エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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論功行賞

 

 ダルベルグ公爵派によるクーデターが失敗に終わって数日後。

 今日は今回のクーデター鎮圧に関する論功行賞が行われるとのことで、俺を含めて今回の件の関係者が王城へと集められていた。

 

「それでは、これより此度の件に対する論功行賞を開始する! メジーナ・フォン・トライトロンは前へ!」

「はい!」

 

 お茶会でのダルベルグ公爵派からユーナ王女を守った功績から始まり、王城でのダルベルグ公爵派の撃退に関わった功績と、今回の件で功績が低い者から順々に、宰相に王の御前に出るように言われ、そして王の御前に出ると、王から功績とそれに与えられる褒美が語られて、それを受け取って元の位置に戻っていく。

 

 他の者達が受け取っている褒美を見るに、功績が低い者は王家から金品などの現物が与えられ、功績が高くなるにつれて、ダルベルグ公爵派が持っていた利権や領地などが与えられる状況になっているようだった。

 それを考えると、まだ呼ばれない俺に対する褒美がどんなものになるか、期待感が徐々に高まっていく。

 

 バーグ以外の首謀者は俺が捉えたようなものだからな~。

 

 お茶会を襲ったキメラキマイラも倒しているし、何処からどう考えても、今回の件で論功が一位になるのはこの俺だろう。

 それを考えれば、褒美もかなりのものになると想像できる。

 

 下手にダルベルグ公爵派の領地を、飛び地として貰っても管理が出来ないから、何かしらの利権を貰いたい所だが……。

 

 俺がそう思っていると宰相から俺に声がかかる。

 

「次、フレイ・フォン・シーザックは前へ!」

「はっ!」

 

 俺は貴族達が集まっている場所から歩き出し、玉座に座る王の御前で跪く。

 王の言葉をじっくりと待っていると、王が俺の功績を話し始めた。

 

「フレイ・フォン・シーザック。其方は最初の襲撃があったお茶会にて、数多くの暗殺者達や、S級魔物であるキメラキマイラを打ち倒した。そして王城における決戦においても、レディシアやダルベルグ公爵などの首謀者を捕縛するなど、今回の騒乱において格別な活躍を行った」

 

 そこまで言った所で、一度言葉を切って溜めるようにしながら、王が言う。

 

「その為、其方を此度の論功一位とし、褒美として、シーザック家を陞爵し、新たな公爵家とする!」

 

 その王の言葉にその場が騒然となる。

 これまで侯爵家筆頭として、実質的な公爵家扱いされていたシーザック家。

 建国の英雄の家系でありながら、入り婿が政治を行うことを懸念され、侯爵家の地位に落とされることになり、それ以降は聖王国との結びつきが強くなってしまったせいで、聖王国に内部から乗っ取られるという危険性から、そのままずるずると侯爵家で在り続けた家が、ついに公爵家となることが出来たのだ。

 

 シ、シーザック家がついに公爵に……?

 公爵と言えば貴族としては最高位……! やった! 俺の活躍でついにシーザック家が貴族のトップに立つことが出来たぞ!

 

 なんだかんだ言っても地位が上がることは純粋に嬉しい。

 地位が上がればそれだけできる事も増えるし、それに他の上位貴族から横暴を言われる可能性も減るからな。

 

 これでシーザック家に無理難題を吹っ掛けられるのは王家だけになった。

 その王家も聖王国や他の公爵の兼ね合いから、それこそシーザック家が大損するような無茶な命令は出せなくなるだろう。

 つまりは、今後のシーザック家の安寧も、今回のダルベルグ公爵のような無茶をしなければ、確実に保証されたと言えるようなものなのだ。

 

 腐敗しまくっていた所を必死で立て直したシーザック領。

 やっと繁栄し始めてきた自領の栄光が、未来までしっかりと残りそうな状況に、やってきたことが報われたと、自然と俺の頬も綻ぶ。

 

