エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
銀仮面ファンクラブが結成されるなどの事件もあったが、だからといって攻略対象を救う事を止めるわけにはいかない。
そう言ったわけで、俺は今日も銀仮面として、悲劇に見舞われている少女を救うために、この逢い引きに利用される宿屋に来ていた。
「まだ始まっていないといいが……」
俺はそう呟きながら中の様子を伺う。
そこには、大きなベットの前に、一人の少女と太った中年男性がいた。
この景色だけを見たら、悪の中年男が、何らかの方法で呼び寄せた可憐な少女を、無理矢理手込めにしようとしている光景に見えるだろう。
だが、それは間違いだ。
なぜなら、ここに中年男を誘ったのは少女自身なのだから。
――いや、正確に言えば彼女に憑いている悪霊だ。
☆☆☆
ソフィー・フォン・レイレシアはごく普通の貴族家に生まれた少女だ。
一人娘を大切にする両親と、可憐なソフィーを愛する家臣達。
それらに囲まれて何不自由のない幸せな生活を送ることが出来ていた。
だが、そんな彼女には普通じゃない所が一つだけあった。
彼女は強い霊媒の素質を持つ特殊体質を持った存在だったのだ。
霊媒体質を持っているとは言え、強すぎる体質のおかげか、そこらにいる霊に取り憑かれることもなく、平和に過ごすことが出来ていたソフィー。
だが、そんな彼女に悲劇へと転がり墜ちるための転機が訪れる。
ある日、ソフィーは父親と一緒に王都の外れにある広場を歩いていた。
普段なら馬車で通り過ぎる所だが、その日は馬車の一部が壊れており、歩きで出掛けることになってしまっていたのだ。
父親は何とかして馬車を用意しようとしたが、優しいソフィーは別に歩きでも大丈夫だと言って、父親とともにその広場を歩いていた。
毎日馬車で通っていた道も歩きだと違った景色を見せる。
ソフィーは突発的なトラブルによって起こったこの事態を、楽しみながら過ごすことが出来ていたのだ。
そんな風に歩いていると、ソフィーは蹲っている女性を見つけた。
困っている人を見捨てておけなかったソフィーは、彼女に話しかける。
「あの……大丈夫ですか? 体調が悪いんですか?」
「貴方……私が見えるの?」
「え?」
よく分からない返答をされ、困惑するソフィー。
その言葉を聞いて、ソフィーが自分を認識していることを悟った女性は、ソフィーに向かって顔を向けた。
「っひ!」
その女性の顔には顔がなかった。
それを見たソフィーが、思わずそんな叫び声を上げる。
「貴方のその体……! 私にちょうだぁ~い!!!」
「やめ! あああああああ!!!」
顔が潰された女性の手が、ソフィーのお腹に埋まる。
そして、そこから女性の全身がソフィーへと入り、ソフィーは得体の知れない感覚に、恐怖の叫び声をあげた。
「ソフィー! どうしたんだい!?」
ソフィーの異常に気付いた、先を歩いていた父親が、ソフィーの元に戻ってくる。
そんな父親に、ソフィーは満面の笑みを浮かべて言った。
「何でもありませんわ。虫が飛び出してきて、驚いてしまっただけなの」
「そうか、何かあったんじゃないかと心配したよ。それじゃあ、行こうか」
「はい」
そう言って何事もなかったかのように歩き出すソフィー。
だが、その本来の体の持ち主であるソフィーは、自分の声が聞こえない父親に向かって、突如として動かせなくなった体の中で必死に叫んでいた。
『お父様! 助けて! 誰かが! わたしの中に!』
「無駄よ。この体はもう私が頂いたんだもの」
そう言って独り言を呟くようにソフィーの体が喋る。
それを聞いてソフィーは理解した。
先程の女性に取り憑かれて、自分の体を乗っ取られてしまったと。
この広場ではかつてとある女性の処刑が行われていた。
その女性は、自分の為に多くの男達を誑かし、そしてその悉くを破滅させてきた、希代の悪女と言われた存在だった。
二度と男を誑かさないようにと、顔を潰されてここで処刑された女性は、その強力な自己愛から霊魂となって現世に留まり、他者の体を奪う機会を狙っていたのだ。
「本当にいい体……まるで私のもののように動かせるわ」
『わたしから出て行ってください!』
「いやよ。折角最高の体を得られたんだから、この世界を楽しまないとね?」
『世界を楽しむ……わたしの体で何をする気ですか!?』
「決まってるじゃない! 男を誑かして、貢がせて、そして私の為に全てを出し尽くして破滅した男を眺めて楽しむのよ」
その悪女の言葉を聞いたソフィーの心が絶望に染まる。
そんなソフィーの反応に愉悦した女性は言う。
「貴方、私から見ても可愛らしい顔をしてるから、簡単に男を釣ることができるでしょうね。安心しなさい、中にいる貴方も楽しめるようにしてあげるから」
『やめて~!!!!』
ソフィーがそう叫ぶが、悪女は止まらない。
