エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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激怒

 

 転移した先で目に入ったのは、振りかぶったバーグの拳だった。

 俺は咄嗟にそれを剣で防ぐと、後ろにいたクリスティアに向かって言う。

 

「待たせたな! 約束通り助けに来たぜ!」

「フレイ! ユーナ!」

 

 咄嗟の事だったのでうっかり敬語を忘れてしまったが、まあいいだろう。

 ともあれ、俺はクリスティアの危機的状況に何とか間に合ったらしい。

 

「フレイ……フレイ・フォン・シーザックか……」

 

 バーグはそう言うと、俺を警戒するように距離を取った。

 そして俺に対して言う。

 

「お前にはキメラキマイラをぶつけたはずだが?」

「あんなものは直ぐに倒した」

「あれが足止めにすらならないのか……」

 

 冷や汗を流すバーグ。

 その奥からレディシアがこちらに顔を見せた。

 

 ダルベルグ公爵はいないが、首謀者がそろい踏みだな……さっさと倒して、このクーデターを終わらせることにしよう。

 

 俺はそう思い、一歩足を踏み出そうとして――。

 

「バーグ、ユーナがラースになってないじゃないの」

「……へ?」

 

 俺はレディシアが放ったそんな言葉で、間抜けな声と共に思わず足を止めた。

 

 ――いま、彼奴なんて言った?

 

 唖然とする俺の前で、続けてレディシアが言う。

 

「貴方言ったわよねぇ? 自分の血を使えばユーナは確実にラースになるって」

「私のせいではない。どうせお前の手の者が、ユーナに私の血を付着させるのを失敗したのだろう」

 

 さも当然と言った口調でレディシアとバーグは会話を続ける。

 だからこそ、俺はその言葉を思わず口に出してしまった。

 

「お前ら何を言っている? ユーナがラースになるとか、ユーナを馬鹿にするような、ふざけたことを口にするのはやめろよ」

 

 嫌な予感を打ち消すように俺が言ったその言葉。

 それを聞いたレディシアは、まるで何も知らない愚か者を嘲笑うかのように、歪んだ笑みを見せると、俺に対して言う。

 

「貴方……ラースを知っているのねぇ?」

「それがどうした」

「それなのにラースが何者なのか知らないと」

「知らない訳じゃない。ラースはそこのバーグの子供で、王都で様々な騒動を起こしていた魔族だ。ユーナとは見た目も違う。別人だ」

 

 そう、俺はラースがどんな存在なのかを知っている。

 バーグの娘の魔族であり、手下として王都で暗躍する存在。

 そんなラースがユーナと同一人物であるはずがない。

 

「くっふふふ、あ~はははは! これは傑作だわぁ!」

「何がおかしい!!」

 

 突如として心底愉快だと笑い出したレディシアに、俺は不快感を露わにしながら、そう糾弾する。

 しかし、レディシアは笑いを止めることなく、笑い続けたまま、俺に対して清々するように言った。

 

「師匠としてユーナを育てあげた者が何も知らないなんてねぇ! いいわぁ、わたくしが教えてあげる! ラースはねぇ、ユーナのもう一つの姿なのよ!」

「もう一つの姿……だと?」

 

 何を言っているんだ此奴。

 もう一つの姿とか、ポケ○ンでもあるまいし、そんなものがあるはずないだろと、俺は胡乱げな視線でレディシアを見るが、レディシアはそれすらも面白いと言った雰囲気で、愉悦の笑みを浮かべながら言った。

 

「セリーヌは知っているわよねぇ? お姉様とユーナの母親」

「……ああ」

「そのセリーヌが魔族に攫われて犯されて壊されたことも」

「……クリスティア様から聞いた」

 

 俺はレディシアの質問に答えておく。

 だが、その中で次第に心の何処かから、『これ以上は絶対に聞くな!』という危機を知らせる声が響いてくる感じがする。

 しかし、ここまで来て止めることは出来なかった。

 ここまで聞いてしまったのなら、ここで聞くのを止めても、このことについて疑ってしまう疑心が残る。

 疑心の種が芽吹いてしまったのなら、白黒はっきりさせてそれを取り除かなければ、種がなかった頃の元通りの生活を送ることは出来ないのだ。

 

