エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
転移して再び王城に戻ると既に戦いは終わっているようだった。
まあ、元からゲーム内でも強キャラだったクリスティアと、俺が手ずから鍛えあげたユーナがいるなら、ボスとしては弱い方だったバーグに負けるはずがないけど。
ユーナが、元はバーグだったと思われる魔道具を踏みつぶして壊している姿を見ながら、俺は思わずそんなことを思う。
あれはラースルートの攻略特典だったが、ゲームクリエイターが四天王の討伐報酬はそれぞれの属性を活かしたかったのか、一律で対応属性の魔法強化効果を持った魔道具にしており、魔法しか強化しない為に俺には意味ないもので、属性魔法強化自体は他にも山程代用品のアイテムがあるありふれた代物なので、別に壊された所で何も思わない。
むしろ、それで気が晴れるなら良かった。
と思っていると、二人が俺が転移してきたことに気付く。
「師匠! わたし達! バーグを倒しました!」
「ああ、それは良かったな」
「フレイ、君の方はレディシアを……」
そう言いながら、こちらを見たクリスティアの言葉が止まる。
そして、俺と俺の足下にいるそれを見て、困惑したように言った。
「その……これはどう言う状況だ?」
「……。何と言ったらいいか……」
俺はどうしたもんかと頭を悩ませる。
そして俺の足下で、陶酔したような表情で俺にしがみつくレディシアを見た。
するとレディシアは、俺に見られたことで、ぶるっと快楽で身を震わせながら言う。
「ああん。フレイさまぁん!」
「本当に何があった!?」
驚愕したようにそう言うクリスティア。
そうだろう。あの傲慢だったレディシアが、ちょっと目を離した隙に、こんな無残な状況になってしまったのだ。その驚愕はもっともなことだ。
俺だって信じられない。
何でこうなった?
俺は思わず頭痛を訴える頭を抑えながら言う。
「王女だから殺すわけにもいかなくてな……心を折ることにしたんだ」
「心を……?」
それがこの結果か? と言うクリスティアの目から、目を反らしながら、俺はレディシアに起こったことを説明していく。
「最初は天空落としでわからせようと思ったんだ」
「天空落とし?」
「転移で空の上に飛ばして、そのまま落下させる技」
俺のその説明を聞いて状況を想像したのか、クリスティアとユーナの二人は、青い顔をしながら言う。
「それは恐ろしいな……」
「勿論、殺すわけにはいかないから、最後には助けたよ? それでまだまだ全然余裕そうな態度だったから、特別ツアーに招待したんだ」
「……ここまでの話から碌でもなさそうなものだとわかるが……その特別ツアーとはどのようなものなんだ?」
クリスティアからそう疑問の声が飛ぶ。
それは聞きたくもないが、状況を知るためには聞くしか無いといった感じだ。
「そう大したことじゃない。マグマによって徐々に狭まる大地の上にレディシアを置いて、マグマが完全にそこを覆う寸前まで放置したり、底なし沼に突き落として、完全に沈みこむまで助けなかったり」
そう口にする度に、クリスティアの顔が険しくなっていく。
俺はそれを見ながらも、説明を続けていく。
「ああ、あとは雪山に放り投げて凍え死にそうになりながらも、やっと用意したかまくらを見つけた所で、それをぶっ壊して希望を絶望に変えたりとか……。まあ、そのほかにも諸々、危機的な状況を作って心を折りに言ったんだ」
絶叫系アトラクションのわんこそば。
それが俺がレディシアに対して行ったことである。
「何でそこまでしたんだ! 絶対に途中で十分だっただろ!?」
俺の話を聞いたクリスティアが、泥で汚れたり、服が焦げているなど、スラム街の少女よりもボロボロで変わり果てた姿となったレディシアを見ながら、俺をそう糾弾する。
俺はそれに申し訳ない気持ちになりながらも言った。
「いや、確かに途中で、許しを請いてきたり、これまでの行いを懺悔したり、突如として自分語りを始めたりしてきたよ」
「なら、どうして!?」
「だって、それが本心から言っているのかわかんないじゃん! 此奴は他者を誑かし、クーデターまで起こすような悪女だぞ!? 嘘泣きによる泣き落としだって得意分野だろうし、下手に気を許した途端に後ろから刺されかねないのだから、念の為にと、最後までツアーを実行するのは間違ってないだろ!?」
