エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
魔王国に隕石を落としまくった後、さすがにあんなものを見せられたら、停戦協定の締結に頷かざる終えなかったのか、魔王国との交渉は成立し、その後の対処を後任に引き継いだ俺は、レディシアの引き渡し日ということもあって、フェルノ王国の王城へとやってきていた。
「クリスティア様。レディシア様を受け取りに来ました」
「ああ、フレイか」
俺が案内されて部屋に着くと、クリスティアは頭を抑えて座っていた。
それを見た俺は思わず、クリスティアに聞く。
「何か悩み事ですか?」
「お前は本当にやらかしてくれるよな……」
俺を見てジト目でそう言うクリスティア。
俺は何がなんだかわからずにクリスティアに言う。
「やらかすとは?」
「魔王国との交渉の件だ」
「ああ、あれですか。完璧な仕事だったでしょう? こちらに有利な条件で、全ての要求を飲ませたと思っていますけど?」
普通の外交官なら確実に失敗していたような交渉を成功させたのだ。
やらかしたと言われるような事態にならないのではと言う意味で俺がそう言うと、クリスティアはため息を吐いて言った。
「やり過ぎだ。魔王国は停戦協定だけではなく、今後は全面的に人間との融和を進めていくことを決め、手始めにこの国と交易を始めると言ってきた」
「なんだ、いいことじゃないですか。想定とは違いますが、別に仲良くする分には問題はないのでは? もちろん、奴らの裏は探らないといけないでしょうけど」
やらかしたと言うほどだからどんな事態かと警戒したが、結果的には魔王国が方針転換しただけで、それほど大きな問題という訳でもなさそうだった。
もちろん、突如としてこんなことを言いだしたのだから、表では仲良くすると見せかけて、裏で何かをすると言ったことがないように、奴らの腹の内をしっかりと探らないといけないだろうが、それだけの話とも言える。
「そこは心配いらない。魔王国は裏切らないという証の為に、魔王の娘を人質として、こちらの国によこすことになっているからな」
「はあ、それなら何故そんなに困っているんですか?」
大体の問題は解決している。
悩むほどの事態ではないと思うが……。
「……お前がそこまで言うのならいいか」
「え? ちょ――」
「入ってきてくれ!」
クリスティアの物言いに嫌な予感を覚えて問い返す前に、クリスティアは誰かへと部屋に入るように促す。
「フレイさまぁん」
そう言って部屋に入ってきたのはレディシアだ。
いや、それはいい。
元より今日はレディシアを受け取りに来たのだから。
だから問題は――。
「よろしくお願いします。魔神様」
そう言って入ってきたプリシラだ。
それを見て、俺はクリスティアに顔を向ける。
クリスティアは良い笑顔を見せながら俺に言った。
「二人をよろしくな。フレイ」
「はあっ!? 今日はレディシアを受け取るだけのはずでしょ!?」
どうしてプリシラもセットという事になるのか。
そもそも、此奴は人質として王都の厄介になるのでは!?
そんな俺の疑問にクリスティアが答える。
「魔王国側の要求だ。自分達は魔神様が治める土地であるシーザック領としか取引をしないし、人質も当然シーザック領に送ると」
そこまで言うとクリスティアは難しい顔をして言う。
「つまり、お前が纏めてきた条約以外は、全てフェルノ王国は関係無く、魔王国とシーザック家との条約と言うことになるわけだな」
「んな!? そんなの無敵の王家の立場で何とかしてくださいよ!」
「父上にそんなことが出来るとでも?」
諦めたようにそう言うクリスティア。
だが、尚も俺は突っかかる。
「他国と国を返さずに深い付き合いになる貴族家って、ぶっちゃけ反乱予備軍というかやばいことになるでしょ! 止めるべきだと思いますけど!」
「それを言ったら、聖王国と付き合いが深い現状からそうだな」
「うぐっ!」
痛いところを突かれて言い返せなくなる。
確かに現在の聖王国との付き合いと似たようなものかも知れないが……。
「いや、でも、聖王国と魔王国とか、そんな真反対なものと付き合わせるとか、フェルノ王家はシーザック領をどうするつもりなんですか!」
「ははは、そこは上手くやってくれ」
光と闇が両方そなわり最強に見える、みたいな単純な話じゃねーんだぞ!
