エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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現実逃避

 

「デートの練習も済んだ。そしてユーナとデートの約束も取り付けた。まさに万事順調、順風満帆! 人生の絶頂期って感じだな!」

 

 俺はそんな風に呟き、鼻歌を歌いながら歩いていく。

 そんな中で、ふと工芸室の方から何かを話す声が聞こえた。

 

「……? 何だ? 話し声……? っ!? まさかキッカイベントか!?」

 

 俺はその可能性に気付くと直ぐさま、気付かれないように工芸室の窓に忍び寄り、そして中の音に耳を澄ませながら覗き込んだ。

 そこではゲームと同じように、下は何も付けず、上はボタンの取れたワイシャツを着ただけの姿のまま、誰かに向かってキッカが全裸土下座をしていた。

 

 相手は何処の男だ……?

 

 このままでは、鬼畜アレクのように、その男によって、多くの女性がレイプされることになってしまうかも知れない。

 俺はそれを絶対に防ぐという決意を元に、その相手を確認しようとした。

 

 そしてそこで見たのは――。

 

「メジーナ? それにサラやナタリアもいる」

 

 そこにいたのは男ではなく、銀仮面ファンクラブの女性陣だった。

 ナタリアがキッカを逃さないように工芸室の入口を塞ぎ、サラがこちらからはよく見えないが何かを抱きかかえて、そしてメジーナがキッカと相対している。

 

「これはどう言うことですか? 神聖な学校で貴方は何をしてるんですか?」

「……デュ、デュフフ……ご、ごめんなさい。何でもするから、見なかったことにしてください……」

「何でも……?」

 

 まさにキッカイベントで起こっていたようなやり取りがなされる。

 俺は感心した様子で思わずそれに見入ってしまった。

 

「完全に俺の行動が関係しない所でも、イベントが発生するようになったか……」

 

 これまでのイベントの乗っ取りは基本的に俺か、あるいはクレアの時のように、俺の情報を元に誰かが動いた時だけだった。

 だが、このキッカイベントは完全に俺がいない状況から始まっている。

 

 これまで時期や状況が変わっていたイベントは、ついに主人公でもゲーム知識のある転生者でもない、完全な第三者でも起こせるようなものになったのだ。

 

「まあ、メジーナ達は攻略対象だから、完全なモブではないけどな……。それにしても、メジーナが糾弾側ということは、まさかの百合展開なのか!?」

 

 俺は思わず期待に胸を膨らませながら中を覗き込む。

 

 俺は百合物は嫌いじゃない。

 むしろ、百合系は同性同士の恋愛だからか、普通の男女の恋愛物より、お互いじゃなければダメだという執着が強い物が多く、俺みたいな純愛が大好きな人間からして見れば、面白く見られる作品が多くて好きなのだ。

 

「禁断の恋……メジーナ、キッカ、俺はお前達のことを応援するぞ!」

 

 俺はそう言って、もっと中を覗き込む。メジーナが糾弾していると言う事は、サラが持っている等身大人形はメジーナのはずだ。

 メジーナの裸はゲームや夢世界で散々目撃したが、百合相手が作った等身大人形からではないと接種できない、エロさと言う名の栄養素もある。

 折角だからそれを目撃しようと思って――、サラがキッカに見せつけるように位置を変えたことで、全身が目に入るようになったその等身大人形を見て、俺は思わず間抜けな声を出した。

 

「はっ? 俺???」

 

 そこにいた人形は、聖女の家系特有の銀の髪を持ち、がっしりとした肉体を持った男――すなわち、俺こと、フレイ・フォン・シーザックの姿をしていたのだ。

 

「なんで? えっ? どうして俺が!?」

 

 状況が理解出来ず俺は思わず唖然とつぶやき続ける。

 

 何度見ても俺だ。

 しかも完成度がすこぶる高い。

 風呂場の鏡で見る俺の全身とキッカの等身大人形はそっくりだ。

 

 何より――。

 

「あんな所まで本物そっくりとか……」

 

 キッカが使用した後だからだろうか。

 テラテラと謎の粘った液体で光る等身大人形の逸物。

 それはまさに戦闘状態の俺のものとほぼ同じだった。

 

 その事実に俺は思わず恐怖で寒気が全身を襲う。

 

「ど、どうして……どうやって俺のサイズを知った……? 何処で見られた……? まさか着替えやトイレの時に覗かれていたのか……? それにしたって、あの状態のものは、そう簡単には見られないはずだろ……?」

 

 ゲームではアレクをストーカーして調べ上げたとしか書かれていなかった。

 だからこそ、キッカがどうやって俺のそれを知ったのかわからない。

 

 自分が気付けない方法で、誰にも見せていないような自分の秘所に関する情報が、ストーカーであるキッカに知られてしまっている。

 自分のプライベートが無くなったかのようなその状況に、俺は思わず目の前が真っ暗になるような気持ちを感じた。

 