 利権が貰えなかったのは残念だが、褒美としては十分だ。

 これで話は終わりだろうと、俺がそう思っていると、まだ俺に与えられるものはあるらしく、続けて王は言った。

 

「また、フレイ自身には、王室相談役として、自由に王城へ来て、王や政策に口を出すことが出来る権利を授与する」

「え?」

 

 王の言葉に、俺は誰にも聞こえない音量で思わずそんな間抜けな声を上げた。

 周囲の貴族達も、俺に与えられた大きすぎる利権に、先程以上に騒がしくなる。

 王室相談役なんて職業は、引退した先王が政治に介入するために作られた王族専用の役職で、公爵家とは言え、貴族に与えられるようなものではないからだ。

 

 俺的にもこんな重すぎる役職は正直に言っていらないと言うのが本音だ。

 確かに王室の相談役となれば、国の政策に好き放題口に出せるから、どんな利権だろうと生み出すことは出来るだろうが、同時にそれ相応の責任を負うことになる。

 現王が何かしらの無法をやらかしてひんしゅくを買ってしまえば、それを戒めることが出来なかったとして、王室相談役も同時に悪評に晒されることになる。

 もし、それで革命でも起きたとしたら、一緒に断頭台送りだ。

 

 こんな面倒な役職を貰うくらいなら、いっそ利権無しの方がよかったのに……。

 

 だが、王の言葉の為、理由もなく批判するわけにも行かない。

 そこまで考えた所で、王の顔を出来るだけ潰さず、この重すぎる役職から逃れる方法に俺は気付く。

 

「陛下、誠に申し訳ないのですが、王室相談役という役職は、成人してすらいない私の身の上では荷が重いものでございます。私などをそこまで評価して頂いた陛下のお気持ちは嬉しいのですが、その役職については辞退させて頂きたく……」

 

 俺はそう言って深々と頭を下げた。

 領地経営に参加したりと、なんだかんだ色々と活動しているが、俺はまだ十三歳であり、成人すらしていない。

 俺はそれを利用することで、この場を切り抜けようと考えたのだ。

 

 俺の言葉を聞いた王は、心配はいらないと微笑みながら言う。

 

「其方が王室相談役に就くのは、其方が成人してからのことだ。故に己の力不足を心配する必要はない」

 

 そこまで言った所で、王は娘を心配する親の顔で言った。

 

「娘達のことをよろしく頼むぞ」

「は? は、ははぁ~~~~!」

 

 え、嘘でしょ!? 何で王直々にクリスティア達のことを頼まれるわけ!? これじゃあ、俺がしっかりと支えないといけなくなるじゃん!

 

 俺はついでのように付け加えられた一言に、驚いて思わず聞き返しそうになるが、王の意向を遮るわけにも行かないので、必死で承服した姿を見せる。

 

 王は俺のその姿に満足した様子を見せると、そのまま宰相に促す。

 

「フレイ・フォン・シーザックは下がるように!」

「はっ!」

 

 俺が元の貴族の集団の元に戻ると宰相が言う。

 

「此度の論功は以上である! 玉座の間から退出するように!」

「はっ!」

 

 貴族達は次々と玉座の間から出て行った。

 彼らが向かう先は大広間だ。

 目的は今回の論功行賞も含めて今後の情勢がどうなるか互いに話し合ったり、大きな功績を上げたものに取り入れるためだ。

 俺もそれを目的として大広間に向かいながらも思わず呟く。

 

「王室相談役か……面倒なことになったな……。いや、今はそんなことよりも、ユーナが俺のヒロインになれなかった方のことを考えるべきか……」

 

 本来ならユーナを俺だけのヒロインにすることで全てが終わっていた。

 だが、ユーナがラースであることがわかり、そしてそのラースの時にユーナがアレクを受け入れている可能性があることから、ユーナは俺のヒロインにすることが出来なくなった。