「その襲った魔族がこのバーグなのよぉ! そしてその時にセリーヌのお腹の中にいたユーナはバーグの種の影響を受けた! 魔族の力を得て、ラースへと変身することが出来るようになったのよぉ!」

「なっ……! そんなあり得ない! 魔族に変身なんて……!」

「それがあり得るのよぉ! 何ならそこにいる本人に聞いて見ましょうか? ねぇ、ユーナ。貴方はラースでもあるわよねぇ?」

 

 その言葉で全員の注目がユーナに向く。

 そして、ユーナは決意のこもった瞳でその言葉を言った。

 

 ――言ってしまった。

 

「確かにわたしはラースでもありました」

 

 は? 何を言っているんだユーナ?

 お前がラースだなんて、そんなことがあっていいはずがないじゃないか。

 

 俺は思わずそんな強がりを内心で口にする。

 

 だが、敵であるレディシアも、ラースの親であるバーグも、何よりも当人であるユーナがそうであると断言している。

 これ以上のものは存在しないと言えるほどの証拠だ。

 

 目の前が真っ暗になり、思わず俺が倒れそうになる中で、ユーナはラースであると断定したユーナ達の会話は続いていく。

 

「ほら、わたくしの言った通りでしょう?」

 

 レディシアは勝ち誇ったようにそう言うと、ユーナに向かって言う。

 

「ユーナ、貴方はラースとして、このバーグの手下として、今まで散々悪事を働いてきたわぁ。それが今更お姉様を助けに来て、正義面をするつもりぃ? 貴方がやるべきことは今まで通り、バーグの命令を聞いて、そこにいるお姉様を殺すことよぉ」

 

 え、え、ちょっと待って。

 本当にユーナとラースは同一人物なのか……?

 

「確かにわたしはラースとして悪事を働いてきた。もう一つの人格が行ったことであり、わたし自身が知らなかった事だとしても、それはわたしの罪です」

「なら――」

「ですから、わたしはその罪を背負って、償うために人々の為に働きます! クリスティアお姉様を助け! そしてこのクーデターを収めて見せます!」

「お前では話にならない。――ラース! さっさと出てこい!」

「ラースはもう居ません! わたしと一つになった! 全ては自分勝手な都合でわたし達を利用したバーグ! 貴方をぶっ飛ばすために!」

「貴様……!」

 

 ちょっと待って! ちょっと待って!

 めちゃくちゃ良いやり取りをしている気がするけど! ユーナがラースだった事に関する衝撃で! 全然頭に入ってこないからちょっと待って!

 

 もう駄目だ。

 ここまでユーナとラースが同一人物であることを誰もが認めているのなら、その二人が別人だと思うことは出来ない。

 

 こと、ここに到っては観念しよう。

 ユーナとラースは同一人物。

 二人で一つの体を共有し合っていた存在だったのだ。

 

 ……あれ? ってことはあれか? 

 俺はユーナを攻略しているつもりだったが、気付かなかっただけで、実はラースルートを攻略していただけなのか!?

 

 師匠として人間の技術をユーナ(ラース)に教え、人族の普通の暮らしを、ユーナ(ラース)とデートすることで見せる。

 よくよく考えて見れば、俺がこれまでユーナに対して行ってきたことは、ラースルートでラースを落とす為の行いと被っているのだ。

 

 それを自覚した瞬間、あれだけ色鮮やかに見えていた思い出が、まるで灰となるように、灰色になってかすんでいくような実感を覚えた。

 

 自分だけのイベントだと思っていたものは、結局はこの世界に用意されたイベントの一つで、俺はただそのレールの上に乗って好意を得ていただけで、己の力で成し遂げることが出来たなんてものは何もなく、自らの手で望んでいたものを勝ち取った訳でもない……。

 

「あ、ああ……」

 

 ただの道化。

 あれが用意されたイベントであるとも気付かずに踊っていた間抜け。

 

 ――それが俺だ。

 

 それにラースがユーナと言う事は、ユーナは攻略対象――。

 いや、待てよ?

