エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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お茶会の提案

 

 そんな銀仮面として、貞操の危機を感じた嫌な思い出を、二人を見て俺は思い出していた。

 

 この二人の出来事を通じて俺が理解したのは、攻略対象のイベントをクリア出来ないまま、長時間攻略対象と接していると、熱烈な愛の切っ掛けになるほど悩んでいる問題によって、憔悴が激しくなって攻略対象が徐々に病んでしまい、唯一の救い主であるイベント攻略者に依存し、とんでもない行動に出始めてしまうということだった。

 ゲームでは、どれだけ攻略に時間をかけても、イベントをクリアするまでは好感度に変化がなかったが、現実となったことで日々の感情の変化が生まれてしまい、時間経過による影響も大きくなったということだろう。

 

 ともあれ、俺はそれらの経験から、攻略対象達は可能な限り、短期決戦で問題を解決することで、銀仮面に執着しないように心がけている。

 

 そんな風に俺が考えていると、カタリナやサラなど、周囲にいる一年生の銀仮面ファンクラブの中から、ステラが出てきて、満面の笑みで教壇に立った。

 

「聞きなさい! ステラはステラ・フォン・ゴーレック! ステラは、銀仮面という存在に興味があるの!」

 

 その言葉に「知ってる~」とか「銀仮面ファンクラブだもんな~」と、周囲のクラスメイトから野次のような声が上がる。

 

「そして、ステラは他の奴らにも、銀仮面を好きになって貰いたいと考えているわ! だから、ステラが主催する形で、銀仮面ファンクラブの仲間とともに、セルジオン草原で銀仮面についての知識を深めるお茶会を開きたいと思っているわ!」

 

 そのステラの提案に「郊外でお茶会?」と周囲がざわめく。

 その反応に、ステラは堂々と答えた。

 

「心配はないわ! セルジオン草原は弱い魔物しかいないし、風光明媚な場所だから、お茶会に最適だとステラは思うの!」

 

 そのステラの言葉に、セルジオン草原を知っている者達が、「確かにあそこなら危険は少ないか」とか「あそこでお茶会は気分が良さそうだ」などと話す。

 そんな中で、ダルベルグ公爵派の男子生徒の一人が言った。

 

「なあ! どうせなら、他の学級や王女様も巻き込んで! 皆で行こうぜ!」

「いい提案ね! それ!」

 

 それにステラが乗っかり、どんどんと話が大きくなっていく。

 やがて同調圧力によって、いつの間にか学園総出でのお茶会が決定されてしまった。

 

 な~んか胡散臭いな……。

 何かしらの騒動を起こそうと企んでいるのか?

 

 わざとらしく、王女を巻き込む形で話を広げたダルベルグ公爵派を見ながら、俺は思わずそんなことを考えた。

 

 ステラが策謀を企むとは思っていない。

 あのわがままお嬢様は、そこまで頭が回らず、刹那の気持ちで、周囲を滅茶苦茶にしながら、行動するタイプだ。

 だからこそ、これはステラ発案によるものではないと思うが、乗せられやすい性格をしているから、ダルベルグ公爵派の駒として、ステラが上手く使われてしまっている可能性は高いと思っていた。

 

 ステラはダルベルグ公爵派の中では珍しい銀仮面ファンクラブの会員だからこうして使うことも――。

 

 俺はそこまで考えた所であることに気付いた。

 

 いや、待てよ。

 なんでナルル学園にいる攻略対象の中でダルベルグ公爵派は少ないんだ?

 

 ゲームではダルベルグ公爵派は悪役として描かれていたが、レディシアやステラのように攻略対象とすることは幾らでも出来る。

 それなのに、この王都で起こる事件では、ダルベルグ公爵派は殆ど被害を受けず、被害に遭うのは、メジーナのようなユーゲント公爵派か、ソフィーのような中立派ばかりだ。

 だからこそ、王都に存在するナルル学園で結成された銀仮面ファンクラブには、ユーゲント公爵派や中立派が多数在籍している状態にある。

 

 明らかな状況の偏り、これは本当に偶然の産物だろうか。

 

 王都で起こる攻略対象のイベントは、メジーナの時のように、王都に入り込んだ魔族や魔物が何かしらの問題を起こすことが多い。

 ゲームをやっていた頃は、平和な王都で問題を起こすために、外からそれを崩す要因を入れたんだなとメタ的に考えていたが、少なくともメジーナの一件はバーグ一派によるものだと判明している。

 もし、それと同じように、他の魔族や魔物に関する事件も、バーグとラースが暗躍した結果だとしたら?

