エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「まだ始まってない! ギリギリ間に合った!」
俺はそれだけ呟くと、服を脱ぎ始めた二人が行為を始める前に中に飛び込んだ。
「な!? 誰だお前は!」
少女に誘われて、そういうことをしようとした現場に、突如として乗り込んできた銀色の仮面を付けた怪しい男を見て、商会長は思わずそんな声をあげる。
その奥にいるのは悪女に乗っ取られたソフィーだ。
彼女もさすがの事態に目を丸くしていた。
それにしても……幾ら誘われたからといっても、これはやばくない?
ゲームでは少なくともルーレリア学園に通ってる時に取り憑かれたから、十五歳以上の年齢で商会長と致すことになっていたはずだが、バタフライエフェクトによるイベント時期のずれによって十三歳のソフィー相手に致す状況になっている。
この世界なら、誘ったのが成人扱いとなる十五歳の女性側なら、そこまで非はないかなと言えるかも知れないが、十三歳はさすがにアウトだろう。
「がっ!?」
そんな、イベントの強制力のせいで、アウトな状況に追い込まれた商会長に思わず同情しながら、俺は素早く手刀で商会長を気絶させた。
「何よ! 貴方!?」
商会長を気絶させたことで危機に気付いたのか、魔法を放とうとする手を俺に向けながら、悪女はそう言う。
それに対して俺が答える答えは決まっている。
「声が……聞こえる」
「はぁ?」
「助けて、と泣き叫ぶ声が」
「何言ってるの? 貴方」
わけのわからないものを見る目をする悪女。
それに対して俺は宣言する。
「俺は悲惨な目にあう少年少女の味方――銀仮面! ソフィー! 君の助けを求める声は俺に届いた! 俺が今! その悪女から! 君と君の体を救い出す!」
俺はそう言って駆け出した。
咄嗟のことに対応出来ない、悪女が乗っ取ったソフィーの胸に、懐から取り出した聖霊石を押し付ける。
「なっ!? ああああああああ!!!!!」
叫び声を上げるソフィーの体。
そこからゲームで見たCGと同じように霊体が抜け出す。
「あっ……」
そう言ってへたり込んだソフィーを抱え、俺はその場から離れた。
そこには再びソフィーを手に入れようと、悪女の霊体――レイスが攻撃を加えてきた所だった。
「私の体を~! よくも!」
「彼女はお前の体ではない! 烈火! 力を示せ!」
俺はソフィーを自らの後ろに降ろすと、レイスが放ってきた氷の魔法を、烈火による炎の斬撃で防ぐ。
「銀仮面様……!」
「ソフィー、君の体は俺が二度と奪わせない! そこで安心して見ていろ!」
俺の事を心配してくれたソフィーに、俺はそれだけ言うとレイスと相対する。
この状況で下手に動き回るのは危険だ。
もう一度ソフィーが乗っ取られれば、奴はソフィーの体を操って、ソフィーを人質にこちらに行動を要求するかも知れない。
だからこそ、ソフィーを守りながら戦う必要がある。
つまるところ、これは防衛戦なのだ。
ソフィーを守りながらレイスを倒せるか……そこに全てがかかっている。
「っち! なら、これでどう!?」
レイスはそれまでの氷や雷に火と言った魔法から、燃えにくい個体である土へと魔法の属性を変えて、俺を狙い撃ってきた。
俺は烈火でそれを防ごうとするが、土は炎を潜り抜けて、そのまま俺の体へとぶつかり、魔法によって傷付けられた体は血を流す。
「っく!」
「銀仮面様! もう止めてください! わたしの為に! こんな! このままじゃ、貴方が……死んでしまいます!!」
目の前で魔法によってボロボロになっていく俺を見て、ソフィーがそう叫ぶ。
「後ろに守るべき者がいるなら! 俺はそれを置いて逃げ出すことも! その者を残して敵に負けることもしない! それが――銀仮面だ!」
銀仮面は正義のヒーローだ!
