エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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王城での戦い

 

「これは……どう言う状況だ?」

 

 俺が転移してきた場所では、既に戦闘は終わっている状況で、生徒達は何かに集うかのように一カ所に集まっていた。

 

 こちらの戦いはもう決着が付いていたのか……キメラキマイラを倒すのに時間を掛けすぎたな。

 

 俺はそんなことを思いながら、身バレを防ぐ為に烈火から持ち替えて構えていたナイフを懐にしまい、何が起こっているのかを把握するために、その集団へと近づいていく。

 すると、そんな俺に気付いたメジーナが話しかけてきた。

 

「フレイ君!? キメラキマイラは!?」

「もう倒した」

「嘘……あのキメラキマイラを一人で!?」

 

 メジーナがそう驚く横で、エルザが呆れたように言う。

 

「あんたならそうなると思ってたわ。あのよく分からない大きな破壊音も、どうせあんたがやったことなんでしょ?」

「まあな。何をやったのかは秘密だが……そんな事よりもユーナは?」

 

 自分の話を軽く流されたエルザは、一瞬むっとしたものの、事態の重要性は理解しているので、集団が集まる場所を指差した。

 

「あそこ、暗殺者のナイフが掠めて、それから昏倒している」

「は……? まさか、毒か!?」

「それは違うみたい。銀仮面ファンクラブにいた毒に詳しい子に調べて貰ったけど、ナイフについたのは毒じゃなくて何かしらの存在の血らしいわ。そしてそれにも毒性がないことは確認してる」

「そうなのか……」

 

 取り敢えず、命に別状はなさそうだ。

 しかし、どうしてユーナが気絶したのかは依然としてわからない。

 

「気付け薬でも使って見るか?」

「ここは……」

 

 俺がそう言った時に、集団の中にいたユーナが目を覚ました。

 

「大丈夫か! ユーナ!」

「あ……はい! 師匠!」

 

 起き上がりは、ぼーとしていたユーナだが、次第に意識が鮮明になったのか、俺の言葉に元気よくそう返した。

 俺は問題なさそうな状態に、ほっと安堵の息を吐く。

 

「そうか、それなら良かった。立てるか?」

「はい!」

 

 ユーナに手を貸して立たせる。

 そうして、一息ついた所で、懐に入れた水晶が音を鳴らした。

 

「師匠? それは通信水晶ですか?」

「ああ、王都にいるメイドと繋がっている……少し、静かにしてくれ」

 

 俺はその場にいる者にそう言うと、来幸からの通話に応答した。

 

「フレイだ」

『フレイ様ですか! 来幸です!』

「来幸、何があった?」

 

 俺はそう来幸に聞く。

 問題が起こったら連絡すると言っていた来幸からの通話だ。

 恐らく王都で何かが起こったのではないかと思われた。

 

『王都でダルベルグ公爵派がクーデターを起こしました! 王城からは黒煙が上がり、市街地にもダルベルグ公爵派の手の者と思われる魔物と襲撃者が暴れ回っている状態にあります!』

「……そうか。ダルベルグ公爵派がやはり動いたのか」

 

 懸念していた通り、ダルベルグ公爵派がクーデターを起こしたのだ。

 俺は直ぐに来幸に現在の戦況を聞く。

 

「被害状況はどうなっている? 城下町は用意しておいた戦力で耐えられるか?」

『王城の戦況と被害状況はわかりません。城下町の方は事前に雇い入れていた傭兵と冒険者を使うことで被害を最小限に抑えられています』

 

 事前に準備を整えていたから城下町の方の戦況は問題無いようだ。

 まあ、あそこには念の為に、戦力としてS級冒険者であるジークを呼んでいたし、重症を負ったとしても、怪我を癒やせる聖女のリノアやレシリアもいるから、俺が助けに行かなくても何も問題はないだろう。

 

「わかった。来幸達はそのまま城下町の敵集団の排除に尽力してくれ。茶会への襲撃は切り抜けたから、王城の方は俺が何とかする」

『承知しました。フレイ様、ご武運を』

「ああ」

 

 そう言って来幸との通話が切れる。

 それと同時にそれまで静かにしていた生徒達が騒ぎ出す。

 

「クーデターだって!?」

「そんな……王城にいるお父様は無事なの……!?」

 

 ざわめく周囲の中でメジーナが俺に質問を投げかけた。

 

「王城の方は何とかするって、フレイ君はどうする気ですか?」

「知っている者も多いと思いますが、俺は転移能力を持った魔道具を保持しています。王城とクリスティア様の持ち物に転移座標を仕込んであるから、二回の転移を使えば、それらの援軍に行くことが出来ます」

「たった一人で援軍に行くつもりですか?」

「いえ、さすがに俺が一人で行ってもできる事は限られます」

 

 王城は広いため、短距離転移に敵の視認が必要な俺の能力では、一人で全ての人々を救うというのは無理だ。

 だからこそ、俺以外にも援軍を連れていく必要がある。

 

