エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
フレイが転移でレディシアと何処かへ消えた。
それを見て内心ほっとした気持ちをクリスティアは感じる。
(これはフレイに気を遣われたかな)
クリスティアは思わずそんなことを考えた。
敵対したとは言え、レディシアは妹だ。
それと殺し合うことになれば、さすがに手が鈍ってしまう。
フレイは、そんな姉妹が殺し合う状況にならないように、自らレディシアの足止めを引き受けてくれたのだとクリスティアは思った。
あちらは任せておいていいだろう。
そう考えてクリスティアはバーグへと視線を向ける。
「先程からずっと動かないんだな」
皮肉げにバーグにそう言うと、バーグはそれを鼻で笑った。
「下手に動いてあの男に心変わりでもされたらことだからな」
「つまり、フレイを恐れて縮こまっていたわけか」
「こんな所で自らが死ぬ可能性を作るわけにはいかん」
そこまで言った所でバーグはにやりと笑った。
「お前達程度なら、幾らでも嬲ることが出来るからな」
その言葉に対してクリスティアは強い意思を持った目で見返す。
「結局のところ、お前は自分より弱い相手にしか威張ることが出来ない情けのない奴ということだな。――私達はそんな相手には負けない! そうだろ! ユーナ!」
(思いを変えるためには、相手にそうではないと証明して貰うしかない……か)
クリスティアはフレイがかつて語った言葉を思い出しながらそう思う。
(確かにその通りだったな。先程のバーグへの啖呵を聞いて、私はユーナは彼奴の力を持っていたとしても、彼奴の子供などではないと思うことが出来た)
窮地に陥った自らを助け、そして共に進んでいく意思を見せたユーナ。
それ以上のクリスティアに対する証明が他にあるだろうか。
(後でフレイには礼を言わないとな)
ユーナをここまで育ててくれたフレイへの感謝の気持ちを思いながら、自然にユーナに対して問いかけが出来たことを、クリスティアは素直に喜んだ。
「はい! クリスティアお姉様!」
そのクリスティアの気持ちを察してユーナは答える。
そうしてクリスティアとユーナはバーグに武器を向けた。
その意思の強い二人の目を見てバーグは言う。
「その目……その目だ。下等種如きが、私が殺そうとしているのに、怯えることもなく、希望を抱いた目をして――」
バーグはそう言って、二人とその親であるセリーヌを重ねると、嘲笑うように目の前にいる二人に対して言った。
「いいだろう! 二人纏めて相手にしてやる! そしてお前らの母親であるセリーヌと同じように! 徹底的に犯し尽くして! その心を壊してやる!」
その言葉と同時に、四天王の一人、爆炎のバーグは、その異名に恥じないような立派な炎球を生み出すとそれをクリスティアに向かって投げた。
「させません! クリスティアお姉様はわたしが守る!」
ユーナがそう言うとユーナの銀の腕輪が嵌められた腕が変異する。
銀の腕輪と手甲を取り込んで生まれた新たな手甲は、魔族の姿であったラースのものとも違い、何処か聖なる光を携えているように見えた。
そんな手甲から放たれた炎はバーグの炎球を撃ち落とす。
「なに!?」
その事にバーグが驚く中で、ユーナに守られたことで難なく近づいたクリスティアは、氷の属性魔法を剣に乗せてバーグへと振るった。
「フロストエッジ!」
「くっ!」
クリスティアの斬撃がバーグを掠め、バーグの体に傷を付ける。
「私に傷を……! 小娘が!」
するとバーグは拳に炎を纏い、回転するように周囲に放出する。
それを見たクリスティアは一歩後ろに引きながら言う。
「近距離しか出来ない訳ではないぞ! ライトニングスピア!」
「っがぁ!」
クリスティアの放った雷の槍はバーグに刺さった。
致命傷ではないが、バーグはその痛みに呻く。
クリスティアは、パッケージ絵にも描かれている、インフィニット・ワンのメインヒロインの一人であり、その能力は万能タイプの魔法剣士だ。
初めてストーリーをプレイするプレイヤーが敵に苦戦しないように、全ての能力が高水準であり、四天王のバーグ相手でも闘うことが出来ていた。
そして――。
「火は貴方だけのものではありません!」
バーグが防御用に出した炎の壁を突き破ってユーナが現れる。
その拳に目一杯の炎を乗せて、バーグの顔に殴り掛かった。
「これは! ラースの分です!」
「ぐあっ!?」
右頬にその一撃を食らったバーグは大きく吹き飛ばされる。
直ぐに立ちあがったバーグは、自らへと向かってきたユーナに殴り掛かる。
だが、それはユーナに容易く躱された。
そしてユーナの拳がバーグに迫り――。
(馬鹿め!)