 

 俺はそこまで考えた所で、あることを思い出して考え直す。

 

 魔族が起こすイベントというのなら、千里もその対象になるか、あれに関しては明確にバーグ一派が関わっていないものだ。

 だとするなら、王都で起こる全ての魔族や魔物が関するイベントが、バーグ一派のものだと結びつけるわけには……。

 

 ――いや、むしろこの場合は、なんで魔族であるスイードが、王都における王国西部派の活動拠点である神社近くにいたのかという方が問題なのか!

 

 人族が主体であるこのフェルノ王国では、魔族は大手を振ってその辺を歩き回れるような立場ではない。

 見つかれば、確実に警戒されるし、場合によっては捕縛されたり、魔王国へと強制送還されるような立場だ。

 だからこそ、プライベートな理由でぶらぶらと歩き回って、偶然神社に行ったと考えるよりも、目的があってそこに行ったと考える方が自然だ。

 

 王国西部派は、二百年前にフェルノ王国に侵略された土地の者で出来た派閥で、征服地という経緯から、中央政府から遠ざけられており、中立派を謳いつつも、反ユーゲント公爵派として、ダルベルグ公爵派と緩い協調姿勢を敷いている。

 ダルベルグ公爵派から見れば、王国西部派は反ユーゲント公爵派の仲間ではあるが、ユーゲント公爵派が取りしきる中央政府から飴を渡されれば容易く寝返るかも知れない、信用出来ない相手であるはずだ。

 

 だからこそ、スイードをあの場に派遣した。

 監視能力を持つ奴なら、王国西部派の裏切りをいち早く察知出来るし、場合によっては王国西部派を脅す材料が見つかるかも知れない。

 

 そうであるのならば、ダルベルグ公爵派とバーグ一派は――。 

 

 そうして考え事をしている間に、いつの間にか放課後になっていた。

 俺はいつものようにお悩み相談室を始めようところで、クリスティアがこちらに手招きしているのを見つけ、病み上がりだから相談室は明日にしてくれと周囲の者に頼み、クリスティアの元に向かった。

 

「何でしょうか? クリスティア様」

「フレイ、お前はステラが出してきたお茶会の話は聞いたか?」

「はい。俺のクラスでも言ってましたから、何となくクリスティア様が来るのではないかと思っていました」

「やはり、お前もきな臭いと思っていたか」

 

 クリスティアは思案するようにそう言った。

 俺はそれに頷く。

 

「どう考えてもダルベルグ公爵派が何かを企んでるでしょう。それが何かまではまだわかりませんが……」

「私達をセルジオン草原に誘い出して、そこで襲うとかはどうだ?」

「他の貴族の令嬢や子息もいるのに? どう足掻いてもダルベルグ公爵派の損に繋がるようなことにしか思えませんが……」

 

 クリスティアを殺すために、他の貴族の令嬢や子息を巻き添えにしたら、さすがに王や他の貴族達は、ダルベルグ公爵派であるレディシアを王にしようなんて思わずに、レディシアを廃嫡して、アリシアの攻略対象であるわんこ王子こと、第一王子のクルトを王にするために動くだろう。

 そうなれば、ダルベルグ公爵派は王の椅子も取れずに、残りの貴族達に処断されて、一環の終わりとなってしまう。

 そんな、決定打とならないような場所で行う博打のような手を、ダルベルグ公爵派が取るとは思えなかった。

 

「むしろ……王城が危険なのかも知れません」

 

 俺はふと思いついた思いつきを口に出した。

 それにクリスティアが反応する。

 

「王城を?」

「多くの貴族の令嬢や子息に王女様方がセルジオン草原に向かうとなれば、当然安全確保の為に騎士団を派遣するでしょう。特に今のようにダルベルグ公爵派の策謀を疑っているのならなおのこと、その戦力を手厚くするのではありませんか?」

「……確かにそうだな。そうか、そうしてそちらの守りを手厚くすれば……」

「逆に王城への守りは薄くなる。そのまま王城を制圧して、王にレディシアへの王位継承を認めさせる方が、決定打に繋がる博打となります」

「クーデターというわけか……」

「どんな形にしろ。正当な王位継承権を持つ者が、王から王位を継承されれば、次期王として機能してしまうことになりますからね」

 

 例え強引な方法であろうとも一度でも実権を握れば勝敗は決する。

 脅されたのだとしても、王位継承自体は本物のため、下手にその王位継承に文句を付ければ、王家への反逆罪として罪に問われかねないのだ。

 

 国の派閥はダルベルグ公爵とユーゲント公爵派が二分している。

 そんな状況で、レディシアの王位継承に文句を付けることが、王への反逆罪として捉えられかねないとなれば、日和見な中立派は被害を恐れて、ダルベルグ公爵側に流れるかもしれない。

 