 

 そこまで考えた所で俺は気付いた。

 ラースがユーナであることは、ユーナが攻略対象であることに繋がらないと。

 

 さっき、ユーナも言っていたじゃないか!

 ラースはもう一つの人格で、行ったことは知らなかったと。

 つまり、ユーナはラースに体を勝手に使われていただけの、ただの被害者だ!

 

 俺の価値観からすれば、それならばユーナとラースは同一人物には当たらない。

 俺が何よりも大切にするのは心だ。

 体が同じでも別人格であり、お互いの行動を知らないなら――。

 

「あっ!」

 

 そこで俺は気付いた。

 気付いてしまった。

 

 ラースルートの時、一度だけラースがプレイの一環だとして、別人のようになってアレクと行為をしたことがあった。

 ゲームとして見ていた時は、ラースは演技派なんだなと、ラースの意外な一面を見られて面白がっていただけだったが……。

 

 今にして思えば、あれは本当に別人――ユーナだったのでは?

 

 ユーナがラースを、バーグをぶっ飛ばすという面で取り込んだように。

 ラースがユーナを取り込むために、アレクを好きだという感情をユーナに埋め込む目的で、アレクにユーナを抱かせたのではないか。

 

 そんな発想が頭をよぎる。

 

 勿論、これは俺のただの考察だ。

 前世の世界でそのことは明言されておらず、インフィニット・ワンの開発者もいないこの世界では、本当のところを探ることは出来ない。

 

 だが、俺はその可能性に気付いてしまった。

 そしてその可能性が低くないことも実感してしまった。

 

 ああ……もう駄目だ。

 こうなってしまったら、もう無かったことには出来ない。

 

 ユーナ・フォン・フェルノは……アレクと愛し合った……インフィニット・ワンの攻略対象の一人だ。

 

 俺はそれを理解してしまった――。

 

「ふざけるなよ……!」

 

 そしてそれを理解した俺に沸きあがってきたのは強烈な怒りだった。

 

 あとちょっとだったのに!

 何も知らなければ! 俺はこのままユーナと恋人になって! そして満ち足りた気持ちで幸せになることが出来たのに!

 

 知ってしまったら! もう無理じゃないか!

 俺が幸せになることが出来ないじゃないか!!

 

 ようやく果たせそうだった夢。

 前世の頃からの負の負債を全て無くせるようなハッピーエンド。

 それを目の前で取り上げられて、激情が俺を支配する。

 

 前世も含めて今までの人生でこれほどの怒りを感じたことは無い。

 俺がそう言う思いで視線を戻すと、目が合ったレディシアが言った。

 

「っち! 全ては貴方のせいねぇ……フレイ! 貴方のせいでユーナはラースを調伏してしまったわぁ! それだけじゃない! 貴方の銀色の髪を見ていると、散々わたくし達の邪魔をしてくれた銀仮面のことを思い出すのよぉ!」

 

 レディシアのその言葉に俺はキレた。

 

「好き勝手に言いやがって――! 俺はお前のせいで! 長年の夢を潰されたんだよ! 絶対にお前を許さない! レディシアぁあーー!!」

「っは! いい気味じゃないのぉ! 何のことを言っているか知らないけど、貴方のその苦渋に満ちた顔を見ると、笑みがこぼれてしまうわぁ!」

 

 俺はそこでレディシアを見るのを止めて、ユーナの肩に手を置いた。

 

「師匠?」

 

 疑問符を浮かべるユーナに対して俺は言う。

 

「ユーナ! レディシアは俺がやる! だから、お前はバーグを倒せ!」

「わたし一人でバーグを……!」

 

 そこまでユーナが言った所で、俺はそれは違うと首を振った。

 

