

☆☆☆

 

「ここが噂のお化け屋敷ですか……」

「何でも、最近出来たアトラクションらしいな」

 

 私とフレイ様は、おどろおどろしい雰囲気がある屋敷を見ながらそう口にする。

 すると、受付役と思われる女性が私達の前にやってきた。

 

「あら~。カップルさんですか?」

「え? ちが……いや、はい」

 

 唐突に話しかけられてフレイ様がそう答える。

 素直にカップルじゃないと答えようとして、今日は練習としてのデートだから、カップルとして過ごそうと考えたのか、言い直したみたいだった。

 

 例え偽りであろうとも、フレイ様の恋人に見られて、そしてフレイ様自身からそう扱われて、嬉しさのあまり、思わず私の顔がほころんでしまう。

 そんな私の顔を見て受付の女性は笑顔を見せた。

 

「初々しいですね~。私にもこんな頃があったな……」

 

 過去を懐かしむようにそう言った女性は、気を取り直して言う。

 

「……と、お客様ですし、まずはこの屋敷の説明をしないとですね!」

 

 そう言うと受付の女性は紙を手渡してくる。

 

「ここはトリックスターのジョブ持ちが集まって作った最新式のアトラクションが楽しめる特別な屋敷です! トリックスターのスキルである幻術を使用して、本物そっくりのお化けが出てくる恐怖の屋敷を体験することが出来ます!」

 

 そう言って受付の女性は、手渡した紙の丸が付いた場所を指差した。

 

「ここが屋敷のゴールとなっていますので、紙に記されたルート通りに進んで、ゴールを目指してください! もし、お化けが怖すぎてダメとなったら、ギブアップと叫べば係の人間が助けに行くので安心して良いですよ!」

「なるほど……。わかりました」

 

 フレイ様がそう言うと受付の女性は納得した表情を見せる。

 

「では、どうぞ、楽しんで言ってください」

 

 私達は受付の女性の言葉に従って屋敷の中に入った。

 

☆☆☆

 

「雰囲気があるな……」

 

 屋敷に入ったフレイ様がぽつりと思わず呟く。

 確かにフレイ様の言う通りだ。

 トリックスターのジョブ持ちの人が幻術でお化けを演出するだけではなく、屋敷にある幻術でない各小物も、かなり精巧に恐怖を呼び起こす見た目に作られている。

 

「そうですね。少し、怖いです」

 

 私はそう言ってフレイ様に近寄った。

 

 正直に言えばそれほど怖くはない。

 私はそんな事よりも、お化けの登場に合わせて、どうやって自然に、フレイ様に抱きつこうかと、その事で頭がいっぱいだったからだ。

 

 フレイ様の協力者、側に仕える完璧なメイド、そう言った立場を選んだ私は、フレイ様に甘えるということをすることはなくなった。

 フレイ様の側に居続ける為に自分で選んだ道だが、それでも昔のようにフレイ様に甘えたいという気持ちは残っている。

 だからこそ、お化けに恐怖したというていで、フレイ様に全力で甘えることが出来るタイミングを待っていたのだ。

 

 そうやって何も起こらないまま歩いていると、唐突に「うらめしや~!」と言う言葉とともに、お化けのような存在が現れた。

 私はフレイ様に抱きつこうとして……それよりも早く、フレイ様が私を抱きかかえるようにして、自らの元に引っ張った。

 

「怖っ!? 何だこれ!? ゲームで見たのと全然違うぞ!?」

 

 そう言ってフレイ様は全力で抱擁する。

 それを受けて私の心臓がトクトクと大きな音で鳴り始める。

 

「いや、グラフィックが全然違うけどさ……。 うわ!? 今度は何だ!?」

 

 フレイ様はお化けを怖がっているのか、私を守るように抱きかかえながら、周囲を必死に警戒して移動する。

 私がそんなフレイ様を見ると、フレイ様は冷や汗を流しながら言った。

 

「だ、大丈夫だ! 俺は怖がってないぞ!? だから気にしなくていい、お前のこともしっかりと守るからな!?」

 

 震えながらそう言うフレイ様。

 そしてそのフレイ様の様子を見て、更に私の胸は高鳴った。

 

 ああ、私は今フレイ様に守られてる……。

 初めて出会った頃の事を思い出す。

 

 協力者でも、完璧メイドでもない、ただの少女として、フレイ様に拾われて、そして守られていたあの頃。

 フレイ様に惚れる他の女に嫉妬し、排除して回るような、覚悟の決まった私になる前の、か弱く純粋だった頃の私の気持ちを思い出したのだ。

 だからこそ、私は思う。

 