 そうなればユーゲント公爵派だけで国と戦わなければいけなくなるが、反逆者とされてしまった彼らにどれだけの者が付いてきてくれるか……。

 

「人は現金なものです。そうなればユーゲント公爵派を捨てて、ダルベルグ公爵側に流れるものも多く出るでしょう」

「ダルベルグ公爵派が悪だとしてもか?」

「悪とか善とかでメシは食えませんよ。そういうのは余裕があるやつが言う言葉だと、俺は思いますけどね」

「……そうだな」

 

 追い込まれれば倫理観なんて全部捨てて何でもやるのが人間だ。

 どちらかと言えば、性悪説よりな考え方をしている俺から見れば、余裕がなくなれば誰だって、善の仮面を捨て去って、利益に飛びつくだろうと思う。

 そう言うことをせずに善を貫けるのは、アレクやクリスティアのような、この世界の主人公や攻略対象である選ばれた人間だけだ。

 

 俺の意見に一理あると考えたクリスティアは、その考えにおける大きな問題を、俺に投げかけてきた。

 

「だが、幾らセルジオン草原に騎士団を派遣するからと言っても、ダルベルグ公爵派だけで王城を落とすことが出来るか……?」

 

 ダルベルグ公爵派は確かに大きな派閥だ。

 だが、王城にも中立派やユーゲント公爵派の強力な騎士達が大勢居る。

 王城を落としきれずに、援軍によって潰されるのが関の山ではないかと、クリスティアは考えたのだ。

 

 俺はその話を聞いて、ある考えをクリスティアに話す。

 

「魔族と繋がっていれば可能かも知れない」

「魔族と……だと?」

「はい。ダルベルグ公爵派は魔族と通じているのではないでしょうか?」

 

 ラースを助けた時の煙玉から察するに、バーグは何処かの人間の勢力と手を組んでいる可能性が高い。

 それが何処かと考えると、先程までの考察から考えれば、ダルベルグ公爵派であると考えるのが自然なはずだ。

 

 王都で起こった数々の事件、それはバーグと手を組んだダルベルグ公爵派が、相手の勢力を削ぐために、ラースを使って暗躍させていたと考えればその話の筋が全て通るのだ。

 

 バーグとダルベルグ公爵が手を組んでいた。

 それこそが、この王都での騒乱に関する最大の裏設定!

 

「根拠はなんだ? さすがに思いつきで言っていいことではないぞ?」

 

 一派閥に対する魔族との内通の嫌疑。

 それを聞いたクリスティアは窘めるように俺に言う。

 

 この問いに銀仮面で得た情報は話すことは出来ない。

 だが、先程までの考察で、しっかりとこの質問が来たときの回答を用意していた俺は、俺の知っている情報での関与を裏付ける証拠を話す。 

 

「セリーヌ王妃の誘拐の件です。いくら魔族が人より優れた能力を持っているにしても、簡単に攫われすぎているのではないでしょうか」

「……そうだな」

 

 俺のその言葉にクリスティアは頷く。

 表には出さないが、薄々その可能性に感づいていたらしい。

 

 つまるところ、セリーヌは、ダルベルグ公爵派から情報を得たバーグが派遣した手下の魔族によって拉致されてしまい、心が壊されるまで犯され続けるという悲惨な目に合ってしまったのだろう。

 

 なぜ、バーグ自身ではなく、手下なのかというと、王城という危険な場所に、四天王であるバーグが直接攫いに行くとは考えにくいし、人を見下しているバーグが、自分の力を受け継いだ人間なんてものを許せるはずがないと考えているからだ。

 それに、バーグの娘であるラースも、ゲーム内で自分に妹や姉がいるなんてことは、一言も口にしていない。

 それらを考えれば、ユーナの魔族の力の元となった魔族が、バーグである可能性は低いということだな。

 

 話はそれたが、バーグ一派がその事件に関わっている可能性は高い。

 そうなれば、この関係は十年以上も前から続いていたものであり、今回のクーデターについても、かなりの準備をしているだろうと想像できる。

 

「もし、俺の考えが正しければ、魔族とダルベルグ公爵が手を組んだのは最近の事ではないでしょう。王城を落とすことについても勝算があるはず。……銀仮面ファンクラブのお茶会を中止したらどうでしょうか?」

 

 その方が銀仮面のファンが増えなくて俺も助かるし、と内心思いながらも、クリスティアに俺の考えを伝える。

 守ることを考えるなら、ここは下手に戦力を分散させずに、王都でダルベルグ公爵派を待ち受けるべきだ。

 上手くやればクーデター自体を起こさない可能性もあるし。

 

「いや、それは駄目だ。お茶会などの社交を王家の命令で止めることは出来ない。そんなことをすれば、王家は各貴族との交遊の機会を制御しようというのかと、貴族達から大きな反発を受けることになる」

「まあ、そうですよね……」

 

 ダルベルグ公爵派がクーデターを起こしそうだからお茶会禁止です!