聖王国と魔王国が揉めたら、矢面に立たされるのはシーザック家なのだ。
上手くやってくれで済まされる次元の話じゃない。
そう息巻いている俺の元にプリシラが近づいて来た。
「安心してください魔神様、魔神様のお膝元で、悪さをする魔族はいません」
「……さっきから気になっていたが、その魔神様ってのはなんだ?」
俺がそう言うとプリシラは恍惚とした表情で言う。
「何を言うのですか! 貴方様のことですよ! 魔神様! アタシ達、魔族を導いてくれる神様です!」
プリシラのその言葉を理解出来なかった俺は、クリスティアを見た。
クリスティアはため息を吐くと言う。
「そう言うことになっているらしい」
「嘘でしょ……」
俺が思わず絶句していると、プリシラにレディシアが楽しそうに話しかける。
「貴方、フレイ様を神と呼ぶなんて、わかっているわねぇ」
「もしかして、貴方も?」
「ええ、フレイ様はわたくしの神様ですわぁ」
そう言うとレディシアはプリシラの手を取る。
「つまり、わたくし達は同じ神を仰ぐ同士ということですわねぇ」
そう言われたプリシラは、人間と仲良くなることが出来たと、ぱあっと明るい顔をして、楽しそうに言う。
「ええ、そうですね! アタシ達は同士です!」
きゃっきゃ、きゃっきゃと盛り上がる二人。
普段なら、夢だった人間との融和に近づけて良かったねと言いたくなるような状況だが、それの元が俺が神だからという事なのだから、素直に喜べない。
「ともかく、これは決定事項だ」
「そんな……幾ら何でも……!」
「フレイは前に言ったよな? 『お前を助けたい。だから、何か困ったことがあれば、何でも言ってくれ、俺はどんな時でもお前の力になる』と、今がその私に取っての困っている事態だ」
それを言われると素直に辛い。
バットエンドの負い目がある俺は素直に頷くしかなかった。
「……はい。わかりました。受け入れます……」
結局、俺は二人を受け入れることになった。
転移がトラウマになっていそうなレディシアの為に、来幸に用意して貰った馬車へと、二人とともに歩いて行く。
「魔神様、あの馬車に乗るんですか?」
「その魔神様っての止めてくれない?」
俺がそう言うと、プリシラは淀んだ目をして言う。
「何を言ってるんですか? 魔神様は魔神様です。魔神様でなければなりません。何か気に障ることがありましたか? 魔神様の為なら何でもするので、そのようなことを言わないでください」
何でこの子、こんな狂信者みたいなこと言ってるの!?
俺と話すのは今日が初めてだよね!?
俺は内心、プリシラにビビり倒しながら、「もう魔神様呼びでいいよ……」と言って、逃げるようにして来幸の元に向かった。
「あの……フレイ様、一人増えているのですが……」
「俺としても予想外だよ……」
来幸に経緯を説明すると、来幸は理解出来ないと眉を寄せる。
「何故、魔神と?」
「俺にもわからん。ともかく言えることは、頭のおかしなのが一人増えてしまったということだけだ」
なんでレディシアに引き続き、プリシラもこんなことになってしまったのか。
プリシラに関しては、俺は何もしてないはずだから理解出来ない。
やっぱり攻略対象だからか? 攻略対象は普通と違うから、こんな風に突如として狂信的な感情に芽生えたり、おかしくなってしまうのか?
