エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「痛ってえええええええええ!!!!」
商会長をその場に降ろした俺は思わずそう言って蹲った。
土の杭に貫かれた手が死ぬほど痛い!
と言うか失血で死ぬんじゃないかというほどに血が出ている。
先程までは正義のヒーロー銀仮面だから、必死で我慢して考えないようにしていたが、さすがにもう痛みを堪えるのも限界だった。
「速く……速く……、レシリアに治癒魔法を掛けて貰わないと……!」
その為にはさっさと商会長を商会に送り届けないといけない。
俺は痛みに耐えて気を取り直すと、再び商会長を担ごうとして――。
「っち! またか!」
俺は突如として感じた殺気の方向へと剣を振るう。
堅い何かがぶつかるような音の後に、剣をぶつけた場所が爆発した。
「ぐぅ……うぉおおお!」
レイスとの戦いで体がボロボロになっていたため、爆発の勢いを受け流すことも出来ず、その場で耐えることも出来なかった俺は、爆発の勢いによって大きく吹っ飛ばされてしまう。
「無様な姿じゃないか! 銀仮面!」
「ラース……!」
「さあ! 再戦と行こうぜ!」
その言葉と共に、ラースは俺に殴り掛かってきた。
俺はそれを転がるように避け、そして立ちあがると剣で斬り掛かる。
「おっと!」
その剣撃をヒラリとラースは躱した。
そして、その躱した姿勢から殴り掛かってくる。
「っち!」
俺はそれを剣で防ぐが、直ぐにラースのもう一方の腕が俺に迫る。
「甘い!」
何も考えない単純な拳による連打。
以前も見たそれを、俺は躱して回避しようとするが……。
「フェイントだと!? がぁ!?」
その拳による攻撃はフェイクだった。
ラースは拳による攻撃を止めると、直ぐに俺を蹴り上げに来た。
拳を躱そうとしていた俺は、それを躱しきれずに、蹴り飛ばされてしまった。
「ク、クソ……、してやられたな……」
「あの時とは立場が逆になったなぁ! 銀仮面!」
そう言ってラースは拳に炎を乗せて飛ばしてきた。
「――っ! 烈火! 力を示せ!」
俺はその飛んで来た炎を炎の斬撃の壁で防ぐ。
そして、炎の壁が晴れると、そこにはラースがいなかった。
「消えっ――!? いや、上か!?」
何処に消えたのか?
一瞬そう考えて、直ぐに頭上にラースが移動していることに気付く。
ラースの重力を伴って振り下ろされた拳は、横向きにして防ごうとした烈火を押しのけて、武器による防御がなくなった俺の腹に、ラースの拳がクリーンヒットして、俺は大きく吹き飛ばされた。
「がはぁ……」
俺は地面に転がり、呻きながら、ゴホゴホと銀仮面の中で吐血した。
「舐めるってのは、それに相応しい力を持った奴が言う言葉だっけか?」
「……」
「今のオレなら、お前を舐めたって問題ないよなぁ?」
そうやって威張るように胸を張るラース。
俺はその態度と先程までのラースの戦い方を見て確信した。
此奴……確実に以前より強くなっている……!
ただ殴るだけではなく、フェイントを織り交ぜた緩急の付いた攻撃。
吹き飛ばして倒れ込んだ相手に対しても、何かしらの反撃があると警戒し、堅実に遠距離攻撃で仕留めに来る冷静さ。
そして、炎の壁によって相手の視界が塞がれたとみるや、直ぐさまそれを利用して、視覚外から上空に移動し、奇襲を仕掛けてくる機転。
どれもこれもが修練と多数の戦闘経験を積んだことで得られるもの。
だからこそ、俺は思わずラースに問いかけた。
「何故だ……どうやってこれほどの力を……ごほっ!」
「おいおい。無理に喋らない方がいいんじゃねーの?」
以前と逆の状態になったのが嬉しいのか、にやにやとしながら、ラースは俺に対してそう言ってくる。
そして、その上機嫌のまま、語り出した。
「人間の技術ってのも良いもんだよなぁ……。こうしてお前をボコボコに出来るまで、オレは強くなることが出来た」
「人間の技術……だと!?」
「ああ、そうさ! オレが強くなったのは! オレの師匠のおかげさ!」
そう言ってラースは拳に炎を集め出す。
「おかげで魔力の通りもいい! こうやって以前より大きな炎を作れる!」
どんどんと大きくなっていく拳に集まる炎を見て、俺は冷や汗を流す。
クソ……! ふざけやがって……! 何処の何奴だ! フェルノ王国に災いを齎そうとしているラースの師匠になんてなった大バカ野郎は!
そのせいで、俺がもの凄い苦労をするハメになっているだろうが!
何処の誰か知らないラースの師匠を思わず罵る。
状況は最悪だ。
あの炎を喰らってしまえば、さすがに俺も死んでしまう。
もはや、四の五の言ってられない……! どんなことも生きてこそだ! 銀仮面の正体が敵にバレても構わない! 転移を使ってでも……ラースを仕留める!
俺は覚悟を決めた。
そして確実にラースを仕留めるタイミングとして、奴が炎を俺に向かって放ってくる瞬間を待つ。
「さあ! 死ねぇええ! ぎんか――うっ!?」
巨大になった炎を俺に放とうとしたその瞬間、ラースはその場で立ち止まり、炎が纏わり付いていない方の手で、自分の頭を抑えた。
「ク、クソ……! 何故だ!? 主導権はオレにあるはずなのに!?」
「な、なんだ……?」
そう言って炎すらも消して頭を抑えるラース。
俺としては状況が何が何だがわからない。
だが、何よりもこれは――チャンスだ。
「烈火ぁ! 力を示せぇえええ!」
俺は最後の気力を振り絞り、烈火に魔力を集中させる。
そして負傷で痛む体を無視しながら、ラースに向かって斬り付けた。
「邪魔をするな! オレは……なっ!?」
頭を抑えてブツブツと呟いていたラースは、俺がラースに向かって攻撃している事に気付いていなかったようだ。
炎の斬撃を防御もせずにまともに食らい、大きく斬り付けられたラースは吹き飛ばされて、近くにあった建物の壁にぶつけられる。
「がはぁ!? クソが……!」
叩きつけられた壁から倒れ込むように膝を突いたラース。
先程の一撃でかなりのダメージを受けたようで、立ちあがることすら出来ない。
「油断大敵ってやつだな……」
俺はそう言って痛みに呻きながらも必死に立ちあがった。
お互いに大きなダメージを負っている。
ここで先に相手に弱みを見せる訳にはいかない。
「形勢逆転だ……! ラース!」
「クソ……またこのオレが……! 邪魔さえ入らなければ……うっ!?」
そう言ってまた頭を抑えるラース。
俺はそんなラースに止めを刺すために烈火に魔力を込めた。
「このままじゃ戦えない……今日は引き分けだ! 覚えてろよ! 銀仮面!」
そう言うとラースは炎を纏った拳で地面を思いっきり叩いた。
それによって爆風による煙が舞い、それが晴れた時にはラースは消えていた。
「逃げられたか……」
俺はそう呟くと膝を突く。
既に立っているのも限界な状況だった。
「ごほっ! ダメだ……これ以上は……本当に死ぬ……! 速く……速く……商会長を届けて屋敷に帰らなくては……!」
俺はそう言うと商会長を担いで商会に向かった。
そして、商会長を送り届けた後は、人目に付かない場所に移動する。
「ハッピーエンドも楽じゃない……」
俺は一言そう呟くと、屋敷へと転移した。