だからこそ、俺もその役割をしっかりと演じきり、そして攻略対象を救う!
「ははは! 威勢の良いことを言うね! なら、これはどうだい!?」
嘲るように高らかに笑ったレイスは、巨大な土の杭を生み出して、それを俺に向かって勢いよく放った。
それは炎の壁を越えて俺に命中する。
「銀仮面様!」
「ははは! これで死ん……ん?」
異常に気付いたレイスが困惑の声を上げる。
それもそのはずだ。
レイスの想定なら、俺はとっくに潰されて死んでいるはずだから。
「この時を……待っていた!」
俺は片手で土の杭を受け止めていた。
土の杭によって、俺の片手は大きく貫かれ、そして大量の血を流す。
俺はそんな片手から、土の杭を引き抜くと、聖霊石を同時に握りながら、レイスに向かって思いっきり放り投げた。
「馬鹿な……!?」
突如返ってきた杭に、レイスは驚いて急いで回避する。
だが、その回避先には――既に俺がいた。
「死ね」
レイスの首を烈火で切り落とす。
聖霊石を持った俺の一撃は特攻となり、レイスは苦しみながら消えていく。
「いやだ……消えたくないぃいいい! 私はもっと世界を遊び尽くして……!」
そう言って悪女はゲームと同じように消え去った。
俺は大量の傷が原因で思わずそこで膝を突く。
やばかった……状況が最悪だったな。
聖霊石を持っているから烈火で一撃でも加えれば直ぐに倒せる相手だった。
だが、ここは狭い室内であり、後ろには護衛対象のソフィーが、そして烈火で燃やすことになる前方には気絶した商会長がいた。
だから、俺は烈火の炎の斬撃で直接レイスを狙うことが出来なかったのだ。
下手に烈火による広範囲攻撃をすれば、商会長や狭い室内に燃え移り、助けなくてはならない対象全てが死んでしまう。
商会長が悪人なら見捨てるのもありだったが、この商会長はそこまで悪と言えるような人物ではないため、巻き添えにすることを俺はためらったのだ。
そして、それを人の機微に聡いレイスは気付いていた。
だからこそ、守りも考えずにあんなにぼこすかと魔法を撃ってきたのだ。
故に俺は待っていたのだ。
周囲に影響を及ぼさずに相手を攻撃出来る魔法を。
自分が魔法を使えないのなら、相手の魔法を弾き返せば良い。
それで俺は土の杭を受け止めて、それをレイスに投げ返したわけだな。
「銀仮面様、ありがとうございます……! わたし……!」
レイスが死んだのを見て感極まってソフィーが泣き始める。
俺は無事な方の手でそんなソフィーの頭を撫でた。
「あ……」
「ソフィー。君は周りの者を信じられなくなっているだろう」
俺の手の感触に呆然としているソフィーに俺は語りかける。
その言葉を受けて、ソフィーは暗く、顔を俯かせた。
「はい……」
正直なソフィーの本音。
自分を愛しているはずの者達が偽物を見抜けなかった事実。
俺は物語はハッピーエンドが好きだ。
だからこそ、この状況で終わらせる気は毛頭無い。
「それは仕方のないことだ。誰だって悪霊が取り憑いて、肉体を乗っ取られる何てことは想像が出来ない」
俺はそう言いながら自分のことを振り返る。
俺は生まれた時からフレイだから、悪女とは状況が違うが、転生者も言ってしまえば体を乗っ取って好き勝手する悪霊みたいなもんだなと。
「ですよね……」
「だが、それでも時が経てば彼らは異常に気づけた。ソフィーの体が何者かに操られていると悟ることが出来た」
「え――?」
暗い顔をして俯いていたソフィーは俺の言葉で顔を上げた。
実際にゲームでもソフィーの家族や使用人は異常に気付いた。
ソフィーの体が乗っ取られていると気付くことが出来た。
その結果は悪女によって破滅させられるというものだったが、それでも彼らの愛は、アレクがソフィーを救うための一手に繋がったのだ。