完全に体の主導権を奪われてしまったソフィーには、その悪女を止めることは何も出来なかったのだ。
そんなソフィーに残された最後の希望は、家族や使用人達が異常に気付いて、この悪女を祓うための何かしらの行動を起こしてくれることだった。
だが――。
『どうして誰も気付いてくれないの……』
ソフィーの体を操っているのはソフィーではないのに、家族も、使用人も、誰もがその事に気付かなかった。
ソフィーはその事実に嘆き悲しむ。
あれだけ愛されていると思っていたのに、その愛してくれているはずの者達は、自分の異常に気付くことが出来ない。
そのことに、ソフィーは段々と人間不信になりながら、より絶望を深めて行く。
ソフィーは誰も気付かないことに絶望したが、家族や使用人がソフィーの乗っ取りに気付かなかったのは仕方のないことだ。
誰だって得体の知れない存在に、娘の体が乗っ取られる何て事態は想像しないだろうし、何よりも悪女は演技が上手く、ソフィーを演じることが出来ていたのだ。
その為に少しおかしな事があっても、体調や気分が悪いのだろうと考えられ、ソフィーが何者かに乗っ取られていると気付かれることはなかった。
そうして気付かれないように行動していた悪女は、疑われていないことを理解すると、徐々に活動する範囲を広げていった。
そしてついにその時がやってくる。
「さあ、ソフィーちゃん。処女喪失の時間よ!」
『いや、やめて! お願い! 誰か助けて~~!!』
お相手は王都でかなりの力を持つ豪商だった。
女性にもてなかったその男は、可憐なソフィーを操った悪女の手練手管に誑かされ、そしてこの場に誘い込まれてしまったのだ。
ソフィーの制止も虚しく行為は行われる。
そうしてソフィーの体は悪女によって汚された。
これにより悪女は、豪商の男を自由に操り、その膨大な資金を使って、様々な豪遊や、悪事を働くようになる。
そしてその過程の中で、力を持ったいい男がいると、ソフィーの体を使って、その男と寝て、誑かすことで自分の力に変える。
そんな日々を続けていく中で、両親や使用人も何かがおかしいと気付くが、既に強大な力を持ち始めたソフィーを止めることは出来ず、破滅させられてしまった。
と言うのがソフィールートを攻略する中で知れるソフィーの過去話だ。
実際にはこれによって、ソフィーがボロボロになった所から、アレクとプレイヤーが知ることが出来るソフィールートが始まる。
まだ薄暗い時間、街の警邏を行う騎士団に入ったアレクが、体力作りの為に早起きをして街をランニングしていると、高台の塀の上に立って、投身自殺をしようとしている少女を発見する。
アレクは直ぐにその少女の元に近寄って、羽交い締めにして塀から引き剥がし、彼女の命を救うことに成功したのだ。
「死なせてください! お願い! 死なせて!」
そう涙ながらに語る少女を見て、アレクはその少女を助けなければという強い使命感に襲われ、その少女に理由を聞くのだ。
そうして話を聞くと、その少女はソフィーと名乗り、自分のせいで家族が破滅し、そして多くの男を誑かした体は汚れていると涙ながらに語った。
アレクはそんなソフィーに、悔いているならやり直せると無責任に語ったが、追い詰められたソフィーに取っては、そんな言葉でも救いだった。
そしてそれから、毎朝同じ時間にソフィーとアレクの密会が始まる。
ソフィーは何か誓約があるのか重要なことは何も話さないが、それでもこの密会はお互いに取っての救いであり、アレクは健気なソフィーに惹かれていくのだ。
だが、それも長くは続かない。
突然、ソフィーは密会に顔を出さなくなる。
その事にアレクは焦りながらも、騎士団の仕事をこなすために、依頼のあった王都でも規模の大きい商会の元を訪ねるのだ。
そこであった依頼主でもある商会の女性秘書にアレクは頼まれる。
「私の大切な商会長は悪女に誑かされて変わってしまった。このままだと、この商会も、彼も、あの女に破滅させられてしまう……どうかあの女の悪事を暴き、彼をあの女の元から救い出してください!」
痴情の縺れのような依頼。
騎士団でも新人のアレクに振られた雑用仕事。
だが、それでもソフィーとの邂逅を通して、人を助けることの大切さを知ったアレクは、他の先輩が仕事をさぼる中で必死に調査を開始する。
そうしていく中で、悪女が商会長にさせた様々な悪事を知ったアレクは、悪女を黒だと認定し、商会長との密会現場で押さえることにしたのだ。
そうして現場に乗り込んだアレク。
だが、そこで彼が見たのは、彼が想像もしてないことだった。
「――え? ソフィー?」
「あら、アレク、貴方も混ざる?」
アレクの目の前で商会長の腰の上で楽しそうに淫らに腰を振るのは、助けたいと思っていた相手であるソフィーだった。
快楽で恍惚とした表情を見せるソフィーを見て、逮捕に来たアレクは思わずその場で固まってしまう。