俺は、パンツを見せに来ると言う頭のおかしな事をし始めたエルザや、壊れたレディシアを見て、育って貰うのがずるいと言ったユーナ、そしてメジーナを含めた銀仮面ファンクラブの面々を思い出しながら、思わずそう思う。
そんな風におかしな行動を取らない、攻略対象の中でまともな感性を持った存在は、来幸とクリスティアくらいしかいないのが現状だ。
まあ、攻略対象ってのは、それまで好いた相手もいない状態で、アレクやアリシアが出てきた瞬間に、全てを捧げるほどの熱烈な恋に落ちる者達なんだから、そういう風に何かに対して熱狂しやすいって所があるのかもしれない。
それに加えて、普通であったら、物語の登場人物になりはしないのだから、よくある創作の主人公が頭のネジが外れていると読者達から言われるように、それに攻略されるヒロイン達も、何処か普通と違って、主人公と同じように頭のネジが一本外れてしまっていて、おかしな行動を取るのかもしれないな、と俺は思った。
「はあ。ともかくシーザック領に帰ろう。王都での面倒事はもうこりごりだ」
例のクーデター事件の後、ナルル学園は早めの長期休暇に入っている。
表向きはダルベルグ公爵のように、魔族による暗躍の影響を受けていないかの調査の為とされているが、実際は王のせいで削りきれなかったダルベルグ公爵派を、ユーゲント公爵派が魔族を理由に削るために行っているのだろう。
魔王国が、バーグを含めてフェルノ王国で暗躍していた魔族の報告書をユーゲント公爵派に提供しているため、それと手を結んで暗躍していた悪徳貴族はそれなりの数、処罰することが出来るだろうと考えられている。
まあ、完全に野放しにするわけじゃなくて良かった。
俺はそんなことを思いながら、馬車のドアを開ける、
そして、馬車の中で席の上に寝っ転がっているレディシアとプリシラの姿が目に入り、俺は思わず頭を抑えながら、二人に対して言った。
「……何をしているんだ?」
「馬車の中は揺れるので、フレイ様がお尻を痛めないように、わたくしがクッションになるのですわぁ」
俺の疑問にレディシアがそう答える。
そのレディシアの言葉にプリシラが頷く。
「普通にしてくれぇ……」
俺はそんな嘆きのような言葉を出すと、二人に命令して普通に座らせた。
そして、来幸と共に馬車に乗ってシーザック領を目指す。
その道中で俺はこっそりと来幸に話しかけた。
「なあ、来幸。レディシアの対精神魔法用の装備を外させるし、俺が全責任を取るから、闇魔法でレディシアの精神を治療してくれないか?」
さすがにこんな状態が続くと普通に困る。
だから、闇魔法でまともな人格に矯正しようと思うのだ。
一応、レディシアの身柄は引き取るにあたり、シーザック家にかなりの権限が与えられることになったから、しっかりとレディシアの耐性を落として闇魔法を使うことが出来るため、露見するリスクも少ない。
そんな考えから言った俺の言葉に、来幸は首を振って言った。
「それなのですが、もう試しました」
「は? もう試した? どういうこと?」
「事後報告になりますが、フレイ様が登城する前に、ユーナ様に王城へと呼び出され、そこで闇魔法の魔法書を持たされて、そこに書かれている魔法で、レディシア様を治療して欲しいと頼まれたのです」
「……そうか、王家なら、黒髪が闇の魔力を持っていることを知っていてもおかしくないし、過去の黒神教の討伐で闇魔法の魔法書保持していてもおかしくないか」
わざわざ来幸を呼んだことから考えるに、魔法書の方は闇の魔力を持っているものしか使えない、こちらの魔法書の劣化版のようだが。
ともあれ、王家側としても、さすがにレディシアをそのままにはしておけないと、治療を試みたということなのだろう。
「王家の頼みと言うこともあって断れず、闇魔法を使うことになってしまい、申し訳ありません」
「いや、かまない。王家主導なら、この事を表に出すこともないだろう」
深々と頭を下げた来幸に俺はそう答える。
「それで、試してどうして変わっていないんだ?」
俺のその言葉に、来幸が難しい顔をして答える。
「レディシア様は、王族として高い魔力を持っているのもあって、精神操作の効きが悪く、そして多少の精神操作では、狂気に染まった精神を変えても、直ぐにその狂気に飲まれて元通りに戻ってしまうみたいなのです」
「完全に狂人になってしまった奴には精神操作は効かないってことか」
よくよく考えて見れば、闇魔法を滅茶苦茶使っていた黒神教も、狂信者となった者達の暴走を抑えることが出来ていなかった。
精神魔法が狂信的な感情も含めて操作できるのなら、あのような事態にはならずに、適宜闇魔法で精神を操作することで、もっと上手く組織運営をすることが出来ていたはずだ。
つまりは、このレディシアを治療する方法はないと言うことだ。
「クソっ! このままのレディシアを領内に連れて行かなければならないのか! 全く、とんだ爆弾を抱える羽目になってしまったものだ」
