エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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お茶会の襲撃

 

 そしてお茶会当日。

 俺達は護衛の騎士団とともに、現地であるセルジオン草原に向かっていた。

 俺はそんな中で、手に持った通信水晶で繋がった相手である来幸に話しかける。

 

「来幸、ダルベルグ公爵派の様子はどうだ?」

『今のところ異常は無いようです』

「そうか、引き続き頼む。雇った冒険者や傭兵も自由に使っていい」

『かしこまりました。何かが起こり次第、フレイ様に連絡致します』

 

 そう言って通信は切れた。

 来幸を王都に残し、状況を探って貰っているが、今のところダルベルグ公爵派は動きを見せていないようだ。

 

 先に動くのはこっちってことか……?

 

 俺はそう思いながら周囲を警戒する。

 王都には雇った冒険者や傭兵がいるし、実家から両親を連れてきている。

 シーザック家や街の住民の安全は問題ないと考えていた。

 

 むしろ、戦力的に心配なのはこちらだ。

 俺は確かに強いが、これほど大勢の非戦闘員を守りながら、複数の襲撃者相手に立ち向かえるほど、万能だと思ってはいない。

 

 数が多い相手には範囲魔法の方が強いからな……。

 それこそ周囲の被害を考えなければ、俺にも範囲攻撃の方法はあるが、これだけ味方がいる状況ではそれも使えない。

 それを考えると、先手を取って可能な限り数を減らさないと、このお茶会に参加した何人かは殺されてしまう危険性があった。

 

 こう言うとき、俺の魔力回路が死んでるの悔やむな……。

 

 俺がそう考えている間も、集団は進んでいき、セルジオン草原に到着する。

 

「それでは皆で準備をしましょう!」

 

 銀仮面ファンクラブのリーダーとして、メジーナがそう宣言する。

 その言葉に合わせて、銀仮面ファンクラブを中心として、今回のお茶会の参加者達がテーブルや椅子などを準備し始めた。

 

 人数がいることもあり、あっという間に準備が整い、テーブルに座った面々の前には、銀仮面ファンクラブが用意した特製のお菓子とお茶が並べられる。

 

「こちらは最近懇意になったロンベルク商会の商品よ。とっても美味しいから、しっかりと味わって食べなさい」

 

 今回のお茶会の主催者であるステラがそう言うと、全員がそのお菓子とお茶に手を付けて、参加者との会話とともに楽しみ始める。

 

「美味しいですね! 師匠!」

「そうだな」

 

 俺は隣に座ったユーナの言葉を聞きながら、周囲を警戒を続けていた。

 そうして何事もない時間が続き、全員の気が緩んだその時――。

 

 来た……!

 

 俺は殺気を感じてその方向へと視線を向ける。

 するとそこから針が飛んで来て、ユーナへと向かった。

 

「甘い!」

 

 俺は転移で机の上に移動すると、ユーナの前で飛んで来た針を剣で撃ち落とす。

 そして同時に叫んだ。

 

「敵襲だ! 自分の身を守れ!」

 

 俺のその言葉とほぼ同時に、複数の暗殺者がその場に現れた。

 そして彼らは、こちらの視界を遮るために、煙玉を投げて煙幕を生み出す。

 

 ――だが、そのくらいなら容易く対処出来る。

 

「圧縮転移……!」

 

 俺は現れた煙を、一人の暗殺者の前に纏めて転移させた。

 それによって煙が周囲から消え、視界を遮る効果を完全に失う。

 

 煙は魔力を伴っていない為、空蝉の羅針盤で自由に転移させることが出来る。

 俺はそれを利用して煙を一カ所に集め、煙幕を完全に無効化したのだ。

 

 そして、俺の手はそれだけではない。

 

 圧縮された煙幕が、転移が終わったことで勢いよく噴き出す。

 それは目の前にいた暗殺者の一人を、風圧で大きく吹き飛ばした。

 

「――っ!?」

 

 暗殺者が驚く中で、俺は煙が消えたことで、隠れて対象を殺すというお家芸が出来なくなった暗殺者の前へと転移して、剣で首をたたき切る。

 そして同時にポケットから複数のナイフを上空に放り投げた。

 

 既に視界は切り替わっている。

 俺は三人称視点で全ての暗殺者を視認すると、その首元にナイフを転移させた。

 

「っが!?」

 

 突然、自分の首元にナイフが現れた暗殺者達は、そのナイフに勢いがあったのもあって、そのまま首へと刺されてしまい、血を流して倒れる。

 俺は最後に煙幕の煙を上空に逃がすと、煙の風圧で気絶していた暗殺者の上に立ち、剣でその心臓を突き刺して殺した。

 

「これで全員か……?」

 

 一瞬の出来事にざわざわとするお茶会の中で俺はそう呟く。

 そんな俺の元にユーナが近づいて来た。

 

「一瞬で暗殺者を倒すなんてさすが師匠です!」

「油断するなユーナ、まだ居るかも知れない。常在戦場の心を忘れるな」

「はい!」

 

 俺の言葉にユーナがそう返事をする。

 俺はそれを見て、この状況で集団を纏められるであろう、銀仮面ファンクラブのリーダであるメジーナへと話しかけた。

 

「メジーナ先輩、申し訳ないのですが安全が優先です。本日のお茶会はこれで中止にして、騎士団の護衛の元、王都への帰還を」

「ええ、わかっています」

 

 メジーナは俺の言葉に頷くと、その場の全員に向かって言う。

 

「皆さん、今日のお茶会はこれで終了です! 周囲を警戒しながら、騎士団の人の誘導にしたがって――」

「おい! 何だあれは!?」

 

 メジーナが言葉を発しているさなか、それを遮るように一人の参加者が言う。

 そして、その方向へと目を向けると、獰猛そうな魔物が一匹佇んでいた。

 

「あれは……!? まさか、キメラキマイラ!? こんな所に現れる魔物じゃないのに!?」

 

 魔物に詳しい攻略対象の一人がそう言った。

 彼女は確か――。

 

 いや、そんなことを考えている場合じゃねぇ!?