「ソフィー……安心すると良い! 君は愛されている! 君の家族に! 使用人に! そして周囲の者達に! その愛が君を必ず見つけ出していたはずだ!」
「でも、そんなこと……信じられない……です」
そう悲しそうにソフィーは言った。
実際に見つけ出せていないのだから、それを信じ切れない。
ソフィーの立場からしたらそう言う気持ちなのだろう。
「ならば! 俺を信じて欲しい!」
「銀仮面様……?」
俺の言葉を受けて不思議そうに俺を見るソフィー。
「『どうして誰も気付いてくれないの……』」
「それは……」
「『いや、やめて! お願い! 誰か助けて~~!!』」
「先程、わたしが助けを求めた時に言っていた言葉……」
常にソフィーが心の中で叫んでいた言葉。
そして服を脱ぐときにソフィーが助けを求めて叫んでいた言葉。
それを銀仮面に一言一句正確に言い当てられてソフィーは思わず呟く。
そんなソフィーに追い打ちを掛けるように俺は言った。
「俺は君の助けを求める声を聞くことが出来た! そんな俺が君が愛されていると言っているんだ! 俺のその考えを! 信じてくれないか!?」
正直に言うとソフィーの助けを求める声は聞こえていない。
あれはゲーム知識を利用して言い当てただけの代物だ。
だが、そんな事は関係ない。
例え嘘であろうとも、本人が信じられればそれは真実と変わらない価値を持つ。
だからこそ俺は、ここに来たときから、声が聞こえる演技をしていたのだ。
自分を救い、自分の助けを求める声を聞いてくれた人が、ソフィーに対する愛情があったあと語る……これ以上の証明が他にあるだろうか?
そんな、完膚なき証拠を叩きつけられたソフィーは言った。
「はい……! わたしは銀仮面様のことを……皆がわたしを愛してくれていたのだということを信じます!」
「それでいい、君は良い子だ」
「あっ……」
俺はそう言ってソフィーの頭を撫でると、ネックレスの形にした聖霊石を、そのソフィーの首に付けて上げた。
「これは……?」
「これは聖霊石……悪しき霊から身を守る道具だ」
不思議そうに聖霊石を眺めるソフィーにそう言う。
「君は霊媒体質……霊を呼び寄せ取り憑かせてしまう体質のようだ。だから、この 聖霊石を肌身離さず身につけていなさい。そうすれば今回のように、肉体を乗っ取られるという事態を防ぐことが出来るだろう」
聖霊石は霊魂特攻を持っているが、その性質なら他にも道具や武器がある。
ソフィールートの攻略特典だが、これからも霊に狙われるであろう、ソフィーが身につけておくのが一番のはずだ。
「そんな貴重なものを……銀仮面様……何からなにまで……」
「気にするな、これが俺の勤めだ」
俺はそれだけ言うと気絶している商会長を担いだ。
それを見てソフィーが言う。
「あの銀仮面様! このあとは一体……」
「君には直ぐに迎えが来る。俺はこの人を元の商会に返してくるよ」
それだけ言うと俺は商会長を担いで窓から飛び降りた。
「迎えって一体!?」
そんなソフィーの声が遠くから聞こえた。
☆☆☆
「銀仮面様……」
窓から飛び降りた銀仮面を見てソフィーは思わずそう呟いた。
自分を救ってくれた相手、自分の声を聞いてくれた相手、そんな彼が用意してくれた迎えとは誰なのだろうとソフィーが思っていると、部屋の扉が何者かによって、勢いよく開けられた。
「ソフィー! 無事か!」
「お父様!? お母様!?」
飛び込んで来たのはソフィーの父親と母親だった。
二人はソフィーの姿を見つけると、半裸な彼女を見て勢いよく駆け寄る。
そして、父親が自分のマントをソフィーに掛けると言う。
「銀仮面という方から全ての話は聞いた! これまでずっと苦しんで来たのに、それに気づけなくて済まない! ソフィー!」