何せ、天空落としを耐えきった女だ。
普通の奴なら、あの時点で心が折れる。
それを耐えきっているのだから、他の行いにも耐えられておかしくない。
それに俺はレディシアを殺すことが出来ないのだ。
つまり、紐無しバンジージャンプと言ったが、実際には、最後に俺という紐がどうにかして、レディシアを助けるということはわかりきっている。
最後には必ず救われるとわかっていれば、恐怖心も薄れる。
それこそ、前世でバンジージャンプやスカイダイビングをする人と、同じくらいの恐怖しか感じていない可能性はあった。
だから、数が必要だったのだ。
最後までツアーを実行して、死なないとわかっているにしても、酷い目に合うんだぞと明示することで、これから悪事をしようとする心を折る。
その為に俺は、レディシアがどれだけ泣き叫ぼうとも、最後まで実行したのだ。
「俺としては、これで悪事をすれば酷い目に合うんだと理解して、もう二度とクーデターのような悪事を起こさないようにわかって貰えれば良かったんだ! それなのに此奴……何故か俺に縋り付くようになりやがって……! 何なんだお前は!」
俺はそう言ってレディシアを離そうとするが、がっしりと足に縋り付いたレディシアは、どれだけ足を振っても決して離れない。
そんな中、レディシアが俺に向かって言う。
「愚かなわたくしはようやく気付いただけですわぁ」
「何にだよ!?」
「フレイ様が……わたくしの神様だと言うことにぃ!」
「「「か、神!?」」」
その場にいるレディシア以外の者が驚愕の声を上げる。
「何でそうなる!?」
俺のその言葉に、恍惚とした表情でレディシアは言う。
「わたくしは何度も死ぬとしか思えない状況に追い込まれましたわぁ。その時には、これまで頼っていた、自分の力量も、王家の威光も、お爺様の力も、何の意味もなくて、どれだけ助けを求めても神はやってきませんでしたわぁ……」
そこまで話した所で、遠い目をしていたレディシアは、真理を悟ったと言い張る狂人のように、何らかの崇拝に満ちた狂った瞳をすると言う。
「だけど、フレイ様はどんな時でもわたくしを助けてくれましたわぁ! 死を覚悟したその時にフレイ様は現れ、どれだけわたくしが汚れていようとも、どれだけわたくしが無様であろうとも、必ずわたくしを救い出してくれましたの!」
そして満面の笑みをレディシアが浮かべる。
俺がそれに「ひっ!」と思わず引いていると、レディシアは言う。
「そこでわたくしは理解したのですわ! どんな時でもわたくしを救ってくれるフレイ様こそが! わたくしの神! 地位も名誉も自分すらもどうでもいい! 神に救われたわたくしは、その神の為に全てを捧げなくてはならないと!!」
「「いやいやいや!?」」
俺とクリスティアの声が重なる。
そして重なるように二人して言った。
「「ただのマッチポンプだから! そのピンチを起こしたのは、俺(フレイ)だぞ!? 何でそれがそうなるんだ!?」」
俺のその言葉にレディシアがキョトンとした顔をする。
「それがどうしたのかしらぁ?」
「は? いや、どうしたのって……」
「ピンチを生み出したのはフレイ様の試練ですわぁ。分からず屋のわたくしの為に、フレイ様が自らの素晴らしさを教えてくださったのですわぁ」
「……」
本気で言っていそうなその言葉に、俺とクリスティアが押し黙る。
そして黙ってレディシアを見ていたユーナがぽつりと言った。
「師匠に成長させて貰うのは、弟子であるわたしだけのはずなのに……」
ギリと何かを噛みしめるような音がして、俺はびくりとそちらに目を向ける。
そこには、明らかに嫉妬の目線でレディシアを見るユーナの姿があった。
「いやいや! これは成長じゃなく! 壊されただけだぞ! ユーナ!」
クリスティアの叫びのようなその言葉に、俺は大きく頷く。
だが、一方でユーナとレディシアはそれに納得しなかった。
「師匠によって変わっているんだから成長です!」
「わたくしは壊れていませんわぁ。新しい自分を見つけましたの」
それを聞いて俺は思わず思った。
ここにまともなのは俺とクリスティアしかいないのか!?