 

 俺は咄嗟に自分で突っ込みを入れながら、ナイフを放り投げて転移で、キメラキマイラの元へと飛ばす。

 落下によってスピードが付いたナイフは、キメラキマイラへと刺さるが、刺さった部位の肉が盛り上がり、ナイフを抜け落ちると、そこには傷がなくなっていた。

 

 再生能力も健在か……!

 さすが各ルートの後半で戦えるようになる指名手配モンスター!

 

 キメラキマイラは、インフィニット・ワンでのやりこみ要素である、指名手配モンスターの内の一体だ。

 指名手配モンスターとは、インフィニット・ワンをやり込んだプレイヤーが、自分のパーティーで戦闘を楽しむために、ルートに関わらず自由に戦う事が出来る相手であり、倒すと称号やアイテム、賞金などが手に入る相手だ。

 RPGなどではお約束とも言える存在で、他のRPGと同じように、それらの魔物は他の魔物に比べてかなり強い存在になっている。

 そして、このキメラキマイラは、指名手配モンスターの中でも後半側に位置する存在で、鍛えあげたパーティーでないと戦えない相手なのだ。

 

 此奴相手に非戦闘員を守りながらは……!

 

 俺がそう思っていると、キメラキマイラが大地を大きく踏みしめた。

 そのモーションに見覚えがあった俺は、転移で移動しながら、攻撃範囲にいる者達を次々と突き飛ばしていく。

 

「っぐ……!」

 

 最後の一人を突き飛ばした所で時間がなくなった俺は、転移による回避することが出来ず、キメラキマイラが放った火球を一瞬喰らう。

 

「っち!」

 

 だが、直ぐに転移をしてダメージを最小限に留めた。

 俺が一番の敵だと理解しているのか、キメラキマイラは俺から視線を外さずに、俺の動きをじっくりと監視している。

 一方で俺の方もキメラキマイラから目が離せない。

 

「こっちからも来た!」

 

 その言葉とともに、キメラキマイラが来た正面とは別に、左右から暗殺者と魔物達が現れて、騎士団と茶会の参加者を襲いだしていた。

 

 不味い……だが、此奴の相手を止めるわけには……。

 

 助けに行きたいのは山々だが、俺が下手に行動すると、その隙をキメラキマイラに突かれそうだ。

 

 此奴はやりこみ要素の指名手配モンスター。

 強化したパーティーで挑む前提の相手で、下手なルートのラスボスよりも強い存在なのだ。

 俺でも油断していたらやられる危険性がある。

 

 何より再生能力が厄介だ……。

 

 転移による攻撃は基本的に投擲などと同じものだ。

 勢いを付ければ貫通力は増すが、敵全体を吹き飛ばすような、広範囲にわたる攻撃は出来ないため、再生能力持ちを吹き飛ばすことが出来ない。

 

 ナイフを貫通させたとしても、恐らく先程のように回復される。

 奴をまるごと葬るすべはあるが、影響範囲が広すぎて、確実にお茶会に来た参加者を巻き込むことになるから使えない。

 

 手詰まりな状況。

 そんな中、後ろから不意に声がかかった。

 

「師匠! みんなのことはわたしに任せてください!」

 

 それはユーナからの言葉だった。

 俺はそれに対して少し考える。

 

 敵の狙いの一人は、王族であるユーナだろう。

 それを矢面に立たせてもいいのか……?

 

 いや、それはユーナに対して失礼だったな。

 俺が師匠として育てた彼奴なら、この程度の奴らなら問題なく倒せる!

 

「頼む! ユーナ! 生徒を守ってやってくれ!」

「はい!」

 

 そう言ってユーナが駆け出していった。

 キメラキマイラを避けて、多くの者が後ろに下がる中で、左右にいる襲撃者の一人ずつが、手に持った特殊なアイテムを地面に突き刺した。

 

「いまだ! 禁呪! アースフューリー!」

 

 その言葉と同時に、二人の襲撃者は命を落とし、地面が隆起を始めた。

 

「これは……!?」

 

 思わず驚いて周囲を見ると、地面がまるで怒りを表すように、亀裂を生みながら、盛り上がり、俺と他のお茶会メンバーを隔てる壁が、いつの間にか現れていた。

 

「はっ! 端から俺対策をしてたってことかよ」

 

 禁呪――神や賢者など、神の血が混じった者の専用魔法を、それ以外の者でも全魔力と命を消費すれば、発動させることが出来る禁忌の技術。

 それを使ってまで、生み出された乗り越えることが難しい隆起した大地で出来た障壁。

 

 明らかに俺が他の面子を助けに行かないようにするための処置。

 今回のことを企てた奴は、俺のことを高く評価していたらしい、それこそユーナ達を倒す為に俺を引き剥がし、キメラキマイラなんて魔物を用意するぐらいには。

 

「上等だ! なら、お前らが思う以上の強さを見せてやる!」

 

 俺はそう言うと、動き出したキメラキマイラへと向かって行った。

 




 今回は煙を転移させていますが、空蝉の羅針盤では、煙で色が付いた空気は対象指定出来るので、転移させることが出来ますが、通常の空気は透明で対象が指定出来ないので、空気を転移させて酸欠にして倒すとかは出来ない感じです。
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