 そのため、俺はユーナを諦めて、新しく一から俺だけのヒロインとなり得る存在を探し始めなければならなくなってしまったのだ。

 

「きっついな……。第一目標だったユーナが駄目になるとか完全に想定外だ」

 

 内心頭を抱えそうになる。

 俺の計画の中で唯一存在が確定しているヒロイン候補がユーナだったのだ。

 それが駄目になるということは、完全に何の情報もない状況から、この広い世界で俺の目的に合う俺だけのヒロインを探し出す必要があるのだ。

 

 それはかなりの労苦がある行いだ。

 今までもユーナ以外のヒロイン候補を探してはいたが、最終的にはユーナという存在がいるという心の余裕から、俺の中では何処かで、今の段階で俺だけのヒロインが見つからなくても大丈夫と、何処か甘えに似た気持ちがあったのだ。

 それがなくなり、これからは俺は本当に俺だけのヒロインを見つけられるのかという恐怖と戦いながら、俺だけのヒロインを探しに行かなければならない。

 

 場合によってはこの世界にそんな存在がいない可能性だって――

 

 俺はそこまで考えた所で、自分の弱気な感情をうち捨てた。

 前世と同じように、恋愛が一生出来ないんじゃないかと、悪いことばかりを考えていても何も始まらない。

 

 折角の二度目の人生なのだ。

 与えられたリトライの機会、それを無駄にするわけにはいかないのだ。

 だからこそ、俺は決断する。

 

「これからは、これまで以上に積極的に行かないといけない……! アレクが学園に現れるまであと二年とすこし、何としてもその間に、俺だけのヒロインを見つけ出さなければ……!」

 

 俺はそんなことを考えながら大広間へと入る。

 そこには玉座の間から抜けてきた貴族と、それと話をするために待機していた、貴族達の令息や令嬢がその場にいた。

 そして彼らの目線が一斉に俺に向くと、ひそひそと小声で何かを話し始める。

 

 さすがに王室相談役とかの事で噂にはなるか。

 

 俺はそう思い、その場から歩み去ろうとしたその時――大勢の令嬢が我先にと駆け出してきて、俺はいつの間にか周りを取り囲まれてしまった。

 

「フレイ様! 私、マヌエラ・オルトラニーと申します! フレイ様は婚約者はまだいないのですよね? それなら私を――」

 

 目の前に立つ少女がそう言おうとしたところで、近くにいた別の少女が、その顔を手で押しのけるようにして、俺の前へと出てくる。

 

「邪魔よ! あたしはシモーナ! フレイ様はこのあたしと――!」

「フレイ様と婚約するのはわたしよ!」

「違う! アタシだ!」

 

 そんな風にして目の前で取っ組み合いの結果が始まる。

 この騒ぎを聞きつけて、様子見をしていた令嬢達も、遅れるものかと、この集団の元に駆けつけて、どんどんと俺の取り合いの争いは激しくなる。

 

 多くの女性から迫られるこの状況――普通の男なら嬉しいのかも知れない。

 だが、俺としてはまったく嬉しくない。

 

 目の前で争う女達は、何奴も此奴もが、金や権力など欲望の色で目を染めて、得られるかも知れない利益に愉悦しながら、互いに争い合っていた。

 

 婚約を迫る彼女達には愛がない。

 言葉では愛しているなどと喚いているが、その目に移るのは自分の利益だけだ。

 

 此奴らのように、自分の利益を求めて、その為ならどんな相手であろうとも、こうやって愛をささやける者は、利益がなくなってしまえば、直ぐに相手を捨てて、他の奴に乗り移り、其奴に対して良心の呵責もなく、愛をささやける。

 見せかけだけの愛、言葉だけの思い、それを悪びれずに使う愚か者達。

 

 ――こんな奴らは俺のヒロインに相応しくないのだ。

 

 むしろふるい分けが出来て良いなと思いながらその集団を目にする。

 そうして周囲を見回していると、この集団に関わらないようにする令嬢達の姿が目に映った。

 