「ユーナ、周りをよく見ろ。お前には一緒に戦ってくれる人が居るはずだ」

「周りを――クリスティアお姉様……」

 

 周囲を伺って、後ろにいたクリスティアの存在を目にするユーナ。

 そしてクリスティアに対して言った。

 

「クリスティアお姉様……わたしは……!」

「皆まで言うな、わかっている! ユーナ! 共に戦おう!」

 

 そう言って、クリスティアはユーナの隣で武器を構えた。

 クリスティアに受け入れて貰ったユーナは、感極まった様子で言う。

 

「はい!」

 

 そんな様子を見ていたレディシアはこちらを睨みながら言った。

 

「麗しい姉妹愛ですわねぇ。お姉様。それにバーグは警戒しているようだけど、転移しか出来ない魔力回路が潰れた能無しが、わたくしに勝てるとでも?」

「ああ、勝てるさ。お前のそのプライドを木っ端微塵にへし折って、いかに自分が罪深いことをしたのかわからせてやる……!」

 

 俺はそう言うと手に盾を取り寄せて次々と地面に突き刺す。

 それをレディシアは胡乱げな様子で見ていたが、直ぐさま気を取り直すと、杖を取り出して俺の方へと向けた。

 

「焦げ死になさい! ライトニングスピア!」

 

 杖から雷の槍が放たれる。

 それは俺に向かってきて――突如として目の前に転移した盾に受け止められた。

 

「なっ!?」

「どうした? お前の魔法はその程度か?」

「一度防いだからと言って! 調子に乗るんじゃないわぁ! ライトニングクラッシュ!」

 

 その言葉とともに俺を中心とした範囲全てに雷撃が襲う。

 

「点で駄目なら面で攻撃するまでよぉ! これなら――」

「無駄だ」

「――っ!」

 

 俺の周囲を覆うように全ての盾が展開される。

 その中で無傷でいる俺を見てレディシアが思わず呻く。

 

「く……! サンダーレイン! ライトニングスピア! ライトニングクラッシュ! サンダーボム! サンダートルネード!」

 

 次々とレディシアが魔法を放つ。

 だが、その全ては俺の盾が受け止める。

 

「な、なんで――!」

「俺はただ転移させているだけだ。お前の攻撃先に盾をな」

 

 そう、俺がやっていることは至極単純だ。

 魔力を伴っていない無生物なら、俺は手で触れていなくても、自由に転移させることが出来る。

 それを利用して、レディシアの魔法が俺に当たる前に、その進行方向に盾を転移させ、魔法が俺に当たることを防いでいるだけだ。

 

「ふざけないで! そんなことでわたくしの魔法が! ただの盾なんかに!」

 

 レディシアは癇癪を起こしたようにそう言って魔法を連発する。

 だが、鷹の目のイヤリングによる三人称視点で、自身の周囲の全てを視認している俺には死角を狙って魔法を当てるということすら叶わない。

 

 俺はレディシアが魔法を撃つ中で、悠々と見せつけるように歩いて、レディシアへと近づいていく。

 初めの頃は三人称視点状態で、体を上手く動かすことに苦労したが、既になれたものであり、何てこともないように、俺はレディシアへと向かって行った。

 

「くっ来るな!」

「来て欲しくないなら俺を止めて見せろよ。それとも、ご自慢の魔法の力じゃ、そんな事すらも出来ないのか? なあ?」

 

 俺が煽るようにそう言うと、その言葉に激怒したレディシアは、怒りで顔を赤くしながら、激しく魔法を放つ。

 

 レディシアは魔術師タイプのキャラだ。

 王家の血統を誇り、王への野心をむき出しにする彼女に取って、属性魔法を多用するのは、優れた血統や魔力回路を持つ自分の優秀さを見せつける行いとなる。

 だからこそ、魔道師としての力量を否定するような俺の言葉に怒りを覚え、そしてそれを否定するために何度も魔法を放ってきたのだ。

 

「ライト……がぁ!?」

「魔力切れだ。結局、俺を止めることは出来なかったな」

 