それを見てソフィーは男の上から立ちあがって降りた。
「今日はここまでみたいね。じゃあね、アレク」
「――っ! まて!」
楽しげに去って行こうとするソフィー。
だが、その時、彼女を追おうとしていたアレクは見た。
ソフィーの瞳からひとしずくだけ流れる――悲しそうな涙に。
「何かある、何かが、ソフィーの身に」
それを見て、何かがおかしいと思ったアレクは執念の捜査を始めるのだ。
ここまでで気付くかも知れないが、インフィニット・ワンでのソフィーという攻略対象のコンセプトは寝取られだ。
だが、エルザバットエンドルートのように、自分の意思で完全に他の男に寝取られるのは、寝取りの中でもレベルの高い所業であり、多くのプレイヤーが受け入れられるものではない。
だからこそ、インフィニット・ワンの制作陣は、「別の誰かに体が使われていることにすれば、寝取られたとしても、本人の意思ではないし、ライトな寝取られって事に出来るよね!」とアホなことを抜かしてソフィールートを実装したのだ。
まあ、このストーリーにプレイヤー側は、「幾ら何でも体を勝手に使われているソフィーが可哀想だろ!」と少しばかり炎上もしたが、エロゲーやエロ小説ではたまにある事態なので、直ぐに風化して一ルートとして楽しまれるようになったのだ。
ちなみにだが、アレクと会うときにソフィーが体の主導権を奪い返せていたのは、順風満帆に男を誑かして豪遊してきた悪女が、もう何も反応しなくなったソフィーをつまらなく思って、自分の力が弱まっていると希望を見せかけて、わざとソフィーが動き回れる時間を作ったのが真相だ。
重要なことを喋らせないように制限しながらも、アレクと交遊させて、そしてソフィーが希望を抱いた所で、体の主導権を完全に自分のものとし、そしてアレクに会えないという絶望を味合わせるというものだった。
行為中にアレクが現れたことは意外だったが、それすらも悪女は楽しんで、自分の中にいるソフィーを苦しめていたのだ。
とまあ、そんな感じでソフィーが苦しんでいるのを察したアレクは、ソフィーによって破滅させられた実家の使用人や、その他の人々から集めた情報から、ソフィーが王都の広場に行った時に、悪女の亡霊に取り憑かれたのではないかと悟る。
そしてアレクはソフィーを救うためにダンジョンであるものを手に入れるのだ。
それは聖霊石……霊魂に対して強い力を持ち、悪霊を退けると、語られている特別な力を持った聖なる石だった。
それを手にしたアレクはソフィーを呼び出す。
自分の優位を疑わない悪女は、まんまと誘われるままにやってきた。
そしてその油断している悪女が乗っ取ったソフィーの体に、アレクは手に持った聖霊石をぶつけるのだ。
「あああああ!!」
ソフィーの体が発する叫びとともに霊体が弾き出される。
そして、それは集い、やがてレイスという魔物に変貌するのだ。
「私の体を~! よくも!」
「俺は騎士としてお前のような悪を絶対に許さない!」
そこからアレクとレイスとなった悪女の死闘が始まる。
数々の魔法を使う悪女に苦戦しながらも、アレクは悪女を倒すのだ。
「いやだ……消えたくないぃいいい! 私はもっと世界を遊び尽くして……!」
そう言って悪女は消え去った。
悪女が消え去ったのを見たソフィーは大声で泣き始める。
そんなソフィーをアレクは泣き止むまで優しくあやした。
そして落ち着いたソフィーはアレクに向かって言う。
「アレク様、ありがとうございました」
「気にしないでくれ、騎士として当然のことをしたまでさ」
そう言ってアレクは笑顔を見せる。
そんなアレクにソフィーは顔を赤らめながら言う。
「お恥ずかしい話ですが、これだけのことをしてくれたアレク様に返せるものが、わたしにはありません……悪女はこの体一つで全てを手に入れてきたので」
そう言うとソフィーは服を脱ぎ始めた。
それにアレクは驚く。
「ソフィー!?」
「だから、これがわたしのお礼です。アレク様、どうか受け取ってください……」
そう言ってソフィーはアレクを見て言う。
「アレク様……これがわたしの初めてです……」
その言葉を聞いた時にアレクは察した。
悪女が消え去った所で体を使われて汚された事実は変わらない。
だからこそ、ソフィーはここで、自分が本当に好きになったアレクに、自らの体を差し出すことで、これまでのことに区切りを付けて、自分の意思で行動すると言う一歩を踏み出そうとしているのだと。
「ああ、俺がソフィーの初めての男だ」
ソフィーの気持ちをくんだアレクはソフィーと行為を始めた。
そうしてソフィーとアレクは初めて同士の楽しい時間を過ごし、やがて騎士として成長したアレクは、悪女がしでかした事態の後始末をして、アレクは人々を守る騎士団の長として、ソフィーはそんなアレクを支える妻として、共に互いを支えながら幸せに暮らしましたとなるのがソフィールートだ。