「ごめんなさない! ダメな母親でごめんね! ソフィー!」
「お父様、お母様……」
ソフィーは抱きついてくる二人の暖かさを感じ。
そして二人の本当の気持ちを受け止めて、二人の愛を実感していた。
(ああ、銀仮面様が言ったとおり、わたしはちゃんと愛されていたんだ……)
そう思ったソフィーはぎゅっと二人を抱きしめる。
そして、そんな二人もソフィーを抱きしめ返した。
安らかな時間が流れる。
少しばかり時間が経った所で、また誰かがやってきた。
「旦那! 遅いから心配になってやってきましたぜ!」
「ヒューベルト!」
それはレイレシア家の御者であるヒューベルトだった。
彼はソフィーを見ると納得したように頷く。
「お嬢も無事みたいっすね! 女の子のお嬢が、こんな所にいるところを、誰かに見られるわけにもいきやせん。バレない場所に馬車を仕込んであるので! 俺についてきてくだせえ!」
そう言うとヒューベルトは歩き出す。
それを見て、ソフィーの父親と母親がソフィーを立たせた。
「行こう、ソフィー!」
「今度こそ、貴方を私達が守るわ!」
両方の手を両親に握られたソフィーは満面の笑みで言う。
「はい!」
そうしてソフィー達は駆け出した。
その中でソフィーは思う。
(銀仮面様……ただ一人、孤独の中にいたわたしの声を聞いてくれた人……)
銀仮面の事を考えるだけで、ソフィーは胸が高鳴るのを感じた。
(銀仮面様がいなかったら、わたしは両親や使用人の愛を、素直に受け止めることが出来なくなっていたかもしれない)
ソフィーはその事実を実感していた。
こうして彼らを信じてその愛を確かめられたのは、自分を信じてくれと言ってくれた銀仮面がいたからなのだと。
そして、自分に向けられている以上の愛が、自分から銀仮面へと向かっていることも、彼女は同時に実感する。
(ああ、わたしに取って……銀仮面様は特別な存在になったんだ)
かつてソフィーは、ナルル学園の入口で騒いでいた、銀仮面ファンクラブの気持ちが理解出来なかった。
なぜ、あれほど銀仮面に入り込めるのだろうと思っていた。
だが、今ならはっきりとわかる。
自分と同じように、彼らもまた銀仮面を自分の中の特別な存在にしたのだと。
ソフィーはそう理解したのだ。
(絶対に見つけたい……! そしてお礼をしたい……! 貴方に救って貰った体を貴方に捧げたい……! お情けを貰って貴方の子供を作りたい……!)
次々と特別な銀仮面にしたい欲が溢れてくる。
初めての恋にソフィーの思いが止められないほど強くなる。
それは誰であろうとも塗りつぶせないものだ。
他の銀仮面ファンクラブと同じように、フレイの過剰なアフターケアによって、ソフィーは身も心も完全に溶かし尽くされ、骨抜きにされ、銀仮面のことだけしか考えられないような体にされてしまったのだ。
もう、彼女は、恋愛相手としては銀仮面しか見えていない。
どれだけいい男がいたとしても、その場にいない銀仮面の方が輝いて見える。
もう引き返せない所まで銀仮面を好きになってしまったのだ。
だからこそ、銀仮面の事を考える度に、次々と妄想が頭をよぎる。
その度に、ソフィーの下腹部はきゅっと熱くなり、何かを求めるように、快楽がソフィーを駆け巡る。
「じゃ、屋敷に帰りますぜ」
ソフィーが考え事をしている間に、いつの間にか馬車に到着していた。
ヒューベルトがソフィー達に向かってそう言うと、それをソフィーが止める。
「待って! 行きたいところがあるの!」
「行きたいところ?」
疑問に覚えるヒューベルトにその場を告げる。
(他の銀仮面ファンクラブの人達のように、わたしも銀仮面様のお役に立ちたい!)
そう考えたソフィーが示した行き先はただ一つだった。