このまま話を続けても良いことがないと思った俺は、パンっと手を叩くと、話を変えるようにクリスティアに言った。
「と、ともかく……首謀者の二人も倒したし、後はダルベルグ公爵を捉えれば、この内乱も終わりだな。いやはや、ユーナがバーグを倒せるまで、しっかりと成長していて良かったよ」
そんな風に話を変えるために無理矢理言った一言。
それにユーナが反応する。
「師匠。わたしは一人前になりましたか?」
「ん? バーグを倒せたんだから、一人前と言えるだろう」
俺が軽い気持ちでそう言うと、ユーナは食いつくように言う。
「でしたら、あの時の返事を教えてください! 師匠相手ならわたし……」
「あの時の……?」
俺はそこまで言った所で、自分の危機的な状況に気付く。
それってあの時のユーナに、婚約したいからここまで尽くしてくれるのか、と聞かれた時の話のことか!?
確かにその時は、一人前になったら答えると言ったけど……。
まずい、明らかにまずい。
あの時はユーナを俺だけのヒロインにする気が満々だったから、ユーナが一人前になった時に聞かれたら、ユーナが好きだから手伝ったんだと言うつもりだった。
そうして、俺の告白を受けたユーナと恋人になり、二人でラブラブな恋人生活を送っていく予定だったのだ。
だが、ユーナは攻略対象だ。
つまり、もう俺だけのヒロインになることはない。
だからこそ、ユーナに好意を持っていたから手伝っていたなどと言う事は、絶対に言うことが出来ないのだ。
「あ、あ~。それは……だな……」
俺はそう言葉を濁しながら必死で考える。
この状況を打破するための一手を。
そして、俺はそれを見つけることが出来た。
「勿論、王家への忠誠心からです。ユーナ王女」
「……は?」
俺は綺麗な礼を作ってユーナにそう言った。
そう、気分は王家の者を見守ってきた忠義の騎士。
まだ子供な王家の人間の師匠となって、その成長を見守っていく、老騎士ポジションの気持ちになりきるのだ!
「フレイ! 何を言っているんだ!? お前は、ナルル学園の入学式の時に、ユーナに告白していたじゃないか! ユーナが好きだから師匠になったんだろう!?」
黙ってろ! クリスティア! 今、大事なところなんだよ!!!
俺は横やりを入れてきたクリスティアにぶち切れながらも必死で取り繕う。
「HAHAHA! 俺はあの時、ユーナ様に振られて、己の立場というものを理解したのです! 侯爵家の……それも当主にすらならないような者が、王家の者を娶ろうとするなど、愚の骨頂! お互いの立場に見合った相手を見つけるべきだとね!」
「……」
完全に黙り込んでしまったユーナ。
ここは押し切るしかないと俺は全力を尽くす。
「そして立場を理解したからこそ、王家への忠誠心をしっかりと見せるべきだと考えたのです。それこそが俺がユーナ様の師匠になった理由であり、今の俺にユーナ様を己のものにしようなどという、大それたことを考える邪な気持ちは微塵もありません!」
や、やったか……?