「そこでメジーナ先輩に相談があるのですが……」

「ロンベルク商会の傭兵と護衛用の騎士団を借りたいということですね」

「その通りです。勿論、ここに残る者達を守る分は残してですが……」

 

 少し考えた後、メジーナは傭兵の纏め役と思われる男に話しかけた。

 

「そう言う話なのだけど、貴方達は王城への救援に協力してくれるかしら?」

「俺達は依頼主の意向に従うだけですよ」

 

 そう行って傭兵の纏め役の男は苦笑する。

 

「もっともそんなやばい事態なら、追加の報酬は頂きたい所ですけどね」

「わかった。追加の報酬はシーザック家が出すと、このフレイ・フォン・シーザックが誓おう」

「毎度ありです」

 

 ロンベルク商会の傭兵との話はまとまり、俺は騎士団に目を向ける。

 

「もとより我々は国を守るための騎士! 初めから王城に戻るつもりです!」

 

 そう威勢良く断言した騎士に、俺は頷くと言った。

 

「よし、それでは早速行くとするか、傭兵と騎士は手を繋いで……」

「待ってください」

 

 それを止めるようにメジーナがそう言う。

 

「私達も王城の援護に行きます」

「本気ですか? ここに来た暗殺者と違って、王城に向かえば、同じ貴族と殺し合うことになるんですよ? ここにはダルベルグ公爵派の者も居るはずです」

 

 俺がそう言うとステラが集団の中から出てくる。

 

「確かにステラはダルベルグ公爵派よ。でも、魔族と手を組んでクーデターを企てるような派閥に、義理立てを続けるつもりはないわね」

 

 それはお茶会の参加者である生徒達も薄々感じていたことだった。

 あれだけの魔物を使役して、軍事的な命令に従うように協力させることが出来るのは、魔物を操る技術を持った魔王領の魔族だけだ。

 故にそれがダルベルグ公爵派と思われる暗殺者と共に来たということは、ダルベルグ公爵派が魔族と手を組んだ可能性があるということなのだ。

 

「ステラには泥船に乗り続ける趣味はないの。だから、ここでダルベルグ公爵派を抜けるわ! もっとも、今回の茶会を提案したステラの言葉を信じて貰えるかは知らないけど」

「いや、信じるよ。嘘をつけるような人間じゃないのは見ればわかるからな」

 

 そこで俺は他のダルベルグ公爵派に対して牽制の意味も込めて言う。

 

「それにこの状況でダルベルグ公爵派に付く奴なんていないだろう」

「……そ、そうだよな! 俺もダルベルグ公爵派を抜けるぜ!」

 

 それに続くようにダルベルグ公爵派を抜ける声が相次ぐ。

 本気で抜けたい者も、状況的にそう言わざる終えなかった者も居るだろうが、どちらにしろこれでダルベルグ公爵派は下手なことを出来なくなったし、いざとなればユーゲント公爵派に寝返るために仲間を売ってくれるだろう。

 

 ひとまず茶会に参加したダルベルグ公爵派の無力化に成功したと思った俺は、メジーナの方へと再度目を向けた。

 

「それでメジーナ先輩達は本当に来るつもりですか?」

 

 俺が覚悟を問うようにそう言うと、メジーナ達は迷いのない目で答えた。

 

「勿論です。当主ではないとはいえ、私達も貴族。クーデターを起こすような反逆者達を野放しにしてしまえば、貴族の名折れです」

「……わかった。共に行きたいと言う者は手を繋いでくれ、但し怪我をしている者は、例え意思があろうとも、足手纏いだから連れていかない」

「それくらいはわかっています」

 

 お茶会の襲撃で傷ついた者が、残る騎士と傭兵に守られるように、俺の元から離れてそこで治療を始めた。

 

「師匠! わたしも行きます!」

「先程まで倒れていたが大丈夫なのか?」

 

 怪我人達と一緒にここで待っていた方が良いのでは? と俺がそう言う思いでユーナに向かって言うと、ユーナは強い意思を持った目で答えた。

 

「クリスティアお姉様を助けたいんです!」

「そうか、わかった。一緒に行こう!」

 

 俺はユーナの手を繋ぎながらそう言った。

 そして戦う意思を持ったものがそれぞれ手を握り、俺達が輪を作るように互いに手を握った所で、俺は宣言した。

 

「では、行くぞ! 転移!」

 

 俺達はその場を消え、王城へと移動した。

 

☆☆☆

 

 王城の広間に着くと、そこは既に戦場と化していた。

 反逆者とそれに対抗する者が互いに魔法を打ち合い、破壊の嵐が吹き荒れている。

 そんな場に転移してきた集団を見て、双方の動きが止まった。

 

「王家の救援に来ました!」

「そうか! 助かる! こちらに加勢してくれ!」

 

 俺の言葉に壮年の男がそう答える。

 それを見て、俺はメジーナにこっそりと話しかけた。

 