「ええ、本当に……闇魔法で潰せていれば良かったんですが……」
俺と来幸は揃ってため息を吐いた。
流れゆく外の景色を見ながら俺は思う。
「マジで、此奴らどうすっかな……」
人のことを勝手に神と崇める迷惑集団に、俺は頭を抱えた。
☆☆☆
それから何日も旅をして、俺達はようやくシーザック領に到達した。
「転移なら一瞬なんだがな。さすがに長旅は疲れた」
俺はそう言って馬車を降り、屋敷の中へと向かう。
「ここがフレイ様の領地……」
「神が生まれた地ですね……」
感慨深げに何か言っている後ろの二人を無視し、屋敷の広間に着くと、俺はメイドに、両親と、リガード、レオナルドを呼び出すように伝える。
そうして全員が揃った所で、王都で起こった事の顛末と、レディシアとプリシラをシーザック領で預かることになったことを伝える。
「えっ!? 王女様!? マジっすか!?」
「これは、そのような事態が……」
既に話を通していた両親と違い、リガードとレオナルドは素直に驚きを見せる。
「彼女達にはこの屋敷に住んで貰う。その場所は先に帰らせたミリーが、既に準備を終わらせているはずだ」
俺はそこまで言った所で、レディシアとプリシラに向かって言う。
「この屋敷の生活で何か困ったことがあったら、屋敷を取り仕切っているリガードに尋ねるといい」
「フレイさまぁ、わかりましたわぁ」
「魔神様がそう言うのなら」
そんな二人の様子を見て、レオナルドが驚きながら言う、
「フレイ様? 魔神様? この人達、王女なんっすよね?」
「聞き流せ」
俺はレオナルドの疑問にそう答える。
「レディシアとプリシラは、この街の中なら自由に行動しても構わない。但し、それぞれダルベルグ公爵派や魔族と関わって、怪しい行動を見せた場合は、直ぐさま王都に送還し、王家の判決を待つことになるから注意しろよ」
「はぁい」
「わかりました」
一応、この二人は隠棲と人質としてシーザック領に来ている。
だからこそ、下手な行動をしたら、それを捕まえる義務が、王家より二人を託された、シーザック家にはあるのだ。
「さてと、レオナルド」
俺はそこまで言った所で、良い笑顔でレオナルドを見た。
それを見た、レオナルドの顔が、何かを察知したのか引き攣る。
「ふ、フレイ様、嫌な予感がするんすけど」
「銀光騎士団には、この二人の監視を頼むぞ。怪しい行動をしないかを見張り、また何らかの存在によって危害を加えられないように、しっかりと警護してくれ」
俺はレディシアとプリシラの扱いに悩んでいたが、よくよく考えて見れば、そこまで悩む必要はなかったのだ。
今世の俺は、権力者である貴族の令息。
扱い辛い面倒事があるというのなら、配下の者に丸投げして、面倒事を全て背負って貰えば良かったのだ。
上司である俺は、レディシアとプリシラに直接関わらずに、レオナルドから取捨選択がされた報告を受け取れば、それで充分なのだ。
「ちょっ!? マジっすか!? いやいや、無理っすよ!? 王女様方の監視と警護なんて、自分には重すぎるっす!」
「大丈夫だ! 俺が見込んだお前なら出来る!」
俺は部下の活躍を期待する上司の顔でそう言った。
悪いなレオナルド。
これが出来る大人の処世術だよ。
面倒な奴らは首輪を付けて余所に行かないような状況にした後、放し飼いにでもして好き勝手に庭を走り回らせていればいい。
これが、俺が考えた完璧なレディシア達への対策だ!
「リノア様! ジーク様!」
俺を説得出来ないとみたレオナルドが、直ぐに当主であるリノアと、その配偶者であるジークへと話を向ける。
――だが、その行いは無駄だ。
「う~ん。王女様方の事はフレイに任せてるから、そのフレイがレオナルドに任せるべきだと思ったのなら、それでいいんじゃないかしら?」
「こっちも、こっちで、新しく始まった魔族との交易とか、聖王国への状況説明とかで、忙しいからな……悪いな、レオナルド」
今のシーザック領は、魔族との交易と言う未曾有の事態に見舞われて、その対応でてんやわんやの騒ぎに陥っている。
魔族が暴れた場合、確実に相手を倒せるのはS級冒険者であるジークだけだし、聖女として聖王国へのつながりが深いリノアは、魔族と交易するという事態に関して、聖王国への説明要求などが出てきてしまっている状況にある。
とてもじゃないが、この上で、二人の王女の面倒を見るという厄介事を引き受ける余裕は彼女達にはないのだ。
「そ、そんな~」
「ま、此奴らだって立場はわかっている。そうそう問題になるようなこともしないだろうさ。そこまで気張らずとも問題なく任務を果たせると思うぞ」
俺はそれだけ言うと全員に向かって言う。
「話はここまでだ。それじゃあ、解散!」
有無を言わせずそう言うと全員が自分の仕事に散る。
さーてと、溜まった書類仕事でも片付けるかな。
俺は晴れ晴れとした気持ちで執務室へと向かった。