そんな俺の前で、ユーナが言葉を絞り出すように言う。
「師匠には……わたしを恋人にする気持ちはないと言うんですか……?」
「ええ、今の俺にはそんな気持ちは一切ありません。俺はユーナ様のことはもう諦めて、新しい俺だけのヒロインを探し始めております!」
「……わたしじゃ、駄目なんですか……?」
「駄目ですね」
間髪入れずに言った俺の言葉に、ユーナは押し黙り、その様子を見ていたクリスティアが驚愕したような様子で言う。
「おま、お前という奴は――!」
だが、ここで問題を広げるつもりは俺にはなかった。
だから、ユーナの肩に手を置くとはっきりと宣言する。
「ユーナ様はバーグを倒せるほど強くなられた。これからは、もう俺が師匠として貴方を教え導く必要はないでしょう……」
俺は弟子が自分を超えたのを見て、その弟子に全てを託して、自らは一線から退き、隠居生活を始める老騎士ポジションの気持ちになって、感極まったような声色で、ユーナに向かってそう言った。
「――は?」
信じられないという顔で絶句するユーナ。
だが、許して欲しい。
王族相手に親密になり、外堀を埋められてしまえば、侯爵家の人間では逆らえず、無理矢理婚約させられることになるかも知れないのだ。
そうなれば、俺の夢は叶わず、幸せになることが出来ない。
だからこそ、その可能性を減らすために、全く恋愛感情がないことを伝え、そして親密な現在の師匠と弟子という関係性を終わらせて、これ以上付き合いが深くなるのを防がなければならないのだ。
いきなり弟子を放り投げると言う行為に、後ろめたさを感じないわけではないが、それでも前世の頃から思い続けていた、俺だけのヒロインと恋人になるという俺の幸せの方が優先される。
何せ、前世の頃から抱き続けていた夢だ。
何十年も思いを積み重ね、そして死してなお、抱き続けるこの思いの強さに、勝てるような思いがあるはずなんてない。
それは、俺自身の思いであろうとも、他者の思いであろうともだ。
だからこそ、俺は幸せにならなければならない。
この世界が、ゲームを元にしたご都合主義が溢れるリアリティのある世界だと言うのなら、強い思いが、切なる願いが、いつか必ず報われるというのなら、これだけ幸せになることを願っている俺にも、幸せになる権利があるはずだ。
そう俺にも――ハッピーエンドが訪れるべきなのだ。
……そうでなければ、やってられない。
救われたいという願いが都合良く叶う可能性がある世界で、異物である俺だけがそんな可能性もなく、野垂れ死ぬしかないなんてことは、決して許されることじゃないのだ。
そうでなければ、俺は何の為に二度も人生を……。
ユーナがダメだったことで心が弱っているのか、思わずそんな弱音が心の内から溢れてくる。
俺はこのままではいけないと、ユーナがヒロインになれなかったことについて考えるのを、気持ちが落ち着いた後にするために後回しにし、別の事柄について考えるように頭を切り替える。
そもそも、ユーナに俺の手助けが必要ないと言うのも事実だ。
師匠によって成長し、姉であるクリスティアと和解して、宿敵であったバーグをクリスティアと一緒に打ち倒す。
ユーナという攻略対象の物語は、既にハッピーエンドを迎えている。
だからこそ、今更師匠関係を辞めた所で、特に問題が起こるわけでもないだろうし、クリスティアとの関係を築き直せたように、これからはユーナ一人でも自分の足で歩いて行けて、そして何かに躓くようなことがあっても、クリスティアなど俺以外の誰かがユーナを支えてくれるだろう。
つまるところ、ユーナには、俺の代わりなど幾らでもいるのだ。
ここで俺がいなくなっても、何ら問題もなく、ユーナは幸せになれる。
故に俺はきっぱりとユーナに告げる。
「免許皆伝です! これからはユーナ様が師匠として、新たに弟子を取り、その者達を育てていくのです!」
「そ、そんな師匠……! わたしはまだ……!」
俺の言葉にユーナが反論しようとするが、俺はそれに対して安心させるように告げる。
「大丈夫。もっと自分に自信を持ちなさい。貴方はもう一人で歩いて行けるほど、しっかりと成長して強くなっている」
初めの方はレディシアの取り巻き達に嫌がらせをされても黙っているだけで、誰とも関わらずに過ごしていたユーナ。
今では嫌がらせも軽く流せるようになり、多くの人と話し合うようになり、積極的に活動することも多くなっていた。
その成長を思い出して思わずほろりとし、そしてちらりとクリスティアを見ながら俺はユーナに向かって言う。
「それに貴方には、貴方を支えてくれる仲間がいる」
師匠に何か頼らずとも頼れる仲間がもうユーナにはいる。
俺は弟子の巣立ちを見送る師匠の気持ちで言った。