「何でも、と言いましたね? では作ってください」

「デュフ……つ、作れって……?」

 

 そう言ってキッカは等身大フレイ像へと目を向けた。

 

「こ、こう言う……大人の玩具?」

「違います。銀仮面様のファンアイテムです」

 

 キッカの言葉をメジーナは切って捨てた。

 そして、困惑するキッカに説明する。

 

「この等身大人形はよく出来ています。私は殿方のそこを見たことはありませんが……この人形のそれはフレイ君にそっくりなものになっているのでしょう」

 

 そう言ってメジーナは等身大フレイ像の逸物を触って、そしてそこにべっとりと付いていた粘り気を持ったキッカが出した分泌物が、メジーナの手に付いた。

 

 やめて~!!

 俺そっくりの人形のそれを触らないで~!!!!!

 

 俺のそんな嘆きも無視して、彼女は手に付いた液体を、嫌そうに眉を寄せながら、ハンカチで拭き取ると、何事もなかったかのようにキッカに言う。

 

「しかし、貴方はフレイ君のこれしか知らない。私達の誰もが見たことがない銀仮面様のそれを貴方が再現することは出来ない」

 

 そしてメジーナは普段と変わらないような真面目な様子で言う。

 

「女のそこは使うと形が変わるという話もあります。本当かどうかは知りませんが……フレイ君のそれを使うことでフレイ君の形に変わってしまう可能性がある」

 

 この人達は真面目な顔で何を言ってるの?

 メジーナだけじゃなくて、カタリナもサラも何で頷いているの?

 

「銀仮面様を見つけ、そしていつかそのお情けを頂いた時、他の男の形に変わったそれを見せるなど……私にはとても出来ません! だから、貴方の作るそれは、私達に取っては不要なものなのです!」

 

 そう決め台詞を放つように言うメジーナ。

 それにキッカは何故か「はは~」と平伏していた。

 

 あ、頭痛てぇ……。

 何なんだこの状況は……。

 

 一応、銀仮面=俺だから、別にキッカが作ったそれを使用しても、銀仮面以外の男の形に変わる訳ではないのだが、当たり前だが、わざわざそんな事を指摘する気にもならず、俺はただ黙ってその話の行く末を見守る。

 

「じゃ、じゃあ、小さな人形とかを作ればいいんですか……? でも、キッカはその銀仮面という方を見たこともないですぅ……」

 

 キッカがメジーナに向かってそう言う。

 優れた工芸士であるキッカでも、想像で作るのには限界があるのだ。

 

 キッカの前では銀仮面になったことはないからな……。

 まあ、良かった。

 取り敢えずこれで、銀仮面のファンアイテムの作成なんてことは、達成出来ずに終わりそうか。

 

 俺がそう思って安心していると、メジーナが言う。

 

「それなら、心配ありません。私が目で見た情報だけなら、夢世界で銀仮面様を完全再現することが出来ますから」

「ゆ、夢世界……?」

 

 夢世界ってお前! めっちゃ悪用しようとしてるじゃねーか!?

 

 俺は思わずそう突っ込みそうになった。

 優等生だから悪用はしないと信用していたのに、記憶を抽出して銀仮面を再現するという俺に取って最悪な方法で、夢世界が悪用されそうになっていた。

 

「ともかく、貴方には銀仮面ファンクラブに入って活動して貰います。……それで、いいですね?」

「は、はいぃ~! キッカは銀仮面ファンクラブに入りますぅ~!」

 

 選択肢のないキッカは、メジーナの圧を受けて、そう了承した。

 俺はそれを見て、静かにその場から離れ始める。

 

「あと、大きな人形も作って貰います」

「へ? なんで!?」

「目で見える部分……手などは完全再現出来ますから、幾らでも使いようが……」

 

 俺はまだ何かを喋っているメジーナ達を無視してその場から駆け足で離れた。

 そして、何も聞こえなくなった所で、全てを忘れるように呟く。

 

「俺は何も見ていなかった。今日ここでは何もなかった。キッカイベントなんて起こらなかったし、銀仮面ファンクラブがそれを利用することもなかった」

 

 自己暗示するように自分にそう言い聞かせる。

 

 あの様子ならキッカがメジーナ達と一緒に、モブ女子をレイプしていくという事も無いだろうし、俺が全てを忘れてしまえば上手く収まるんだ。

 

 俺はそう現実逃避するように考える。

 

 そう、俺は、キッカが俺の逸物をストーカーして知っていた事も、銀仮面ファンクラブが頭のおかしなことを言っていたことも、全て忘れることにした。

 

「さ~て、明日のデート楽しみだなぁ……」

 

 俺は何もかもを忘れて、ただ逃げるようにその場を去った。

 

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