 今日はこのまま……ただの来幸として、フレイ様に恋する普通の少女として、フレイ様とこのデートを楽しみたい……。

 

 私はそう考えると、それまでフレイ様をどう堕としに行くか、と考えていた卑しい自分を捨てて、普通の少女のように、ただ流れに任せることにした。

 出てくるお化けに素直に怖がりながら、フレイ様に抱きつき、そしてそのしっかりとした体を堪能して、共にこの屋敷を攻略していく。

 やがて、私達にはお化け屋敷だというのに、それを楽しむ笑顔が現れ始め、私はフレイ様の恋人という立場を精一杯堪能してお化け屋敷を攻略した。

 

☆☆☆

 

 お化け屋敷が終わって、夕食時になった私達は、フレイ様の案内でレストランに向かって歩いて行っていた。

 

「あった! ここだ、ここ。美味しいって有名なレストランらしい」

 

 そう言ってようやく辿り着いた店を見てフレイ様がそう言う。

 そして、フレイ様は中に入ろうとして、張り紙に気付き、驚いて声を上げた。

 

「っは!? 定休日……? 何で!?」

 

 慌てたフレイ様は何度も張り紙を見て、店の中を覗き込む。

 だが、どう見ても営業しているようには見えなかった。

 

「ば、馬鹿な……。洒落た店でショッピングをして、お化け屋敷を楽しみ、最後は雰囲気のいいレストランで締めるという……俺の完璧なデートプランが……!?」

 

 私はそんなフレイ様を見て、思わず笑ってしまう。

 

「ぷっ、ふふふふ」

「来幸! これはだな……!」

 

 そんな私に気付いたのか、フレイ様は必死で自己弁論をしようとしていた。

 私はそれを止めて、フレイ様に言う。

 

「私で練習をしておいて、良かったですね! フレイ君!」

 

 私はそう笑顔を見せながらフレイ様に言った。

 

 ああ、今日はただの少女の来幸として、フレイ様とのデートを楽しむつもりだったと言うのに……本当にこの人は、私がしっかりと側で支えて上げないと、ダメな人なんだからと、愛おしい者を見るような目でフレイ様を見た。

 

「私の方で良いレストランを調べてあるのでそちらに行きましょう」

「はい……。すまん、来幸……」

 

 私のその申し出にフレイ様は素直に従った。

 私はそんなフレイ様に言う。

 

「良いんですよ。私はフレイ君の事を何でも知っていて、常に側で支え続ける……フレイ様の完璧なメイドなのですから」

 

 そう言って私達は、私が見つけたレストランで食事を取った。

 その楽しい時間の中で私は思う。

 

 私は、今の協力者や完璧メイドとしての私の幸せも、昔のただの恋する少女としての私の幸せも、どちらの幸せも取り逃すつもりはない。

 

 だって、フレイ様が言ったのだ。

 自分の従者にしたからには、私を不幸せにするつもりはないと、私を幸せにしてくれると、私はそのフレイ様のその言葉を信じている。

 

 だからこそ、私は幸せにならなければいけない。

 そうでなければおかしいのだ。

 

 私は、絶対にフレイ様を私のものにして、フレイ様のヒロインになることで、今の私も、過去の私も、どちらも満たされるような幸せな日々を送ってみせる。

 

 もしかしたら、その過程でフレイ様が不幸になってしまうかも知れない。

 望んだ恋愛が出来ずに絶望してしまうかも知れない。

 

 だけど、安心して欲しい。

 例え少しの不幸せがあったとしても、それを忘れさせるような大きな幸せを、どんな手を使っても、私がフレイ様に与えて見せる。

 

 だって、私は幸せを呼ぶ、来幸なのだから。

 フレイ様がそう名付けてくれたのだから。

 この尽きない私の愛だけが、フレイ様を幸せにすることが出来るのだ。

 

 そして私は同時に思う。

 フレイ様を手にすることが出来るその日は案外近いのかも知れないと。

 

 フレイ様がユーナの師匠となったことを知り、急いで集めたユーナ周りの情報――それとフレイ様から教えられたゲーム知識を合わせれば、とある推論が成り立つ。

 もし、その推論が正しいのなら――全ての状況は逆転する。

 

 もはや、ユーナの登場に焦ることも、それに対して必死で何かを行動する必要もない、私は側でただただ待ち続ければいい。

 フレイ様が心を折られ……私の手に墜ちるその時を。

 




 ゲーム知識という圧倒的なアドバンテージ。
 協力者という立場だからこそ得られたそれで、主人公よりそれを使いこなしている来幸は、先にとある推論に辿り着きました。
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