 何度も魔法を放っていたレディシアが、ついに魔法を放とうとした瞬間に、全身に痛みを覚え、意識を失いかけて倒れそうになる。

 

 魔力切れによって起こるその症状。

 それをみた俺は、直ぐさまレディシアに近づくと、その手を取った。

 

「はぁはぁ……貴方、何を……!?」

「王女であるお前は殺せない……だけど、この程度じゃ俺の気が晴れない」

 

 俺はレディシアの人差し指に、環境適応リングを付けながら、恐れおののくレディシアに向かってそう言う。

 

「だから、空の旅へと招待するんだ」

「は、離しなさい! 無礼者! わたくしを誰だと……!」

 

 危機を感じたレディシアがそう言うが、俺の動きは止まらない。

 しっかりと指輪を付けたことを確認すると、俺はレディシアと共に、空を見ることで転移を行う。

 

「わかった。離すよ」

 

 そして大空へと転移した後に掴んでいた手を離した。

 

「え?」

 

 自分が今どこに居るかを理解出来なかったレディシアが、思わずそんな間抜けな声を上げる。

 そして、直ぐに自分が落下していることに気付くと、建造物ですら点のように見える足下の景色を見て、その高さに思わず叫びだした。

 

「い、いやあああああああああああ!!!!!」

「はは! 紐無しバンジージャンプだ! 手に付けたリングがないと、気圧差で死ぬから、それを外すのはやめておいた方が良いぞ!」

 

 俺はレディシアにそうアドバイスをすると、転移で落ちるレディシアを追う。

 

「うぐ……! ウィンド! ウィンド! ウィンド!」

 

 魔力切れを起こしている体に鞭を打って、レディシアは風魔法を連発した。

 だが、その程度では落下スピードを緩めることなど出来ない。

 

「止まらない……! いや! 死にたくない! 助けて! 誰か助けてぇ!!」

 

 そんな風に助けを呼ぶが、助けにこれるものなどいるわけがない。

 結局はその叫びは何も齎さず、徐々に重力によってスピードは加速し、どんどんと地表が近くなっていく。

 

「ああっ! やめて! やめてぇええええ! お爺様! 神様!」

 

 そんな状態に発狂したようにレディシアが叫ぶ。

 自らの手ではどうしようもない状況。

 地表が近づくことでわかる自らの死期。

 

 それを受けて、普段は妖艶な雰囲気で集団を束ねるカリスマ性のある王女が、ただの小娘のように助けを求めて泣き叫んでいた。

 

「あっ……」

 

 そうして地表に付く直前、全てを諦めて受け入れようとしていたレディシアの体に俺は触れると、転移で向きを逆転させながら移動した。

 

 俺は色々なものを出してぐちゃぐちゃになったレディシアを、汚くて触りたくないと思いながらも、このまま殺すわけにはいかないので、お姫様抱っこで抱きかかえ、向きを反転したことで落下と重力を相殺させて地面へと降り立つ。

 

 しばらく、ぼーと現実を受け入れられなかったレディシアだが、ある程度時間が経つと確認するように呟いた。

 

「わたくし、生きてますの……?」

「そうだな」

 

 俺が返答したことで現実に返ったのか、レディシアは怒りを露わにしながら、俺に向かってなじるように言う。

 

「貴方――! 王族に向かってこんなことをしてただで済むと思っているの! 死刑! 死刑よぉ! わたくしが王になったら必ず貴方を――!」

 

 まるで先程の恐怖を忘れたいかのように息巻くレディシア。

 そんな姿に俺も思わずにこりと笑顔を浮かべた。

 

「良かったよ。これくらいで折れないでいてくれて」

「なっ――!」

「さーて、次はどうしようかな? 迫るマグマの近くに立たせるか、雪山の中で置き去りにするか、それとも底なし沼に最後まで沈んでみたりする?」

「や、やめ――!」

「さあ! 楽しいツアーの始まりだ!」

 

 そう言って俺達は次なる場所へと転移した。

 

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