「これからは貴方達の時代だ。仲間とともに自分達だけの未来を、君達の手で作り上げていきなさい」
何処かの漫画やゲームで使われていそうな言葉で、俺はにこやかにユーナに対して、きっぱりと別れを告げた。
「そ、それは――」
「無事ですか! クリスティア様!」
俺の言葉を聞いた、ユーナが何かを言おうとしたその時、兵士がその場へと乗り込んできた。
俺は意気揚々と、その兵士へと語りかける。
「クリスティア様の救助は完了した! そちらの状況はどうだ? ダルベルグ公爵は捕縛することは出来たか?」
「はっ! ダルベルグ公爵は今だ王城の一室を占拠しており、わが方の軍勢と激しい戦闘を繰り広げている状態です!」
「それはいけない! 俺が助けにいかなければ!」
俺は二人に聞かせるようにそう言うと、兵士に向かって言う。
「さあ、直ぐに行くぞ! 案内してくれ!」
「え? え?」
「ちょっと待て! フレイ――」
俺はクリスティアの制止の言葉も聞かずに、レディシアを無理矢理振り払うと、兵士を連れて転移する。
そして、兵士の案内で向かった先で、獅子奮迅の活躍を見せ、ダルベルグ公爵とその派閥の中核人物を軒並み捕縛し、ついでにダルベルグ公爵派によって捕らわれていたアマーリエを救出するなどして、クーデターの鎮圧に尽力した。
中世時代の人間相手に「今の人間は紐を付けて崖から飛び降りたり、トロッコで上下逆さまにくるくる回ったりするのを楽しんでるんだぜ」と言ったら、「未来人は頭が湧いているのか?」とドン引きされそうですよね。
そんな、ある意味、未来人ポジであるフレイは、バンジージャンプのように、安全が確保された上での恐怖しかないと、現代の価値観に当てはめて軽く考えていましたが、中世時代ポジであるレディシアは、安全が確保されてるなんて信じ切れず、いつ事故に見せかけて殺されるかもわからなかったので、普通に毎回紐無しバンジージャンプのような、命の危機を感じている状態だったため、ツアーを完遂した結果、精神崩壊を起こしてぶっ壊れてしまいました。
それとさすがに、第一目標のユーナがヒロインになれない存在だったというのは、フレイに取っても精神的なダメージが大きく、ちょっとだけメンタルがやられかけてしまいました。
女を取っかえ引っかえ出来る恋愛強者の陽キャなら、二度目の人生と言われても、「若くなってもう一度楽しめるぜ~!」とノリノリで、人生を楽しみにいけるのかも知れないですが、人生の辛さを知っている恋愛弱者の陰キャ側の存在からして見れば、二度目の人生と言われても、「またあの辛い日々を送らなければいけないのか……」と、それを聞いただけで心がポッキリと折れそうになる事態だと思います。
それなのに二度目の人生を頑張るのは、このやり直しで今度こそ自分の願いを叶えられると信じて、目的に向かって邁進出来るからですね。
だからこそ、自分の幸せを何よりも優先しなければいけないし、それが叶わないなんてことは考えてはいけないし、決してそのような事態を許してしまってはいけないわけです。
もし、それなのに二度目の人生でも目的を果たせなかったら、それはフレイという存在の全てを否定することであり、それを知ったフレイは、絶望して全てを諦め、無気力なただの抜け殻になってしまいます。
なぜなら、生まれも含めて全ての環境が変わって、前世の知識から恋愛に対して誰よりも早く取り組めるというアドバンテージがあるにも関わらず、前世と同じような結果に終わるのだとしたら、それはもうフレイに転生した人物の根本となる存在自体が、絶対に目的を達成出来ないダメな存在であるという証明になってしまうからです。
端的に言えば、一度の人生なら、生まれや環境が悪かったと、幾らでも言い訳が出来ますが、環境などが大きく変わった二度目の人生でも同じなら、もはや言い訳すらも出来ず、自分という存在のダメさが明確にわかることになってしまうということですね。
そして、存在そのものがダメであるとわかると、転生を繰り返して状況を変えたとしても、原因の根幹である自己を変えることが出来ないので、どれだけ努力して力を尽くそうとも、結局は全てが無意味であり、今の人生やその死後も含めて、叶えたいと切に願った願いが、絶対に叶わないものであると突きつけられることになります。
そんなことを認めるわけにはいかないフレイに取っては、自分の願いが叶って幸せになることは、今世で絶対に果たさなければならないものであり、敗北は絶対に許されないのです。
簡単に言ってしまえば、転生した瞬間から勝手に背水の陣が始まっている状態で、どれだけのものを犠牲にしようとも、後ろに引くことは絶対に出来ないというわけですね。
つまるところ、こじらせ野郎の記憶あり転生は、ある意味では呪いのようなものだということです。