 その中の一人が、ユーナの師匠になってからは忙しくて後回しにしていたが、俺の婚約者候補として目を付けていた人物であることに気づく。

 こうやって利益に目を眩んで俺の元にやってこないなんて、俺の目は間違っていなかったと思いながら、俺は彼女の元に転移で移動した。

 

「きゃっ!?」

 

 俺が突如転移してきたことで驚くその少女。

 俺は彼女に向かって笑顔を作ると話しかけた。

 

「君は確かファニーだったよね」

「は、はい……」

「どうかな? 君さえよければ婚約を前提に友達としての付き合いを――」

 

 俺がそう言った時、ファニーは俺の後ろの方を見ると、「ひっ!」という叫び声のようなものを上げた。

 俺は何かいたのかと思わず振り向くと、そこには大広間に入ってきたばかりのユーナの姿があり、こちらに向かって楽しそうな笑顔を見せて手を振っていた。

 

 俺はそれを流して再び話しかけていたファニーに視線を戻すと、彼女は焦ったように早口で俺に対して言う。

 

「だ、男爵家の者である! わ、わたし如きが! 公爵家の方であり! 王室相談役でもある! 王家の方と婚約する可能性が高いフレイ様の相手など! 例え妾であろうとも無理でございますぅ~!!!」

 

 そう言うと逃げ出すようにその場から走って去って行った。

 そして、それを見ていた先程の婚約を申し込んで来る集団が、再度俺を囲むように展開し、そしてそこでまた諍いを始める。

 俺はファニーのような相手に再度話しかけようとするが、そう言った俺に婚約を申し出る集団に入っていないものは、俺に話しかけられるのを避けるかのように、俺の視界から逃げるようにして消えていく。

 

 この光景を見て俺は気付いた。

 

「あれ? もしかして――俺、詰んだ?」

 

 俺を囲んでいる者達のように、今の俺にすり寄ってくるのは、利益に目が眩んだ俺だけのヒロインになれない少女ばかりだ。

 それを避けるためには、先程のように、そう言った者では無いまともな少女に、自ら話しかけて、婚約者になるように持ちかけるしかない。

 だが、そんなまともな少女だと、王に口が出せる王室相談役であり、王族とも結婚可能な公爵家である俺は、実質的な王配候補として見られるため、そんな相手を王族から横取りするような不埒な真似は出来ないと、俺のヒロインになることを拒否してしまう状況にあるのだ。

 つまり、俺のヒロインになり得るまともな相手は、まともであるが故に、俺の立場や状況を見て、俺のヒロインになることを諦め、それを無視して俺にすり寄ってこれるのは、俺のヒロインになり得ない奴らだけという事になる。

 

 ……何処からどう見ても詰んでいる。

 

 もはや、フェルノ王国の貴族令嬢の中から、俺の望むヒロインが現れて、俺の恋人になってくれる可能性は、限りなく低い状況になってしまったのだ。

 

 あ、あのクソ王め~!!!

 

 俺はこの状況を作り出した王への怨嗟を吐く。

 王族しかなれない王室相談役に俺をしたのは、今のように暗黙的に俺が王族の婚約者と知らしめすことで、そのままなし崩しに取り込もうとしているのだ。

 

 あの気弱な王にこんな策を考える大胆さはない。

 だから、この策を考えたのは他の貴族達だ。

 ユーゲント公爵派の貴族か、それともそれ以外の貴族か、どちらにしろ、これを考えた奴は絶対に許さない!

 

 俺がそう思っていると、兵士が広間に入ってきて、俺に向かって言った。

 

「フレイ・フォン・シーザック! クリスティア王女殿下がお呼びだ!」

「クリスティア様が……?」

 

 俺は唐突な呼び出しに疑問の顔を浮かべるものの、これを利用してこの場から抜け出すことが出来るため、これ幸いにとこの場から逃げ出すように、呼び出したクリスティアの元へと向かった。

 

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