「彼は?」

「ユーゲント公爵派の貴族です。戦っているのはダルベルグ公爵派の貴族ですし、あちらに加勢するので間違いはないと思います」

 

 ユーゲント公爵派の重鎮の娘であるメジーナがそういうのなら間違いはない。

 

「わかりました! 共に反逆者を倒しましょう!」

 

 そう行って俺達は戦いに参戦する。

 敵に挑む前に、俺は生徒達に向かって忠告する。

 

「自分の強さを見誤るなよ! 敵には必ず二人以上の複数人で当たれ!」

「はい!」

 

 俺の言葉に従って、ダルベルグ公爵派と魔物相手に、茶会の参加者であるナルル学園の生徒達は、二人以上の人数で挑み始めた。

 

 問題なさそうだな。

 俺は生徒達が危険な目に合わないか様子を伺っていたが、彼らは自らの身の安全を優先しながら堅実に戦っていたため、危険はないと判断し、転移を発動して敵の貴族の前へと転移した。

 

「なに!?」

「終わりだ!」

 

 手に持った剣で心臓を貫き、その貴族を刺し殺す。

 

 一瞬、殺さずに無力化するべきかとも考えたが、反逆罪は一族郎党纏めて死罪となる罪の為、無理をして無力化するべきでもないかと考え直した。

 このクーデターの責任を取らせる必要がある、ダルベルグ公爵とレディシアは生かして捕らえる必要があるが、それ以外は基本的に生死不問でいいだろう。

 

 それに、下手に不殺を貫いて、味方が危機的状況に陥るなんて、馬鹿げた展開を起こすわけにもいかない。

 この期に及んでも、ダルベルグ公爵派として立つような奴と、国を守るために戦っている者、どちらの命が大切かなんて、わかりきっていることだろう。

 

 これまで権力闘争の為に散々悪事を働き、状況的にトップが魔族と組んで明らかにやばいことに手を貸していることに気付きながらも、ダルベルグ公爵が勝った時に得られる利益に目が眩んで、何も考えずに付いていく愚か者を生かしておく必要もない。

 仮にここでダルベルグ公爵派を生かしたとしても、そんな奴らはどうせ新しい悪に従って直ぐに私腹を肥やすような真似をするだろうから、改心を期待するだけ無駄なのだ。

 

 だからこそ、俺は味方が確実に勝てるように、次々と転移して、情け容赦なく、敵を殺すことで、手早く確実に敵を無力化していく。 

 俺達が援軍が参戦したのもあり、広間での戦闘は王城側の勝利として、あっと言う間に終わった。

 

「すまない。助かったよ」

 

 そう言って助けた貴族の男が声を掛けてくる。

 俺は彼に現在の戦況を聞いた。

 

「貴族として当然のことをしたまでです。それよりも現在の戦況はどうなっていますか? 王族の方々は既に避難をされたのでしょうか?」

「同時に複数箇所を攻められて詳細はわからないが……王は既に避難されたという情報がある」

 

 現フェルノ王は気の弱い男だ。

 だからこそ、クーデターが起これば、直ぐに逃げ出すと思っていたが、それは間違っていなかったらしい。

 ともあれ、こちらの敗北条件である現王によるレディシアへの王位継承は防がれたようなので、ひとまずそこは一安心と言った所だ。

 

「クリスティア様は……?」

 

 だからこそ、俺は残りの懸念であるクリスティアについて聞いた。

 それに対して貴族の男は苦い顔をする。

 

「クリスティア様は王を逃がすために囮役をされて……現在は敵の首魁に追い立てられて、何処におられるのかはわからない状況です」

「そんな……!」

 

 貴族の男の話を聞いたユーナが、思わず悲鳴のような声を漏らす。

 

「直ぐに追った方がいいか……」

 

 俺がそう呟くと、メジーナが集団を代表して言った。

 

「フレイ君。こっちは問題がないから、ユーナ様とともに、クリスティアの救援に向かってあげて」

 

 ここからは王城内の各地に援軍に行く形になる。

 クリスティアを直ぐに助けにいかないといけないが、下手に全員で行けば他の場所の救援が遅れることになる。

 戦力的には俺ともう一人か二人が抜けて助けに行くのがベストだ。

 

 その点を考えれば、メジーナの提案は理に適っていたため、俺はメジーナの言葉に生徒達が全員頷くのを見ると、ユーナに言った。

 

「わかった。行くぞユーナ!」

「はい!」

 

 そうして俺はユーナの手を握って転移をした。

 




 今回の話で茶会にエルザいたの!? と思ったかも知れませんが、基本的に学園のメンバー全員参加(クリスティアとレディシアを含めた一部の者だけが欠席)という状況なので、トートとベッグも含めて参加しています。
 事前にフレイから何か事件が起こるかもと聞かされていたので、それぞれ離れた場所で周囲を警戒していたため、会話に出てきませんでした。
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