バーグはそれを防ぎ、カウンターを決めようとする。
しかし、その攻撃はバーグのその動きを誘うためのフェイクだった。
「お姉様!」
「ああ!」
ユーナが避けた先にはクリスティアがいた。
そしてその剣には雷の属性が付与されている。
「ライトニングブレード!」
「があああああ!!!」
それを受けてバーグは思わずその場で膝を突く。
そして警戒するように退いた二人を見て思わずいった。
「何故だ……何故、私がこのような……!」
「私はお母様が魔族に心を壊された時から、その魔族に必ず報いを受けさせてやると、自分を高め続けてきた」
「わたしは、そんなクリスティアお姉様のために、師匠に指導して貰って、いつか力になろうと腕を磨いてきました!」
幼い頃から母の仇を討つために力を磨いてきたクリスティア。
そして、ゲーム知識を持つフレイから万全の指導を受けてきたユーナ。
「常に自らを高め続けてきた私達が!」
「貴方のような弱い者虐めしか出来ないような奴に!」
「「負けるはずがない(ありません)!!」」
そう断言するようにバーグに対して言う。
差は決定的だった。
バーグは確かに四天王の一人だったが、強い相手と闘うこともせず、自らより弱い人族相手に、自らの愉悦を満たせるような悪事をする生活を続けていたために、その力量は鈍ってしまっていたのだ。
(下等種が……! 私を見下して……!)
バーグの心の中に怒りが満ちる。
だが、同時に人族の様々な悪意を見てきたバーグはしたたかになっており、冷静な部分がこの状況を打壊するための方法を見つけていた。
(こんな状況で戦っていられるか! 一人一人ならまだ私の方が強い! ここは何とかして逃げ出して! 彼奴らが浮かれた時に、一人ずつ嬲ってやる!)
そう言うとバーグは懐から煙玉を取り出す。
そして、バレないようにその場に放った。
「――! 逃げる気か!」
「くはははは! 私は生きる! 生きて思い知らせてやる! それまで夜に怯えながら! せいぜい生きながらえるといい!」
クリスティアの言葉にそう答えながら、脱兎の如く逃げ出すバーグ。
「――そう来ると思っていました」
「がは……。な、に……?」
逃げ出した先から現れたユーナの拳がバーグの腹部を貫通する。
信じられないものを見る目でバーグはそれを眺めて言う。
「お、お前……ラース……親を殺す気か?」
「貴方は私の親ではありません。倒すべき敵です」
そう言って拳を抜き取るとバーグを蹴飛ばす。
「それにラースもこんな情けない親はいらないそうです」
「お、お前ぇえええええ!」
「人如きにやられる無様さを実感しながら死になさい!」
「それが!」
ユーナの言葉に応えるかのように、バーグが飛ばされた先で、強大な光の魔力を剣に集めたクリスティアが言う。
「母様を嬲った! お前への罰だぁあああああああ!!!」
「ぎゃあああああああああ、私が、私が、人間にぃいいいい!!!」
クリスティアの渾身の一撃を受けてバーグが消えていく。
そしてバーグが消えたそこには、魔道具が一つぽつりと残されていた。
「師匠は力は力、どう扱うかが大切と言っていましたけど……」
そう言うとユーナは、バーグが変化した魔道具を踏みつぶす。
「わたし達には貴方は必要ありません」
そうして足をどけた場所には、壊された魔道具だけが残っていた。