 なんてことを言えるわけもないし、下手に茶会を禁止すれば、その理由次第によっては王家の求心力が落ちることに繋がろうだろう。

 

「だから、私は、あえて王都に残り、クーデターを誘おうと思う」

「本気ですか?」

 

 俺は思わずそう聞き返してしまった。

 だが、クリスティアは晴れ晴れとした表情で答える。

 

「ああ、そうすればダルベルグ公爵派を一気に釣れる。上手くやれば内乱の危険もある王位継承権争いを一気に終わらせられるかもしれん」

「その為に負ける可能性も高い王都に残るのはリスクが高いと思いますが……」

「どちらにしろ、王位継承がされてしまえば私の負けだ。王都にいようと、茶会にいようと、死ぬのが遅いか速いかしか違わない。それなら私は、より大きな利益が得られる方に賭けたいと考えている」

「……覚悟は決まっているってことですね」

「そうだな」

 

 クリスティアの言っている事はもっともだ。

 敵が準備万端に用意していて負ける可能性が高いのだとしても、それに怯えて守りに入ってしまえば本当に負けてしまう可能性が高い。

 リスクがあるのだとしても、勝ちを得るためには、自ら動かなければならなかった。

 

 相手が先に動いたことで、完全に主導権を取られている。

 こちらは相手の行動に合わせて対応するのを余儀なくされている状態だ、

 

 こう言うの嫌だな……。

 

 ここ最近はゲーム知識を使って先手を取ることが多かった。

 久しぶりの出たとこ勝負に、俺は思わず眉を寄せる。

 

「ユーナの事は頼んで良いか?」

 

 クリスティアのその言葉に、俺は勿論と頷いた。

 

「弟子の身の安全は師匠が絶対に守るもんですよ。クリスティア様はユーナ様のことは気にせずに、自分の身を守ることだけを考えてください」

「ふっ。そうしよう」

 

 クリスティアは笑みを見せるとそう言う。

 俺はそんなクリスティアに、空蝉の羅針盤の針を縫い付けた小物を手渡す。

 

「あと、これを持って行ってください」

「これは?」

「転移座標が仕込んである小物です。これがあれば、俺が転移して、クリスティア様の救援に行くことが出来ます」

 

 その言葉に、クリスティアはきょとんとした顔で俺を見た。

 

「フレイは中立を取るんじゃなかったのか?」

「さすがにクーデターを起こそうとする側に付いていく気はありませんよ。それに知り合いが死ぬのは見たくありませんからね」

 

 そこまで言ったところで、俺はきざったらしくクリスティアに言う。

 

「これでも俺は貴族……貴方の臣下でもあります。ですから王を守る剣として、俺に貴方のことを守らせてください」

 

 アレクがどちらに付くかなどと言ってられる状況じゃない。

 どう考えても魔族と通じているダルベルグ公爵派に王権を取らせるのは不味い。

 だとしたら、ここでしっかりと立場を表明するべきだ。

 

 今後はユーゲント公爵派としてクリスティアを支え、その臣下として活動して、シーザック家の利益を考えていくべきだ。

 だからこそ、ユーゲント公爵派への加入を明言する必要があった。

 

 我ながら臭い台詞を吐いたと思うが、臣下入りを明言するには、こう言った格式張った言い回しの方が印象に残りやすいだろう。

 

「なっ……。く、ははは! そうか! では、しっかりと守って貰うとするか! 騎士として私を守ることに全力を尽くせ!」

 

 俺の言葉に一瞬硬直したクリスティアは、きざったらしい台詞に共感性羞恥でも覚えたのか、顔を赤くして笑いながらそう答える。

 俺は、ここまで来たら突っ切るしかねぇ! と騎士の礼を取って言った。

 

「ご命令とあれば。必ずや姫をお守り致します」

「っ――! ああ、頼むぞ」

 

 銀仮面で鍛えたロールプレイ。

 それがクリスティアに決まり、俺は確かな手応えを感じる。

 これで、クリスティアが王となった時、シーザック家を優遇してくれるだろう。

 

「クリスティア様、俺が助けに入るまで、敵との決戦は挑まず、なるべく逃げて、耐えることを優先してください」

「ああ、わかっている。だから、フレイも速く来てくれ」

 

 俺達はそれだけを話すと、王都の警備についての打ち合わせをして、互いの健闘を祈って別れた。

 

 銀仮面ファンクラブのお茶会――。

 そこで何が起こるかわからないが確実にイベントが始まる。

 俺は長年の経験からその実感を強く感じていた。

 

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