エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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援軍

 

 師匠と離れた後、突如として地面が盛り上がり、そこで現れた壁によって、完全に師匠と分断されてしまった。

 

「そんな……」

 

 わたしはそんな状況に、思わずそんな言葉を呟くと、直ぐに自分の頬を叩いて、気合いを入れ直す。

 

「ダメだ! わたしは師匠にこっちのことを頼まれたんだ! 頑張らないと!」

 

 わたしはそれだけ呟くと駆け出した。

 そして近くで生徒に襲い掛かっていた魔物に殴り掛かる。

 

「ぎぃ!?」

 

 わたしの一撃で、その魔物は魔石を残して消滅した。

 そして、わたしはそれを見て呟く。

 

「いける! わたしでもやれる!」

 

 師匠から色々習った上で、わたしが使うようになったのは、両手に手甲を付けて、相手を殴って倒す格闘主体の戦闘スタイルだった。

 王族が使うべき上品な戦闘スタイルではないかも知れないが、何故かこの戦い方が一番馴染んで使いやすかったので、師匠の提案でこの戦い方にしたのだ。

 

「アイスショット!」

 

 氷の礫を飛ばし、遠方にいる生徒を助けながら、わたしは次々と敵を倒していく、そんなわたしの元へ、敵を魔法で倒しながらメジーナさんが近づいて来た。

 

「メジーナさん!」

「ユーナ王女! ご無事ですか!?」

 

 わたしの言葉にメジーナさんはそう返す。

 そして、真剣な顔をしながら言った。

 

「本来なら、安全な所に隠れていてくださいと言いたい所ですが……」

「わたしも戦えます!」

「そう言うと思っていました。私はフレイ君と一緒に貴方が強くなるための修行をしているのを見たことがあります。……今は猫の手でも借りたい状況。ユーナ王女。少しの間だけでいいのです。私と一緒に時間稼ぎをしてください」

「はい!」

 

 わたしはそう言葉を返すと、近くの敵へと向かっていく。

 そんな中でメジーナさんは叫んだ。

 

「銀仮面ファンクラブ一同!」

 

 その言葉に銀仮面ファンクラブのメンバーがピクリと反応する。

 

「私達の銀仮面様を称えるためのお茶会を敵は襲撃してきた! これはつまり、私達の象徴である銀仮面様を! 此奴らが舐めて侮辱してきたということだ! そんなことを許したままにしていいいのか!!」

 

 その言葉に倒れていた銀仮面ファンクラブのメンバーが立ち上がり、押されていた銀仮面ファンクラブのメンバーが怒りで敵を押し返す。

 

「救われたその身! ここで無駄に散らす気か! 気概を見せろ! 救われただけの価値をその場で示し! 他の者を救って見せろ!」

 

 そのメジーナさんの檄で次々と銀仮面ファンクラブが雄叫びを上げて、勢いを盛り返し、敵を倒していく。

 サラさんが短剣を持って戦場を駆け抜けながら敵を切り裂き、ナタリアさんの槌で魔物を叩き潰す、千里さんが薙刀で巨大な魔物の足下を切って動きを封じると、ステラさんが宝石を砕き、そこに溜められていた魔力で魔法を放って、その巨大な魔物を燃やし尽くした。

 

 そうやって優勢に闘って行くが、徐々に敵に押され始めてしまった。

 

「く……やはり暗殺者はそう上手くはいかないわね……」

 

 メジーナさんが思わずそう呻く。

 

 フェルノ王国は魔物を倒して開拓した場所に建国された国であり、貴族達は平民を守る力を持つべきとされているため、多くの者が戦う事が出来る。

 それは貴族の令嬢や子息であるナルル学園の生徒達も同じであり、攻略対象という優秀な存在が多い銀仮面ファンクラブには、かなりの戦闘能力があった。

 

 だが、暗殺者は対人戦のプロだ。

 そんな相手に、人殺しに抵抗のある貴族の令嬢や子息では、まともに戦う事は出来ず、良いように押されてしまっているのだ。

 

「だけど、そろそろ……来た!」

 

 メジーナさんは戦いあっている戦場の奥、そこで起こり始めた騒がしい音を聞いて、思わず目を輝かせながらそう言った。

 わたしはそのメジーナさんが見ている方向から現れたものを見て、思わずメジーナさんに聞いてしまう。

 

「なっ!? 何ですか、あれは!? 新手ですか!?」

「違うわ! このお茶会が襲撃されるかも知れないってことは、私も読んでいた。だから、事前に伝手が出来たロンベルク商会の凄腕の傭兵達に私達の護衛を依頼していたのよ! これで形勢は逆転した! 今よ! 押し返すの!」

 

 現れた援軍――ロンベルク商会の傭兵の皆さんが、次々と暗殺者達を仕留めていく、それによって余裕が出来はじめたわたし達は、魔物を優先して次々と倒していき、やがて状況は完全にこちらの勝利へと傾き始めていた。

 

「これで――」

 

 そんな油断がいけなかったのだろう。

 師匠には何度も最後まで気を抜くなと言われていたのに。

 

 戦況から自分達の敗北を悟った暗殺者は、全てを投げ打って、わたしに向かって突撃してきた。

 その殆どは他の皆さんによって倒されたけど、抜け出した暗殺者の放った投げナイフが油断したわたしの頬を掠めた。

 

「任務は達成した! これで我等の勝利――」

 

 暗殺者がそう呟いているがそれが耳に入ってこない。

 ナイフで掠めて血が出た部分が熱く、わたしの意識はそこから急速に失われていき、体が力を失って倒れていく。

 

「しまった! ユーナ王女! これは……まさか毒!?」

 

 メジーナさんがそう呟くのを最後に、わたしの意識は闇に消えた。

 


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